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Entry 2019/06/30
Update

映画『新聞記者』あらすじネタバレと感想。結末で見せた松坂桃李の表情に自己の存在を見る思い

  • Writer :
  • 西川ちょり

映画『新聞記者』は、2019年6月28日(金)より全国ロードショー

内閣官房 VS 女性記者。

『サニー 永遠の仲間たち』、『怪しい彼女』などで知られる韓国映画界の至宝シム・ウンギョンと『娼年』、『孤狼の血』など昨今映画俳優として活躍が著しい松坂桃李がダブル主演。

権力とメディアの“今、そこにある危機”を描く、前代未聞のサスペンス・エンタテイメント映画『新聞記者』をご紹介します。

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映画『新聞記者』の作品情報


(C)2019「新聞記者」フィルムパートナーズ

【公開】
2019年公開(日本映画)

【原案】
望月衣塑子『新聞記者』(角川新書)

【監督】
藤井道人

【キャスト】
シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音、郭智博、長田成哉、宮野陽名、高橋努、西田尚美、高橋和也、北村有起哉、田中哲司、望月衣塑子、前川喜平、マーティン・ファクラー

【作品概要】
東京新聞記者・望月衣塑子の同名ベストセラーを原案に、河村光庸が企画/製作/エグゼクティブプロデューサーを担当。『青の帰り道』、『デイアンドナイト』などで知られる藤井道人がメガホンを取り、権力の圧力に抗う新聞記者とエリート官僚の葛藤をサスペンスフルに描いた政治ドラマ。オリジナルストーリーだが、現実を彷彿させる鋭い切口が見もの。


映画『新聞記者』のあらすじとネタバレ


(C)2019「新聞記者」フィルムパートナーズ

ある日、東都新聞あてに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで送られてきました。

内閣府が主導し、民間が運営するという点が通常とは異なっており目を引きました。吉岡エリカは、編集長から誰が送ってきたのか調査するよう命じられます。

彼女は、日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ちましたが、日本の新聞社で働くことを選びました。彼女の父は、優秀な記者でしたが、誤ったスクープをしてしまい、自殺していました。

しかし彼女は父の死の原因は別にあったのではないかと考えていました。父はもっと強い人だったからです。ですが、父の死の原因を明かす証拠は今となってはもう何も残っていませんでした。

帰宅後も、彼女は懸命に仕事に取り組みます。
 
一方、外務省から、内閣情報調査室に移動した官僚・杉原は自身の仕事に疑問をもち始めていました。

外務省では上司の神崎から「誠心誠意、国民に尽くす」という信念を教わり、励んできましたが、ここで与えられる任務は現政権に不都合なニュースのコントロールばかり。

上司の多田はこれが日本のためなのだと述べますが、とてもそうは思えないのです。

首相にべったりの御用作家が起こしたレイプ事件では、被害者の女性が顔出しをし、記者会見を行っていました。

逮捕寸前まで行きながら、加害者は寸前で逮捕をのがれ、担当刑事も事件をはずされるなど、裏で大きな力が動いたとしか思えない事件でした。

被害女性の記者会見に出席した吉岡は、彼女の勇気に奮起して記事を書きますが、紙面に小さく掲載されただけでした。

一方、内閣情報調査室は、被害者女性が、野党議員とつながりがあり、ハニートラップであったという筋書きを作り、多田は、関係者のチャートを作れと杉原に命じます。

嘘をでっちあげることに戸惑いながらも、チャートを作ると、それは内閣情報調査室の手でSNSに投稿され、またたく間に、拡散されていきました。

しかし、どこからかそのチャートが週刊誌に流れ、スクープ記事が出ます。多田は杉原を叱責しますが、彼は多田に言われた人物にチャートを渡しただけで、いわれのないことでした。

愛する妻の出産が迫ったある日、杉原は、久々に神崎と酒を交わす機会を得ました。志を持って仕事をしていたときのことが懐かしく思い出されました。

神埼は5年前、ある事件で一人責任を取らされ、外務省を辞職していました。

そのことに話が及ぶと、神崎は、「実はな、責任を取ったらこれからも面倒を見てやると言われたんだ」と言い、「俺のようにはなるなよ」と自嘲気味につぶやきました。

酔いつぶれた神崎を家まで送って行った杉原に、神崎の妻はなにか言いたげでしたが、言葉を押し殺し、感謝だけを告げました。

しばらくして、神崎が飛び降り自殺したという報が届き、杉原は愕然とします。

そのころ、吉岡は、取材を重ね、大学新設計画に関する極秘情報を送ってきたのは神埼だったのではないかという結論に達していました。

大学新設計画は一旦流れましたが、再度計画が立ち上がった可能性があることもわかってきました。

同僚の記者、倉持は、今度も場所は特区である可能性が強いとにらみ、吉岡に特区の一覧表を作って手渡してくれました。

葬儀に訪れた彼女は、高校生くらいの神埼の娘にマスコミが執拗にマイクを向けているのを見て、「今、その質問が必要ですか!?」と思わず声をかけます。

父親が亡くなったとき、自分自身も同じ目にあったことを彼女は思い出していました。

その様子を見ていた杉原は、吉岡に「君もあちら側の人間だろ?」と尋ねました。

吉岡が「神埼さんが亡くなった本当の理由が知りたいのです。家族を残してまで背負えないものがあったのでしょうか」と言うと、「君には関係のないことだ」と杉原は応えました。

