「イエス」と言い続けた男の起こした奇跡とは?
『マスク』(1995)、『トゥルーマン・ショー』(1998)の人気俳優ジム・キャリー主演のコメディ映画『イエスマン! YESは人生のパスワード』。
『アントマン』(2015)のペイトン・リード監督が、人生をポジティブに変えるユニークなアイデアを盛り込み、「ノー」といわずにすべてを肯定する主人公を楽しく描き出します。
何もかも断って生きてきた変わり者が、すべてに対して「イエス」と答えるようになったことで人生が変わっていく様をコミカルに描いた本作。
彼が最後に得たものとは、何だったのでしょうか。名優ジム・キャリーによる笑いたっぷりの名作の魅力についてご紹介します。
CONTENTS
映画『イエスマン! YESは人生のパスワード』の作品情報
【公開】
2008年(アメリカ・イギリス合作映画)
【原作】
ダニー・ウォレス
【監督】
ペイトン・リード
【脚本】
ニコラス・ストーラー、ジャレッド・ポール、アンドリュー・モーゲル
【編集】
ロバート・D・イェーマン
【キャスト】
ジム・キャリー、ズーイー・デシャネル、ブラッドリー・クーパー、リス・ダービー、ジョン・マイケル・ヒギンズ、ダニー・マスターソン、テレンス・スタンプ
【作品概要】
「ノー」が口癖だった主人公が、すべてを肯定してポジティブに生きていこうとする様をコミカルに描くハートフルコメディ。監督は『アントマン』(2015)のペイトン・リード。
主人公カールを演じたのは、『マスク』(1995)、『トゥルーマン・ショー』(1998)で知られる人気俳優ジム・キャリー。
カールの恋人アリソン役には、『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007)のズーイー・デシャネル。また「イエス」と言う大切さを教えるセミナーの代表テレンスを演じる、『コレクター』(1965)の名優テレンス・スタンプにも注目です。
映画『イエスマン! YESは人生のパスワード』のあらすじとネタバレ
何に対しても「ノー」ばかり言って生きてきた銀行員のカールは、友人のピーターから無理やり飲み会に誘われ、婚約を報告されます。そこで恋人と一緒にいた元妻のステファニーとばったり出くわした彼は、挨拶もそこそこに逃げ出しました。
そんなカールは、上司のノーマンから昇進の話がなくなったことを伝えられます。
その後、久しぶりに会った友人のニックから「イエスマン」になって人生が変わったと聞かされるカール。ニックは「イエスは人生のパスワード」と書かれたセミナーの冊子を渡し、人生が楽しくなると話します。
婚約パーティーがあることを忘れていたカールに怒るピーター。カールはその後、自分が孤独死する夢を見て不安になり、セミナーに向かいます。
大ホールに集まった人々の前に、代表のテレンスが現れました。彼は「イエス」の可能性について説き始め、初参加したカールの目の前に座ると、これからはイエスとだけ答えるよう誓約させます。
会場を出たカールはホームレスに「車に乗せてほしい」と頼まれます。躊躇はしたものの、近くにニックがいたため、つい「イエス」と答えてしまいました。
携帯の電池がなくなるまで使わせてやり、言われるままに有り金までやったカールでしたが、ホームレスを下ろした直後に車はガス欠になってしまいます。
ガソリンスタンドまで歩いていき、ポリタンクにガソリンを買って車へと戻ろうとしたカールは、そこで美しい女性と出会いました。
彼女のスクーターの後ろに乗せてもらい楽しく走った後、キスまでしてもらえたカールは久しぶりに思わず笑顔になります。
映画『イエスマン! YESは人生のパスワード』の感想と評価
「イエス」は果たして正解なのか?
