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Entry 2023/02/10
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【ネタバレ】キラー・エリート(2011)あらすじ結末感想と評価解説。実話をアクション映画とした特殊部隊SASとの死闘を描く|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー96

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第96回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第96回は、ゲイリー・マッケンドリー監督が演出を務めた、映画『キラー・エリート(2011)』です。

殺し屋家業から足を洗ったダニーのもとに、かつての師匠であり相棒でもあったハンターに関する悲報が届きます。

ハンターはオマーン首長の息子3人を殺した、元イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)の男たちへの報復という任務に失敗し、人質として囚われてしまったのです。

ダニーはハンターを救出しようとするも失敗。ハンターの解放を引き換えに暗殺の代行を約束させられてしまうという物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

ジェイソン・ステイサム主演のサスペンスアクション映画『キラー・エリート(2011)』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『キラー・エリート(2011)』の作品情報


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

【公開】
2011年(アメリカ・オーストラリア合作映画)

【原作】
ラナルフ・ファインズ『The Feather Men』

【監督】
ゲイリー・マッケンドリー

【キャスト】
ジェイソン・ステイサム、クライヴ・オーウェン、ロバート・デ・ニーロ、ドミニク・パーセル、エイデン・ヤング、イヴォンヌ・ストラホフスキー、アドウェール・アキノエ=アグバエ、フィラス・ディラーニ、ニック・テイト、ビリー・ブラウン、デイヴィッド・ホワイトリー、ブレンダン・チャールソン、ベン・メンデルソーン、マシュー・ナブル、グラント・パウラー、ダニエル・ロバーツ、スチュワート・モリット、サンディー・グリーンウッド、ジェイミー・マクダウェル、ケイト・ニールソン

【作品概要】
『この国のすべて』(2004)のゲイリー・マッケンドリーの長編映画デビュー作となる、アメリカ・オーストラリア合作のサスペンスアクション作品。

原作は元イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)で探検家のラナルフ・ファインズが描いたベストセラー小説『The Feather Men』です。

「ワイルド・スピード」シリーズや「トランスポーター」シリーズのジェイソン・ステイサムが主演を務めています。

映画『キラー・エリート(2011)』のあらすじとネタバレ


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

世界は大混乱に陥り、石油高騰に伴う経済危機が継続。世界のいたるところで戦争が激化しました。

特にアラビア半島のオマーン内部では、南部にあるドファールが分離独立を目指し、反乱を起こしました。

この「ミルバートの戦い」(以後、ミルバートと表記)では、イエメン人民民主共和国の共産主義ゲリラが反乱側を支援しました。

イギリスは窮地に陥ったオマーン政府を守るべく、オマーン軍の兵士の訓練と、占領下アラブ湾岸解放人民戦線(PELOAG)との戦闘を任務とする世界最高の特殊部隊「イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)」を少人数派遣しました。

そんな革命と暗殺と秘密工作の時代、1980年。極秘ミッションに駆り出された凄腕の暗殺者ダニー・ブライスは、師匠でもあり良き相棒でもあるハンターと共に、いつものように厳重な警戒を潜り抜け、メキシコのラ・ホヤでリムジンに乗っている標的を暗殺。

しかしダニーは、同乗していた目撃者である10歳の少年に向かってどうしても引き金を引くことができませんでした。

自身の限界を悟ったダニーは、殺し屋の仕事から足を洗うことを決意します。

それから1年後。オーストラリアのヤラ・ヴァレーにある農場で、恋人のアン・フレーザーと静かに暮らしていたダニーのもとに1通の手紙が届きました。

その手紙の中には、ハンターが人質にされているポラロイド写真が入っていました。

実はハンターは、600万ドルという多額の報酬欲しさに仕事内容を知らずに、かつて広大な砂漠を統治していたオマーンの族長であるイッサ長老からの仕事を引き受けました。

ハンターは引き受けた仕事を放棄し逃亡しましたが、空港で捕まってしまいました。

2日後、オマーン。ダニーはイッサ長老との仲介役を担う代理人と会い、宮殿まで案内してもらいました。

ダニーを出迎えたイッサ長老は、「長男のフセインと次男のサリム、三男のアリ。ミルバートでゲリラを率いていた彼らを殺したSASの隊員3名を、自白させたうえで事故死に見せかけて殺せ」と、ハンターが遂行するはずだった仕事を代わりに遂行するよう依頼します。

