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Entry 2021/02/11
Update

映画『陰陽師: とこしえの夢』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。夢枕獏の原作小説を中国の実写化で豪華絢爛なアクションに仕立てる|Netflix映画おすすめ18

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第18回

人の“執念”や“欲”とは格も恐ろしく、古ではそれらを糧とし成長する蛇が“禍蛇”という妖魔となり、世の中に悪影響を及ぼす存在として忌み嫌われていました。

映画『陰陽師: とこしえの夢』は、その“禍蛇(かだ)”と呼ばれる悪霊化した大蛇がたびたび人々を脅かすため、四神によって封印されます。しかし、再び蘇ろうとする影が現れそれを阻止するために、若き陰陽師“晴明”と若き法師“博雅”の2人が立ち向かう作品です。

監督と脚本にはファンタジー作家でもあるグオ・ジンミン。主演には台湾系カナダ人の俳優マーク・チャオと映画初出演の中国人俳優ダン・ルンが務めます。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

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映画『陰陽師: とこしえの夢』の作品情報

Netflixオリジナル映画『陰陽師: とこしえの夢』

【公開】
2021年(中国映画)

【原題】
陰陽師:晴雅集 The Yin-Yang Master: Dream of Eternity

【原作】
夢枕獏

【脚本/監督】
グオ・ジンミン

【キャスト】
マーク・チャオ、ダン・ルン、ジェシー・リー、ワン・ツィウェン、ワン・デュオ

【作品概要】
夢枕獏の原作の「陰陽師」シリーズは日本でも『陰陽師』(2001)と『陰陽師Ⅱ』(2003)で映画化されていますが、同氏の作品の世界観を存分に再現したのは「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」の『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』(2018)と、いえるでしょう。

その『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』 (2018)で、芸術監督を務めたトゥ・ナンが『陰陽師: とこしえの夢』の製作にも携わりました。

また、他にもアジアで絶大な才能を発揮しているクリエーターが集結し、日本版とは違った脚本と豪華な映像美で配信動画としては、超ハイレベルで大迫力なファンタジー・アクション映画を完成させました。

音楽には「機動警察パトレーバー」シリーズ、「イップマン」シリーズなどを手掛けた川井憲次、特殊効果には韓国から『Okja オクジャ』(2020)の“スタジオ4th Creative Party”、衣装デザインには台湾のジェイミー・ウェイ・ホァンが担当しています。

映画『陰陽師: とこしえの夢』のあらすじとネタバレ

幼い晴明は“守護呪”がどうしても出せないと、師匠に出す方法を訪ねます。

「晴明よ。命を懸けて守りたい者はいるか?」晴明は“母”と答えます。晴明は母の正体が狐だと噂され、人から追われ彼だけが逃れていました。

晴明は母を思い続け“守護呪”を出す修行をしますが、青年になっても会得できず師匠に「守護呪は必要なのか」と尋ねます。師匠は“守護”の意味がわかない彼が気がかりでした。

晴明は目の前に危険が生じたら、別の世界に移動させれば避けられると考えていました。それを聞いた師匠は“小賢しい”とつぶやき「真の強大な敵と出会ったらどうするつもりだ?」と聞きます。

「“守護呪”は陰陽師にとって最も基本で最強の印相。使えないのなら真の陰陽師とは言えない」と晴明に告げ、再び聞きます「この世に守りたい者はいるか?」彼は答えられずに師匠にはいるのかと訊ねると、「いる」と即答されます。

すると厚い氷の山で鎖した鳥居の先にうごめく蛇の魔物が現れ、師匠は対峙するために晴明を別の次元へと逃がし、“雪天狗”、“金霊子”、“狂画師”の式神を召喚させます。

式神達は氷の結界が破られぬよう術をかけますが、大蛇の強大な力で一部が破かれます。すると弟子の陰陽師が時空を超えて現れ、一斉に“守護呪”を唱えますが、晴明だけは使えません。

大蛇は毒牙を放つと晴明は別時空へ放とうとします。ところが師匠が晴明の前に立ちはだかり、身を挺してその毒牙を受けます。

金霊子は師匠の最期を悟ると、最後の力をふり絞り「お仕えできたことは喜びでした」と大蛇の中へと飛びこみ大蛇を弱らせ、残った式神と師匠は再び氷の中へと封じ込むのでした。

