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映画『カタオモイ』あらすじ感想と評価解説。いまおかしんじ監督ならではのイムズが満載の“年の差ラブコメ”

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『カタオモイ』は8月18日(金)より京都みなみ会館、9月23日(土)よりシアターセブン、元町映画館にてロードショー!

平凡な家庭生活に失望し家を出た一人の主婦と、同棲していた彼女に逃げられ飲んだくれる一人の若者。ひょんなきっかけで出会った二人が織りなすラブストーリー『カタオモイ』。

結婚生活20年を過ぎた主婦が人生を取り戻そうと心機一転、やって来た東京の下町で偶然出会った若い男と恋をする話を、ロマンチックに、コミカルに描きます。

ピンク映画の製作から頭角を現し、近年も驚異的なテンポで作品を輩出し続けるいまおかしんじ監督が、異色のラブコメディー映画を描きました。

映画『カタオモイ』の作品情報


(C)2023レジェンド・タレント・エージェンシー

【日本公開】
2023年(日本映画)

【監督】
いまおかしんじ

【脚本】
宍戸英紀

【キャスト】
丸純子、細田善彦、川瀬陽太、平井亜門、中村守里、東雲あずさ、松本拓海、佐藤宏、フミカ、片岡鶴太郎

【作品概要】
40代の人妻と若い男という異色のカップルによる、不器用な恋の行方を描いたラブコメディー。

銀平町シネマブルース』『れいこいるか』のいまおかしんじ監督が作品を手がけました。

主人公の女性、可南子を今岡監督の『あいたくて あいたくて あいたくて』に出演した丸純子、その相手役となる男性、謙一を『僕の初恋をキミに捧ぐ』の細田善彦が担当しました。

映画『カタオモイ』のあらすじ


(C)2023レジェンド・タレント・エージェンシー
代わり映えのない家庭生活に嫌気がさし、家出の常習犯となっている43歳の主婦・杉下可南子。

ある日、彼女はまたも夫の浮気を知り家を飛び出します。

ところが可南子は出会い系サイトの詐欺に遭い、大金を失ってしまうことに。

失望に暮れていた彼女でしたが、ちょうどそのころ人生に失望し飲んだくれていた男性・謙一と出会い、話をしていくうちに自身が求めていた大学進学を目指し働くことを決心します。

そして東京下町の大衆食堂で働きはじめる可南子。またある日彼女は、路上で酔い潰れていた若い男を見つけ介抱します。その男はなんと謙一。彼は同棲していた恋人に捨てられ、傷心のあまり酒と睡眠薬を一気に飲んだといいます。

泥酔している謙一を部屋まで運ぶ可南子を、謙一は恋人と間違え突然抱き寄せてキス。

その事件をきっかけに、可南子は謙一に対して恋の炎を燃やし、偶然手に入れた合い鍵を使って彼の部屋に忍び込み、彼の元カノに成りすましてプラトニックな関係を楽しむようになるのですが……。

映画『カタオモイ』の感想と評価

(C)2023レジェンド・タレント・エージェンシー

40代の主婦と若い男性という「年の差カップル」によるラブコメディー。本作は二人がどのように距離を近づけていくのかが見所となりますが、そこにはいまおかしんじ監督ならではの要素が強く感じられます。

丸純子演じる主人公、可南子は夫の浮気疑惑をきっかけに家を出ましたが、もともと家出の常習犯。自営業の家で夫と息子とともに暮らす生活に疲れ、新たな道に進みたいという思いを貫くべく家を離れたという経緯があります。

一方で細田善彦演じる男性、謙一は元カノに逃げられ、さらに若いうちにとある仕事で頭角を現しながらも突然の引退と、人生に絶望している人物。

人生の岐路に迷う二人の男女が、お互いの境遇に共感し惹かれ合う流れは、本作と同時期に公開の『海辺の恋人』や『こえをきかせて』など、いまおか監督のラブストーリー作品でも多く描かれている要素です。



(C)2023レジェンド・タレント・エージェンシー

またある程度年齢を重ねた人物の恋愛という点においては『あいたくて あいたくて あいたくて』で描かれた「大人のラブストーリー」的な雰囲気を感じる映画ファンもいるのではないでしょうか。

ちなみに『あいたくて あいたくて あいたくて』では手紙によるプラトニックな恋の展開から物語が進んでいきますが、本作も可南子が謙一に恋心を抱き、元カノに成りすます展開において、直接相手に姿を見せないという点では、共通したポイントを感じます。

「年の差カップル」のラブストーリー的な物語というポイントは大きいものの、そこにいまおか監督ならではの描くべき要素が強く描かれており、同系列の作品ファンには強くアピールできる作品であるといえるでしょう。

一方で敢えてコメディー要素を加えている部分には、作品を柔らかな雰囲気にしている向きも感じられ、非常に見て楽しい作品になっているといえます。

まとめ


(C)2023レジェンド・タレント・エージェンシー
本作のコメディー要素を最も強く担っているのが、片岡鶴太郎の存在。

実は全編にわたって本当にコメディー的な要素が見られるのは、片岡が登場する場面に限っているといってもよいでしょう。

登場する人間はほぼ誰もがどこかコミカルな要素はあるものの、単に「人間臭さ」を感じさせるという感じでもあり、一概に笑えるという感じでもありません。

そんな中で片岡だけがまさに「笑える」人間として見えてくるキャラクターであり、一人の存在だけで全編を「コメディー」とうたっても違和感のない作品に仕上がっています。

そこは片岡自身の役者としての存在感もある一方で、このユニークなキャラクターをどのように物語に配置していくかというセンスの高さも評価に値するところといえるでしょう。

映画『カタオモイ』は8月18日(金)より京都みなみ会館、9月23日(土)よりシアターセブン、元町映画館にてロードショー

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