オマーンの部族には、「犠牲者の血をそれを殺した殺人者の血で洗え」という砂漠の掟があり、本来ならばイッサ長老か四男のバヒトが犯人たちに復讐しなければなりません。

ですがイッサ長老は、自分が復讐したらバヒトも狙われてしまうと思い、復讐することを躊躇いました。

バヒトは自分の手で汚すことを恐れ、父と共に復讐しないことを選択。これにより、イッサ・アミアー長老とバヒトは部族から追放されました。

ですが余命6ヶ月と宣告され、イッサ長老は自分が死んだ後に、バヒトを部族に戻してやりたいと思い、イッサ長老は自分たちの代わりに復讐してくれる人物を探し、ハンターに依頼したのです。

ダニーは暗殺者に戻るつもりはないと断るも、イッサ長老と代理人から「もし断れば、ハンターは死ぬ」と脅迫されてしまいます。


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

ダニーはやむを得ずイッサ長老からの依頼を引き受け、出発前にハンターに会わせてもらいました。ハンターと少し話した後、ダニーは見張りの男を殴り、彼を連れて牢屋から脱出。

しかしその行先ではバヒトがイッサ長老の手下を連れて待ち構えていたため、ハンター救出は失敗。

ハンターは再び捕虜として監禁されてしまい、ダニーはこの仕事を本気で引き受けるしか選択肢がありませんでした。

その後、ダニーはフランス・パリにいるかつての仕事仲間デイヴィスとマイアーと会い、事情を話して「報酬は山分けするから、手伝ってもらえないか」と頼みました。

デイヴィスたちは当然、ダニーの申し出を快く承諾。早速SAS隊員2名について調査します。

バヒトから渡された資料のおかげで、もう1人のSAS隊員スティーヴン・ハリスの居場所を既に突き止めていたダニーは、マイアーを連れてオマーンへ飛びました。

以下、『キラー・エリート(2011)』ネタバレ・結末の記載がございます。『キラー・エリート(2011)』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

資料によると、ハリスと彼が所属するSASのC中隊メンバーはミルバートの件が終わってもなお、オマーン・マスカットに滞在していること。そしてハリスがスルタン軍のヘリを操縦し、仲間にイタズラしてから帰宅するといいます。

ダニーはまず、飛行場からハリスを尾行して、彼の自宅を特定。彼が愛人を連れ込んで楽しんでいる間に、浴室全体に敷き詰められたタイルを1枚剥がしました。

それと同じ模様のタイルを使って、マイアーが鈍器を作ります。次にダニーとマイアーが軍の記者に扮してハリスの家を訪問。

椅子に縛りつけて「オマーンのクムの村で、ゲリラの司令官フセイン・アミアーを彼の家族の目の前で殺したと認めるか?」と尋問します。

ハリスの自白を映像に残したうえで、浴室に連れて行きハリスを撲殺。浴室の床にシャンプーを垂らし、「シャンプーで足を滑らせ、床のふちに頭をぶつけて死んでしまった」ように見せかけようとします。

