映画『きまぐれ』は、2024年3月15日(金)よりシモキタ-エキマエ-シネマ『K2』ほか全国順次公開
『この日々が凪いだら』(2021)、『ストレージマン』(2022)の瀬戸かほが初プロデュースを手掛け、主演を務めました。
監督は、『クレマチスの窓辺』(2022)で瀬戸かほと共演した永岡俊幸。
『クレマチスの窓辺』(2022)に出演したミネオショウや、『Winny』(2023)の内田周作、『カランコエの花』(2018)の石本径代など個性的な俳優が顔を揃えました。
親戚の結婚式にやってきた岩田家。
長女・桃子(瀬戸かほ)は結婚を控え、次女・桜子(櫻井成美)は留学を考え、そして母は離婚を考えていました。
思い思い悩みを抱えながらきまぐれにどこかへ行ってしまうなか、1人宿に残された父。家族旅行の向かう先とは……。
映画『きまぐれ』の作品情報
【日本公開】
2024年(日本映画)
【監督】
永岡俊幸
【原案】
瀬戸かほ
【脚本】
永岡俊幸、瀬戸かほ
【キャスト】
瀬戸かほ、内田周作、石本径代、櫻井成美、二見悠、ミネオショウ
【作品概要】
『この日々が凪いだら』(2021)、『ストレージマン』(2022)の瀬戸かほが原案と主演を務め、初プロデュースを手掛けました。監督は、『クレマチスの窓辺』(2022)で瀬戸かほと共演した永岡俊幸が務めました。
瀬戸かほが長女役を務め、父親役には、『Winny』(2023)など多数の舞台や映画に出演する内田周作、母親役には、舞台出演を経て『ぼくらのさいご』(2016)で映画デビューした石本径代。
他のキャストには、『クレマチスの窓辺』(2022)のミネオショウや、『犬も食わねどチャーリーは笑う』(2022)の櫻井成美、『もみの家』(2020)の二見悠が顔を揃えました。
映画『きまぐれ』のあらすじ
親戚の結婚式にやってきた岩田家。
「多分これで最後かな、家族旅行は」と父・智(内田周作)は言います。
長女の桃子(瀬戸かほ)は、結婚を控えており、次女の桜子(櫻井成美)は海外への留学を考えていますが、桃子はお金もなく現実的ではない桜子の留学には反対しています。
桃子と言い争いになった桜子はふらりとどこかへ出かけ、桃子もまた街をふらついています。桃子と桜子はそれぞれ街で不思議な出会いをします。
母・和美(石本径代)もまた、父に離婚を告げふらりと街へ出ていってしまいます。1人残される父と、きまぐれに彷徨う女たち……。
それぞれ思いを抱えた家族の行き着く先とは。
映画『きまぐれ』の感想と評価
それぞれが抱えているもの、不思議な出会い、そしてどこか軽くなるようなラストへ……と25分という短い時間の中に家族のドラマがぎゅっと詰まった映画『きまぐれ』。
題の通り、母、長女・桃子、次女・桜子はきまぐれに街を彷徨っていく一方で、1人宿で酒を飲む父。
彷徨い不思議な出会いを果たす3人の姿は、旅先という非日常ならではのユーモアが感じられます。
長女・桃子が出会うのは、婚約者そっくりのキザでくせのある男性。桃子は、桜子の留学を反対している姿や、父に何か言おうとしている姿から本来は慎重で、あまりふらりと気ままに出かけるようなタイプではない印象を受けます。
桜子と言い争いになり、気持ちを落ち着かせる、気分転換のために桃子は、宿に戻らず街に出たのではないでしょうか。
一方で、桃子と対照的なのが桜子です。「私なりに考えているから大丈夫」と留学について話していますが、桃子が言う通りきちんとした計画を立てているのではなく、漠然と留学に行こうとしているのでしょう。
気になったことには真っ直ぐ飛び込む、桃子の慎重さとは違う直感的な性格だと思われます。だからこそ、ふと目に止まったフラメンコ教室に入っていくのです。
母の和美は離婚を考えており、その背景には仕事人間で母に興味を持とうとしない父の姿が浮かび上がってきます。もしかすると離婚自体も本気というよりは、父を試したかったのかもしれません。
それぞれが思い思い何かを抱えていて、“最後の家族旅行になる”と感じています。旅という非日常感が、悩みをふっと軽くさせ一歩前に進ませてくれるような心地よさを感じさせるのです。
多くを語らず家族の日常会話を見ているだけで、きっとこういう事情なのだろう…と感じさせるリアルさと同時に、旅先での婚約者にそっくりな人物との出会いや、フラメンコ教室などはマジカルで映画的な展開といえます。
そんなマジカルさも受け入れられてしまうのは、旅先という非日常感なのでしょう。共感してしまう家族の姿や、背中を押してくれるような開放感が印象的な一作です。
まとめ
『クレマチスの窓辺』(2022)で瀬戸かほとタッグを組んだ永岡俊幸が映画『きまぐれ』においても監督を務めています。
『クレマチスの窓辺』(2022)は、瀬戸かほ演じる東京育ちの女性が、島根県松江市で過ごした一週間を描いた映画でした。
ローカルな松江市の長閑な風景を温かみを持って映し出し、ふとした出会いや主人公の心の機敏を繊細に映し取っていました。その温かみと繊細さは映画『きまぐれ』においても感じられます。
旅先という非日常感の中にある等身大の人々の姿には軽さも感じられます。
描き方によっては深刻になりそうな悩みも軽さを持って描くことで、誰しもが色んなことを抱えながら生きているけれど、ふとしたことで前向きにもなれることを感じさせてくれます。
きまぐれにどこかへ行ってみたくなるような心地よさを感じるでしょう。