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Entry 2025/05/28
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『アスファルト・シティ』あらすじ感想と評価レビュー。ショーン・ペンとタイ・シェリダンのタッグで描く現代アメリカ医療制度の闇

  • Writer :
  • 桂伸也

2025年6月27日(土)より、映画『アスファルト・シティ』は新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!

アメリカ・ニューヨークにおける救急医療の光景より、その現場に携わる人たちの生々しい姿を追ったドラマ『アスファルト・シティ』。

元救急救命士の経験を持つ作家シャノン・バークが実話に基づき描いた小説を、フランス出身のジャン=ステファーヌ・ソヴェールが映画化。

メインキャストにベテラン俳優のショーン・ペン、実力派のタイ・シェリダンというタッグが名を連ねた本作は、2023年第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されました。

映画『アスファルト・シティ』の作品情報


(C)2023 BF MOVIE LLC. All Rights Reserved.

【日本公開】
2025年(アメリカ映画)

【原題】
Asphalt City

【監督】
ジャン=ステファーヌ・ソベール

【出演】
ショーン・ペン、タイ・シェリダン、ベンガ・アキナベ、ケイリー・リース、マイケル・カルメン・ピット、キャサリン・ウォーターストン、マイク・タイソンほか

【作品概要】
作家シャノン・バークによる小説をもとに、救命士、患者ともに生死の極限の境に存在する過酷な状況に置かれた救急医療現場における姿を追ったドラマ。

『ジョニー・マッド・ドッグ』(2008)『暁に祈れ』(2017)を手がけたフランス出身のジャン=ステファーヌ・ソベール監督が作品を手がけました。メインキャストには『ミスティック・リバー』(2003)などのショーン・ペン、『レディ・プレイヤー1』(2018)のタイ・シェリダンが名を連ねています。

他のキャストには2016年からの「ファンタスティック・ビースト」シリーズのキャサリン・ウォーターストン、『ラストデイズ』(2013)のマイケル・ピットらとともに、撮影場所の同地区出身という繋がりより元プロボクサーのマイク・タイソンが出演を果たしています。



映画『アスファルト・シティ』のあらすじ


(C)2023 BF MOVIE LLC. All Rights Reserved.

アメリカ・ニューヨークに位置するスラム街・ハーレム。大学医学部入学を目指し勉学に励むクロスはその傍ら、金を稼ぐためにこの地区で新人救急救命隊員として働きはじめます。

新人として慣れない仕事についたクロスでしたが、腕利きのベテラン隊員ラットとバディを組み、当初は厳しい実地指導を受けながら、犯罪をはじめとしたさまざまな街の問題に直面し、自分の無力さをまざまざと実感させられていきます。

そんな中、妊娠している女性が自宅で出産しそうだとの通報を受けて二人は出動。

現地に到着すると女性はすでに早産しており、生まれ出た新生児への処置をめぐり、クロスとラットの人生に大きな異変が現れるのでした。

映画『アスファルト・シティ』の感想と評価


(C)2023 BF MOVIE LLC. All Rights Reserved.

本編はいわゆる救命士と呼ばれる人たちの生きざまを追った物語。大ヒットドラマ『シカゴ・ファイア』などで描かれる、人命を救うべく文字通り「命がけ」で向き合う人々に対し、本作に登場する救命士たちの姿は、どこか異なる視点でこの職業の核心に迫っています。

一刻を争う生命の危機に瀕した人を救うべく立ち向かう彼らの姿は、まさに先述のドラマで描かれる強い思い、人を救いたいと懸命に戦う様子を見せますが、一方で時々に現れる彼らの振る舞いには、救命士という仕事の意味を改めて考えさせられるものとなっています。

特に物語のクライマックスで起こるハプニング、新生児への対処をめぐり発生する問題の場面は「果たして盲目的に人命を救うために懸命になる行為は正しいのか」と、究極的な難題を見る者に突き付けてきます。

それはハーレムという場所を、この物語の舞台にしていることも起因しているといえるでしょう。

かつては犯罪都市の代名詞と呼ばれたアメリカ・ニューヨーク。その様相は特にハーレムと呼ばれる地区で蔓延していましたが、1990年に的な治安改善政策が行われたことで環境は改善。さらに2000年代になると街は再開発が進み、現代では高級ブランドのショップまでもが立ち並ぶような街並みが現れています。


(C)2023 BF MOVIE LLC. All Rights Reserved.