そこまで話した後、ダニーたちは誰かに見張られていることに気づいてすぐに追いかけましたが、あと一歩のところで取り逃がしてしまいました。

その後、再びデイヴィスと別行動を取り、ダニーとマイアーは予定通りハリスの自宅に侵入。椅子に縛りつけて尋問し自白させました。

ところがハリスは、「俺の他に真犯人がいると言ったら?」と言い出したのです。

ハリスによると、真犯人の名前は覚えていないものの、フセイン率いるゲリラを制圧する作戦の回顧録を執筆中であるため、それで真犯人の名前が分かると言います。

ダニーはその言葉を信じず、マイアーと協力してハリスを浴室に運び、シナリオ通りに殺そうとしました。

その瞬間、デイヴィスが車のタイヤをパンクさせて足止めしたはずのハリスの愛人が、タクシーに乗って来てしまったのです。

ダニーが玄関前の様子を窺っていると、幸か不幸か、合鍵を持っていなかった彼女はしばらくすると諦めて帰っていきました。

その直後、ダニーのもとにハリスの悲鳴が聞こえてきました。慌てて浴室に戻ると、マイアーによって撲殺されたハリスの遺体が床に転がっていました。

その頃デイヴィスは、代理人から情報を得てロンドンに飛び、ミルバートの戦いを絵で再現した絵描きの男A・K・ガウリングに会ってSASの情報を探りました。

しかしガウリングは、デイヴィスとの会話で彼が元SAS隊員ではないと察し、どこかに電話をかけました。

盗み聞きしていたデイヴィスは、背後からガウリングに襲い掛かり殺害しました。


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

このガウリング殺害という予定にない人物を殺してしまい焦ったものの、標的の1人であるハリスと予定通り暗殺したダニーたち。彼らの不穏な動きを敏感に察知している男がいました。

男の名はスパイク、元SASの隊員で「フェザーメン」という過去の敵対者による報復攻撃からSAS出身者を守るために、元SASの隊員でメンバーを構成・結成された秘密結社の一員でした。

実はデイヴィスはガウリングに会う前に、SASの溜まり場となっているイギリスのパブにいた男たちに、ガウリングに聞いた時と同じ手法を使って探りを入れていました。

しかし不幸にも、デイヴィスが探りを入れた相手は、パプにいたSASの隊員バザもガウリングも、スパイクと繋がりがあった人物でした。

そのためスパイクは、フェザーメンの司令官と幹部たちからの命を受け、組織の工作員を使ってデイヴィスをずっと監視・尾行させていました。

そのことに薄々気づきつつ、仕事を継続するダニーたち。ガウリングが描いた絵を調べたデイヴィスのおかげで、ダニーたちはSASのクレッグ将校が標的の1人であるという情報を手に入れます。

次の標的をクレッグに定めたダニーは、イギリスのブレコン・ビーコンズにあるSAS訓練場で行われるSASの選抜行軍の訓練の時を狙って、彼を始末することにしました。

その方法は、ダニーが医師に扮して病院からインスリンと血糖値降下剤を入手し、訓練前にクレッグの飲み物に盛って、訓練中にショック状態を起こす、というものでした。

選抜行軍の訓練は1年おきに死者が出るほど過酷なものであるため、クレッグが死んでも怪しまれることはありません。


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

しかし目当てのものを手に入れて病院を出た直後、ダニーは自分を見張っている男がいることに気づきます。

ダニーは男を病院内に誘い込んで始末しようとしますが、思った以上に強敵で苦戦を強いられてしまい、警報器を鳴らし混乱に乗じて逃走することにしました。

自分たちを監視する者がいる以上、早急にクレッグを始末する必要があると感じたダニーは、単身SASの隊員に扮してイギリス・ヘレフォードにあるSAS本部に潜入。

予定通り、訓練前にクレッグのコップを、インスリンと血糖値降下剤入りの飲み物が入ったコップにすり替えます。

薬が盛られたとは気づかずに半分飲んでしまったクレッグは、荒天での訓練中にショック状態となりました。

ダニーは意識が朦朧としているクレッグに、サリムを殺したことを自白させてから始末しました。

ハリスとクレッグがそれぞれ、イッサ長老の息子を殺したことを自白した映像は、オマーンで報告を待つイッサ長老の元に送られました。

その後、ダニーたちのもとに代理人が現れ、最後の標的はSASのサイモン・マッキャン少佐だと知らせます。

ダニーと代理人との会話をそばで聞いていたデイヴィスは、「唇の動きから、代理人が嘘をついている。信用するな」と忠告するも、ダニーは聞く耳を持ってくれませんでした。

ダニーは一刻も早くハンターを救い出し、オーストラリアに残したアンのもとに帰りたかったからです。

アンはダニーが元暗殺者であることを知りません。なので突如行く先も、そこで何をするのかも告げずにいなくなってしまったダニーに対して不安を募らせていました。

ダニーはデイヴィスと一緒にマッキャンの元へ向かいました。代理人から渡された資料によると、スルタン軍に所属していたマッキャンは4年前、任務中に乗っていたジープごと吹っ飛ばされ神経をやられてしまって除隊したといいます。

