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【ネタバレ】侍タイムスリッパー|あらすじ感想とラスト結末の評価。SF時代劇として幕末武士が現代社会での斬られ役として第二の人生に奮闘する

  • Writer :
  • 谷川裕美子

本格的な殺陣が魅力のタイムスリップコメディ

当初1館のみで封切られながらも、評判が評判を呼んで全国380館で上映される大ヒットとなった時代劇コメディー『侍タイムスリッパー』。第48回日本アカデミー賞では、インディーズ映画初の最優秀作品賞受賞の快挙を成し遂げました。

幕末の侍が、雷に打たれて現代の時代劇撮影所のタイムスリップして大騒動を巻き起こします。時代劇への愛がたっぷりつまった、本格的な殺陣が楽しめます。

『ごはん』(2014)『拳銃と目玉焼』(2017)の安田淳一が監督・脚本を手がけ、自主制作作品ながら東映京都撮影所の特別協力によって完成させました。

ドラマ「剣客商売」シリーズなど数多くの時代劇に出演する山口馬木也が主演を務めます。共演は冨家ノリマサ、沙倉ゆうの。

現代日本に突然スリップしてしまった武士が、周囲の人々の温かさに支えられながら新たな人生への一歩を踏み出します。コミカルな楽しさと本格的な殺陣、涙を誘う人情など、様々な魅力がぎっしりつまった傑作をご紹介します。

映画『侍タイムスリッパー』の作品情報


(C)2024未来映画社

【公開】
2024年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
安田淳一

【キャスト】
山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎、庄野﨑謙、紅萬子、福田善晴、井上肇、安藤彰則、田村ツトム

【作品概要】
幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップし、時代劇の斬られ役として第二の人生に奮闘する姿を描いた時代劇ヒューマンコメディ。本格的な殺陣も楽しめるチャンバラ活劇です。

監督・脚本の安田淳一がコロナ下で資金集めに苦労しながらも、脚本の面白さが東映京都撮影所の協力を呼び、完成にこぎ着けました。

池袋シネマ・ロサの一館のみで封切られましたが、口コミで話題となり全国公開され、10億円を超える大ヒットを記録。第48回日本アカデミー賞ではインディーズ初となる最優秀作品賞のほか、優秀監督賞、主演男優賞など数多くの賞を受賞しました。

主演をドラマ「剣客商売」シリーズの山口馬木也が務め、冨家ノリマサ、沙倉ゆうのが共演します。長年斬られ役として活躍する峰蘭太郞が、殺陣師・関本役を演じます。

映画『侍タイムスリッパー』のあらすじとネタバレ


(C)2024未来映画社

幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門は、家老から長州藩士・山形彦九郎を討つよう密命を受けます。同胞の村田佐之助と共に西経寺の前で山形を待ち伏せて襲いかかりますが、刃を交えた瞬間に落雷に討たれて気を失ってしまいました。

新左衛門が目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所でした。騒動を起こした末、機材に頭をぶつけて倒れた新左衛門は、助監督の山本優子に助けられて病院に入院します。

窓の外に見える町並みに驚き、病院を飛び出した新左衛門は、町に貼られたイベントポスターから江戸幕府が140年前に滅んだことを知ります。偶然西経寺にたどり着いた彼は、行き倒れたところを住職夫婦に助けられました。

時代劇のロケ地として寺をよく使っていた優子が、住職に呼ばれてやって来ました。新左衛門は寺に居候させてもらえることになり、周囲の助けによって生きる気力を取り戻していきます。

テレビで時代劇を観た彼は、心の底から感動します。そんな折り、ドラマの斬られ役が撮影中に急病に倒れたことから、新左衛門は急遽代役に抜擢されました。

現代で自分にできる唯一の仕事は、剣術を生かせる斬られ役だと気づいた新左衛門は、斬られ役専門の「剣心会」の殺陣師・関本に入門します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『侍タイムスリッパー』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『侍タイムスリッパー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2024未来映画社

殺陣や芝居に懸命に打ち込むうちに新左衛門は実力をつけ、セリフももらえるようになりました。髷も切って短髪にし、現代日本に溶け込み始めます。

そんな中、10年前に時代劇を捨てたはずのスター俳優・風見恭一郎が、新作時代劇『最後の武士』で主演を務めることとなりました。

風見は新左衛門を準主役に指名します。分不相応を理由に断ろうとした新左衛門に、風見は自分が新左衛門に暗殺されそうになった山形彦九郎であることを明かしました。

風見は30年前の撮影所にタイムスリップしてきており、新左衛門と同じように斬られ役から俳優を始めて、今の地位まで上り詰めました。

本物の侍の姿を2人で残そうと話す風見の言葉になかなかうなずけない新左衛門でしたが、関本や優子らの思いに応えて出演を受けます。

新左衛門と風見は次第に打ち解けていきました。風見は新左衛門に、以前時代劇から去った理由が幕末に人を斬ったトラウマだったことを打ち明けました。そんな風見を新左衛門は勇気づけます。

撮影の中打ち上げで配られた新たな脚本を読み、新左衛門は会津藩の悲しい末路を知りました。彼は深く悩んだ末に、風見と対決するクライマックスの殺陣に真剣を用いることを提案します。