しかし、ここではその環境改善がまだ進んでいない状況にスポットを当て、物語を展開させています。

時代的にハーレムは環境改善が進んでいる一方で、この物語で救命士たちに助けられようとしている人物たちは、いまだ不遇の生活を余儀なくされている人たちばかり。

緊急救命をされ一命をとりとめても、果たして以後そこに生きがいはあるのか?と絶望的な未来を抱えた人ばかりが、本編では見るのもつらくなるような姿を表していきます。

一方でショーン・ペン演じるマウスはいわゆる「9.11」、2001年のアメリカ同時多発テロ事件での救命を経験し、心に深いトラウマを抱えながら生きている男性。

当時は過酷な状況の中で多くの生死のはざまと向き合い、ある救命士は自身の生命の危機にも陥ったといわれており、彼の生死という感覚も、一般的な感覚と比較して歪みが生じている可能性も否定できません。

そこには「果たして彼の考えは本当に間違っているのか?」「あるいは通例とされている状況に矛盾があるのではないか?」と、「普通」「慣習」が疑わしく思われるような光景が浮かび上がってきます。

監督のジャン=ステファーヌ・ソベールは、作家シャノン・バークの原作小説を映像化するにあたり、「現代」を描くために元の物語からいくつか大きな変更を加えていることを明かしています。

その一つに本作で救命士たちをむしばむ要因や要素として、もともとクラック・コカインを用いていたものを、本作では「崩壊した医療制度」に変更し、「クラックが多くのコミュニティに害を及ぼしたのと同じく、アメリカの医療制度が社会的暴力の一つであることを追求したかった」と明かしています。


(C)2023 BF MOVIE LLC. All Rights Reserved.

その意味では、本作はソベール監督の主張する問題点とともに救命士という仕事を主点として、その存在意義を改めて考えさせられるような物語であるといえるでしょう。

タイ・シェリダンが演じる主人公は、もともと自身が意思になるべく勉学に励み、一方でお金を稼ぐために救命士という仕事を選びます。

当初の彼はまさにアルバイト感覚。現場でどのような立ち振る舞いをしてよいかもわからず、仲間からは使えない奴だと罵声を浴びせられてしまいます。

しかし相棒となるマウスとともにさまざまな現場を経験し、時に衝突しながらも生死のはざまを目の当たりにしていくことで成長し、多くの疑問とともに救命士の仕事に自分自身なりの意味を見出していきます。

ラストへの展開はかなりショッキングに感じられるシーンもありますが、それは物語の論点が非常にシリアスなものであり、多くの人が深く考えていくべき問題であるという意味の表れであるともいえるでしょう。

物語冒頭からエンディングにかけて、繊細に変化を表しているシェリダンの表情は、その秀逸な演技で作品の強いメッセージを表しています。

まとめ


(C)2023 BF MOVIE LLC. All Rights Reserved.

本作は全編ブルックリンでの撮影を敢行。本編で映し出される街並み、特にエンドロールで見られる街の風景は、煤けた建物のあちこちにグラフィティと呼ばれる落書きが見られ、「街の浄化」とは程遠い光景を見せていたハーレムの街並みを描いています。

エンドロールでは特にこの光景をピックアップして映し出しているのですが、この薄汚れた街並みの雰囲気は本作が提起するポイントを浮き彫りにする要素として、印象的に機能しているものであります。

一方、本作ではメインキャストの一人として活躍しているショーン・ペンの存在感も要注目。かつてはイケメン俳優的にデビューした彼ですが、その表情は同年期のダスティ・ホフマンを想起する人もいるのではないでしょうか。円熟味を増した本作における彼のたたずまいは作品に安定感をもたらしており、本作の見どころの一つともいえるでしょう。

映画『アスファルト・シティ』は2025年6月27日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!





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