Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2018/01/25
Update

映画『アウトサイダーズ』あらすじと感想。マイケル・ファスベンダーの演技力とは

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

映画『アウトサイダーズ』は、2018年2月10日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて全国順次公開!

トラヴェラーズコミュニティの長であるコルビーは、絶対的な権力でカトラー・ファミリーを組織。

しかし後継ぎとなる息子チャドは、これまで腕利きのドライバー役として犯罪に加わってきたものの、自身の子どもたちには一般的な生活をさせたいと考えます…。

1.映画『アウトサイダーズ』の作品情報


© BFI, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION AND TRESPASS AGAINST US LIMITED 2015

【公開】
2018年(イギリス映画)

【原題】
TRESPASS AGAINST US

【監督】
アダム・スミス

【キャスト】
マイケル・ファスベンダー、ブレンダン・グリーソン、リンゼイ・マーシャル、キリアン・スコット、ロリー・キニア、ショーン・ハリス、
バリー・コーガン

【作品概要】
「X-MEN」シリーズや『エイリアン コヴェナント』のマイケル・ファスベンダー主演による親子三代の父と息子の物語。

マイケルが主人公のチャドを演じ、父親コルビー役に『アサシン クリード』に次いで2度目の父子役を演じたブレンダン・グリーソン。

演出はケミカル・ブラザーズの映像作品を手がけ、長編劇映画初監督となるアダム・スミス監督。

音楽はケミカル・ブラザーズのトム・ローランズが担当しています。

2.映画『アウトサイダーズ』のあらすじ


© BFI, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION AND TRESPASS AGAINST US LIMITED 2015

イングランド南西部のグロスタシャー州。

犯罪を生業にしながらトラヴェラーズコミュニティを形成し、トレイラーハウスで各地を回る放浪をして代々生きてきたカトラー・ファミリー。

コミュニティの長である父親コルビーの後継ぎであり、腕利きのドライバー役として多くの悪事に手を染めてきたチャドは、家族に何も告げずに独り密かな計画を立てていました。

自分のように学校教育も受けずに、識字もできない人生をまだ幼い息子と娘に歩ませたくなかったのです。

チャドは悪事から足を洗い、ひとつの場所に定住することを望み、妻と子どもたちと4人で安定する暮らしを始めようと、町の片隅に家を借りる算段をしていました。

しかし、それに巨大な壁のように立ちはだかったのは、絶対的な力で一族ファミリーを支配する父親コルビーでした。

ある夜、チャドは父親コルビーの命令で大邸宅に押し入ります。

激しい逃走をかわして、何とか無事に逃げ切理ますが、事件は国内史上最大級の強盗事件としてメディアは大きく報道をされることになります。

この事件を担当したのは、日頃からカトラー・ファミリーを目の敵にしていた警察や、ロヴァッジ巡査はチャドの逮捕に向けて動き出す。

ロヴァッジから重要参考人として尋問を受けたチャドに告げられたのは、あの強盗に押し入った先は州総督の邸宅だと知らされます。

こうして一層父親コルビーとの確執が明確になったチャドの父子の絆は決定的な危機を迎えますが…。

3.映画『アウトサイダーズ』の感想と評価


© BFI, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION AND TRESPASS AGAINST US LIMITED 2015

実話を基に始まったフィクション映画

本作『アウトサイダーズ」のアイデアは、脚本を担当したアラステア・シドンズによるものです。

彼が偶然に読んだ新聞記事に掲載されていた、コッツウォルド郊外を脅かしてきた犯罪一家を目にしたことに始まります。

記事によるとそのファミリーは州の7割の犯罪で告訴をされていた凶悪なもので、豪邸に度重なる不法侵入で地元警察にはよく知られた存在だったそうです。

当初アラステアはドキュメンタリー映画に最適な題材になると興味を抱きますが、熟考する間にフィクションの劇映画にして表現を広げた方がパワフルなストーリーになると確信します。

