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Entry 2021/08/22
Update

映画『シュシュシュの娘』あらすじネタバレと結末感想。入江悠監督が福田沙紀をスーパーヒロインにする

  • Writer :
  • 星野しげみ

映画『シュシュシュの娘』は2021年8月21日(土)より渋谷ユーロスペース他にて順次公開!

映画『シュシュシュの娘』は、『22年目の告白 私が殺人犯です』『AI崩壊』(2020)などで成功を収めている入江悠監督が、出世作の「SR サイタマノラッパー」シリーズ以来9年ぶりに自主映画として手がけた長編作。

ある地方都市の市役所に勤める未宇は、普段からまったく目立たない存在で職場でも孤立しています。そんな彼女の先輩が文書改ざん事件に巻き込まれ自殺します。

未宇の祖父とも親しかった先輩を偲び、未宇は祖父からの頼みも受けて、先輩の仇を取り、市政に一矢報いるため、ひそかに立ち上がることを決意しますが……。

未宇役を「ヤッターマン」の福田沙紀が演じ、吉岡睦雄、根矢涼香、宇野祥平、井浦新らが脇を固めました。

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映画『シュシュシュの娘』の作品情報


(C)Irie Yu

【公開】
2021年(日本映画)

【脚本・監督・製作】
入江悠

【キャスト】
福田沙紀、吉岡睦雄、根矢涼香、宇野祥平、金谷真由美、松澤仁晶、三溝浩二、仗桐安、安田ユウ、山中アラタ、児玉拓郎、白畑真逸、橋野純平、井浦新

【作品情報】
『シュシュシの娘』を手掛けたのは、『22年目の告白 私が殺人犯です』(2017)『AI崩壊』(2020)などで成功を収めている入江悠監督。自主映画を作り、コロナ禍で苦しむ全国のミニシアターを回ろうと、立ち上がりました。

本作は監督自ら出資し、その夢に賛同したクラウドファンディングの支援金と、監督自身がSNSで募集したスタッフ・キャストで製作に臨みました。福田沙紀、吉岡睦雄、根矢涼香ら出演キャストが応募し選出されました。

映画『シュシュシュの娘』のあらすじとネタバレ


(C)Irie Yu

地方都市・福谷市のはずれで暮らす鴉丸未宇25才。

独身の未宇は、寝たきりの祖父・五郎の介護をしながら、市役所に勤めています。朝の日課のダンスと煮込んだちくわをおかずに詰め込んだお弁当を食べるのが楽しみでした。

市内は「移民排除条例」問題で揺れ、排除条例賛成派がほとんどの市役所内で、未宇は孤立しています。

それも、五郎が市長発案のこの条例に反対しているらしいからです。五郎は昔新聞記者だったとかで、この町では数少ない反市長派だったのです。

唯一人の味方は、未宇の先輩・間野浩次でした。

お昼休み、未宇は弁当を持って公園へ行きます。しばらくすると、不動産会社に勤める丹治紗枝子がやって来ました。

2人は小中高の同級生。昼食はいつも2人で公園で食べています。未宇にとっては心安らぐひとときです。

ある日未宇が家に帰ると、間野が訪れていました。間野は家を出て行った未宇の父の同級生で、普段から祖父の五郎のところに来ていました。

しかし、今日の話の内容は深刻そうです。間野は、市役所の公文書の改ざんに加わったというのです。

市長に逆らえず、役人として最低だと自分を責めていました。もう死ぬしかないから最期のお別れに来たという間野。

未宇は話を聞いてしまいましたが、どうすることも出来ずに、帰る間野を見送りました。

次の日、間野は市役所の屋上から飛び降り自殺をしました。

失意の未宇が家に帰ると、五郎までが「主治医からもう数日の命かもしれないと言われた」と言い出します。

そして呆然とする未宇に、「間野が自殺したのは、移民排除条例に絡む公文書改ざんに手を染めたから。改ざんを指示された時、間野は秘かに動画を撮り、誰にも見つからない場所に隠した」と言います。

そして、五郎は先祖代々鴉丸家に伝わる秘密を未宇に告げ、動画を探すように言いました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『シュシュシュの娘』ネタバレ・結末の記載がございます。『シュシュシュの娘』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Irie Yu

