連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第99回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第99回は、アントワーン・フークア監督が演出を務めた、映画『ティアーズ・オブ・ザ・サン』です。
内戦下のナイジェリアにて、ウォーターズ大尉率いるアメリカ陸軍特殊部隊SEALのチームは、現地で難民の治療に当たっているアメリカ人女性医師の救出任務を命じられました。
しかし彼女は難民を見捨てて逃げるわけにはいかないとこれを拒否。ウォーターズたちは任務を完遂するべく、1人の女医と28人の難民の救出を決意するも、300人もの反乱軍の兵士によって行く手を阻まれてしまう物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
ブルース・ウィリス主演で贈る、2003年製作のアメリカの戦争アクションドラマ映画『ティアーズ・オブ・ザ・サン』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『ティアーズ・オブ・ザ・サン』の作品情報
【公開】
2003年(アメリカ映画)
【脚本】
アレックス・ラスカー、パトリック・シリロ
【監督】
アントワーン・フークア
【キャスト】
ブルース・ウィリス、モニカ・ベルッチ、コール・ハウザー、イーモン・ウォーカー、ジョニー・メスナー、ニック・チンランド、チャールズ・イングラム、ポール・フランシス、トム・スケリット、マリック・ポーウェンズ、ピーター・メンサー、ジミー・ジャン=ルイ、チャド・スミス、フィオヌラ・フラナガン
【作品概要】
『リプレイスメント・キラー』(1998)や「イコライザー」シリーズのアントワーン・フークアが監督を務めた、アメリカの戦争アクションドラマ作品です。
「ダイ・ハード」シリーズや『アルマゲドン』(1998)のブルース・ウィリスが主演を務めています。
映画『ティアーズ・オブ・ザ・サン』のあらすじとネタバレ
人口1億2千万、250に及ぶ民族を抱える国ナイジェリアで、油田の利権をめぐる部族対立による紛争が勃発。
亡命中のムスタファ・ヤクブ将軍やイスラム教系フラニ族などが率いる反乱軍は、長年ナイジェリアに供給されてきたアメリカ製の武器を使ってクーデターを起こし、ナイジェリアのアズーカ大統領の民主政権を転覆させました。
クーデターに勝利したフラニ族は、散発的な武力行使を継続。「違う教会に通っている」という理由だけで数万人が殺され、あるいは処刑されました。
フラニ族と反目していたキリスト教系イボ族の大半は殺戮を恐れ、家を捨てて安全な避難先をあてもなく探し求めました。
ヤクブ将軍は実質的にナイジェリア全土を掌握し、アズーカ大統領とその一家を全員処刑しました。
国際連合(通称:国連)が反政府軍への対応を検討する中、アメリカはナイジェリアにある自国を含めた世界各国の大使館職員や在留外国人を救出。
ヘリを使ってナイジェリアから脱出させ、アフリカ沖の海域に停泊するアメリカ海軍の航空母艦「ハリー・S・トルーマン」に避難させました。
アメリカ海軍のA・K・ウォーターズ大尉率いるアメリカ海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」は、ハリー・S・トルーマンに座乗(海軍で、司令官などが指揮のために軍艦・航空機に乗り込むこと)していたネイビーシールズの指揮官ビル・ロード大佐から新たな任務を命じられます。
ナイジェリアの村にある教会に開設された救済医療センターで医療活動に従事している、アメリカ国籍を持つ国際救済法師団の女性医師リーナ・F・ケンドリックスです。
また本人たちの希望があれば、リーナと一緒にいる神父と尼僧2人も救出対象となります。
ロードから任務内容の詳細を聞いた後、ウォーターズたちは輸送機に乗り込み、カメルーン上空からメゾン川の降雨林際に降下。
そこは敵地でしたが、難なく救済医療センターに辿り着くことができました。
