Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2021/12/28
Update

『ハケンアニメ!』映画化原作のあらすじネタバレと感想評価。アニメ業界の覇権バトルにラブも加わる熱血エンターテインメント

  • Writer :
  • 星野しげみ

辻村深月の小説『ハケンアニメ!』が2022年5月に実写映画化!

直木賞作家・辻村深月がアニメ業界で奮闘する人々の姿を描いた小説『ハケンアニメ!』。

さまざまな役割のスタッフの中、監督・プロデューサー・アニメーターの女性たちの活躍と葛藤、最も成功したアニメの称号である「ハケン=覇権」を取るための熾烈な争いが浮き彫りにされます。

アニメ業界にメスをいれたオシゴト小説ともいうべき『ハケンアニメ!』を、『水曜日が消えた』(2020)の吉野耕平監督が映画化しました。

2022年5月20日(金)の映画公開に先駆けて、小説『ハケンアニメ!』をネタバレ有でご紹介します。

小説『ハケンアニメ!』の主な登場人物

【有科香屋子】(映画では尾野真千子)
『運命戦線リデルライト(仮)』の製作プロデューサー。王子監督に憧れて業界入りをする。

【王子千晴】(映画では中村倫也)
『運命戦線リデルライト(仮)』監督。

【斎藤瞳】(映画では吉岡里帆)
『サウンドバック 奏の石』監督。法学部出身のキレ者。

【行城理】(映画では柄本佑)
『サウンドバック 奏の石』のプロデューサー。

【並澤和奈】(映画では小野花梨)
作画スタジオ「ファインガーデンのアニメーター。選永市町おこしイベントに協力する。

【宗森周平】(映画では工藤阿須加)
新潟県選永市観光課職員。町おこしイベントに熱中する。

小説『ハケンアニメ!』のあらすじとネタバレ


『ハケンアニメ!』(マガジンハウス 2014年)

「どうしてアニメ業界に入ったんですか」という質問に、「アニメが好きだから」と答える有科香屋子。

香屋子は、アニメ『運命戦線リデルライト(仮)』の製作プロデューサー。10年前に放映された伝説的アニメ『光のヨスガ』を見てアニメ業界に入ることを決意しました。

『光のヨスガ』の監督である弱冠24歳の王子千晴と一緒に仕事がしたい、その一心で飛び込んだ職場が「スタジオえっじ」でした。

『運命戦線リデルライト(仮)』は『光のヨスガ』以来となる王子を監督に迎えてのアニメですが、制作途中でその王子が失踪していました。

出来上がったストックは3話目までしかなく、王子の代わりは誰にも務まりません。そんな中、香屋子は王子の不在を悟らせないよう駆けずり回っていました。

もうこれ以上は待てないと思ったとき、香屋子の前に王子が帰ってきました。

旅行に行っていたと言う王子ですが、その後、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら一人で自宅にこもって、必死でシナリオを仕上げていたことがわかりました。

放映されたアニメ『リデルライト』の評判は抜群! その『リデルライト』とアニメ業界の覇権を争うアニメが『サウンドバック 奏の石』でした。

アニメ『サウンドバック 奏の石』は、アニメ制作の大手トウケイ動画の作品です。

ここで働く斎藤瞳は、有名大学の法学部を卒業しながらアニメ業界に飛び込んだという変わり種。「どうしてアニメ業界に入ったんですか」という質問をされると、瞳は「アニメの魅力に憑りつかれたからかなあ」と考えます。

飛び込んだ業界ではその能力を買われ、これまでの功績でやりたくてたまらなかったロボット少年ものシリーズの企画が通りました。

自らが企画した『サウンドバック 奏の石』ですが、放映時間は『リデルライト』の深夜帯とは違い夕方枠土曜5時のアニメであるため、倫理委員会もPTAも相手にしなければなりません。

リデルライトの製作シーンと対比されるかのように、現場で戦う瞳。出演する声優たちも思うようになりません。

瞳と衝突し現場から飛び出していく声優も後を絶たず、追いかけるプロデューサーの行城理は必死。各話演出・作画監督・脚本化・シリーズ構成と、打ち合わせに結論がまとまらずに夜通しかかることもしばしばです。

