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映画『燃えよ剣』感想レビュー評価。原田眞人監督が問う‟土方歳三の敗者の美徳”

  • Writer :
  • 村松健太郎

原田眞人監督×司馬遼太郎原作『燃えよ剣』近日公開

原田眞人監督が描く映画『燃えよ剣』は、武家政権の終わりを描いています。スポットが当たるのは、幕末に6年間だけ存在した史上最強の剣客集団“新撰組”の副長土方歳三。その鮮烈な人生を描き出します。

戦国時代の終わりを描いた映画『関ヶ原』、太平洋戦争の終わりの映画リメイク版『日本のいちばん長い日』に続いて、原田眞人監督が手掛けた‟日本の3大転換期最終章”となる作品です。

原作は司馬遼太郎のベストセラー小説『燃えよ剣』。主演は『関ヶ原』に続いて原田監督と組んだ岡田准一です。映画『燃えよ剣』は近日公開です。

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映画『燃えよ剣』の作品情報

(C)2020「燃えよ剣」製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)

【原作】 
司馬遼太郎

【脚本・監督】
原田眞人

【キャスト】
岡田准一、鈴木亮平、柴咲コウ、伊藤英明、山田涼介、吉原光夫、松角洋平、安井順平、たかお鷹、谷田歩、金田哲、吉田健悟、松下洸平、村本大輔、渋川清彦、森本慎太郎、山田祐貴、尾上右近、酒向芳、ジョナ・ブロケ、柄本明、山路和弘、坂井真紀、市村正親、阿部純子、坂東巳之助、渕上泰史、石田佳央、マギー、三浦誠巳、大場泰正、高嶋政宏、村上虹郎

【作品概要】
映画『燃えよ剣』は、幕末に6年間だけ存在した史上最強の剣客集団“新撰組”の副長土方歳三の鮮烈な人生を描いています。

原作は司馬遼太郎の『燃えよ剣』。『関ヶ原』(2017)『日本のいちばん長い日』(2015)の原田眞人監督が映画化しました。

土方を演じる岡田准一、近藤勇を演じる鈴木亮平、土方の想い人お雪を演じる柴咲コウと大河ドラマの3人の主演俳優も集結。

これに加えて芹沢鴨を伊藤英明、沖田総司を山田涼介、徳川慶喜を山田祐貴を演じています。さらに柄本明や市村正親、高嶋政宏、坂井真紀、渋川清彦などに加え、ウーマンラッシュアワーの村本大輔やはんにゃの金田哲など幅広いジャンルから豪華キャストが揃いました。

映画『燃えよ剣』のあらすじ

(C)2020「燃えよ剣」製作委員会

明治2年、蝦夷地・五稜郭に拠点を構えた旧幕府軍の陸軍奉行となっていたかつての新選組・副長の土方歳三は、フランス軍士官ジュール・ブリュネに自分の半生を語ります。

多摩の“バラガキ”(=いばらのよう触れると怪我をする乱暴者)と呼ばれていた歳三が、盟友の近藤勇、沖田総司たちとの青春時代を経て、京都守護職の後押しを得て水戸藩出身の芹沢鴨らと共に新選組を結成しました。

近藤勇を軸とする組織作りのため粛清を繰り返し、芹沢鴨を暗殺した土方歳三は、やがて「鬼の副長」と呼ばれ、恐れられるようになります。

討幕派を一網打尽にした池田屋事件で、新選組の名前は天下に響き渡ります。一方、江戸から京都にやってきた画師のお雪と出逢った歳三は彼女に惹かれ、お雪もまた歳三に惹かれ始めます。

討幕派の勢いが薩長同盟によって盛り返すと時流は一気に変わっていきます。徳川幕府15代将軍徳川慶喜は大政奉還をし、徳川の世が終わります。

しかし、旧幕府派と新政府側との対立は続き鳥羽伏見の戦いを皮切りに全国各地で戦争が続きます。江戸で近藤・沖田を失った歳三ですが、孤軍奮闘、会津から蝦夷地へと移動し闘い続けます。

