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Entry 2021/03/24
Update

中国映画『陰陽師 二つの世界』ネタバレあらすじと感想評価。ラスト結末も【RPGゲームおすすめ実写化で新解釈された安倍晴明とは】|Netflix映画おすすめ24

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第24回

今回ご紹介する映画『陰陽師: 二つの世界』は、中国のオンラインゲーム会社が開発した、大ヒットモバイルゲーム「陰陽師本格幻想RPG」を実写映画化した、ファンタジーアドベンチャー映画です。

天地開闢(てんちかいびゃく)のころ、人間と妖(あやかし)がまだ共存していた時代に、9つの頭を持つ蛇妖「相柳(そうりゅう)」が“妖皇”となるため、妖怪を率い人間世界に襲いかかります。

それに対抗する陰陽師たちは神器「涂山剣(そざんけん)」を造り、相柳を討ち“鱗石(りんせき)”に封じ込めると、妖怪を追放し人間の住む城内と妖域に棲み分けるようになります。物語はそこから100年余り経った平京城が舞台です。

見どころは3か月かけて作られた、5,000平方メートルのスタジオに、晴明と妖が暮らす家や中庭を精巧に再現したセット、日本でお馴染みの妖怪がデジタルキャラクター製作され、キュートな姿で登場します。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

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映画『陰陽師: 二つの世界』の作品情報

Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』

【公開】
2021年(中国映画)

【原題】
侍神令 The Yin-Yang Master

【監督】
リー・ウェイラン

【監督】
チェン・イーウェン

【キャスト】
チェン・クン、ジョウ・シュン、チュー・チューシャオ、シェン・ユエ、ウィリアム・チャン、ワン・リークン、ワン・ツーシュエン

【作品概要】
2002年のカンヌ映画祭の“ある視点部門”に出品された『小さな中国のお針子』で共演し、中国映画界で人気の高い俳優、チェン・クンが安倍晴明、ジョウ・シュンが百旎(びゃくじ)役を務めます。

美術プロデューサーには『CASSHERN』(2004)、『GOEMON』(2008)を手掛け、台湾・中国を中心に映画プロダクション・デザイナーとして活躍する、赤塚圭仁が担当しゲームの世界観を壮大に作り上げています。

映画『陰陽師: 二つの世界』のあらすじとネタバレ


Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』

西京城には人間と妖怪を分かつ陰陽師が修練する陰陽寮があり、そこには城内に現れた妖怪を封印する封妖庫、そして蛇妖「相柳」の魂を鱗石にして封印した“鱗石禁地”があります。

ある晩、“鱗石禁地”に不穏な動きを察知した、陰陽師と老師達が駆けつけると、鱗石を封印した金塔が熔解し、晴明を残し多くの陰陽師たちが死亡していました。

晴明は「慈沐(じぼく)師兄が亡くなった・・・。」と狼狽えながら老師に伝えると、晴明1人だけ生き残ったことに不信を抱いた西残長老は、「血は争えない!おまえはやはり悪妖だ!」と、晴明の仕業と決めつけ攻撃をしかけます。

晴明は弁明もできないまま、他の陰陽師や老師に反撃しそのまま呪を唱え、別の場所へ移動し逃げてしまいました。

そこに百旎(びゃくじ)が現れ惨事の仕業は晴明だと告げられますが、信じることができません。西残長老は百旎に内官を目指すなら、情けをかけぬよう叱咤します。

晴明、百旎、慈沐は幼いころから、陰陽寮で学び修行していた学生で、慈沐は晴明と百旎にとって兄弟子の関係でした。

7年後の平京城、“鬼祭”の時期に源博雅は皇室への献上品を護送する“金吾衛”に志願し、家来を率いて城外へと出発しました。城外は妖域となり出たものは、命の保証がありません。

一行が森の中を進みしばらくすると、行く手に靄が立ち込め周囲に何者かの気配を感じます。博雅の乗る馬、献上品を載せた荷車を牽く馬も怯えて暴れだすと、前方から怪しい影が現れました。

それは3つの顔を持つ妖のふりをした、3匹のかまいたちで献上品をねらった妖賊でした。博雅はかまいたちと闘い、最後の1匹と一騎打ちになるところで晴明が現れ阻止されます。

