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映画『田園の守り人たち』ネタバレ感想と評価レビュー。女性が自力で働き、子どもを養っていく強い姿を描く

  • Writer :
  • もりのちこ

第一次世界大戦下のフランス。男たちは戦地へ。
残された女たちにも戦いはありました。


1915年戦下のフランスで、夫や息子を戦場に送り出した女たちの苦悩と暮らしを描いた人間ドラマ『田園の守り人たち』。

移り行く季節ごとの田園風景は、まるでフランスの画家ミレーの絵画を見ているようです。

田畑を耕し種を撒き、収穫を迎える。戦争は、静かに暮らしている人々の日常を奪い、思わぬ罪を負わせます。

母なる大地で女たちは、愛の種を撒き、人生の実を刈り取っていく。映画『田園の守り人たち』を紹介します。

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映画『田園の守り人たち』の作品情報


(C)2017 – les films du Worso – Rita Productions – KNM – Pathe Production – Orange Studio – France 3 Cinema – Versus production – RTS Radio Television Suisse
【日本公開】
2019年(フランス・スイス合作)

【監督】
グザビエ・ボーボワ

【キャスト】
ナタリー・バイ、ローラ・スメット、イリス・ブリー、シリル・デクール、ジルベール・ボノー、オリビエ・ラブルダン、ニコラ・ジロー、マチルド・ビズー=エリー

【作品概要】
第一次世界大戦下のフランス。戦地に出征した男たちに変わり、農場を守る女たちの物語。

フランスの名女優ナタリー・バイと娘のローラ・スメットが役の上でも母娘を演じ、映画初共演を果たしています。

監督は、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作『神々と男たち』のグザブエ・ボーボワ監督。第30回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門では、タイトル『ガーディアンズ』で上映されています。

映画『田園の守り人たち』のあらすじとネタバレ


(C)2017 – les films du Worso – Rita Productions – KNM – Pathe Production – Orange Studio – France 3 Cinema – Versus production – RTS Radio Television Suisse
1915年、第一次世界大戦下のフランス。2人の息子を西部戦線に送り出した農園の未亡人オルタンスは、娘のソランジュとともに、馬を引き田畑の土を耕し、種まきの準備をしています。

夕暮れの空を、雁の群れがV字になって飛んでいきます。もうすぐ冬がやってきます。

1916年、長男のコンスタンが戦地から休暇で戻ってきました。オルタンス夫人は息子の帰りに嬉しそうです。

しかし、休暇が終われば息子は再び戦場へ戻らなければなりません。コンスタンは妹のソランジュにだけ本音を漏らします。「つらいよ」。

どの家でも、働き盛りの男はみな徴収され、家を守るのは女の仕事になっていました。

馬車に大きな車輪を取り付け、重い干し草を運び、牛の乳を搾り、農場の仕事は力仕事です。どうしても、収穫の時期には人手が足りません。

オルタンス夫人は、町でフランシーヌという女性を紹介され、雇うことにしました。親はなく施設で育ったフランシーヌは、使用人として様々な家で働いてきた経験がありました。

牛の扱いにも慣れ、畑仕事もでき、家の中の仕事もこなすフランシーヌ。彼女の働きぶりはオルタンス夫人にも認められ、契約も延長となりました。

収穫の時期には、ソランジュの夫・クロヴィスが戦地から戻ってきます。クロヴィスは、戦場の悲惨さに胸を痛めていました。「ドイツ人だって俺たちと同じ人間なんだ」。

戦争は人を変えてしまいます。町の教会では毎週、戦死者が読み上げられ多くの者が涙を流す日々が続いていました。

クロヴィスと入れ替わるように、今度はオルタンス夫人の次男・ジョルジュが戦地から休暇で帰ってきました。

ジョルジュとフランシーヌは、すぐに恋に落ちます。「もう戻れるかわからない」。お互いの立場もあります。

2人は手紙を送り合うことを約束し、ジョルジュは再び戦地へと向かいます。

農園の季節はまた秋から冬へと移ります。田畑を耕し種を撒き、馬を売り冬をしのびます。「このまま男たちが帰ってこなかったら」。オルタンス夫人は農園の経営に不安を抱いていました。

その最中、クロヴィスがドイツ兵の捕虜になったと一報が届きます。妻のソランジュは泣き崩れ、しばらく何も手につきません。悲しみの知らせは続きます。

農園が雪で真っ白になる朝、死を知らせる使者がオルタンス夫人の元にやってきます。亡くなったのは、長男のコンスタンでした。

名前を聞いた途端、倒れるオルタンス夫人。息子の亡骸にも会えない。悲しみは相当深いものでした。

以下、『田園の守り人たち』ネタバレ・結末の記載がございます。『田園の守り人たち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2017 – les films du Worso – Rita Productions – KNM – Pathe Production – Orange Studio – France 3 Cinema – Versus production – RTS Radio Television Suisse
フランシーヌは21歳になりました。戦地のジョルジュとは手紙のやり取りが続いています。会えない分、お互いへの思いは膨らむばかりです。

その手紙のやり取りが、ソランジュの義娘・マルグリットに見つかってしまいます。マルグリットは、幼い頃からジョルジュのことが好きでした。

あからさまに、フランシーヌに怒りをぶつけるマルグリット。2人の恋は歓迎されるものではありませんでした。

そんな中、再びジョルジュが帰ってきます。想いが止められないフランシーヌとジョルジュは、密かに森で結ばれます。

戦時下のフランスには、アメリカ兵の姿が目立つようになっていました。陽気なアメリカ兵は農園を気軽に訪ね、作物の買い付けにやって来ます。対応するソランジュの顔には笑顔が見えるようでした。