誰もが持つ家族をテーマに確執や絆をダイナミックに掘り下げ、社会に染み込んだ偏見や差別は、観客の誰にも共感が持てる作品になると感じたのです。

アラステアはイングランドにいるアウトサイダーズ(はみ出し者たち)の生き方について次のように述べています。

「『アウトサイダーズ』に登場するカトラー・ファミリーは、この国で実際に発見できるアウトローの姿とほとんど同じだ。銀行口座もパスポートもなく、国民保険にも入っていないような、徹底的に社会から追いやられた人たち。彼らの多くは一度も学校に通ったことがない。この映画で私を魅了したのは、家族に対する見方だ。殴り合いの喧嘩もするけれど家族の強い絆が貫かれている。実際の人々にインスパイアされているが、カトラー・ファミリー自体はフィクションの存在だ。この映画は彼らについての物語で、とりわけ3世代にわたる男たちの関係に焦点を当てている」

脚本を担当したアラステアが興味を抱いたように、観客のあなたも映画がはじまると、社会と断絶した特異なトラヴェラーズコミュニティの生活や、自由な暮らしぶりの家族の姿に惹きつけられるでしょう。

しかし、一般的でないコミュニティの生活環境のなか、人はどのように教育や人格を形成さてていくのだろうと、一抹の不安も感じされられるはずです。

するとその矢先、カトラー・ファミリーの犯罪行為の過激さや、チャドの派手なカーチェイスの登場に、再度グングンと閉ざされたコミュニティに寄り添う感情に引き戻されてしまいます。

さすがケミカル・ブラザーズの映像制作を担当していたアダム・スミス監督のクールな演出の力もありますが、なんと言っても主人公チャド・カトラーという最も重要な役を演じた、俳優マイケル・フェスベンダーの演技力が光っています

社会の時の流れや親子世代に揺れるチャド役を演じきったマイケルを持って、3世代の男たち関係を見事に見せてくれています。

マイケルとブレンダンが共演した魅力


© BFI, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION AND TRESPASS AGAINST US LIMITED 2015

例えばマイケルの演じたチャドは、常に心に問いを抱いています。

「善と悪」「定住者と非定住者」「教育の有る無し」「父子の確執」など、その悩みとは簡単な正解が出せないことばかりで、頭がいっぱいといってもいいでしょう。

スクリーンを観ていると、トレーラーの中のベットでチャドが朝日に包まれ寝ている時こそ、彼が一番自分らしい安息なのではないかと見る者に感じてしまうほどでした。

映画の撮影中にマイケル・フェスベンダーは、共演したブレンダン・グリーソンと脚本の内容について話し合いを交わしたそうです。

「なぜコルビーはチャドに学校に通わせなかったのか?ブレンダンとそのことについて話し合ったよ。それは彼なりに息子を支配下に置くためのやり方だったのか?それとも、学校に通わせることでコルビーが悪だと信じるシステムに息子が順応してしまい、考えが歪められ、自分たちのコミュニティそのものを汚してしまうと思ったのか?答えが何であれ、チャドは自分の子供が教育を受けるべきだと言うことに関しては断固とした信念を持っていた。だから。『アウトサイダーズ』は変わりゆく時代についての物語で同時に古いしきたりを捨てて新しい光を見つけ出そうというのは時に難しいことなんだということについての物語でもある」

このように演じる時にも自問自答を繰り返すしマイケルは、最善をを尽くそうと努める真摯な俳優だと言えるでしょう。

そのことについて脚本家アラステアは、「マイケルのすごいのは、人に好かれない部分と、観客に彼の苦境を理解させ、共感させる部分をミックスした演技ができるところだ」と言わしめています。

本作を観たあなたはきっと、マイケルの揺らぎの波動を表情や演技からある種火傷のようなに心を熱くさせられるでしょう。

また、共演したブレンダン・グリーソンは、この作品に出演を承諾したことについて、マイケルを引き合いに出しながら、本作の核心をつく発言をしています。

「何よりの決め手はこの作品にマイケルが加わったということだった。長いことマイケルとの仕事を望んでいたし、彼が出るなら絶対に素晴らしい映画になると思った。この映画は観客に簡単な答えを与えはしないが、答えが分からない時こそ、映画はより感動的なものとなるんだ」

ブレンダンの述べた、簡単な答えはなく、分からないとしたシークエンスはとても象徴的に描かれています。

確かに正解などないからこそ、父子関係であり、感動的なものだと思います。

ちょっと単純な父親越えの作品ではなく、エディプスコンプレックスの通過儀礼が扱いになっていることに、問題の深さを考えさせられます。

息子チャド役のマイケルと父親コルビー役のブレンダンに注目してください!