大蛇は“禍蛇(かだ)”といい、この世が天地もない混沌とした時代からいる生物で、執着や欲を糧として、衰えず永遠に生き続けている妖魔です。

しかし、倒したと思われた禍蛇も影にすぎず、本体は東の国の“天都城”にいるある者の体を“器”として、封印をしていると師匠は語ります。

そして300年前、東西南北の4つの流派が力を合わせて、天都城に封じ込め“青龍”、“朱雀”、“白虎”、“玄武”の四神像に守護させた・・・。その後も影が現れるたびに、各流派の法師が天都に赴き影を斬ってきました。

師匠は晴明に言います。蛇を斬るものは常にいて、今はそれが晴明「東へ向かえ」と・・・。さらに彼には人々を導く血が流れている。“陰陽師”としてその名を世に広めよ。と、言い残し絶命します。

天都城の城下町はにぎやかで平穏な様子でした。城の中では禍蛇の影が動きを増してきたことで、法師達が天都に集結するだろうと、女帝と思しき女性の髪をとかしながら語る女と男がいました。

運河から城下町へ入った晴明はどこからか聞こえる笛の音に耳を傾けていますが、その笛の音が止まると、妖魔の気配を感じとります。そして、笛を吹く黒装束の男もその妖魔の気配に気づきます。

妖魔は静雲台に献上された、“玄象”と呼ばれる琵琶を盗み逃げていました。昔、好いた女が宮中で弾いた、玄象の音色を聴きたかったと言います。それでも黒装束の男は妖魔を捕え殺そうとします。

晴明は「懐かしがっているだけ、妖魔にも情けはある」と妖魔に情をかけ、琵琶をもらい男に「琵琶を返せば許してくれるか?」とさしだすが、人は許すが妖魔は許されないと攻撃します。

妖魔は逃げ、晴明と男の闘いになりますが、瞬間移動の術を巧みに使い町中へまぎれました。すると建物の片隅に隠れた妖魔が晴明に声をかけ、晴明の式神になって仕えたいと志願します。晴明は“殺生石”と名乗る妖魔に式神になる術をかけました。

一方、玄象を静雲台に持ち帰った男のもとに、宮廷からの聖旨が届いていました。各地で禍蛇の影が出現し、天都の本体が覚醒する危険が迫る、数百年に渡り天都を守り、妖魔を屈服させてきた静雲台に、禍蛇を斬るという勇猛な者がいれば参内せよというものでした。

黒装束の男が宮廷に参上するとそこには晴明もいました。男が「妖魔に肩入れするような男がどうして?」と訊ねると“祭天大典”のためだと答えます。

晴明は男を“博雅”殿と呼び「手が先に出るような男も堂々と入ってきている」と言います。それを見ていた女の法師“阿瀧(アーロウ)”は、博雅のことを宮中の女の憧れの君だと紹介します。

そこに“鶴守月(かくしゅげつ)”と呼ばれる、内廷の法師が現れ、明日に備え早く休むよう促します。その顔を見た晴明は驚きます。師匠の面影に似ているからです。

以下、『陰陽師: とこしえの夢』ネタバレ・結末の記載がございます。『陰陽師: とこしえの夢』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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Netflixオリジナル映画『陰陽師: とこしえの夢』

宮中の政の中心である司天監を統括していたのが鶴守月です。阿瀧が四方を妖魔から守るという虫を放つと、鶴守月は司天監は既に結界で守られていると見せます。

しかし、祭天大典の朝、公主“長平”に謁見する時間が経っても、もう一人の法師である“泓箬(ホンルオ)”は参上せずにいました。

公主が姿を現すと阿瀧は「公主は並外れた権謀に優れ、30歳に近づいても嫁ごうともせずに、女帝からの信任も厚い・・・妖術も使うとか」と、晴明に話します。すると、付き人が泓箬法師の死を知らせに駆けつけます。

女帝は祭天大典前に人が死ぬとは不吉と、残った法師達に泓箬法師の死について調査をすることと、四神の霊力が衰えていると懸念し、妖魔の魂を集め四神に与え呼び覚ますよう命じます。

結界が張られているにも関わらず、泓箬法師は妖魔によって殺害されていました。阿瀧は妖魔を見つけだす方法があると試すと、晴明に反応を示します。晴明は「母が狐だと噂が・・・」と言いかけると、博雅が晴明ではないと釈明します。

博雅は晴明の部屋に動きがあれば反応する、“鈴”を仕掛けていたからです。晴明は袂から人を偵察をする“借声虫(かりこえむし)”を仕掛けた者がいると取り出すと、その虫に反応しました。