瞳は無駄な打ち合わせじゃないかという思いが顔に出てしまいます。そこでも「天才肌の斎藤さんには無駄に見えることでも、現場には必要なことってあるんですよ」と両者のフォローに入る行城。

多数の仕事を抱え、みんなにいい顔をしているように見える行城は、顔の広さを生かして瞳をサポートします。

やがて瞳は、行城がみんなが気持ちよく仕事ができるよう細やかに配慮していることに気付き、スタッフが行城の悪口を話しているところを見つけた際も一喝します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『ハケンアニメ!』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『ハケンアニメ!』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

東京で、アニメのライバル同士の会社が覇権争いに火花を散らしている頃、新潟の選氷市でも一人の女性がアニメの世界にのめり込んでいました。

「どうしてアニメ業界に入ったんですか」という質問に「絵を描くのが好きだから」と答える、並澤和奈。彼女は絵を描きたい一心でアニメ業界に入り、アニメ原画スタジオファインガーデンの社長に誘われて、東京から新潟に居を移して仕事をしていました。

たまたまファインガーデンを訪れた東京のフィギュア制作会社の社員と仲良くなり、休暇でデートのために東京に行ったときに、行城と知り合いました。

新潟県で自宅とスタジオを往復する毎日でしたが、ファインガーデンのある選永市観光課の宗森周平と関わっていくことで日常が変化していきます。

仕事場と自宅の往復で和奈は気づいていませんでしたが、サウンドバックの斎藤監督はアニメで登場する町のモデルに選永を使っていました。

あちらこちらに名シーンの聖地があるので、宗森とスタンプラリーを企画することになりました。

地元の祭りでもサウンドバックのイラストを入れた舟を作って、舟下りという一番のイベントで観光客にも見てもらおうとしますが、地元商工会の反対に会います。

そこを無理やりねじ込んだんでくれたアニメに理解のある副理事長がいたりとか、様々な人々の協力があり、行城の手配もあって祭りの日に主要スタッフが勢ぞろいしました。

宗森も自分が知るアニメ関係者と言うことで、東京にいる高校の先輩に声をかけると言います。

当日現れた宗森の先輩は、なんと王子でした。王子の父親は、アニメに理解のある副理事長だったのです。

お祭りが大成功した後日談ですが、斎藤瞳はトウケイ動画をやめて別のアニメ制作会社へ行くことになりました。

今期のハケンアニメとなったのは、前評判の良かった『運命戦線リデルライト』でも『サウンドバック 奏の石』でもありません。『サマーラウンジ・セピアガール』でした。

しかし、『サウンドバック 奏の石』はパッケージの売り上げで2位、おもちゃの売れ行きも上場。『運命戦線リデルライト』は、誰もが今季一番面白かったアニメとして挙げるという結果を得ました。

今期のアニメが終われば次のアニメへ。

抜き差しならない関係だった王子と行城がタッグを組んで、春休みアニメ映画を製作することになり、作画監督として並澤和奈が抜擢されます。

小説『ハケンアニメ!』の感想と評価

タイトルの「ハケン」は「派遣」ではなく、「覇権」の意味です。『ハケンアニメ!』は、お仕事小説としてアニメ業界を辛辣に描き出しています。

3人の女性たちはこの業界に入った理由を聞かれると、アニメが好きだからとかあいまいな答えをしました。ですが、実際はそんなに甘いものではありません。

売れるアニメ作品を世に出して、アニメ界のてっぺんを取るという、熾烈な覇権争いのある世界でした。

何も知らずに好きなことだからと飛び込んだ彼女たちは、それぞれ監督・プロデューサー・アニメーターとして自分の天分を極めるように活躍します。

勿論そこには、恋愛感情もあれば人間関係の不協和音もあり、彼女たちが関わった3つのアニメ作品のどれがその年の覇権を取るのか、とても興味深く読めました。

災い転じて福となる。どうなることかと冷や冷やさせながらも、みごとに丸く納めるストーリー展開は、流石に直木賞作家です。好きな仕事に没頭する主人公たちに共感を覚える作品でした。