しかしリーナは、「現地人を含む患者と一緒でないなら脱出しない」と拒否したのです。
頑なに意見を曲げないリーナに根負けする形で、ウォーターズは「70人の患者のうち、自力で歩ける者だけなら…」と彼女に告げ、彼女と28人の避難民を連れて脱出用のヘリが待つアルファ地点に向かいました。
その道中、ウォーターズたちの元に反乱軍のゲリラ小隊が接近。ウォーターズたちは声を漏らさぬよう息を殺し、一箇所に固まって隠れて何とかやり過ごしました。
しかしその直後、敵兵1人が接近。見つかってしまったリーナは銃口を向けられるも、ウォーターズによって命を救われました。
何とか無事にヘリと合流したウォーターズたち。ですが、ヘリに乗れたのはウォーターズたちネイビーシールズとリーナだけでした。
ウォーターズに命を救われ、彼への認識を改めたリーナは、騙したのかと彼を非難します。ウォーターズは動じることなく、反抗する彼女を強引にヘリに乗せ、その場から飛び立ちました。
映画『ティアーズ・オブ・ザ・サン』の感想と評価
ウォーターズは物語の中盤まで、リーナの救出という課せられた任務を最優先に考えていました。
ですが、実際に避難民を見捨て置き去りにしたことでどんな結果を生むのか、反乱軍の焼き討ちにあった救済医療センターの惨状を見て知ったことで、彼は認識を改めます。
ジーたち彼の部下は最初、命令を無視してリーナと避難民たちをカメルーンとの国境まで送り届けようとしているウォーターズの行動が理解できませんでした。
ウォーターズ自身も戸惑っていました。おそらく彼にとって、初めて命令違反をしたからでしょう。
ですが、いくらリーナから非難されようと動じることはなかったウォーターでも、反乱軍が行う非人道的行為を黙って見過ごすことはできません。
実際、ウォーターズたちの視点で見る反乱軍の悪行は、思わず目を逸らしたくなるほど惨たらしく酷いものばかりでした。
それからというもの、たとえ避難民が増えようとも、押し寄せる敵の数が自分たちの倍以上いても、ウォーターズたちは避難民を見捨てたりしません。
そして命令を無視して、避難民全員をカメルーンとの国境まで送り届けると決断したウォーターズに賛同してついてきたことを、死んでいった彼の部下たちは誰一人として後悔していませんでした。
ヘリに乗ってその場から飛び立っていったウォーターズたちの姿を見る頃には、最後まで諦めず任務を全うした彼らに感謝と尊敬を意をこめて、思わず敬礼したくなるほど感動させられます。
まとめ
命令違反をしてでも、1人の女医と28人の避難民を守りたかったアメリカ海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」の姿を描いた、アメリカの戦争アクションドラマ作品でした。
物語のエンドロール前、「善なる人々が行動を怠れば、必ず悪が勝利する」という、「保守思想の父」として知られる元イギリス陸軍支払長官エドマンド・バークの言葉がテロップで出ていました。
まさしく内戦下にあるナイジェリアの人々と、ウォーターズたちに当てはまる言葉だなと感じました。
ウォーターズたち「善なる人々」が、避難民を見捨てて任務遂行を優先したことで、救済医療センターに残っていた神父たちや避難民が惨殺されました。
あの時もし、リーナの忠告に従い反乱軍の侵攻を食い止めていればと、ウォーターズたちはひどく後悔したことでしょう。
戦いの被害を被るのはいつだって、何の罪もない市民たち。支配欲が強い「悪」の手によって、彼らの平穏な日常はいとも簡単に壊されてしまいます。
本作はそれがよりリアルに感じ、胸が締め付けられるぐらい辛い場面が多いです。
また満身創痍で戦う姿が似合うブルース・ウィリスが魅せるアクションは壮絶で、ハラハラドキドキさせられます。
ブルース・ウィリスがアメリカ海軍特殊部隊「ネイビーシールズ」の隊長を演じ、超絶危険なミッションに挑む戦争アクションドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。