4.『アウトサイダーズ』の公開される劇場は


© BFI, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION AND TRESPASS AGAINST US LIMITED 2015

青森 フォーラム八戸(調整中)TEL:0178-38-0035

宮城 チネ・ラヴィータ(3/24〜)TEL:022-299-5555

山形 フォーラム山形(調整中) TEL:023-632-3220

千葉 USシネマ千葉ニュータウン(2/10〜)TEL:0476-48-2126

東京 シネマート新宿(2/10〜)TEL:03-5369-2831

神奈川 横浜ニューテアトル(2/10〜)TEL:045-261-2995

石川 ユナイテッド・シネマ金沢(3/17〜)TEL:0570-783-071

愛知 ユナイテッド・シネマ豊橋18(3/24〜) TEL:0532-38-0888
愛知 名演小劇場(2/10〜)TEL:052-931-1701

大阪 シネマート心斎橋(2/10〜)TEL:06-6282-0815

兵庫 元町映画館(調整中)TEL:078-366-2636

奈良 ユナイテッド・シネマ橿原(3/10〜)TEL:0570-000-206

*上記の劇場スケジュールは2018年1月25日現在のものです。映画館にお出かけの際は『アウトサイダーズ』公式ホームページを閲覧のうえ、足をお運び下さい。

まとめ

父親コルビー役を演じたブレンダン・グリーソンは、チャドをコミュニティに残るように促すのは、息子チャドが外の世界で適応できないからと気がついたからではないかと指摘しています。

チャドは窃盗犯やドライバーとして善人すぎると言い、彼には何もスキルがなく字も読めない、一体何ができると解釈したうえで、「外側のルールのもとでは、カトラーの人間たちは恐らく勝てないんだ」と持論を持っているようです。

この鋭い指摘、あなたは本作をどのように感じるでしょう?

アダム・スミスの初監督作品は、ぜひ、あなたが若い頃に劇場で観ておくべき、佳作な映画です。

イギリス映画『アウトサイダーズ』は、2018年2月10日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにて全国順次公開!

ぜひ、お見逃しなく!

映画『アウトサイダーズ』オフィシャルサイト

関連記事

ヒューマンドラマ映画

ネタバレ感想『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』結末あらすじと解説評価。ウェス・アンダーソン監督が名優たちと共に作り上げた“至高の世界”

ウェス・アンダーソン監督が名優たちと共に作り上げた至高の世界 ウェス・アンダーソン監督の長編第10作目を飾る最新作の舞台は、20世紀フランスの架空の街にある『フレンチ・ディスパッチ』誌の編集部です。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『貞子(2019)』ネタバレあらすじと感想。中田秀夫のリングシリーズの歴史と魅力

映画『貞子』は、2019年5月24日(金)より全国ロードショー! 1999年に公開され、日本、そして世界の映画界に“Jホラー”という存在を深く焼き付けた『リング』から20年。 長きにわたって続く『リン …

ヒューマンドラマ映画

『PERFECT DAYS』ネタバレレビューと感想評価。ヴェンダース監督と役所広司が人生に本当に必要なものとは何かを問いかける

日々の喜びを静かに紡ぐヴィム・ヴェンダース監督の秀作『PERFECT DAYS』 『パリ、テキサス』(1984)『ベルリン・天使の詩』(1988)で知られるドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督が、『孤 …

ヒューマンドラマ映画

映画『サラバ静寂』あらすじとキャスト!原作や監督についても

音楽が禁止された世界で、音楽に出会ってしまった若者たちの姿を描いた映画『サラバ静寂』。 キャスティングされた主演は、ドラマと映画ともに『お前はまだグンマを知らない』では轟一矢役を務め、映画『関ヶ原』で …

ヒューマンドラマ映画

映画『アウトレイジ最終章』キャストとあらすじ!公開はいつから?

現在公開中の『ゴースト・イン・ザ・シェル』で公安9課の荒巻役を演じた北野武(ビート)。 「狐殺すのに兎をよこすな!」と強面を見せようとした荒巻だが、それよりよっぽど怖い北野武が見られるのが、「アウトレ …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学