映画『ハケンアニメ!』の見どころ


(C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

原作小説では、プロデューサーの有科香屋子と天才監督・王子千晴の仕事ぶりを中心に描かれています

映画では新人監督の斎藤瞳にスポットをあて、アニメ業界で声優との意見の食い違いに泣かされ、クセ者敏腕プロデューサー・行城理に振り回されながらも、成長していく姿が見られます。

アニメが持つ力を信じ、チャンスを掴んだ吉岡里帆演じる新人監督・斎藤瞳と、中村倫也演じる崖っぷちの天才監督・王子千晴との覇権争いの仕事ぶりが見ものでしょう。

映画のアニメ監修に東映アニメーション、制作にはProduction I.Gをはじめ、日本を代表するアニメプロダクションも参加したという映画『ハケンアニメ!』。

原作が醸し出す、自分の好きなものに対するまっすぐに向き合う人々の眩しい生き様や、覇権を狙う新旧監督の一騎打ちがより深く描かれるであろうと、期待が高まります

映画『ハケンアニメ!』の作品情報


(C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

【公開】
2022年公開(日本映画)

【原作】
辻村深月:『ハケンアニメ!』(マガジンハウス)

【脚本】
政池洋佑

【監督】
吉野耕平

【キャスト】
吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子、工藤阿須加、小野花梨、

まとめ

朝が来る』(2020)や『太陽の座る場所』(2014)『ツナグ』(2012)など、映画化された辻村作品にまたひとつ、熱血エンターテイメントの『ハケンアニメ!』が加わります。

アニメ監修には東映アニメーション、制作にはProduction I.Gをはじめ、日本を代表するアニメプロダクションが参加したそうですから、アニメファンにはたまらない映画となるでしょう。

また、アニメ業界を徹底的に研究したと思われる辻村深月の原作を、よりリアルにライバルたちのぶつかり合いを演じるキャスト陣も見ものです。

熱いバトルのその先にあるものは果たして何なのでしょう。2022年5月の映画公開が待たれます。





関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『焼肉ドラゴン』あらすじとキャスト。主演の真木よう子の演技力は?

映画『焼肉ドラゴン』は、6月22日(金)より全国ロードショー! 2008年に初演された日本の新国立劇場と、韓国の芸術の殿堂によるコラボ舞台劇「焼肉ドラゴン」。劇作者の鄭義信が自らメガホンを取り映画化! …

ヒューマンドラマ映画

映画『デトロイト』あらすじとキャスト。キャスリン・ビグロー紹介も

映画『デトロイト』は、2018年1月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開! 本作の演出を務めたのは、第82回アカデミー監督賞を受賞した『ハート・ロッカー』や、ボストン、シカゴ、ニュー …

ヒューマンドラマ映画

映画『ミセス・ノイズィ』予告編/上映館。騒音おばさんのラストのセリフまで見逃せないご近所バトルとは!?

第32回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門上映作品。 第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門にて上映され、“隣人トラブル”からマスコミやネット社会を巻き込んで大きな騒動へ広がっていくとい …

ヒューマンドラマ映画

映画『まく子』あらすじネタバレと感想。山崎光と草なぎ剛が親子役を演じた“通過儀礼の少年”物語

映画『まく子』は3月15日(金)より、テアトル新宿ほか全国公開! 直木賞受賞作家西加奈子の同題小説の映画化した作品。 自分の成長を受け入れられない少年と、そこに現れた不思議な転校生の少女との“通過儀礼 …

ヒューマンドラマ映画

『ニーゼと光のアトリエ』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

2018年4月15日に東京・吉祥寺に新たな映画館を開館する「ココロヲ・動かす・映画館○」。 ディズニーランドのような“映画版アミューズメント”を目指したミニシアター&シネマカフェのオープンに …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学