連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第137回
いくつもの大手会社が告発され、働き方改革も世に浸透してきた現代においてもなお、ブラック企業の告発は止むことがありません。
多くの忍耐が必要とされるストレス社会では時に日常こそが「絶望」そのものであり、非日常が「希望」となることがあります。
ブラック企業に就職し追い込まれた青年が、「ゾンビ」パニックに陥った社会で「希望」を見つける映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』の作品情報
【配信】
2023年8月3日(日本映画)
【監督】
石田雄介
【脚本】
三嶋龍朗
【キャスト】
赤楚衛二、白石麻衣、栁俊太郎、市川由衣、川﨑麻世、早見あかり、筧美和子、北村一輝
【作品概要】
ドラマ化された漫画「今際の国のアリス」の麻生羽呂が原作を務めた同名漫画を、多くの映画やドラマで演出を手掛けた石田雄介が映像化した作品。
ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』での主演以降、話題の俳優として勢いに乗る赤楚衛二が主演を務めました。
映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』のあらすじとネタバレ
1年前、新入社員として映像制作会社に入社した天童輝は、小杉がリーダーを務めるCM部門に配属されます。
美人な先輩の鳳も居る理想の職場として胸を燃やす輝でしたが、その職場は初日から2日間も徹夜を強要されるいわゆるブラック企業でした。
仕事の話が原因となり、学生時代のアメフト部の親友・竜崎憲一朗(ケンチョ)とも喧嘩してしまった輝は、自殺願望を持つほどに追い詰められていきます。
1年後、会社に行きたくない気持ちを募らせる中で家を出た輝は、マンションの人間がゾンビとなっている様子を目撃。
飛行機が墜落し、街がゾンビに溢れ崩壊する様子を見た輝は、もう会社に行かなくて良いことに気づき歓喜しました。
1日目、初出社以来の休日が出来たことに喜ぶ輝は寝て過ごすことを勿体無いと考え、仕事中の唯一の癒しであった鳳のもとに向かうことにします。
マンションの階段を使うことができないため、雨樋を伝って階下に降りていく輝は下の階に住む香坂夫婦と会い、飲み物や雑誌を仕入れてくることを約束。
鳳の指定したマンションに着いた輝は鳳が職場の社長と愛人関係にあったことを知り、ゾンビ化した社長を鳳が撲殺しますが、既に噛まれていた鳳もゾンビ化してしまいます。
輝は鳳に好意を伝えるとマンションから出て自宅に戻りますが、香坂夫婦の家はゾンビに荒らされており、自身に残された時間が多くないことを痛感。
輝はゾンビになるまでにやりたいことを成就するため、自分がしたいことをノートに記します。
2日目、ゴミ部屋になっていた部屋を掃除した輝は驚くべき行動力で次々としたいことを成就していきます。
5日目、マンションの屋上でステーキを楽しむ輝でしたが、調味料が枯渇したことからコンビニへと赴きます。
武装した三日月閑(シズカ)と出会った輝は、シズカがゾンビの音につられる習性を見抜いていることに感心し食事に誘いますが、嗜好品のために外を出歩く輝を理解できないシズカは、リスクヘッジのために輝に深入りせず去って行きました。
家で喧嘩別れしたケンチョのことを思い出した輝は、電話で連絡をとります。
ケンチョは歌舞伎町のラブホテルの個室で孤立しており、その状況を聞いた輝は後悔しないために、ケンチョの救出へと向かうことにしました。
夜、歌舞伎町に着いた輝はスピーカーを使ってゾンビを揺動しつつ、持ち前の運動神経でラブホテルに突入しケンチョと再会。
喧嘩したことを謝りラブホテルを共に脱出した輝と和解したケンチョは、「みんなを救うスーパーヒーロー」を目指す輝を手伝うことを決めます。
6日目、都心部が深刻な状況になったことを知った輝は茨城の「マリンパラダイス水族館」に、サメに噛まれても歯が貫通しない「シャークスーツ」があることを知り、ゾンビに対抗するし得る手段として「シャークスーツ」を確保することを決意。
物資を集めるため「ドン・キホーテ」を訪れるケンチョと輝は、人が乗ったバスが事故に遭遇した様子を目撃。
生存者たちを「ドン・キホーテ」に招き入れた2人は、その中にシズカを見つけます。
生存者の中にゾンビに噛まれた人間が混じっていたことで生存者たちは襲われ、ケンチョも窮地に陥ります。
シズカはケンチョを見捨て逃げようとしますがゾンビに囲まれてしまい、逆に窮地を脱したケンチョと輝が花火を使った揺動でシズカを救い出し、店内から脱出。
キャンピングカーを手に入れた輝とケンチョはシズカを乗せると3人で「シャークスーツ」があるだけでなく、要塞化し安全地帯になったと噂される「マリンパラダイス水族館」を目指します。
7日目、輝とケンチョは道中も旅気分を楽しむために、躊躇するシズカを誘いサップヨガやパラグライダー、温泉などのアクティビティを行いながら茨城に移動。
映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』の感想と評価
「絶望」の世界で「希望」を見つける物語
人が人を喰らい、知性を持たない異形の姿へと変えてしまう「ゾンビ」が蔓延した世界。
加速度的に「ゾンビ」が増殖する世界は「絶望」でしかなく、「ゾンビ」を主題とした作品の多くでは「絶望」の世界を何とか生き延びる人たちに焦点が当てられています。
しかし、本作はブラック企業に就職してしまったことで自殺を考えるほどに「絶望」していた輝が、「ゾンビ」パニックが発生したことで「絶望」から解放され生き生きとしていく様子が描かれていました。
暗い世界観に相反する「希望」に満ちた物語は、日々に鬱屈した気持ちを抱える人にオススメです。
ノリは軽いが「ゾンビ」への想いは重い
「ゾンビ」映画とは思えないほどにノリの軽い本作ですが、「ゾンビ」の演出に一切の妥協はありません。
ギャグにはできないほどに生気のない「ゾンビ」のメイクから始まり、恐怖演出や演技にもこだわり持っている本作。
物語の終盤に登場する「サメゾンビ」は、サメが「ゾンビ」になるという海外のサメ映画では定番となっている要素を邦画で見ることが出来ただけでなく、そのあまりにもおぞましい姿には、「ゾンビ」への強い想いを感じることが出来ました。
まとめ
「ゾンビ」を題材としながらも「希望」に満ちた物語が展開され、何かを始めようと考える人に前向きな気持ちを与えてくれる映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』。
グロテスクな要素はもちろん存在するため、誰にでもはお勧めできない本作ですが、少しでも耐性のある方には見ていただきたい作品。
そして、物語の終盤に登場する「サメゾンビ」のビジュアルはコアな「ゾンビ」映画ファンには必見であると、自信を持って言えるほどの、演出面において強いこだわりに溢れた映画となっていました。