名コメディアンのジム・キャリーが大活躍する、小ネタ満載の楽しいコメディな本作。いつも誘いを片っ端から断ってきた主人公のカールが、怪しげなセミナー受講をきっかけに何に対してもイエスと答えるようになったことで人生が変わっていくさまをユーモラスに描きます。
「イエス」を言うことで世界が変わるというのは、確かに真実でしょう。いつも「ノー」の返事をする人より、気持ちよく仕事を受けてくれる人を誰でも頼りたくなるものですから。
「イエス」と答えれば周囲の人に喜ばれることが増えて、自分も嬉しくなります。カールにとって「イエス」と答えることは、一種の麻薬のようなものでした。
その一方で、何でも「イエス」と言う人ほど都合よく使われてしまうのもまた真実です。「考えなしにただイエスと答えるだけではだめですよ」というのが作品のテーマとなっています。
しかし、カールに関しては「なんでも『イエス』と答えなさい」というのは名アドバイスだったと言えるかもしれません。それまでの彼は何に対しても「ノー」ばかり。友人の誘いも断ってばかりで、毎日少しも楽しそうではなかったのですから。
カールに「イエス」の重要性を教える代表テレンスを演じる『コレクター』(1965)の名優テレンス・スタンプの弾けっぷりには思わず笑ってしまいます。
気の毒なのは、「ノー」を言った後にいろいろな痛い目に遭ってしまったことから、「イエス」と言わないと罰が当たるというテレンスの言葉をカールが信じてしまったこと。これは「教義を守らないと地獄に落ちる」というカルトの刷り込みに似ています。とても恐ろしい落とし穴です。
しかし、ステファニーの誘いに対して「ノー」をはっきり言えたことがカールにとっての分岐点となりました。エレベーターが壊れ、車が駐禁をとられても、彼は意志を変えませんでした。彼は「イエス」と口にすることの怖さや、答える前にしっかり考えることの大切さに気付いたのです。
紆余曲折の末、「イエス」と答えることの意味を正しくとらえたカールは、セミナー参加者からホームレスたちへの寄付を募ります。すると「イエス」の信奉者たちは身に着けている衣類まで寄付し、素っ裸になってしまうという、とてもシニカルなラストとなっています。
なにも考えず「イエス」と答えるのはただの愚かな行為であることを、カールは身を持って学んだのでした。
甘酸っぱい純愛ストーリー
本作は、胸キュンの純愛物語でもあります。
カールの恋の相手アリソンはとても素敵な女性で、「ジョギングフォト」という教室を持っています。その名の通り走りながら写真を撮る活動であり、写真は当然ながらブレたものがほとんどですが、アリソンはそういう写真にこそ魅力を感じる人で、だからこそ予測不能な動きをするカールに心惹かれていきます。
ふたりでこっそり野外コンサート会場にもぐりこむ場面は、遅れてきた青春のような甘酸っぱさに満ちています。そこで交わすキスシーンにキュンキュンする方もきっと多いことでしょう。
ライブで歌ったり、絵を描いたり、ボランティア活動をしたりと、さまざまなことに興味のあるアリソンが言います。
「この世は遊び場よ。子どものころは知ってたのにみんな忘れちゃう。」本当にぐっとくるセリフです。
ふたりでアドリブ旅行した先でも、彼女は素敵な言葉をカールに贈ります。「愛しちゃったみたい。ずっと好きだったけど、いま愛に変わった。」と。
「一緒に住みたい」という言葉をカールは受け入れましたが、その後、彼が何に対してもイエスと答えると決めていたことを知ってアリソンは深く傷つきます。彼のやさしさに彼の意志が存在していなかったのですから、当然のことでしょう。しかし、カールが本当の思いや、彼女への愛をしっかり考えて言葉にしたことで、アリソンの悲しみは溶けて消えていきました。
めでたく結ばれたカールとアリソンのその後のイカれっぷりはエンドロールで観ることができますので、どうぞご注目ください。
まとめ
名コメディアンのジム・キャリー主演の明るく爽やかな気持ちになれる最高のコメディ『イエスマン! YESは人生のパスワード』。
何にでも「イエス」と言うようになった主人公の人生が、ユーモラスにシニカルに描かれた作品です。イエスと答えることで手に入れられる幸せと、そこにある落とし穴が丁寧に描かれます。
やみくもにイエスと答えてはいけないのは確かですが、まずは受け入れることでつかめる幸運というものがあるのかもしれません。
生きていく上で大切なことを笑いたっぷりで教えてくれる一作をぜひお楽しみください。