連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第83回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第83回は、『コーポレート・アニマルズ 社畜たちの研修旅行』(2022)をご紹介します。
『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)のデミ・ムーアが主演を務めた、予測不能なホラー・ブラックコメディ『コーポレート・アニマルズ 社畜たちの研修旅行』。
超ワンマンで自己中心的なCEOに振り回され、洞窟に閉じ込められてしまった「社畜」社員たちの悲惨な運命をブラックユーモアたっぷりに描き出すドタバタ劇です。
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CONTENTS
映画『コーポレート・アニマルズ 社畜たちの研修旅行』の作品情報
【】
2022年(アメリカ映画)
【脚本】
サム・バイン
【監督】
パトリック・ブライス
【編集】
クリス・ドンロン
【キャスト】
デミ・ムーア、ジェシカ・ウィリアムズ、カラン・ソーニ、エド・ヘルムズ、カラン・ソーニ、ダン・バッケダール
【作品概要】
『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)のデミ・ムーア主演のホラー・コメディ。自己中心的な女性CEOとその社員が、社員旅行中に洞窟に閉じ込められてしまう姿をブラックユーモア満載で描きます。
監督は『サムワン・インサイド』(2021)のパトリック・ブライス。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)のジェシカ・ウィリアムズ、『デッド・プール』シリーズのカラン・ソーニらが共演。
映画『コーポレート・アニマルズ 社畜たちの研修旅行』のあらすじとネタバレ
食べられるナイフやフォークを製造する大企業のCEO・ルーシーは、自己中心的で誇大妄想狂でした。
彼女は社内のチーム力を高めるために、アシスタントのフレディやジェスなどのスタッフを率いて週末にニューメキシコへ向かいました。
ルーシーは洞窟を通る危険な上級者ルートを選び、部下を率いてへルメットをかぶって進みます。
いやいやながら洞窟探検に挑む社員たち。ルーシーはチームワークの素晴らしさを説きますが、実は会社は経営難に陥っていました。
そんななか洞窟内に崩落が起こり、彼らは閉じ込められてしまいます。
ひとり逃げ出そうとしたブランドンは、岩の下敷きになって死んでしまいました。
ルーシーはパニックに陥る社員たちに向かって、探検申請書を警備所に提出しているのでまもなく救助が来ると話します。
そして彼女は、エイダンが持ってきていた食用食器とビリーの持ってきた水分を強引に取り上げ、全員で分け合うことに。
照明を消してそれぞれ休みますが、ケガをしたエイダンは悪化するのがこわくて気が休まりません。
仲を深めていくフレディとジェスを見たルーシー。彼女はその後フレディに近づき、無理やり迫ります。彼女はこれまでも彼と性的関係を持ってきましたが、フレディは必死で拒みました。
映画『コーポレート・アニマルズ 社畜たちの研修旅行』の感想と評価
ブラックな笑い満載のおもしろコメディ
デミ・ムーアが思いっきり「憎まれ役」を演じるブラック・コメディ『コーポレート・アニマルズ 社畜たちの研修旅行』。そこかしこにクスリと笑わせる場面が散りばめられた作品です。
デミ・ムーアが演じるルーシーは自己中心的で、ひとことで言うとものすごく性格の悪い女CEOです。
パワハラ・セクハラなんでもあり。会社経営が崖っぷちであることも社員に隠したまま、「チームワークを高めるため」という名目で社員をニューメキシコの洞窟探検へ連行。そのあげくに、崩落にあって全員洞窟に閉じ込められてしまうのです。
デミの逞しさは妙に笑えるのですが、このパワハラぶりはやはりとてもこわいとしか言いようがありません。何を言っても二言目には「会社がお金を出している」と言って、何もかも巻き上げる悪徳ぶり。ルーシーは会社の商品であるたった一袋の食べられるスプーンとフォークと水を社員からブンどり、みんなで分けて飢えをしのごうとします。
悲惨な状況でも顔にパックして寝るなど、どこか憎めないキャラクターをデミ・ムーアが楽しそうに生き生きと演じています。パック姿で岩の間からのぞき見する姿に、思わず「お前は佐清か」と突っ込みたくなる方もきっと多いはず。
ゲイリー・シニーズに心酔するフレディや、しっかり者のジェス、文句ばかりのビリー、持病持ちのグロリア、ちょっと頭の弱いエイダンなど、社員たちも個性派ぞろいです。
5日目を迎えた彼らは、初日に岩の下敷きになって死んだブランドンを食べることを選びます。本作が「ホラー」とカテゴライズされている大きな所以です。
しかし、やっと食べることを決めた社員たちより前にルーシーが腕を盗んでいたり、最初に食べたジェスが噛み応えがあるとコメントしたりと、「グロさ」よりも「笑い」が山盛りなので、純粋にコメディとして楽しめる作品となっています。
マイノリティーばかり雇ったのも助成金目当てだったことが後に判明。それに加えて、グロリアを殺して食べようと提案するなど、ルーシーのワルぶりがどこまでも強調されます。
最後には、自分を突き飛ばしたフレディを脅迫したことがトドメとなり、とうとう団結した社員たちの手によって殺されてしまいます。
ルーシーが願った「社員のチームワークを高める」という旅行の目的が、とんでもなく皮肉な形で実を結んで物語は幕を下ろしたのです。
まとめ
名優デミ・ムーアが弾けた演技を見せるハードなブラック・コメディ『コーポレート・アニマルズ 社畜たちの研修旅行』。
洞窟に閉じ込められ極限状態に陥ったCEOと社員たちの運命が、奇妙な方へと転がっていく姿が描かれます。
「とんでもないワンマン社長と社畜」というこわい構図ですが、かけ合いのセリフや間の面白さにいつの間にか夢中になってしまう一作であり、ルーシー社長を演じるデミ・ムーアや社員を演じる俳優たちも、悪ノリして楽しんでいるのが伝わってきます。
観終えた後は、独特なテイストのブラック・ユーモアに魅了されていることでしょう。