伝説の茶番劇・第Ⅱ章は、まさかの《東西》対決!?
埼玉県の自虐ネタをたっぷり詰め込んだ、魔夜峰央のギャグ漫画を実写映画化した『翔んで埼玉』(2019)。そのご当地自虐ネタが話題を呼び、大ヒットを記録しました。
実写映画第2弾となる『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』では、舞台を近畿地方に移し、麻実麗と全世界を大阪の支配下にしようと目論む大阪府知事との対決を描きます。
主人公・麻実麗役のGACKT、壇ノ浦百美役の二階堂ふみは前作から続投。新キャストとして“滋賀のオスカル”桔梗魁を杏が、関西を牛耳る冷酷無慈悲な大阪府知事・嘉祥寺晃を片岡愛之助が演じています。
麻実麗は、大阪に虐げられた滋賀を救えるのか。『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』をネタバレあらすじとともにご紹介します。
映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【原作】
魔夜峰央『翔んで埼玉』
【監督】
武内英樹
【脚本】
徳永友一
【キャスト】
GACKT、二階堂ふみ、杏、加藤諒、益若つばさ、堀田真由、くっきー!(野性爆弾)、高橋メアリージュン、和久井映見、アキラ100%、朝日奈央、天童よしみ、山村紅葉、モモコ(ハイヒール)、川崎麻世、藤原紀香、片岡愛之助
【作品概要】
埼玉県の自虐ネタを詰め込んだ魔夜峰央のギャグ漫画『翔んで埼玉』の実写映画化シリーズ第2弾。今度は近畿地方を舞台に、埼玉解放戦線のメンバーが滋賀県民を極悪非道な大阪府知事の野望から救います。
監督は前作で日本アカデミー賞・最優秀監督賞を受賞した武内英樹。また脚本も、同じく前作で日本アカデミー賞・最優秀脚本賞を受賞した徳永友一が担当します。
主人公・麻実麗役のGACKT、壇ノ浦百美役の二階堂ふみが引き続き主演。新キャストとして桔梗魁を杏、大阪府知事・嘉祥寺晃を片岡愛之助が演じます。
映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』のあらすじとネタバレ
2023年・埼玉県
さいたま市役所職員で旧・与野市在住の内田智治は、妻・直子と臨月の娘・若月依希とともに、車で熊谷スポーツ文化公園へ向かっていました。そこで開かれる「埼玉県市町村対抗綱引き大会」の応援と支援に行くためです。
お腹の中にいる男の子の名前を、依希は考えていました。カーラジオからは地元ラジオ局「FM NACK5」の新たなラジオドラマ『都市伝説・第Ⅱ章』が流れています。
《都市伝説・第Ⅱ章》
東京から蔑まれていた埼玉県人が、「埼玉解放戦線」の活躍によって自由と平和を勝ち取って3ヶ月が経ちました。そして、埼玉解放戦線を率いる麻実麗と壇ノ浦百美は「日本埼玉化計画」を推し進めていました。
横のつながりが薄い埼玉県人のため、埼玉県内を横につなぐ鉄道「武蔵野線」の開通を提案しますが、埼玉県の各鉄道の代表からは、武蔵野線よりも東京や東京ネズミーランドに行く鉄道を優先して開通すべきだという意見が出て、少しもまとまりません。
そこで麗は、“海無し”県に暮らす埼玉県民の心をひとつにまとめるべく、越谷に「海」を造ることを決断。砂浜に必要な砂は、和歌山県の白浜の白い砂を調達することにします。
麗は百美に各鉄道の代表の説得を任せると「千葉解放戦線」から船を借り、船員として千葉解放戦線の浜野サザエ・浜野アワビも乗せて和歌山県へ向け出航します。
ところが、船旅の途中で嵐に遭遇したことで船が難破。仲間たちと離れ離れになり、和歌山の海岸に流れ着いた麗は「滋賀解放戦線」のリーダーである“滋賀のオスカル”こと桔梗魁に助けられました。
実は、和歌山の白浜は大阪府の植民地と化し、和歌山県民や奈良県民、滋賀県民などは大阪府民から虐げられていたのです。現在の大阪府を支配しているのは、冷酷な府知事・嘉祥寺晃です。
魁は白浜の砂が白いのは、和歌山の姫君が祈りを捧げているおかげであり、今や姫はどこかに幽閉され、月に一度だけ祈りのために外に出されると言います。姫を助けるために和歌山に来た魁でしたが、ひとまず麗を連れて滋賀へ戻ることにしました。
麗は和歌山でパンダの群れと、奈良で鹿の大群と遭遇し驚きますが、滋賀へ入った途端に見つけた、交通安全を呼びかける「飛び出し坊や」の“とび太くん”の看板でさらにビックリします。
その頃、麗とはぐれた埼玉解放戦線員と千葉解放戦線員のサザエ・アワビは、大阪府知事・嘉祥寺の部下に捕まり、彼のもとへ連行されました。
嘉祥寺は埼玉解放戦線員を甲子園球場の地下に放り込むよう命じ、サザエとアワビに大阪名物のタコ焼きを食べさせます。
するとサザエとアワビは、急に流暢な関西弁をしゃべり出しました。これこそが、他県の人間が大阪人へと変貌してしまう途中段階「大阪人化第1形態」だったのです。
