連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第96回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第96回は、ゲイリー・マッケンドリー監督が演出を務めた、映画『キラー・エリート(2011)』です。
殺し屋家業から足を洗ったダニーのもとに、かつての師匠であり相棒でもあったハンターに関する悲報が届きます。
ハンターはオマーン首長の息子3人を殺した、元イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)の男たちへの報復という任務に失敗し、人質として囚われてしまったのです。
ダニーはハンターを救出しようとするも失敗。ハンターの解放を引き換えに暗殺の代行を約束させられてしまうという物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
ジェイソン・ステイサム主演のサスペンスアクション映画『キラー・エリート(2011)』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『キラー・エリート(2011)』の作品情報
(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.
【公開】
2011年(アメリカ・オーストラリア合作映画)
【原作】
ラナルフ・ファインズ『The Feather Men』
【監督】
ゲイリー・マッケンドリー
【キャスト】
ジェイソン・ステイサム、クライヴ・オーウェン、ロバート・デ・ニーロ、ドミニク・パーセル、エイデン・ヤング、イヴォンヌ・ストラホフスキー、アドウェール・アキノエ=アグバエ、フィラス・ディラーニ、ニック・テイト、ビリー・ブラウン、デイヴィッド・ホワイトリー、ブレンダン・チャールソン、ベン・メンデルソーン、マシュー・ナブル、グラント・パウラー、ダニエル・ロバーツ、スチュワート・モリット、サンディー・グリーンウッド、ジェイミー・マクダウェル、ケイト・ニールソン
【作品概要】
『この国のすべて』(2004)のゲイリー・マッケンドリーの長編映画デビュー作となる、アメリカ・オーストラリア合作のサスペンスアクション作品。
原作は元イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)で探検家のラナルフ・ファインズが描いたベストセラー小説『The Feather Men』です。
「ワイルド・スピード」シリーズや「トランスポーター」シリーズのジェイソン・ステイサムが主演を務めています。
映画『キラー・エリート(2011)』のあらすじとネタバレ
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世界は大混乱に陥り、石油高騰に伴う経済危機が継続。世界のいたるところで戦争が激化しました。
特にアラビア半島のオマーン内部では、南部にあるドファールが分離独立を目指し、反乱を起こしました。
この「ミルバートの戦い」(以後、ミルバートと表記)では、イエメン人民民主共和国の共産主義ゲリラが反乱側を支援しました。
イギリスは窮地に陥ったオマーン政府を守るべく、オマーン軍の兵士の訓練と、占領下アラブ湾岸解放人民戦線(PELOAG)との戦闘を任務とする世界最高の特殊部隊「イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)」を少人数派遣しました。
そんな革命と暗殺と秘密工作の時代、1980年。極秘ミッションに駆り出された凄腕の暗殺者ダニー・ブライスは、師匠でもあり良き相棒でもあるハンターと共に、いつものように厳重な警戒を潜り抜け、メキシコのラ・ホヤでリムジンに乗っている標的を暗殺。
しかしダニーは、同乗していた目撃者である10歳の少年に向かってどうしても引き金を引くことができませんでした。
自身の限界を悟ったダニーは、殺し屋の仕事から足を洗うことを決意します。
それから1年後。オーストラリアのヤラ・ヴァレーにある農場で、恋人のアン・フレーザーと静かに暮らしていたダニーのもとに1通の手紙が届きました。
その手紙の中には、ハンターが人質にされているポラロイド写真が入っていました。
実はハンターは、600万ドルという多額の報酬欲しさに仕事内容を知らずに、かつて広大な砂漠を統治していたオマーンの族長であるイッサ長老からの仕事を引き受けました。
ハンターは引き受けた仕事を放棄し逃亡しましたが、空港で捕まってしまいました。
2日後、オマーン。ダニーはイッサ長老との仲介役を担う代理人と会い、宮殿まで案内してもらいました。