晴明は妖から命を助けた礼に、宝物をもらうと品定めをはじめると、博雅は妖の仲間だと見破ります。しかし、晴明の呪によって宝物は守れず、根こそぎ他の妖達に盗まれてしまいました。

晴明は山奥の森に屋敷を建て、式神となった妖たちと平穏に暮していました。

その頃、陰陽寮では西残長老をはじめとした長老達が、鱗石禁地で祈祷を唱えています。外では双子の烏天狗が侵入しています。

西残長老が妖封庫の異変に気づき駆けつけると、烏天狗の呪にかけられた陰陽師が、他の陰陽師たちを惨殺していました。百旎の解呪で事態はおさまりますが、烏天狗の狙いは“鱗石”でした。

鱗石禁地に戻ると金塔は熔かされ、鱗石は烏天狗に奪われてしまいます。百旎は弓矢を放ち逃げた烏天狗を撃ち落とすことに成功しますが、鱗石はかまいたち達に奪われてしまいます。

追手の陰陽師は烏天狗を追い詰めますが逃げられ、鱗石を奪ったかまいたちをみつけるも、かまいたちは鱗石を飲み込み、奪還できませんでした。

烏天狗はアジトに戻ると女の妖怪に、何者かが差し向けた3匹の鼠妖(かまいたち)によって、鱗石を横取りされたと報告します。

晴明のところに戻ったかまいたち達は、晴明に事のいきさつを説明します。鱗石を飲み込み様子のおかしいかまいたちを見た晴明は、口の中から吐き出された妖気によって、相柳の声を聞きます。

「鱗石はついに陰陽寮の外へ出た。私をこの世に甦らせよ。それがおまえの宿命だ」

何を飲んだのか知らない晴明は、異変をおこしたかまいたちを小屋に封じ込め、鱗石に異変があったことを察すると、妖域に行くと式神たちに伝え出かけていきます。

一方、陰陽寮では西残長老が“陰陽頭(おんみょうのかみ)”に、鱗石無きあと妖封庫が騒がしくなり、護法だけでは抑えられなくなってきたと伝えます。

さらに鱗石を盗んだのは偶然ではなく、晴明の差し向けた眷属であろうと言います。7年前の雪辱を果たしにきたと考えたのです。

根拠は烏天狗が禁地の場所と、金塔を溶かす“手印”を知っていたことです。西残長老は晴明を裏切り者として、捕えて厳罰にするよう求めますが、百旎には迷いがあると口をついて言います。

そして百旎は西残長老に「立場をわきまえよ。私はすでに決断している」と告げました。

以下、『陰陽師: 二つの世界』ネタバレ・結末の記載がございます。『陰陽師: 二つの世界』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』

