Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2023/08/27
Update

映画『卍』(2023)あらすじ感想と評価解説。性愛に翻弄される谷崎文学を新解釈で令和に蘇らせる

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『卍』は2023年9月9日(土)新宿K’s cinema他にて全国順次ロードショー

谷崎潤一郎の不朽の名作を、数々の名作の脚本を手掛けてきた井土紀州監督が現代に蘇らせた映画『卍』が、2023年9月9日(土)新宿K’s cinema他にて全国順次ロードショーとなります。

女性同士が深い性愛にのめりこんでいくさまと、その後男女4人の愛憎が絡み合っていく業を描きます。

主演は『遠くへ、もっと遠くへ』(2022)の新藤まなみと『いずれあなたが知る話』(2023)の小原徳子。

美しい女性ふたりの官能シーンに加え、人間の弱さや苦悩を丁寧に掬い取った描写も大きな見どころとなっています。

映画『卍』の作品情報

(C)2023「卍」製作委員会
【日本公開】
2023年(日本映画)
【原作】
谷崎潤一郎
【監督】
井土紀州
【脚本】
小谷香織
【編集】
桐畑寛
【キャスト】
新藤まなみ、小原徳子、大西信満、黒住尚生、ぶっちゃあ、仁科亜季子
【作品概要】
谷崎潤一郎の不朽の名作を、瀬々敬久監督初期作品で脚本を多く手がけ、近年『溺れるナイフ』(2016)、ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』などのシナリオを手掛ける井土紀州監督が現代に蘇らせました。

セレクトショップを営む人妻がモデルを務める若い女性との性愛に溺れ、その後互いのパートナーを巻き込んでもつれ絡み合っていく業深いさまを描きます。

『遠くへ、もっと遠くへ』(2022)で大胆な性愛シーンを演じた新藤まなみと、『いずれあなたが知る話』(2023)で脚本デビューを果たした小原徳子が主人公を演じています。

女性ふたりに翻弄される男たちを、大西信満と黒住尚生が好演。

映画『卍』のあらすじ

(C)2023「卍」製作委員会

柿内園子は歯科医である夫の孝太郎の支えを得て、服のセレクトショップを経営しています。孝太郎の母から孫をせっつかれながらも、仕事優先でふたりで仲良く暮らしていました。

よいモデルを探していた園子は、孝太郎から光子という若い女性を紹介されます。光子は孝太郎が偶然店に立ち寄って知り合った喫茶店の店員でした。

光子のおかげでショップの売上がよくなり、新企画を立ち上げることにした園子は、さらに光子に協力を頼みます。光子は快く引き受けました。

次第に園子は小悪魔のような光子に魅了されていき、やがて同性愛の関係となります。

そんなある日、園子の前に光子の彼氏と名乗るエイジがやってきました。光子と園子の関係に気付いているエイジは、園子に「光子を2人で共有しよう」と提案します。

一方、孝太郎もまた光子と園子の情事を裏付ける証拠を見つけ出し…。

映画『卍』の感想と評価

(C)2023「卍」製作委員会
性愛に翻弄されずにいられない人間の業をむき出しにする名作、谷崎潤一郎の『卍』を現代に蘇らせた一作です。
歯科医の妻で、セレクトショップを営む凛として美しい園子が、一見天真爛漫で明るく見えながらも小悪魔のような魅力を持つ光子との深い愛欲に溺れていくさまを鮮烈に描きます。

服を着こなせるモデルを探していた園子は、偶然夫の孝太郎がみつけてきた光子を気に入ります。写真の腕がある園子は、自身で光子の姿をファインダー越しに見つめることで、光子の放つ強い輝きに気づきます。

光子にすっかり魅せられた園子は、好意を示されたことをきっかけに、彼女との性愛におちていきます。
濃密な性愛描写に驚かされますが、この描写を避けて人間の業を表現することは不可能であることがよくわかります。体当たりで濡れ場を演じる女優ふたりの姿から、強い覚悟と意気込みを感じられることでしょう。
恋に溺れる園子の表情を小原徳子が見事に体現し、大きな瞳の魔性の女・光子を新藤まなみが魅力たっぷりに演じています。

光子に惚れきっているエイジの哀しさ、妻の浮気をひとり調べてまわる孝太郎の苦悩。やがて、生命力に満ちた魔性の女・光子が台風の目となり、周囲を大きな渦に巻き込んでいきます。

性愛に振り回される人間の弱さに加え、ひとりひとりが抱える孤独や悩み、そこから思わぬ形で立ち直り前へ進んでいくさまが丁寧に映し出されます。

まとめ

(C)2023「卍」製作委員会

女性ふたりが性愛に溺れていくさまを描いた谷崎潤一郎の名作『卍』を、瑞々しい恋愛映画のシナリオを手掛けてきた井土紀州監督が新たに蘇らせました。
あどけなさを残す愛らしさで周囲を虜にしていく魔性の女性・光子と、彼女への苦しいほどの恋に身を焦がす園子。そこに彼女たちを愛する男たちも加わり、誰が悪いわけでもない中、愛憎がもつれあっていくさまは圧巻です。

人間の業の深さを思い知らされる作品となっています。
映画『卍』は2023年9月9日(土)新宿K’s cinema他にて全国順次ロードショーです。




関連記事

ヒューマンドラマ映画

『私にふさわしいホテル』映画原作小説のあらすじネタバレ感想と評価解説。のん主演作は“山の上ホテル”に憧れる作家の下剋上をユニークに活写

作家の下剋上人生を描いた柚木麻子の人気小説が映画化! 作家の新人賞を受賞しながら不遇な道を歩む中島加代子を主人公に、華やかな文壇の裏側を詳細に描いた柚木麻子の小説『私にふさわしいホテル』。 本作を、『 …

ヒューマンドラマ映画

映画『朝が来る』考察と解説。永作博美と井浦新が特別養子縁組を決断する夫婦を熱演

映画『朝が来る』が2020年10月23日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。 世界で高い評価を受け、カンヌ国際映画祭では欠かせない存在となった河瀨直美監督が、直木賞・本屋大賞受賞のベストセラ …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ考察】容疑者Xの献身|泣ける伏線の《ひっかけ問題》達×つまらないが愛おしい日常が導く美しい答えは《未知数で変数な愛》

人生に絶望し、全てを投げ出そうとしていた私を救ってくれたのは、あなたなのですから。 天才物理学者・湯川学が難事件を解決するテレビドラマ「ガリレオ」シリーズの劇場版第1作。作家・東野圭吾による原作小説は …

ヒューマンドラマ映画

のん映画『Ribbon』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。リボンの映像表現は“重苦しく、時にカラフルに降り積もり舞い踊る”彼女の心”

我慢を強いられる時代。 心だけは自由に未来を諦めないで。 女優のんが、自ら監督・脚本・主演を務めた長編映画『Ribbon』。コロナ禍で青春を奪われていく学生たちの悲しみに触れ、「世の中の擦り切れた思い …

ヒューマンドラマ映画

『バカ塗りの娘』あらすじ感想と評価解説。堀田真由が青森の伝統工芸《津軽塗》の美に魅せられた漆器職人を演じる

映画『バカ塗りの娘』は2023年9月1日(金)より全国公開 塗っては研いでを繰り返す青森の伝統工芸・津軽塗を題材に、不器用な女性が津軽塗職人の父との暮らしの中で自身の進む道を見いだしていく姿を描く『バ …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学