ダニーを出迎えたイッサ長老は、「長男のフセインと次男のサリム、三男のアリ。ミルバートでゲリラを率いていた彼らを殺したSASの隊員3名を、自白させたうえで事故死に見せかけて殺せ」と、ハンターが遂行するはずだった仕事を代わりに遂行するよう依頼します。
オマーンの部族には、「犠牲者の血をそれを殺した殺人者の血で洗え」という砂漠の掟があり、本来ならばイッサ長老か四男のバヒトが犯人たちに復讐しなければなりません。
ですがイッサ長老は、自分が復讐したらバヒトも狙われてしまうと思い、復讐することを躊躇いました。
バヒトは自分の手で汚すことを恐れ、父と共に復讐しないことを選択。これにより、イッサ・アミアー長老とバヒトは部族から追放されました。
ですが余命6ヶ月と宣告され、イッサ長老は自分が死んだ後に、バヒトを部族に戻してやりたいと思い、イッサ長老は自分たちの代わりに復讐してくれる人物を探し、ハンターに依頼したのです。
ダニーは暗殺者に戻るつもりはないと断るも、イッサ長老と代理人から「もし断れば、ハンターは死ぬ」と脅迫されてしまいます。
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ダニーはやむを得ずイッサ長老からの依頼を引き受け、出発前にハンターに会わせてもらいました。ハンターと少し話した後、ダニーは見張りの男を殴り、彼を連れて牢屋から脱出。
しかしその行先ではバヒトがイッサ長老の手下を連れて待ち構えていたため、ハンター救出は失敗。
ハンターは再び捕虜として監禁されてしまい、ダニーはこの仕事を本気で引き受けるしか選択肢がありませんでした。
その後、ダニーはフランス・パリにいるかつての仕事仲間デイヴィスとマイアーと会い、事情を話して「報酬は山分けするから、手伝ってもらえないか」と頼みました。
デイヴィスたちは当然、ダニーの申し出を快く承諾。早速SAS隊員2名について調査します。
バヒトから渡された資料のおかげで、もう1人のSAS隊員スティーヴン・ハリスの居場所を既に突き止めていたダニーは、マイアーを連れてオマーンへ飛びました。
映画『キラー・エリート(2011)』の感想と評価
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ダニーは師匠であり相棒でもあるハンターや、仲間のデイヴィスたちからも一目置かれているほど、凄腕の暗殺者です。
作中ではあの世界最強の特殊部隊と称される「SAS」の隊員相手に、互角いやそれ以上に強いところを魅せてくれます。まさにダニーは世界最高の暗殺者だといっても過言ではありません。
対してスパイクも、SASを辞めて今はSAS出身者がSAS隊員を過去の敵対者から守る「フェザーメン」の汚れ役を担っていますが、彼の格闘スキルと指揮官としての能力は何も衰えてはいません。
むしろ戦後も戦い続ける人生を送ってきたからこそ、スパイクはダニーと対等に渡り合えるほどの強さを保持し続けてきたと考察します。
そんなダニーvsスパイクの激闘の数々は、どれも迫力とスリルがあって面白いですし、ぶつかり合う2人の姿はとても格好良いです。
そしてハンターもまた、数日間捕虜として囚われていたとはいえ、暗殺者としての腕は何も劣ってはいません。
ダニーがスパイクとの戦いを繰り広げている間、ハンターはハンターで、大事なダニーとその恋人の命を狙う敵と戦っていました。
いやむしろ、ハンターは暗殺者と代理人をほぼ秒殺で倒していました。さすがダニーの師匠だと感服させられます。
まとめ
(C)2011 Omnilab Media Pty.Ltd.
世界最高の暗殺者が大事な相棒を救うため、世界最強の特殊部隊と死闘を繰り広げていく、アメリカ・オーストラリア合作のサスペンスアクション作品でした。
本作の見どころは、世界最高の暗殺者ダニーが相棒を救うため、かつての仕事仲間と共にオマーンの族長の復讐代行を行う姿と、ダニーが1人でスパイクたち、世界最強の特殊部隊と称されるSASと戦う激闘の数々です。
また本作は、元SASの隊員であった原作者ラナルフ・ファインズが暗殺されかけた実話をもとに描かれているため、こんなことが現実にあったのかと驚かされます。
そしてエンドロール前、「1991年、ファインズ著『ザ・フェザーメン』発刊。大きな論争が巻き起こると、政府はその本の内容を否定した」、「SASによるオマーン戦争への関与は、現在も最高機密扱いである」、「ダニーと仲間たちのその後は、今も分かっていない」というテロップが流れました。
世界最強の特殊部隊にいた原作者が暗殺されかけた実話をもとに描かれた、リアリティと男臭さに溢れたサスペンスアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。