京都で一度は別れを告げたお雪が歳三を追って蝦夷地までやってきた時、二人は強く抱き合います。そして、最後の闘い、軍勢を率いた歳三は新政府軍の中枢に突撃していきます……。

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映画『燃えよ剣』の感想と評価

(C)2020「燃えよ剣」製作委員会

司馬遼太郎の原作小説『燃えよ剣』では、最初から最後までストーリーは三人称の形で進みますが、映画『燃えよ剣』は土方歳三の回想録という形で語られます。

見どころの一つは、この構成にあります。回想録という筋書きのおかげで、新選組を俯瞰で捉えた原作以上に、愚直に士道を追い求め、武士であろうとする土方歳三という男に感情移入しやすくなっているのです。

映画『燃えよ剣』で土方を演じるのは岡田准一。岡田は、正義感が強く、武骨な人物を演じるとピタリとハマりますが、どんな役柄でもキャラクターを立体的に演じることが上手い俳優というイメージがあります。

そんなキャストがドンと土方を演じることで、時代背景も捉えた回想録という構成がいきています。

もちろんこの描かれ方に賛否があるかもしれません。土方が主役の映画『燃えよ剣』ですが、物語としては新選組、さらには武士の最後を描いているといって良いでしょう。

百姓の子供でありながら刀を差し、バラガキとして暴れまわっていた歳三が、やがて本当の武士となり、武士として散っていく姿は、そのまま武家政権の最後に重なって見えるのですから……。

もう一つの見どころは、原田眞人時代劇における“実物ロケ”の数々。どうやって許可をとれているのか? と考えたくなるほど、贅沢に世界遺産や国宝、重要文化財の建築物での撮影を慣行しています。

世界遺産の西本願寺は、新選組が屯所をおいて守りの拠点としていました。同じく世界遺産の二条城は大政奉還の舞台となったところです。

歴史的事実があるその場所で、150年ほど前に起きた出来事をありのまま描いた説得力のある画像がスクリーンに映し出され、歴史の重みも感じることでしょう。

実在する建築物での撮影がある一方、池田屋事件の舞台となった池田屋は、宮大工によって基礎から建てられた建物です。現代に建てられたとはいえ、趣のある作りからは、お金と手間暇かけて作られているというのが伝わってきます。

池田屋他オープンセットの一部は今も残されていて、他の時代劇の撮影に流用されているとか。セットの完成度の高さを伺い知ることができるエピソードです。

最後に小ネタを一つ。劇中の新選組の隊服は黒一色で、お馴染みの「誠」の文字が入っただんだら模様の羽織ではありません。一瞬登場するのですが、芹沢鴨一派の発案ということもあって、歳三は袖を通しません。

この隊服については諸説ありますが、大島渚監督の『御法度』(1999)などのように黒い隊服だったという説もあるようです。

まとめ

(C)2020「燃えよ剣」製作委員会

原田眞人監督は戦国時代の終わりを『関ヶ原』で描き、太平洋戦争の終わりを『日本のいちばん長い日』で描きました。

そして、日本の三大転換期の最後として武家政権が終わる幕末を本作『燃えよ剣』で描いています。

時代の転換期と書きましたが、言い換えれば一つの時代の終わりの時といって良いでしょう。

監督が映画を作るのにあたり、ある程度意図しているのでしょうが、どれも“敗れる側”の人間が主人公になっています。

“終わり”を描くためには、“終わっていく者”すなわち“敗れ去る者”目線の心理描写や人間関係を描くと、よりドラマチックな効果が得られますから。

終わっていく側の人間であると自分で認識している人たちが、最後まで覚悟と信念をもって生き抜きますシンプルですが、とても厳しく険しい人生を歩む姿を、映画『燃えよ剣』では見ることができるのです。

映画『燃えよ剣』は近日公開です。

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