葬儀が一段落したとき、杉原は妻から何度も連絡があったことに気が付き、あわてて病院に駆けつけました。

妻が家で破水し、危ない状態で病院に運ばれましたが、帝王切開を行い、母子ともに命に別状はないということでした。

杉原は眠っている妻を見てほっとすると同時に、悔恨の念にとらわれました。

そんな矢先、杉原は、内閣情報調査室が極秘に神埼をマークしていたことを知り、疑念を抱きます。

一方、吉岡は、編集長から大学新設問題を報道することに政府から圧力がかかっていると聞かされます。吉岡は血相を変え、「だからやめろと言うんですか?」と声を荒げました。

吉岡は杉原に接触し、神崎の死は、大学新設を止めたかったことと関係しているのではないでしょうか、と問いかけます。

「そんなことで死ぬ人じゃない」と答える杉原。吉岡は自身の父のことを告白し、二人の間には、徐々に信頼関係が生まれ始めます。

神埼は新しく立ち上がったという新設大学に関する別の資料を持っているのではないかと二人は考えます。

吉岡は神埼の自宅を尋ね、神埼の妻に一つの絵を見せました。それはサングラスをかけた羊の絵で、資料と共に送られてきたものでした。

妻はそれを見て、一冊のスケッチブックを出してきました。子供のお絵かき帳ですが、その中にそっくりの羊が描かれていました。「それは主人が描いたものです」と妻はいいました。

「神埼さんが私達に資料を託された、その気持に応えたいのです」と吉岡が言うと、妻は鍵の束を出してきて、吉岡を夫の書斎に案内しました。

「家族には見せたくないものでしょうから」と鍵を彼女に手渡すと、妻は部屋を出ていきました。

金庫の鍵をあけると、「DUGWAY SHEEP INCIDENTS」というタイトルの洋書が目に入りました。

ダグウェイとはアメリカのユタ州にある生物兵器の実験場のことで1968年に近隣の羊が大量死するという事件が起き、大問題となったことで知られています。

吉岡と杉原に、東都新聞の編集長も加わり、3人は、内閣府が日本に、生物兵器の設備を持っている大学を作ろうとしているという結論に達します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『新聞記者』ネタバレ・結末の記載がございます。『新聞記者』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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しかし、これだけではまだ記事は書けません。軍事目的という明確な資料が必要です。吉岡は杉原に協力を仰ぎました。

朝早く、杉原は神埼の後任の都築のもとを訪れます。約束をしているので、部屋で待たせてくださいと部屋に入り込むと、資料を探し始めました。

吉岡は出勤の途中の都築を捕まえ、取材と称し、時間稼ぎをします。

新しい大学新設関係の資料を探し出した杉原は一枚、一枚、スマホで撮影をしていきます。時間がありません。

吉岡を振り切った都築が部屋に入ったとき、そこにはもう誰もいませんでした。

妻と娘が退院し、一緒にマンションに帰ってきた杉原は、しばらくの間、覗いていなかった郵便受けの中に神埼からの手紙があったことに気が付きます。

それは、これ以上、生きていけないと綴られた遺書でした。そこには軍事目的の設備が施された大学の認可に自分のはんこが押されていることに対する苦しみが書かれていました。

資料も証拠も揃い、あとは記事を書くだけです。「誤報と言われたら跳ね返せる手段がない」とまだ不安を隠せない編集長に杉原は言いました。「そのときは僕の実名を出してください」

それはいけませんと止める吉岡に杉原は言うのでした。「君なら自分の父親にどうしてほしい?」杉原の表情には固い決意が刻まれていました。

編集長のチェックのもと、ついに吉岡の書いた記事が新聞の一面を飾りました。吉岡は編集長から悪い知らせと良い知らせを聞かされます。

悪い方は、政府が雑誌を使い、死んだ上司のために官僚が暴走したことにして、記事を誤報にしようとしていること、良い方は、大手新聞が、東都新聞のスクープのあとを追い始めていることでした。