晴明の類まれな霊力は幼少のころ、陰陽師の教えを受ける中に開眼しました。陰陽寮の学徒達は金塔の前で、長老から相柳の魂が鱗石となって収められている歴史を聞きます。

慈沐は長老の命で“護身呪”を弟弟子たちに伝授します。すると晴明の心に問いかける声が聞こえます。それは鱗石の中の相柳の声でした。

「晴明、呪文など唱えてはならぬ・・・おまえは妖だ。我の血をひく妖怪なのだ」

晴明は金塔が溶けだす幻を見ると相柳は、「私をここから出し、私に従え」と訴えます。晴明はその声に反発し「やめろ!」と叫びます。

周囲の学友たちは、晴明に妖怪の血が半分流れていることを知っていて、晴明のことをからかいそれがエスカレートしてしまいます。

晴明は立ち上がり相柳の声に苦しみ、慈沐がその肩を抑えると晴明は正気を失い、強い波気で慈沐を吹き飛ばし、妖気を漂わせてしまいます。

慈沐は正道回復の呪文を唱え、晴明を正気に戻すと「人間も妖怪も自制できないと、身を滅ぼす」と諭し、周囲にはこの出来事を他言しないよう釘をさします。

晴明が真に仲間を裏切ったと思った百旎は、慈沐の優しさと尊敬の念から師兄の死は無駄にしないと、妖域を揺るがしてでも晴明を捕り抑えると墓前で誓います。

その頃、献上品を奪われた博雅は武衛府に赴き、妖賊を捕え献上品を取り返す“命”を与えてほしいと直談判します。

しかし、陰陽寮で起きている騒動を鑑みた上司は、逆に博雅を騎曹の任を停職し、更に3日以内に宝物を取り戻さないと投獄すると命じました。

汚名返上に闘志を燃やす博雅は、街に出て晴明の素性を探るため動きます。仙女の煙煙楽が“妖怪”に詳しく、晴明のことならそこで聞くといいと聞き、煙煙楽の店に入ります。

店には先客がいて妖域までの地図がほしいと訴えています。博雅が晴明と手合わせをしたが逃げられたので捜していると話すと、中にいた“煙煙楽”が「そんなはずはない」と博雅を攻撃し束縛します。

「そんな弱さで晴明が負けるわけがない」部屋の中には宙吊りにされた本当の煙煙楽がいて、客の少女が煙煙楽を脅して妖域の地図を奪おうとしていました。

煙煙楽は「人は妖域には入れない」というと少女は「なぜ晴明は出入りしてる?」と訊ねると、晴明は“半妖”で陰陽寮の“霊符”を持っているからだと教えます。

博雅はその事実を知ると「俺は霊符を持っているぞ」と言うと、少女は名を“神楽”と言い、晴明討伐のお供をさせてほしいと懇願します。

地図をたよりに妖域の入り口までたどり着いた2人でしたが、門の先は深い谷間になっていて、橋が無ければ妖域へは渡れません。

神楽は博雅の持っていた晴明の霊符を使い、呪文を唱えるとかがり火に炎が灯り、妖域に続く橋を現しました。

神楽と博雅は妖域に潜入していると晴明も妖域に現れました。神楽は晴明を“ご主人様”と呼び駆け寄り、博雅は宝物を盗んだ罪で役所に連れて行くとつめ寄ります。

晴明は博雅に再び妖術を掛けると、神楽は“式神”の印をもらえたと勘違いし、自分も式神にしてほしいとまとわりつきますが、晴明には相手にされません。

晴明が妖域に来た理由は、海仙楼に棲み妖域や妖怪たちを取り仕切る、海坊主に会い海仙楼にある、神器“涂山剣”を貰い受ける取引のためです。

海坊主は涂山剣を渡す条件は何か訊ねると、晴明は人間2人(博雅と神楽)を差し出すと言い、海坊主は博雅を闘技場に落として“天邪鬼”と対決させます。

海坊主は晴明を涂山剣のある部屋に連れて行きますが、そこには陰陽寮の者と百旎が先回りし、晴明を待ち構えていました。

百旎は晴明が7年前の雪辱を果たすため、かまいたちを使って鱗石を盗ませたと言いますが、晴明は自分の式神になった以上、悪妖ではないと反論します。

そして、式神の令が“生死を共にし、決して裏切らない”と、教えてくれたのは百旎ではないかと言います。

百旎と晴明が涂山剣を奪い合っているさ中、博雅は天邪鬼を倒しとどめを刺さず、海仙楼を逃げ出そうとした時、はじけ飛んできた涂山剣が博雅の足下に刺さり、それを持って外に出ます。

涂山剣を追ってきた陰陽師と妖怪に、晴明と博雅達は囲まれます。晴明を背後から狙う西残長老の矢を百旎がかばい、肩を負傷すると晴明は百旎を抱きかかえ、隠れ家へと逃げ帰りました。

けがの手当てをすると百旎の袖の袂から、桔梗で編んだ古い腕輪が落ちます。

それは子供の時、晴明が妖力を出してしまったことで、陰陽師として寮を出られるのか不安でいたとき、百旎が半妖の晴明を“式神”にすると、桔梗の花で腕輪を作って渡したものです。