泓箬法師は前回の祭天大典にも参加している。そして、晴明の師匠忠行も斬蛇人だったが、急逝したと話すと、妖魔への反応が公主の方へと動き出します。

阿瀧は反応は間違えることが多いと弁明すると、公主は「祭天大典には失敗は許されない。3日のうちに四神を復活させよ」と法師達に命じます。

博雅は妖魔をひどく憎んでいます。晴明は「妖魔の方が単純で誠実だ」と言いますが、博雅が「ならば妖魔になればよい」というと「それもいい・・・私の母は狐だと言うしな・・・」と返すと博雅はその話しは2度とするなと強く反抗します。

その晩、晴明は鶴守月と面会し以前に面識がないかと訊ねます。そして、泓箬法師の死に関係しているのではないか問い出します。

また、禍蛇の本体が女帝の体にあることは、忠行から聞いていると話します。鶴守月は己は忠行の式神で女帝を守るよう残され、忠行亡き今、まもなく鶴守月の命も消えると、泓箬法師の死に関係していないと示します。

博雅、阿瀧、鶴守月は順当に妖魔の魂を集め、四神に与えていましたが、晴明が任されたのは最も困難な“青龍”です。式神に町で起きてる怪事件を調べさせ、より強い執着と欲を持った妖魔を探していると、博雅に話します。

その時、司天監に妖魔が侵入したと周知する声が響き渡ります。

妖魔は公主の体に入り込んでいました。晴明は妖魔の正体を“纏念(てんねん)”と呼び、人の欲を糧にした強い妖魔だと言いつまり、公主の執念はかなり強いと話します。

晴明は公主の体から纏念を吸い自分の体に移すと、博雅が術を念じ晴明の中から妖魔の魂をつまみ出しました。晴明は纏念の魂を青龍に与え復活させます。

そして、晴明は博雅と共に酒を酌み交わそうと誘い、博雅の母が狐によって殺されていたと知ります。博雅は人々を苦しめる妖魔を倒すために静雲台に入ったと話しました。

一方、晴明は自分は狐の子だと人々から追われる日々で、よくしてくれたのは師匠のみだと話します。しかし、その師匠の命を絶ってしまった時のことを博雅に見せます。

師匠忠行は人を愛し愛された証の“芳月剣”を女帝に渡してほしいと晴明に託すと、禍蛇に取り込まれないよう、最後のとどめを刺させました。

晴明と博雅の2人は境遇の違いを乗り越え、同じ悼みを持つ者同士で静かな友情が芽生えはじめます。

阿瀧は借声虫を使って公主を探り何かを見ます。そしてその晩、宮廷の法陣が破られ事態が動きます。

晴明が女帝の部屋に行くと女帝の寝室から阿瀧が飛び出し、それを追って鶴守月が斬りつけます。阿瀧が逃げようとしたところに博雅が現れ、鶴守月は阿瀧が女帝を殺そうとしたと訴え、阿瀧はそれを否定し四つ巴になります。

ところが髪の妖魔が現れ阿瀧は首を絞められ、いまわの際で晴明に“女帝・・・公主”と言い残し死んでしまいます。

博雅は2人の法師が髪の妖魔に襲われ死んだことに恐怖を覚えますが、晴明は本当に恐ろしいのはその妖魔を操る人間で、犯人は公主だと言います。

一方、公主は鶴守月に髪の妖魔の操りを誤り泓箬法師を死なせた上に、なぜ阿瀧までも殺したのか問い詰めていました。理由は阿瀧に公主と女帝の関係を知られたからです。

さらに鶴守月は公主に禍蛇を蘇らせるには、禍蛇を殺そうとする法師が邪魔だと言い、死に際に阿瀧が晴明に秘密を話した以上、生かしてはおけないと言います。

逆に晴明は禍蛇を降臨させようとして、女帝を襲ったのは公主だと、阿瀧が言い残したこと博雅に教え、公主は禍蛇を封じ込めた、女帝の体を壊そうとしていると語ります。

公主を信じる博雅は鶴守月の方が怪しいと言いますが、晴明は鶴守月を忠行が女帝を守るために残した式神だと教え、陰陽師と誓いを結んだ式神は、命が尽きるまで仕えると説明します。