「続報として杉原さんの名前を出します」と吉岡は言い、彼のもとへ向かいました。その途中、電話がかかってきます。

電話の主は「あなたがあの記事を書いた吉岡さんですね」と語りかけてきました。

「よく書けている。お父さんにそっくりだ。あなたのお父さんの記事は誤報じゃなかった。でも死んでしまった。残念ですね」

電話の主は多田でした。吉岡は気丈に「わざわざありがとうございました」と言い、電話を切りました。

「これ、お前じゃないよな、お前なわけない」電話を切った多田は顔を赤くして吉岡に問いかけました。

無言の吉岡に向かい、多田はささやきました。「外務省に戻りたいか? しばらく外国に駐在しろ。そのうち、世間は忘れる。そのかわり、今持っている情報はすべて忘れろ」

それでも黙って出ていこうとする杉原の背中に向かって多田は言葉をぶつけました。「杉原、撤回することは恥ずかしいことじゃないぞ。この国の民主主義は形だけでいいんだ」

吉岡は杉原に電話し続けながら、歩き続けていました。一方、杉原の頭には先程の多田の言葉が渦巻いていました。苦悩に満ち、頭を抱える杉原。

横断歩道の向こう側に杉原を認めた吉岡は大きく手を振りました。しかし杉原の顔はげっそりとやつれていました。彼の唇が力なく動き、吉岡は目を見開きました。

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映画『新聞記者』の感想と評価


(C)2019「新聞記者」フィルムパートナーズ

第88回アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』(2015/トム・マッカーシー)や、スピルバーグの『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(2017)、ロブ・ライナー監督作品『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2017)など、アメリカ映画は実際の事件に基づいた新聞記者たちの勇気と正義の物語を数多く制作しています。

また、韓国映画も『タクシー運転手』(2017/チャン・フン)、『1987 ある闘いの真実』(2017/チャン・ジュナン)といった現代史を扱った骨太の政治映画(どちらもジャーナリストが重要な役割を果たしています)をエンターティンメントとして次々に生み出しています

韓国映画では、政府のメディアに対するあからさまな介入とメディア側の抵抗を描いたドキュメンタリー映画『共犯者たち』(2017/チェ・スンホ)という衝撃作もありました。

“忖度”や“同調圧力”という言葉が飛び交う今の日本にあって、こうした社会性のある作品を作るのは難しいのかと常々考えていたのですが、そんな懸念をふっとばす作品が登場しました。

東京新聞・社会部記者、望月衣塑子の同名ベストセラーを原案とした本作は、予想以上にストレートに、日本の政界の暗部と、マスコミ事情に踏み込んでいます。

ここ数年、日本国内を騒がせている現実の政府関連の事件をあからさまに想起させる内容には、よくぞここまで、とエールを送りたい気持ちになりました

カリカチュアされた政治家や、ラスボス的な黒幕といったものを登場させたりはせず、新聞記者と、国家公務員という職業にたずさわる人物に焦点をあてた地に足のついた描き方も好感が持てます

ヒロインたちが仕事に取り組んでいる背景に、原案の望月衣塑子、元文部科学省事務次官の前川喜平、日本在住のアメリカ人ジャーナリスト、マーティン・ファクラーの対談がテレビで放映されているという形で映し出されるのも効果的です。

マスコミ、とりわけテレビ界は政府の言葉を単に伝えるだけの御用機関と成り下がっていることがこの対談内でも語られており、そんな中、メディアとして成すべきことは何かと信念を持って行動する記者たちの姿と、真実を隠蔽しようとする政府側との攻防がスリリングに描かれています。

ヒロイン吉岡に扮するシム・ウンギョンは、『サニー 永遠の仲間たち』(2011/カン・ヒョンチョル)、『怪しい彼女』(2014/ファン・ドンヒョク)など多くのヒット作に出演し、韓国国内でとりわけ評価の高い女優です。

その評価に甘んじることなく、日本に活動を広げ、自身を高めていこうとする姿勢が、本作の父の死を超え真実を伝えるために奮闘する新聞記者の役柄と重なります。

普段の飄々とした表情から、鬼気迫る表情に変わる瞬間が数回あり、説得力ある演技を見せています。

また、エリート官僚である杉原を演じるのは、『娼年』(2018/三浦大輔)、『孤狼の血』と、昨今、映画俳優として活躍が著しい松坂桃李です。官僚としての誇りとは裏腹に意に沿わぬ仕事を強いられる苦しみを繊細に演じています。

終盤、彼が資料を探すため、部屋に忍び込むシーンはスリルとサスペンスに溢れています。また、ラストに彼が見せる苦悩の姿に自分自身を重ねてしまう人も多いのではないでしょうか

内閣情報調査室の多田という男はまさに権力者に忠実な“アイヒマン”そのものであり、田中哲司が淡々と演じていて、実にリアルです

薄暗い部屋にずらりと並んだ職員が、SNSを使って情報操作している様子は、ディストピア的でさえあります。実際、それと似たようなことがおこなわれているということに暗澹たる思いを抱かずにはいられません


まとめ


(C)2019「新聞記者」フィルムパートナーズ

『新聞記者』というタイトルですが、物語は、記者と官僚の対峙と葛藤を描くという構成がとられ、それぞれの立場から真相に近づいていく過程が見どころとなっています。

一方で、新聞記者の面々にもう少しスポットライトがあたってもよかったのでは?という思いもあります。とりわけ、岡山天音扮する正義感のある記者などはもう少し、その活躍を見てみたかったものです。

それでも、一つのスクープを掴むことの並大抵でない様は充分伝わってきました。

したたかな権力者たちに立ち向かっていくことの困難さとそれでも真実を伝えようとする記者たちの姿に誰もがエールを送りたくなるでしょう。

この映画をきっかけに、勇気ある社会派映画がもっともっと制作されることを切に願います


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