その時に晴明は百旎に“生死を共にし、決して裏切らない”と誓いを立てていました。ところが7年前におきた鱗石禁地の事件の時に落とし、百旎が持っていたと知りました。

百旎は7年前の事件を“裏切り”と思っていて、都にも妖域にも居られない妖怪と共存していた晴明を信じようとしません。晴明は静かに7年前のことを語り始めます。

7年前の鬼祭の時期は相柳の声がとくに強くなり、晴明は調子を悪くしていました。禁地の見張りに行く途中、慈沐が心配し声を掛けてくれた。

「何かあったら“守護呪”を逆に唱えて自らを消すのだ」と言い、見張り役を変わってくれたと言います。

しばらくすると禁地の上空に多頭の蛇妖が影で現れ、晴明が駆けつけると同志の躯が転がり、妖封庫から逃げ出した“雪女”が、慈沐を盾に攻撃してきたと言います。

防御しとっさに出した反撃で慈沐は粉々に砕け散り、それ以来晴明は陰陽寮を出るしかなく、7年間仇の雪女を捜していたと百旎に話しました。

百旎にはその話しは通じず、師兄を死なせ7年後に再び、多くの犠牲を出したことは許されないと告げます。

表では狂暴化したかまいたちが小屋で暴れだし、その小屋が怪しいと見た博雅が扉の霊符を剥がしてしまいます。

飛び出して正気なく攻撃してくるたかまいたちを晴明は、涂山剣で刺し殺すしかありませんでした。かまいたちは灰になるとその体の中から、鱗石がでてきて晴明は驚きます。

そして、それをみた百旎は晴明が騙したと更に恨み、鱗石を取り戻すと「今回だけは見逃す」と言い残し、晴明の元を去っていきました。

ところが百旎は雪女の妖術で陰陽寮には戻れず、別の場所に移されてしまい、“卦(け)”を使い百旎の居場所まで駆けつけた、西残長老たちも一緒に雪女の罠にはまってしまいます。

雪女の襲撃で一団は全滅し、百旎も危ういところで晴明に救われます。晴明は「7年前の恨みをはらす。おまえの主は誰だ?」と、問うと知りたければついてくるがいいと雪女は消えます。

百旎は晴明の言うことを信じなかったために、長老と家臣を失ったと後悔します。晴明は生死を共にし、裏切らないと百旎に言い残し雪女を追います。

晴明は雪女の口から「慈沐様こそ我らの恩人・・・」と主であることをあかし、7年前のことは全て慈沐の企てた計画だったと知ります。

1人残った百旎のところにはその慈沐が現れ、晴明が妖力を見せた時から陰陽寮での地位などに興味はなく、圧倒的な妖力を得るため鱗石を奪うチャンスを狙っていたと語ります。

百旎は鬼の手によって気を失い、慈沐は鱗石を自分の体に取り込み、邪悪な妖へと姿を変え最強の妖力を手に入れ、妖域で妖怪を邪悪な下僕に変えていきます。

晴明の里では悪妖が鱗石を使って、妖域の道を開いてしまったことを悟り、家を焼き妖怪が都に攻め入ることを阻止するため、戦に行く覚悟をはじめていました。

海仙楼に来た晴明は妖怪となった慈沐から、真相を全て聞くことになりました。

慈沐は妖封庫の雪女を“式神”にして、禁地の見張りを殺させました。そして、“手印”を使って金塔を熔かし、鱗石を奪おうとしますが人は鱗石に触れることができず、晴明が駆けつけたため、事態を晴明に擦り付け慈沐は雪女と姿を晦ましました。

鱗石の力を得た慈沐の妖力はすさまじく、かつて相柳を倒した涂山剣でさえも、歯が立たないほどに力を蓄えていました。

晴明は妖域との界橋で、妖怪の侵攻を阻止するため駆けつけた、式神や神楽、博雅の前で毒牙で体を突き抜かれ、奈落へと落とされてしまいました。

それでも式神たちは晴明の意思を受け継ぎ、最期まで戦うことを諦めずに立ち向かいます。そのころ奈落の底で晴明は、百旎の幻影をみます。

それを相柳のまやかしと見抜いた晴明は、相柳の真の狙いが慈沐ではなく、晴明であると再認します。相柳は慈沐に心臓を突かれたことで、晴明と一体になった言います。

慈沐は鱗石の妖力を得ただけで、相柳そのものを復活させられるのは、妖の血を引く晴明でないとできません。

相柳は慈沐を倒し仲間や百旎を救いたければ、己を主とし一体となれば、勝ち目はあると惑わします。

相柳は晴明を脅かすために慈沐を利用し、民を犠牲にしたと知ると激しく憤ります。晴明は鱗石を慈沐の体に封じ込め、妖怪や人間の世界を守るために、自分の命や体と消す“護身呪”を逆さに唱えはじめます。

