医者を主人公にしたテレビドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」や、マンガ「ブラックジャック」は大好きなのですが、今回ご紹介する映画も主人公はお医者さん。
映画がはじまり、医師トンマーゾが登場すると5分も経たずに嫌な奴だなと思ってしまう!
それでも!ラストにはトンマーゾが愛しいてたまらない映画『神様の思し召し』に注目⁉︎
映画『神様の思し召し』の作品情報
【公開】
2016年(イタリア)
【脚本・監督】
エドアルド・ファルコーネ
【キャスト】
マルコ・ジャリーニ、アレッサンドロ・ガスマン、エンリコ・オティケル、ラウラ・モランテ、イラリア・スパダ、エドアルド・ペーシェ
【作品概要】
目に見える物しか信じない医師と、見えない神を信じる神父の奇妙な関係と新しい友情の物語。
主演トンマーゾ役に『赤いアモーレ』のマルコ・ジャリーニ、神父役を『トランスポーター2』のアレッサンドロ・ガスマンが出演。
エドアルド・ファルコーネ監督のデビュー作で、2015年に、第28回東京国際映画祭コンペティション部門にて観客賞受賞しています。
映画『神様の思し召し』のあらすじとネタバレ
(C)Wildside 2015
主人公の心臓外科医のトンマーゾは、本日も手際よく完璧なオペで患者の命を救います。
医師としては優秀だが、毒舌ばかりで傲慢な性格は、他人のことはおかまいなしで職場スタッフからも疎まれています。
プライベートの自宅でも、妻のカルラへの愛情は冷えて倦怠期。娘ビアンカは冴えない旦那と結婚したことで関心が薄い。
息子アンドレアだけは、医大に通わせてるだけに何とか後継ぎにせようと期待を掛けています。
しかし、ある日、アンドレアは家族に思いがけない告白します…。
映画『神様の思し召し』の感想と評価
(C)Wildside 2015
主人公トンマーゾは、これまで医者として人の命を救える(扱える)完璧な存在だと考えていました。
しかし、それは誤りでした。決して全知全能(神)ではなかったのです。
この世には、人間には、どうしようも出来ない物事もあると理解したのでしょう。
それは、トンマーゾは医師なので、事故で重体となった深刻さを容易に判断がつくからです。
本当に救いたい人の命を前に、完璧な心臓外科医でも、役に立たない事を知るからです。
そのことを強く示している場面は、果実として熟した“梨(禁断の実)”が落ちるシーンが2度登場させたシーンです。
1度目は、ピエトロが、それを神の存在と示し、トンマーゾと2人で眺めた時でした。
2度目は、ピエトロに重大な事が起きた後、トンマーゾが独りで見つめ、僅かに笑った時です。
あえて、エドアルド・ファルコーネ監督は、ラストシーンをどのように取れる解釈で観客に託して終わります。
ピエトロは亡くなったか?ピエトロに奇跡は起きたのか?
この秀逸な締めくくりは、再度を映画を味わい直したくなる1本です。
まとめ
(C)Wildside 2015
偏屈で現実主義者な父親が、息子の告白に戸惑いながら、ひとりの神父と出会ったことで生まれた友情ドラマした。
また、他人への思いやりに気がつかされる映画ですが、なぜ、『神様の思し召し』は、再度見返したくなるのか。
冒頭の5分も経たず、医師トンマーゾは、嫌な奴と感じたと書いたことに理由があります。
トンマーゾをよく知らない私なのに、初見でそのように思わず他人を見ていた、“差別と偏見”があったからでしょう。
この作品には、まずは、職業や仕事のヒエラルキーが描かれています。
主治医と部下、そしてスタッフ。あるいは、人を救う仕事としての医師と神父の対比。トンマーゾが転職?挑戦したピザ屋もそうです。
職業ではないのですが、プライベートの夫婦関係の役割分担を仕事を考えれば、そのように取れますね。
他には、“差別と偏見”を誘発させる事柄が随所に見て取れます。
冴えない嫁婿に始まり、知的障がい者や元犯罪者なども、それを示しています。
だからこそ、トンマーゾを語り部の視点として見てきた私たちは、トンマーゾがピエトロを思い返したラストシーンと同じくして、私たちも再度“映画の登場人物”を見直してみたくなるのです。
エドアルド・ファルコーネ監督は、まだ新人ではありますが、脚本を長く手掛けていただけあって実力は確かなもの。
まずは、『神様の思し召し』を見返して見ましょう。
まだ観てない方は、ぜひご覧いただきたい映画『神様の思し召し』のご紹介でした!