優子と関本は反対したものの、風見と監督はその案を了承し、自己責任をしたためた血判状が交わされました。

そして撮影の本番。新左衛門は風見に対し、殺陣ではなく仕合を申し込みます。恐ろしい緊張感の中、アドリブでの立ち回りが始まりました。

激しい戦いの末に剣を落としてしまう風見。しかし、新左衛門は彼を斬ることはできませんでした。情けないと己を責めながら泣く新左衛門に、風見はお互いに精一杯信じる道を生きたと語りかけます。

素晴らしいシーンが撮れたことに喜ぶスタッフらの前で、優子は新左衛門の頬を打ち、二度とこのようなことはしないようにと言いました。彼女への愛の告白をしそこなった新左衛門を見て、風見が微笑みます。

映画『最後の武士』は無事公開され、喝采を浴びました。観客には西経寺の住職夫妻の姿もあります。それからも、新左衛門は斬られ役として撮影に臨み続けました。

その後。今度は、新左衛門と山形暗殺に出向いた同胞の会津藩士・村田が、撮影所にタイムスリップしてきました。

映画『侍タイムスリッパー』の感想と評価


(C)2024未来映画社

時代劇への深い愛に満ちた極上コメディー

幕末の武士が突然現代日本にタイムスリップし、時代劇の斬られ役として奮闘する極上コメディーです。

会津藩士として必死で剣術を磨いて生きてきた高坂新左衛門が、あちこちで騒動を巻き起こします。生真面目な主人公のキャラクターもあいまり、なんともいえないおかしさに満ちた一作です。

コミカルな一方で、本格的な殺陣のシーンや細やかな人情も丁寧に描かれ、作品全部に時代劇への深い愛情が感じられます特筆すべきは、長年斬られ役として活躍するベテラン峰蘭太郞が、殺陣師・関本役を演じていることでしょう。殺陣の指導も、トップレベルで知られる東映剣会の清家一斗が行っています。

脚本の面白さは天下一品です。この素晴らしい脚本が、主演のベテラン俳優・山口馬木也や太秦撮影所をはじめ多くの人々を惹きつけ、完成へと導きました。

物語後半では、新左衛門より30年も前にタイムスリップしてきていた仇役の風見が現れ、幕末の武士としての哀しみがさらに作品に深みを与えています。ラストには、緊迫の対決シーンによって会津藩士の哀しみを昇華させる素晴らしい展開が待っています。

主人公・新左衛門役の山口馬木也の演技は圧巻です。真面目すぎるまっすぐな気性、助監督の優子への淡い恋心にはにかむ思い、会津藩士としての悲哀など、新左衛門のすべての感情をダイナミックに魅力的に表現しています

新左衛門と同じくタイムスリップしてきた風見役の冨家ノリマサの芝居も見どころです。30年先にタイムスリップしてきたことにより、新左衛門よりも年長者となっていた彼は、新左衛門を慈愛に満ちた温かな目で見守ります。

山口も冨家も、脚本に魅せられて出演を快諾したといいます。ベテランならではの嗅覚が働いたのかもしれません。

おそらく演じている内に、この作品がとんでもなく素晴らしいものに化ける手応えを得たことでしょう。作品への愛情と熱意をひしひしと感じられる作品となっています。ラストの真剣を用いての対決シーンは必見です。

現代にも生きる温かな人情


(C)2024未来映画社

突然現代にタイムスリップしてきて、右も左も分からなかった新左衛門を救ったのは、現代にも生き続ける日本人の温かな人情でした。

ケガをした新左衛門を病院に連れて行った助監督の優子、寺の前で倒れていた新左衛門を居候として面倒見てくれた住職夫婦、剣術の腕を買い新左衛門を入門させてくれた関本。死をも覚悟するまで追い詰められた新左衛門を、彼らは温かく包み込みます。

人は一人では生きられないことを教えてくれる温かさ。この描写はまさに時代劇で描かれる世界そのものです。

やさしく利発な優子にまっすぐな愛情を抱き、その思いを懸命に隠そうとしても隠しきれない新左衛門が最高に愛おしく見えてきます。真剣を用いるという無茶をした新左衛門を平手打ちした優子もまた、愛情深い女性であることが伝わってきます。

新左衛門の活躍に一喜一憂する住職夫婦の存在は、まさに昔ながらの日本の良さを映し出しているかのようです。彼らに出会えたからこそ、新左衛門斬られ役という天職に突き進むことができたのに違いありません。

まとめ


(C)2024未来映画社

口コミから人気が広がり、全国公開をもぎ取った末にアカデミー最優秀作品賞受賞の快挙を成し遂げたインディーズ映画『侍タイムスリッパー』

日本特有のチャンバラが、今尚多くの人々に愛されていることを再認識させられます。本格的な殺陣にこだわり魅力ある剣術シーンに仕上げたこと、そして幕末藩士の深い哀しみとその昇華を描いたことにより、娯楽コメディとは一線を画す一作となりました。

バイプレーヤーとして知られるベテランの山口馬木也、冨家ノリマサをメインに迎えた配役も見事です。酸いも甘いも経験した役者だからこそ醸し出せた味わいが、本作を高みへと引き上げたことは間違いありません。




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