ダニーたちがマッキャンの自宅前で張り込みを行うと、ダニーが病院で出くわした男が現れました。

ダニーは男の正体を探るべく、デイヴィスに男の車を尾行するよう指示します。

そして男が暮らすアパートの近くで遊んでいた子供に金を渡し、緑のジャガーに乗っていた男の名前を聞き出しました。

ダニーたちはマイアーが待つ隠れ家に戻り、監視下に置かれたマッキャンをどう始末するか話し合いました。

その結果、ダニーたちは監視下に置かれているマッキャンを自白させる時間を確保することは困難であるため、デイヴィスがマッキャンの代役となって自白する動画を撮る。

マッキャンに警備の仕事を勧めて家から引きずり出し、さらに彼が車で移動するルートを絞って、マイアーと彼の愛人の息子ジェイクが遠隔操作したトラックに追突させることにしました。

一方スパイクは、フェザーメンの司令官と幹部たちから、突如暗殺犯を追うことから手を引けと命じられます。

実は「無許可でヘリと銃を使える男、MFWIC(全権を握る野郎)」と名乗る正体不明のエージェントが司令官に接触し、「SASの名声に傷をつけたくなければ、これ以上暗殺犯を追うな」と圧力をかけてきたからです。

仲間を殺した暗殺犯をなんとしても挙げたいと言うスパイクに、フェザーメンの幹部の1人は「組織の命令系統を考えろ、組織の命令は君を介して工作員に伝わる」、「この事件が明るみになれば、捕まるのは君だ」と脅しました。

ですがスパイクの意志は固く、彼は部下たちと共に独自に調査することに決めました。

殺されたハリスたちの共通点はミルバートが関わっていること、唯一の手がかりはオマーンであると分かったスパイクは、イギリスにいるSASの隊員4人も命を狙われる可能性が高いと推測。

部下のペノックやキャンベルらに、マッキャンたち4人の護衛を命じました。


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

ですがスパイクたちの努力も虚しく、ダニーたちの作戦は見事成功。しかしマイアーが車から降りて、マッキャンの死を確認しようとした姿を、彼の護衛役であるキャンベルに見られてしまいます。

マイアーたちは急いで貨物置き場に逃げ込むも、袋小路で追い詰められてしまいました。離れた場所から彼らに無線で指示を送っていたデイヴィスは、急いで助けに行きました。

しかしジェイクが恐慌状態となってしまい、キャンベルもろともマイアーを射殺。キャンベルの遺体からは身分が分かるものは何もなかったものの、彼の車には無線機がついていました。

ダニーはジェイクに清掃班に連絡するよう指示し、デイヴィスには仕事の終わりを告げました。そしてマイアーの死を悼みながら、ダニーは無線機を破壊するべく、デイヴィスとその場で別れました。

しかしその夜、デイヴィスが宿泊したホテルは、スパイクと繋がりがある場所でした。

ホテルの従業員からの通報を受け、スパイクが寄越した彼の部下たちによってデイヴィスは捕まってしまいました。

デイヴィスは激しく抵抗し車から逃げ出すも、道路に飛び出し助けを求めている最中に、トラックにはねられて死んでしまいました。

デイヴィスの遺体を確認したスパイクは、これでは何も情報を聞き出すことができないとぺノックたち部下を叱責します。

無線を聞いてデイヴィスが狙われていることを知ったダニーは、スパイクの自宅で待ち伏せし、帰宅した彼に銃を突きつけます。

スパイクから「ウェールズ人(デイヴィス)はトラックにはねられて死んだ」と聞くと、ダニーは「ハリスたち死亡者リストに載せられたくなければ、もう俺を追うな」と言って彼の前から姿を消しました。

ダニーはオマーンへ飛び、3人全員を暗殺したことをイッサ長老に報告。イッサ長老はそれに満足し、ハンターを釈放しました。

ダニーはハンターに、「お礼をしたければ足を洗え。暗殺も傭兵ももうやるな」とお願いしました。

そしてダニーは全てを話す覚悟を決めてアンのもとに戻りましたが、アンは「過去なんかより一緒にいる今が大事」と言って何も聞きませんでした。

その日の夜、ダニーのもとに1本の電話がかかってきました。電話の主は代理人でした。代理人は「君らが暗殺した標的の1人は別人だった。まだ仕事は終わっていない」と告げます。