祖父・五郎から極秘のミッションを受けた未宇は、間野の自宅へスクーターで向かいます。

一足早く間野の家に行っていた市役所の先輩・牟根田が、遺族の眼を盗んで間野の部屋からUSBを盗み出すのを目撃しました。

後を付けると、牟根田は市長秘書の佐川が乗る車に乗り込みました。USBそっちのけでいちゃつく2人。

隙を見て未宇は、吹き矢で車をパンクさせようとしますが、うまく行きません。

その時、どこからかあらわれた黒装束の男が、未宇から吹き矢を取り上げてもっとうまく吹き矢を使い、車をパンクさせました。

驚いて車から降りた2人を尻目に、車からUSBを取り出した未宇。謎の男はどこかへ行ってしまい、未宇はUSBを持って家に帰ります。

しかしそのUSBはパスワードがないと開きませんでした。

パスワード捜しを考えている未宇に、市役所の上司たちが間野のことを問いただします。

未宇は何も知らないとつっぱね、その日のうちに、間野がよく出入りし、外国人労働者が多く働く高峰産廃へ行きます。

市役所の人間と知ると社長の高峰はおこって未宇を追い返しました。その日の夜、再び高峰産廃へ向かった未宇は、市役所側の自警団が高峰を脅かしているのを目撃します。

そして自警団に見つかって逃げる途中、産廃で働く外国人労働者の男性から、間野さんが隠していたという紙を受け取りました。そこには、パスワードが記入されていました。

自宅で入力してみると、はたして動画は再生でき、文書改ざんの様子がはっきりと録画されていました。

五郎はこの動画をクラウドにあげ、知り合いの記者に見せると言います。

「おじいちゃん、数日の命じゃなかったっけ?」。未宇は不思議に思いましたが、元気ならいいと思い直しました。

以前から声をかけられていた酒屋の司とデートした未宇。

デートから家に帰ると自警団が襲撃したようで、「非国民」の張り紙が玄関に貼られ、五郎が血だらけで倒れていました。USBももちろんありません。奪われたようです。

すぐに未宇は救急車を呼び五郎を入院させて、事情を話しに警察へ。けれども警察は市長の味方でした。

おまけに司とデートしたことを知った丹治紗枝子から、「私の方が先だから取らないで」と怒られ、未宇はさんざんな目に遭いました。

未宇は、病院から祖父を退院させ、自宅で看取りました。そして復讐する決心をしました。

市役所を退職し、山でどっさりキノコと毒草を取ってきた未宇。家でゴリゴリとそれらをすり、粉状になったそれらに液体も混ぜ合わせて、毒々しい色の液状のものを作りました。

そう、紛れもないこれは毒です。未宇は、改良した吹き矢にこの毒を塗っていきます。

夜、未宇は自警団と市役所組が集まっている店へ、スクーターで出かけました。大賑わいの会場で隙をみて、毒付き吹き矢を、シュシュシュと、吹き込んでいきます。

矢に当たった人が次々と倒れ、大騒ぎとなった会場で、各々の携帯には、例の動画がいきなりアップされました。それを見て市長たちはよけいに慌てます。

これは、意外とデジタルネイティブだった五郎が、クラウドにあげた動画が時限式に公開に変わるようにセッティングしていた結果でした。

未宇は有無をいわさず、市長にとどめをさしました。

その後、未宇はスクーターで夜明けの土手を走りますが、スクーターはガス欠で止まってしまいます。

仕方なく歩き出したその耳元で「真の悪党は表に出ずにほくそ笑む。油断すんな」と五郎の声がしました。

その時、土手の先に黒装束の謎の男があらわれました。その正体は酒屋の司。しかも、はっきりと「俺は体制側だ」と言います。

未宇は何も言わず、吹き矢で司の眼をいぬき、股間に回し蹴りをします。

土手から転げ落ちる司を見届け、朝日が昇り始めた土手を、未宇はぐんぐんと一人で歩いて行きました。

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映画『シュシュシュの娘』の感想と評価


(C)Irie Yu

本作『シュシュシュの娘』は勧善懲悪の典型的な物語。

祖父と二人暮らしの未宇に訪れる突然の父の友人・間野の死。その原因は祖父が反対している「移民排除条例」の文書改ざんによるものでした。

文書改ざんの証拠となるデータを巡って未宇は否応なしに、どす黒い政治の戦争渦中に放り出されます。

しかし、ただ論争や暴力行為だけの争いにしないのが、入江悠監督の上手いところ……。

五郎がある秘策を未宇に授けることによって、未宇を地方都市のスーパーヒロインにさせました。ヒロインの武器は吹き矢。その大きな特技は「気配がないこと」。

私ってそうだったの? 自分の正体に驚く未宇ですが、そのことが‟夜明けの行灯”状態だった未宇を奮い立たせます

IT技術の進んだ現代で、市政の悪を正し、亡き人の汚名を晴らす

復讐に燃える未宇は、下を向いてばかりいた以前の未宇とは全くの別人でした。

美味しそうなちくわの煮物入り弁当が登場し、未宇を演じる福田沙紀のキレッキレのダンスやアップテンポな曲も作中流れ、終始明るい気分にさせてくれました。

ラストに待ち受ける結末は当然と思いながらも、潔い未宇の態度に爽快感もヒートアップ! 

全世界の悪と言える出来事にもこんな天罰が下れば良いと思うことでしょう。

まとめ


(C)Irie Yu

映画『シュシュシュの娘』は、『22年目の告白 私が殺人犯です』『AI崩壊』などを世にだした入江悠監督の9年ぶりとなる自主映画です。

全国のミニシアターが苦境に立たされたのを目の当たりにし、自主映画を作って全国のミニシアターを回ろうと監督は決意したと言います。

監督自らの出資、夢に賛同したクラウドファンディングの支援金、SNSで募集したスタッフ・キャストたち。

みなの一途な想いが結集して、ミニシアター支援計画の本作が完成しました。

ストーリーの面白みも当然ながら、ロケ地埼玉の川辺の自然の美しさも余すところなく映し出され、地味なちくわの煮物がとても美味しそうな作品です。


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