一方、甲子園に何かがあると察した麗は、3日後に甲子園で行われる野球大会を探ることに。また埼玉で麗の帰りを待つ百美も、白鵬堂学院の野球部部長に、甲子園の野球大会で和歌山県人に麗を見なかったかを聞いてくれるよう頼みました。
3日後、麗と魁は甲子園に潜入しますが、魁の裏切りにより麗は大阪府警に捕まってしまいました。麗は嘉祥寺からタコ焼きを食べさせられ、大阪人化第1形態へ変貌。その後甲子園球場の地下に連れていかれました。
そこは、人間を大阪人化する粉を秘密裏に精製する「粉物工場」であり、他県から連行されてきた人々が強制労働を強いられていました。
牢に入れられた麗は、埼玉解放戦線の仲間と再会。その夜、麗は幼少期にマイアミのビーチで亡き母から救世主として滋賀を救うよう言われた夢を見ます。目覚めた麗は大阪人化の症状と戦いながら、仲間の手引きにより牢から脱獄し滋賀へと向かいました。
麗を裏切った魁の方は、嘉祥寺に麗を差し出した見返りに、強制労働を課せられている仲間と和歌山の姫を解放するよう要求しましたが、嘉祥寺には「約束した覚えはない」と言われ、自身の行いを後悔します。
一方で埼玉の百美は、白鵬堂学院が持ち帰った甲子園球場の砂を調べたところ、砂に混じった粉の成分から人間を大阪人化する成分が検出されて驚きます。
映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』の感想と評価
2019年の『翔んで埼玉』に続く、実写映画化シリーズ第2弾『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』。
麗は埼玉のために和歌山の白浜の砂を持ち帰ろうとして、関西方面へ向かいます。和歌山がある近畿地方は、関西随一の大都市・大阪府によって牛耳られていました。
前作『翔んで埼玉』で東京都が埼玉県民を奴隷化していたように、関西でも大阪府が近畿地方の目立たない県を虐げていたのです。それを知った麗は地域格差をなくし、みなが平和に暮らせるようにしようと立ち上がります。
ここで明らかになったのは、麗の生い立ちでした。埼玉デュークと“滋賀のジャンヌダルク”の間に生まれたのが、麗だったのです。麗は母が歌っていた子守唄を思い出し、この事実に気がつきました。その子守唄こそが『琵琶湖周航の歌』でした。
滋賀県人が愛する『琵琶湖周航の歌』が、麗の心の奥に潜む母の思い出と滋賀県への愛を呼び起こしたのです。
また作中で行われた奇策「琵琶湖の水を止める」は、滋賀県人が京都人や大阪人との喧嘩で使う殺し文句としても有名です。琵琶湖から川へ流れる水を止められたら、それを生活水などで利用している京都や大阪は大変困るからです。
しかし、相手を困らせるには最高の作戦とはいえ、これを実行すれば本作のように滋賀県側も痛手を被ることになります。できればそれは、あまり使いたくない奥の手だったのです。
滋賀県の土地や県民を犠牲にしてでも、自分たちの生活と未来を守ろうとした麗たちの勇気ある行動に拍手を惜しみません。
もう一つ注目したいのは、滋賀県勢に味方した多くの看板スター「飛び出し坊や」の“とび太くん”。
滋賀県・東近江市で生まれたこの看板は、ドライバーに子どもやお年寄りによる飛び出し注意を訴えるもので、滋賀県は全国一の“とび太くん”設置数を誇っています。そんな滋賀への恩返しか、“とび太くん”たちの滋賀県を救うためにわが身を犠牲にする健気な姿に胸が熱くなります。
また特異なダンスのことも、忘れてはなりません。甲子園球場の地下に作られた、大阪人化する粉の精製する「粉物工場」では、他県の人々が強制労働を強いられているのですが、ダンサーが曲に合わせて踊りながら仕事をしていました。
それは、まるで『チャーリーとチョコレート工場』(2005)の工場内を映し出したワンシーンを思い出させるダンスです。
暴力や迫害など暗い演出が多い本作において、唯一ユニークなダンスが見られ、楽しい気分になることは間違いありません。
まとめ
本作は、魔夜峰央のギャグ漫画『翔んで埼玉』の実写映画化シリーズ第2弾。今回も自虐ネタも笑いもたっぷり盛り込まれたコメディです。
GACKTと二階堂ふみが前作同様に主役の2人を、杏がキーマン・桔梗魁を演じ、舞台を関西の近畿地方に移しての大戦闘が勃発します。
「オスカル」「ジャンヌダルク」と乙女心をくすぐるようなヒロインの名前に加え、大阪名物のタコ焼き・通天閣、滋賀の鮒ずしに“とび太くん”など、地元愛たっぷりの食べ物やアイテムが登場し、前作以上に郷土愛に満ちた作品となりました。
埼玉と滋賀の混血児とわかった麗は、埼玉解放戦線のサインを見事に滋賀県章に変化させ、故郷への愛を示します。
固い絆を結び、力を合わせて大阪府知事の野望を阻止した麗と魁。美しく強い兄弟の活躍がまた観たくなり、次作への期待が高まります。