そして晴明は逆に相柳に「我を主とし式神になるならば、鱗石から解放する」と言います。相柳は晴明の式神となり、晴明の中に解放されました。

晴明の式神となった相柳は慈沐を倒し、晴明は残った式神の式神令を全て解き、百旎との縁も断ち切ると、妖域へと向って入っていきます。

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Netflix映画『陰陽師: 二つの世界』の感想と評価

Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』

Netflixでは2021年2月に「陰陽師: とこしえの夢」を配信したので、その続編が早くも配信なのか?と、思った方も多いと思われますが、本作は夢枕獏の原作ではなく、2016年にリリースされた、スマートフォンアプリゲーム「陰陽師本格幻想RPG」を基に実写化した作品になります。

リリースされ4年が経った今も根強い人気があり、コアなファンから多く愛されているがゆえ、ゲームの世界観を大切にすることが課題になっていたようです。

リー・ウェイラン監督をはじめ、招集されたアートディレクター達が造り上げた、陰陽師の世界観は背景の精密さ、デジタルキャラクターの繊細な表情の機微まで、観る者の感情をグッと引き込む力があると感じました。

人間だからこそ“善道”から“悪道”へと変貌する


Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』

慈沐は優秀な陰陽師として、師からの信頼も厚く弟弟子への気配りや面倒もできる、お手本的な存在でした。

一方、晴明は妖の血を引く半妖で捨て子という、人間から蔑まれる存在でしたが、本来具わっている“妖力”は人に恐怖を与えると共に、野心のあるものにとっては嫉妬の対象となりました。

慈沐は自分は“優秀”であると、いう自覚があったがゆえに、下等な晴明に底知れぬ力が具わっていることが許せず、虎視眈々とそれ以上の力を得ようと、善道を捨て悪道へと躊躇なく進んでしまいました。

妖怪の思考は単純です。忌み嫌われる悲しみや、自然界への感謝や慈しむ気持ちは深いものでした。

つまり晴明には人への尊敬や感謝、妖が感じる万物への愛着の両方が具わっていたため、人間が抱いてしまう嫉妬や差別がありませんでした。

力こそ全てと転換してしまった慈沐は、“力で天下を抑えたい”と悪道に進み、かつて晴明に「人間も妖怪も自制できないと、身を滅ぼす」と諭したことを自ら示してしまったのです。

RPGゲームが生んだ、新解釈の“安倍晴明”


Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』

「陰陽師」の安倍晴明といえば、母は白狐の化身“葛の葉(くずのは)”で、師匠は“加茂忠行”が定番といえるでしょう。

ところが本作は、ゲームの中に登場する晴明が基になっています。その設定は都で天才陰陽師と名高く、過去の記憶は失われていて、ゲームを攻略しながら思い出していくものでした。

“謎”の多くすることで、晴明のイメージを固定せず、自由な発想で描く晴明なのでしょう。

映画の中の晴明もこれまでとは趣が違います。蛇妖の血を引くのか?と思わせたり、特定の“師匠”も付けないことで、鑑賞者(プレイヤー)が師匠になります。

クエストを攻略させ、鍛錬し育てるというRPGスタイルを、博雅や神楽との出会い、涂山剣を手に入れる、相柳の惑わしをどう受けるかで運命が変わる・・・そんな表現したのでしょう。

まとめ


Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』

映画『陰陽師: 二つの世界』はゲームの世界観のファン、「陰陽師」のファンがどのような感想を持つのか?鑑賞後の評価にも興味関心が深まる作品でもあります。

本作は中国人の制作者が中心となって、日本の平安絵巻を描いています。海外の映画で表現される日本は、どこか滑稽でありえない表現も多くありますが、本作は平安時代に出てくる日本の妖怪、城下町の雰囲気を大きく損なうことはありません。

日本の妖怪が出てくるファンタジー映画として、秀逸かつ日本へのリスペクトを感じさせる作品なので、なんの予備知識もない人が観て純粋に楽しめる作品です。

あえていうならば観賞者が、妖怪のように単純でピュアな気持ちで観れるか?人間の忌まわしい本性と向きあうことになるのか?感じた気持ちが“二つの世界”に分かれる・・・そんな作品であるともいえるでしょう。

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