渋るダニーに、代理人は「結論を出す前に恋人を見てみろ」と言いました。慌てて寝室に向かうと、ベッドで眠るアンの首元に弾丸が置かれていました。

ダニーはアンを連れて急いでフランス・パリへ飛びました。そしてハンターにアンを託し、ダニーはロンドンにくるというバヒトに会いに行きました。

バヒトはダニーに「ハリスは自白で真犯人を仄めかしていた」と言い、ある1冊の本を渡します。

その本はハリスが言っていた、元SASの隊員がフセイン率いるゲリラを制圧する作戦の回顧録を執筆した新刊本でした。

しかしその本の中では、ハリスはフセインを殺していません。つまり、バヒトは無実の男をフセイン殺しの犯人だと偽り、ダニーたちに殺させたのです。

それに気づいたダニーが胸ぐらをつかんで詰め寄ると、バヒトは「この本は真犯人の告白だ」と言いました。ダニーはすぐさま代理人に電話し、その本の著者ラヌル・ファインズについて調べるよう指示します。

その結果、近々ファインズはオマーンで本の宣伝をするために記念パーティーを開くことが分かりました。

その頃スパイクは、デイヴィスの遺体から見つかった名刺の番号を調べ、世界中を飛び回る傭兵を顧客とする妙な旅行代理店のものであることを突き止めました。

その旅行代理店の名前は「LGMトラベル」、代理人が斡旋業者、デイヴィスたちが傭兵として所属している会社でした。

そしてLGMトラベルで代理人とダニーの会話を盗聴したスパイクは、ぺノックたち複数の部下を連れて、パーティー会場に先回りしてファインズを護衛します。

そこにダニーが現れ、スパイクたちが仕掛けた罠にかかりました。しかし被っていた黒野古フェイスのヘルメットの下の素顔は、全くの別人(ジェイク)でした。

その隙にダニーは1人になったファインズを襲撃するも、その脳裏にはメキシコで撃てなかった少年の顔がちらついていました。

ダニーはファインズの足を撃ち、追加で何発か撃ち込んでからファインズの姿を写真に収めて逃走。しかし逃げる途中でスパイクに見つかってしまいます。


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

建物と建物の間を飛び移りながらの逃走劇の末、ダニーはスパイクに捕まってしまい、「なぜ標的を殺さなかった?」、「お前は何者だ?雇い主は?」と尋問されました。

ダニーはファインズを殺していなかったのです。ダニーは「ここで俺を殺せば、別の誰かがファインズを今度こそ殺す。それはファインズが殺されるまで終わらない」、「ファインズの姿を収めたカメラさえ渡せば、彼を救える」と答えました。

そしてダニーは、「自分を見逃してくれれば黒幕を教える」と提案しました。スパイクがそれに承諾すると、ダニーは「黒幕はオマーンにいるイッサ長老だ。ミルバートでSASの隊員に息子3人を殺されたことへの復讐だ」と明かします。

ダニーから情報を聞き出した後、スパイクはカメラを持って部屋を出ました。しかし部屋の外には、MFWICが銃を持って待ち構えていました。

MFWICはスパイクを部屋の中に戻し、彼らにことの顛末を語り始めます。イギリス政府はオマーンの砂漠に埋蔵された石油を狙っていました。

そのためイッサ長老の復讐に協力する代わりに、バヒトを帰郷させ、王族との契約で便宜を図ってもらうという利害関係を結んだのです。

なので、オマーン政府と利害関係にあるスパイクたちフェザーメンの存在が邪魔でした。自分が嵌められていたと知ったダニーは、自身の背後に立った時を狙ってMFWICに攻撃を仕掛けます。

ダニー・スパイク・MFWICによる三つ巴の戦いの末、スパイクがMFWICを射殺し、ダニーはカメラを持って椅子に縛りつけられたままの状態で外に飛び出し、逃走しました。

その頃代理人は暗殺者と共に、報酬の取り分に手数料の10%に上乗せしてもらおうと企み、アンを殺そうとします。

しかし彼女の護衛をついていたハンターに阻まれ、暗殺者は始末されました。そしてアンの後ろにピッタリと張りついた代理人の足を撃ち、ハンターは「2人を追うと、俺がお前を殺しに来るぞ」と脅迫しました。