幼いころから公主を知る博雅は信じようとしませんが、公主の執念が青龍を覚醒させるほどに強かったことが物語っていると言います。

博雅は公主を信じて鶴守月を探りに、晴明は公主を探りに動きます。晴明は博雅に“鶴守月”と書いた、式神を操る陰陽符を渡し、鶴守月が嫌がることを命令し反抗すれば、師に背いた事になると伝えます。

博雅は晴明に危険が迫ったら名前を呼べと鈴を渡します。すると晴明ももう一枚の符を渡し危険が迫ったら名前を呼ぶよう、互いに真の犯人に用心するよう祈りました。

晴明は禍蛇が覚醒すれば、禍蛇の血を浴びた剣が禍蛇に反応すると言い、“芳月”と名付けられたその剣を師から預かっていると言います。すると公主は動揺し目に涙を浮かべます。

博雅は晴明の言った通り、鶴守月に右腕を斬るよう命じます。その時、鶴守月の背後で髪の妖魔がうごめきました。

公主は芳月剣を手に取ると涙を流します。晴明は振り返ったその公主を見ると「あなたは何者なのですか?」と、訊ねます。公主が「私は・・・」と言いかけると、髪の妖魔が公主の首を絞め殺します。

髪の妖魔は恋人の宮中絵師が他の女に心変わりし、殺された女でした。絵師の心を奪った憎き女を殺せて無念が晴れたと、妖魔は力を失いました。妖魔は式神の符と呪った女の画を持っていました。その絵は公主の顔をした女帝でした。

晴明は公主が女帝であることを悟り、禍蛇を宿す女帝は死なないことに気づきます。禍蛇を蘇らす理由はまだわかりませんが、鶴守月が紙人形の女帝をおき、老いない公主をカムフラージュしたことまではわかりました。

女帝を守るために残った鶴守月は、前回の祭天大典に参加している泓箬法師に秘密がバレないよう殺害し、公主と共謀し他の法師達に疑心暗鬼の種をまき画策しました。

不老不死の体が得られる人魚の肉を食べた公主は、何百年も名前や身分を変え生き、宮廷に入り女帝になると、その身体に禍蛇を封印させたのです。永遠の命と禍蛇に運命を縛られた女帝の心は孤独でした。

ところが祭天大典を催した時に忠行と出会い、2人は愛しあいます。女帝の体に禍蛇が封印されていると知った忠行は、斬蛇人ゆえに天都城を去ると決めます。そして、女帝を守るよう命じた式神を残したのです。

鶴守月は女帝をなぐさめるために、忠行と同じ容姿となり仕えました。しかし、忠行が死ぬと自分も消えてなくなります。鶴守月は忠行の命令以上に女帝を愛し一生守ると誓っていました。女帝は忠行に思いを馳せながら、鶴守月が消えてしまうことにも怯えました。

2人は禍蛇を蘇らせその力を鶴守月に取り込み、共に生きようとしました。ところが禍蛇の欲望を満たそうとする鶴守月は、禍蛇の背に乗ると天都の町を破壊し始めます。

女帝は逃げまどう天都の人々の姿を見て、鶴守月と共に禍蛇から飛び降り死のうとしますが、禍蛇は2人を飲み込み鶴守月だけが姿を現します。

晴明は雪天狗、狂画師、そして殺生石の式神を召喚させますが、禍蛇の力を得た鶴守月は手に負えなくなっています。そこに四神の象が覚醒し、天都に再び結界を張ろうとしますが、朱雀を任された鶴守月は妖魔の魂を授けなかったため覚醒しません。

博雅は自分の血を朱雀に授け覚醒させると、駆けつけた晴明に「俺をお前の式神にしてくれ」と頼み、黒い翼を持った式神となり鶴守月との激しい攻防を繰り広げます。

晴明は女帝のもとに移動すると、亡霊と佇む女帝に忠行の最期の記憶を見せます。忠行は人を愛し愛されたことで満足し、やり残したことはないとないと告げると、女帝は忠行を失った自分は、何を残したらいいのか聞きます。

“この世界で唯一無二のあなたには、人々の運命が溶け込んだ血が流れている。だからこの世にその名を残すのです”と言い、「その名を永遠に忘れることはない」そう言うと振り返り女帝に剣をさしだして「芳月・・・」とつぶやきます。

