Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

『最後の乗客』あらすじ感想評価。堀江貴監督の自主制作プロジェクトから生まれた震災から10年後の世界を温かな視線で描いたヒューマンミステリー

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『最後の乗客』は2024年10月11日(金)よりユーロスペース、池袋シネマロサほか全国順次ロードショー

自主制作のクラウドファンディングからはじまり、世界の映画祭で絶賛され日本に凱旋上映となる堀江貴監督作『最後の乗客』が、2024年10月11日(金)よりユーロスペース、池袋シネマロサほか全国順次ロードショーとなります。

宮城県生まれの堀江貴監督が、故郷のために何が出来るかを自らに問い立ち上げたプロジェクト『リバース Tohoku 2021 〜輝く未来へ〜』の第一歩として、本作を制作しました。

ありふれた日常を夜の闇が覆い隠してゆくミステリアスな展開と衝撃のラスト、そして得も言われぬ心地よい「読後感」は試写直後から大きな反響を呼び、世界各地の映画祭で絶賛され、数多くの賞を獲得し、いよいよ日本でも全国公開の運びとなりました。

映画『最後の乗客』の作品情報


(C)Marmalade Pictures, Inc.

【公開】
2024年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
堀江貴

【キャスト】
岩田華怜、冨家ノリマサ、長尾純子、谷田真吾、畠山心、大日琳汰郎

【作品概要】
NY在住で、MVなどで数々のアワード受賞の経歴をもつ堀江貴が制作・監督・脚本・編集を務めた一作。監督がクラウドファンティングを実施し、震災から10年がたつ故郷、宮城・仙台への想いを1本の映画に収めようというプロジェクトは、僅か2日間で成立しました。

撮影された55分の物語は仙台1館で始まり、その後世界各国の映画祭に出品され、高い評価と予想外の驚き、大きな感動を呼び、相次ぐ受賞を果たし、大きな注目を受けました。たったひとりから始まり世界を回って大きくなっていった本作は、いよいよ日本へ凱旋することとなりました。

撮影は『寝ても覚めても』(2018)(濱口竜介監督)、『あのこは貴族』(2021)(岨手由紀子監督)、『Cloud クラウド』(2024)(黒沢清監督)など数々の名匠・巨匠の作品の撮影を手掛け、今一番撮ってほしいカメラマンとの呼び声も高い佐々木靖之が務めます。

出演は『殿、利息でござる!』(2016)の岩田華怜、冨家ノリマサ。

映画『最後の乗客』のあらすじ


(C)Marmalade Pictures, Inc.

とある東北の、小さな街の駅のロータリーで、タクシーが数台、客待ちで駐車していました。

タクシードライバーの遠藤と竹ちゃんは、駅から出てくる帰宅客を眺め、最近タクシードライバーの間で噂になっている話をしていました。「夜遅く浜街道流してっと、若い大学生くらいの子がポツンと立ってるんだって…」しかし、遠藤は竹ちゃんの話を一笑に付しました。

竹ちゃんと別れた遠藤はひとり閑散とした夜の住宅街を流していました。ふとライトが、人気のない深夜の県道脇に立ちタクシーを止めようと手をあげる若い女性を照らし出します。

彼女を乗せて走り出すと、今度は何もない荒廃した路上に小さな女の子と母親の二人連れが突然現れます。

3人と秘密をのせたタクシーがたどりつく先にあるものとは…。

映画『最後の乗客』の感想と評価


(C)Marmalade Pictures, Inc.

東日本大震災のその後を、さまざまな思いをこめて描き出した作品です。55分という短い時間の中に、濃密なドラマが展開します。

冒頭には荒々しい波が砕け散る海が映し出されます。ああ、海は恐ろしいものなのだった…と実感した直後に、浮かび上がる「あれから10年後」という文字。すぐに何を示しているのか伝わってきます。

やがて、場面は終電も終わった静かな駅前に切り替わります。タクシードライバーの遠藤は同僚の竹ちゃんと談笑した後、もう少し仕事をしようと街を流し始め、そこで思いも寄らない3人の乗客に出会うのです。

ここから次から次へと予想外の出来事が起きるのですが、そのどれもがリアリティに満ちており、無理のない自然な展開に圧倒されますこれから何が起こるのだろうかと思わず心奪われ、テンポのよさにぐいぐいと最後まで引き込まれることでしょう。さまざまな名作を手がけてきたカメラマン・佐々木靖之の美しい映像が見事です。

ヒロインを演じる岩田華怜の切ない表情にも注目です。

まとめ


(C)Marmalade Pictures, Inc.

震災の傷跡と共に、これからの未来をみつめた温かな作品『最後の乗客』。傷ついた人たちの正直な思いや、やりきれなさが真摯に映し出され、胸が締め付けられます。

しかし、それでもどうか希望を胸にこれからも生きていってほしいという切なる願いがこめられた美しい作品です。私達一人ひとりにできることとは何だろうかと、改めて考えさせられます。

映画『最後の乗客』は2024年10月11日(金)よりユーロスペース、池袋シネマロサほか全国順次ロードショーです。



関連記事

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】6月0日|あらすじ結末感想と評価解説。“アイヒマンが処刑された日”に関わった者の物語が描く“歴史に触れる瞬間”

“6月0日”……それは、アドルフ・アイヒマンの処刑され、火葬された日。 ナチス親衛隊中佐としてユダヤ人大量虐殺に関与したアドルフ・アイヒマン。終戦後に逃亡しブエノスアイレスに潜伏していましたが、イスラ …

ヒューマンドラマ映画

『戦場にかける橋』ネタバレあらすじ結末とラスト感想。名作/傑作映画で知られるデヴィッド・リーンが巨匠としての貫禄で描く!

第30回アカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞ほか7部門受賞! 捕虜のイギリス人兵士と日本軍人が橋を作る不朽の名作映画『戦場にかける橋』は、名匠デヴィッド・リーンが監督を務め、1957年公開に公開され …

ヒューマンドラマ映画

映画『プリティウーマン』ネタバレあらすじ感想と結末解説。名作ラブコメ洋画はリチャードギア/ジュリアロバーツの代表作!

伝説的シンデレラ・ストーリー『プリティ・ウーマン』! ジュリア・ロバーツ×リチャード・ギアのダブル主演作品『プリティ・ウーマン』。 舞台は‟夢を叶えるにはこの場所”アメリカのロサンゼルス。1人の娼婦が …

ヒューマンドラマ映画

映画『黒い司法0%からの奇跡』ネタバレあらすじと感想。死刑大国のアメリカの冤罪に警鐘を鳴らす

映画『黒い司法 0%からの奇跡』は、2020年2月28日(金)全国公開。 実話に基づき米国司法の闇に踏み込む衝撃と感動の法廷劇 映画『黒い司法0%からの奇跡』は、ある日全く身に覚えのない事件の犯人とし …

ヒューマンドラマ映画

映画『ドライビング Miss デイジー』ネタバレあらすじと感想レビュー。白人の老婦人と黒人運転手の交流と友情を描くアカデミー受賞作

性別・人種・年代の壁を越えた友情を描く、アカデミー作品賞に輝くハートフルドラマ 1990年製作のアメリカ映画『ドライビング Miss デイジー』。1987年度のピューリッツァー賞演劇部門を受賞したブロ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学