その後、ダニーはハンターと共に、この仕事を終わらせるべく、イッサ長老に写真を渡しに行きました。

しかし彼らより先に、スパイクがイッサ長老に写真を渡しました。「写真に写る最後の標的は生きている」と告げ、スパイクはバヒトの目の前でイッサ長老を刺殺しました。

バヒトは最初から帰郷するつもりはなかったため、スパイクを殺さず、600万ドル入ったアタッシュケースを渡しました。

宮殿から出てきたスパイクが、イッサ長老の手下たちに追われているのを見て、ダニーたちは宮殿内で何かが起こったことに気づきます。

ダニーたちはひとまずイッサ長老の手下たちが乗る車だけを殺し、スパイクが運転する車を追跡。

カーチェイスの末、ハンターがスパイクの車のタイヤを撃って動けなくさせました。ダニーたちはスパイクの車に、600万ドルが入ったアタッシュケースを見つけます。

ハンターはアタッシュケースの中から3束の札束を「経費だ」と言って回収し、残りのお金は逃走資金としてスパイクにあげました。

そしてダニーは、「イッサ長老は“宣言なしの終戦”はないと言っていた。俺の戦争は終わった」とスパイクに言いました。

これに対しスパイクは、「(顔と左目に負った大きな傷跡を見せて)この傷でも俺の戦争は終わらなかった、この先も続く」と答えると、ダニーから「もう忘れろ」と言われました。

スパイクは空港へと車で走り去っていくダニーたちを黙って見送りました。その後、ダニーはアンの元に戻り、再会を喜びました。

映画『キラー・エリート(2011)』の感想と評価


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

ダニーは師匠であり相棒でもあるハンターや、仲間のデイヴィスたちからも一目置かれているほど、凄腕の暗殺者です。

作中ではあの世界最強の特殊部隊と称される「SAS」の隊員相手に、互角いやそれ以上に強いところを魅せてくれます。まさにダニーは世界最高の暗殺者だといっても過言ではありません。

対してスパイクも、SASを辞めて今はSAS出身者がSAS隊員を過去の敵対者から守る「フェザーメン」の汚れ役を担っていますが、彼の格闘スキルと指揮官としての能力は何も衰えてはいません。

むしろ戦後も戦い続ける人生を送ってきたからこそ、スパイクはダニーと対等に渡り合えるほどの強さを保持し続けてきたと考察します。

そんなダニーvsスパイクの激闘の数々は、どれも迫力とスリルがあって面白いですし、ぶつかり合う2人の姿はとても格好良いです。

そしてハンターもまた、数日間捕虜として囚われていたとはいえ、暗殺者としての腕は何も劣ってはいません。

ダニーがスパイクとの戦いを繰り広げている間、ハンターはハンターで、大事なダニーとその恋人の命を狙う敵と戦っていました。

いやむしろ、ハンターは暗殺者と代理人をほぼ秒殺で倒していました。さすがダニーの師匠だと感服させられます。

まとめ


(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.

世界最高の暗殺者が大事な相棒を救うため、世界最強の特殊部隊と死闘を繰り広げていく、アメリカ・オーストラリア合作のサスペンスアクション作品でした。

本作の見どころは、世界最高の暗殺者ダニーが相棒を救うため、かつての仕事仲間と共にオマーンの族長の復讐代行を行う姿と、ダニーが1人でスパイクたち、世界最強の特殊部隊と称されるSASと戦う激闘の数々です。

また本作は、元SASの隊員であった原作者ラナルフ・ファインズが暗殺されかけた実話をもとに描かれているため、こんなことが現実にあったのかと驚かされます。

そしてエンドロール前、「1991年、ファインズ著『ザ・フェザーメン』発刊。大きな論争が巻き起こると、政府はその本の内容を否定した」、「SASによるオマーン戦争への関与は、現在も最高機密扱いである」、「ダニーと仲間たちのその後は、今も分かっていない」というテロップが流れました。

世界最強の特殊部隊にいた原作者が暗殺されかけた実話をもとに描かれた、リアリティと男臭さに溢れたサスペンスアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

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