芳月が剣に手を伸ばすと、そこには見えない壁があり、触れることなく忠行の体は消えて亡くなりました。芳月は晴明とともに鶴守月の前に現れます。

晴明が芳月剣を博雅に手渡すと、鶴守月に反撃しますが強大な力をもった彼は「本物の“守護呪”を見せてやる」と言い放ちます。

すると芳月は剣を抜いて首にあて「守りたい者が無くなれば・・・」と言います。体内から禍蛇がなくなれば、不老不死ではなくなると芳月は言い自死します。

守護呪が解けた鶴守月に芳月剣が刺さると彼の力はみるみる失いますが、その剣を抜き博雅に向けて投げます。晴明は博雅を守りたいと一心に願います。

そして、“陰陽師の意義は勝ち負けではなく、守ることにある。守りたいものをみつけその名を残せ”という師の言葉を理解した時、晴明は最大級の“守護呪”を出し、芳月剣で鶴守月を倒しました。

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Netflix映画『陰陽師: とこしえの夢』の感想と評価

映画『陰陽師: とこしえの夢』は、様々な形の“愛憎”が「絆」となって描かれていました。忠行と芳月や師匠と弟子、晴明と博雅・・・人間と妖魔などです。

強い絆とは“情”だけではなく“憎”の部分も存在し、思いが深いほど複雑に絡み強くなる。それがストーリーや演出に反映されていました。

鶴守月の思いは常に芳月に向いていて、芳月の愛は忠行にあり“憎”は別の方に向いていました。どちらかが偏ったときに歪んでいくものなのだと感じました。

さて、愛憎のぶつかり合いとして、晴明と博雅の出会いの対決シーンは、マーク・チャオとダン・ルンが代役なしで、10日かけて撮ったというアクションシーンで、見どころの一つとなりました。

また、鶴守月役のワン・ドゥオの妖艶な美しさと、黒い翼を生やし勇猛な式神となったダン・ルンの激闘シーンも必見です。

原作版・日本版での「禍蛇」

Netflixオリジナル映画『陰陽師: とこしえの夢』

作中に登場する「禍蛇」と呼ばれる大蛇は、世の中の“執念”や”欲”を糧に大きく成長するとされています。

原作「陰陽師」では『白比丘尼』という章で登場します。300年前に人魚の肉を食べた白比丘尼は、不老不死となり人と関わる中で生じる、執念や欲が体の中で蛇となり、30年に一度は蛇を祓わないと、本人が“鬼”と化してしまうという話しでした。

日本版の映画『陰陽師』では禍蛇は登場しません。宮中を守る者として、人魚の肉を食べさせられた巫女が登場します。そして、政略のため妖術をかけられた姫が、嫉妬や欲で鬼になってしまうという設定です。

“とこしえの夢”では女帝として都を守る立場になった芳月が登場します。中国神話に登場する人類を創造した女神、“女媧(じょか)”の話しとも似ています。

本作に登場する“祭天大典”とは蛇を祓う儀式で、芳月は長年祓われ生きてきたのでしょう。しかし、愛した者に禍蛇を抱える器と知られ、離れ離れになってしまう悲恋でもありました。

ニューヒーロー中国版「晴明と博雅」

Netflixオリジナル映画『陰陽師: とこしえの夢』

晴明と博雅はお互いが母親の仇という関係性で友情が芽生える過程には、“都を守る”という共通の使命があってそれを成すには、信頼こそが強みになると解っていたから成立しました。

つまり個人の感情よりも、成し遂げる使命の大きさが勝ったのです。その上で晴明のユーモアさや柔和な思考と博雅の正義感と冷静沈着な思考が功を奏し、強い友情へと導きました。

本作の晴明と博雅はこれまでの『陰陽師』作品にはない、新しいキャラクターです。妖術の晴明と武術の博雅、2人で1つの最強ヒーローが誕生したと、言って過言ではありません。

まとめ

映画『陰陽師: とこしえの夢』は、アジアが誇るクリエーター達が一丸となって作り上げた、東洋一の傑作ファンタジーを余すことなく表現していました。つまり、原作「陰陽師」は日本だけのものでなく、アジア全体で不動の人気を誇っていて、それを示したのです。

グオ・ジンミン監督も「神秘的でエレガントでありながら、危険と困難も併せ持った東洋の世界を視覚化したかった」と熱望しており、それが実現できたと言えます。

鑑賞後、“晴明”と“博雅”の活躍と優美な世界観を観れるのが、この1作だけとは信じたくありませんでした。ぜひ、シリーズ化して新しい作品ができることを期待してやみません。きっとそう思われた方も多かったことでしょう。

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