ジョルジュは女と老人しかいない留守に、家に上がり込むアメリカ兵の男たちを良く思っていません。嬉しそうに対応する妹ソランジュに注意をするジョルジュ。

しかし、ソランジュはすでにアメリカ兵の一人と仲良くなっていました。その関係は農園の周りでも噂になっています。

ジョルジュの戦場への復帰の日です。農園には酒を買いに来たアメリカ兵の姿がありました。やり取りをしていたフランシーヌに、お礼のハグとキスをする男。はにかむフランシーヌの顔が真顔に戻ります。

ジョルジュの視線とフランシーヌの視線が交わります。ジョルジュは母の運転する馬車で旅立って行きました。

オルタンス夫人はジョルジュに言って聞かせます。「素性が分からないフランシーヌは外国人と会っているようだ」。「アバズレだと言うのか?」。無言でうなずくオルタンス夫人。

「追い出してくれ」。ジョルジュは母の言葉を鵜吞みにしてしまいます。

オルタンス夫人は自分の娘ソランジュの噂をすり替え、フランシーヌに濡れ衣を着せたのです。

「すぐに家を出て行くように」と言われたフランシーヌ。オルタンス夫人に身の潔白を訴えますが、「私は家族を守ります」と心無い返事が返ってきます。

戦争が終わってもいて欲しいと、家族のように接してくれていたオルタンス夫人の突然の仕打ち。フランシーヌは「あなたは怪物よ」と言い残し家を出るのでした。

1918年、フランシーヌは新しい雇い主の元で働いていました。そのお腹には、ジョルジュとの子が宿っていました。出産も間近です。

フランシーヌは戦地のジョルジュの元に手紙を送り続けていましたが、誤解したままのジョルジュから返事はありませんでした。

子供のことをどうしても伝えたいフランシーヌは、オルタンス夫人へ手紙を書きます。ジョルジュとの子供のこと、誤解を解いて欲しいと書かれた手紙に、オルタンス夫人は涙を流します。

罪の意識に苛まれながらも、手紙を焼き捨てるオルタンス夫人。彼女もまた家族を、農園を守り抜くことに必死なのです。

第一次世界大戦は連合軍の勝利で終わりました。足を負傷しながらもジョルジュは無事に帰ってきました。

その頃、町の教会で洗礼を受ける赤ちゃんの姿がありました。髪を切り勇敢な眼差しのフランシーヌは、洗礼を終えた我が子を抱き、馬車に乗り込みます。

その姿を偶然見つけるオルタンス夫人。驚き、立ち尽くします。フランシーヌも彼女に気付きますが、一瞥しそのまま立ち去ってしまいます。2人の確執は埋まることはありませんでした。

1919年には捕虜となっていたクロヴィスも戻り、農園の経営は男たちへと引き継がれます。オルタンス夫人はやっと穏やかな笑みを浮かべます。

町の酒場では、フランシーヌがステージで歌っています。いつも歌を口ずさんでいたフランシーヌ。その歌声は弾み、笑顔は輝いていました。

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映画『田園の守り人たち』の感想と評価


(C)2017 – les films du Worso – Rita Productions – KNM – Pathe Production – Orange Studio – France 3 Cinema – Versus production – RTS Radio Television Suisse
戦下のフランスで、愛する者たちを戦地に送り出し、ひたすら無事で帰ってくれるのを待つ女たち。いつ終わるか分からない戦争の中、家を守る女たちにも、また戦いがありました。

劇中に直接的な戦場のシーンはありませんが、戦争により日常を奪われた者たちの悲劇が戦争映画であることを物語っています。

戦地での息子の死を知らされた母の悲しみ。愛する夫の死で、泣き崩れる妻。残された幼子と家族の苦悩。戦場での悪夢にうなされ続ける男たち。

戦争によって戦う者と残された者、両方の苦悩が描かれています。

この物語では、オルタンス夫人の家族を守ることへの執着が、フランシーヌの人生を変え、さらにその子供や自分の息子ジョルジュの人生をも変えてしまった結末に、虚しさが残ります。

救いとなるのは、ラストシーンでのフランシーヌの笑顔です。ステージで歌う彼女の姿は、戦争が終わり新しい時代への到来を告げるかのようです。

彼女の存在は、自分の力で働き子供を養っていく、強い女性の象徴となっています。自分の力で道を切り開いていくフランシーヌの強い眼差しが印象的です。

そんなフランシーヌを演じるのは、スタッフにより発掘され、これまで演技経験もない新星イリス・ブリーです。

フランスの大女優ナタリー・バイと、実の娘ローラ・スメットの母娘共演に、引けを取らない堂々とした演技で、セザール有望新人賞にもノミネートされました。

まとめ


(C)2017 – les films du Worso – Rita Productions – KNM – Pathe Production – Orange Studio – France 3 Cinema – Versus production – RTS Radio Television Suisse
第一次世界大戦のフランスで出征した男たちに代わり、必死に農場を守り続けた3人の女たちの物語『田園の守り人たち』を紹介しました。

絵画を鑑賞しているかのような美しい田園風景のなか、戦争が生んだ家族の悲劇が静かに語られます。

女優ナタリー・バイローラ・スメットの実の親子共演と、彗星のごとく登場した演技初挑戦のイリス・ブリー、3人の女たちの物語でもあります。

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