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Entry 2021/09/23
Update

映画『必殺!恐竜神父』ネタバレあらすじ結末と感想考察。アーメンダブツな忍者はトンデモZ級ムービー⁈|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー54

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第54回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第54回は、話題騒然の『必殺!恐竜神父』

本作への「面白そうだけど面白くなさそう」との、何気ないtwitterでの火の玉ストレートのつぶやきが、「いいね」と1.3万以上のリツイートを獲得!何が起きたと日本中が震撼しました。

本当に話題沸騰の愛すべきポンコツ映画を真正面から紹介します。…日本よ、これも映画だ。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

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映画『必殺!恐竜神父』の作品情報


(C)With Wild Eye Releasing

【製作】
2018年(アメリカ・中国合作映画)

【原題】
The VelociPastor

【製作・監督・脚本・編集】
ブレンダン・スティアー

【キャスト】
グレッグ・コーハン、アリッサ・ケンピンスキー、クレア・ハウス

【作品概要】
自動車事故で両親を失い、傷心のまま中国を旅する信心深い神父のダグ。しかし彼は旅先で忍者(!)に追われる謎の女性から、恐竜の牙の化石を受け取りました。それは、人間を恐竜に変身させる牙だったのです…。

チャイニーズ・ニンジャ軍団(!)に挑む”恐竜神父”を企画・映画化したのは若き映像作家ブレンダン・スティアー。2010年に突然思いついた”恐竜神父”を、翌年フェイク予告編風に短編映画化。それを長編映画化したのが本作です。

主演はロサンゼルスで俳優活動を続けているグレッグ・コーハン。彼にとって初主演長編映画となります。スティアー監督作『Animosity』(2013)に出演したアリッサ・ケンピンスキーがヒロインを演じます。

ビューティフル・デイ』(2017)、そして『悪魔の毒々モンスター』(1984)公開30年後の設定で描いた、最低映画製作の老舗・トロマ映画の『Toxic Tutu』(2017)で、”トロマ芸者ガール”役で出演したクレア・ハウスも共演した作品です。

映画『必殺!恐竜神父』のあらすじとネタバレ


(C)With Wild Eye Releasing

この映画はキリスト協会の裁定により、X指定をくらった…と紹介して物語は始まります。

信者に耐え忍ぶことの大切さを説く神父、ダグ・ジョーンズ(グレッグ・コーハン)。しかしその直後、彼の両親は特殊効果抜きの、効果音だけで表現された謎の爆発で命を落とします…

理不尽過ぎる爆発で、目の前で両親を失い悲しみから神への疑念を抱くダグに、スチュアート老神父は旅に出るよう勧めます。神に見放された地で自分を見つめなさい、その言葉に従い車で旅立ったダグは、なぜか中国にいました。

どこかの裏山にも見えますが、この地はやはり中国だ、と念入りに確認したダグ。彼の前に何者かに追われ、矢で射抜かれた中国風衣装の村娘(クレア・ハウス)が倒れます。

命が尽きようとしている村娘は、持っていた動物の牙を彼に渡します。この牙を破壊しなければ一生追われるとの彼女の言葉は、中国語の判らぬダグに理解できません。

しかし彼女が最期に遺した、”竜の戦士”の言葉は聞き取れました。託された牙を見つめるダグ。

すると彼の前に黒装束の男、忍者が現れます。驚いたダグは思わず牙で手のひらを切り、出血した彼は気を失います。

目覚めた時、彼はスチュアート神父の前にいました。帰国して以来、高熱に苦しみうなされるダグの身を案じる老神父に、ダグは猛烈な空腹感を訴えました。

外の空気を吸おうと外出したダグは、娼婦のキャロル(アリッサ・ケンピンスキー)とすれ違います。彼女は優しい性格の持ち主ですが、ポン引きのフランキーから手ひどく扱われます。

その夜、熱と飢餓感に苦しみつつ、林の中で叫び声をあげるダグ。彼の体は何かに変化しつつありました。

夜の公園で客を求め1人立っていたキャロルは、男に突然銃を突き付けられます。強盗目当ての男は何者かに襲われました。発砲しても倒れぬその生物は、人と同じサイズの肉食恐竜だと気付くキャロル。

夜の闇の中で男を襲う恐竜は、よく見えないこともあって結構怖そうです。そしていつの間にかベットで眠っていたダグは、悪夢から目覚めました。

彼がいたのはキャロルの部屋でした。全裸の自分に動揺する真面目なチェリーボーイのダグは、記憶に無い昨晩の出来事について、彼女とかみ合わない会話を交わします。

ダグはキャロルから。自分が恐竜になって人を食べたと聞かされました。それは現実ではない、悪夢のはずだと叫んで否定するダグに、証拠の死体があると告げるキャロル。

そこで彼女の服を借り、その結果として女装姿でキャロルと現場に向かうダグ。確かに落ち葉の下には隠された死体がありました。

驚いたダグに医学部生で法学部生だが、やむなく娼婦をしているキャロルは、警察沙汰は避けたいので死体を隠したと打ち明けます。

聖職者にあるまじき行為に、ダグは女装姿で動揺します。そんな彼にあなたは悪党を倒し私の命を守った恩人だ、人を救うのがあなたの仕事ではないか、と告げたキャロル。

極悪人も、最低な犯罪者も神父のあなたは懺悔すれば許すしかない。しかし世の中には死に値する奴もいる、と彼女は言葉を続けます。

望まぬ商売のお陰で、始末すべき悪党は沢山知っている。どうかその力で、皆を助けて欲しいとの彼女の訴えを聞き黙り込むダグ。

やはり許される行為ではない、懺悔の時間だと告げると、ダグはキャロルを残して教会へと駆け出します。

彼が務めを果たすべく懺悔室に入ると、やって来たのはポン引きのフランキーでした。2年ぶりに懺悔に来た、と話し出した彼は趣味と実益を兼ね、あらゆる犯罪に手を染めたと平然と語ります。

そして数ヶ月前には、教会の前で老夫婦を車ごと爆殺したとフランキーは打ち明けます。相手が両親を殺害した相手と知り、怒りに燃えたダグの体に異変が生じました。

恐竜と化した腕で懺悔室の壁を破り、相手をつかむとなぜ父母を殺したと迫ります。驚いて命令されてやった、と叫ぶフランキー。

ボスの名を尋ねるダグに、フランキーは相手が悪いと何も語りません。聖職者姿のダグは、鋭い爪で悪党の喉を切り裂き殺害します。

その後ダグは動揺したままキャロルの部屋を訪れました。悪党退治はどうやるべきかと訊ねた彼に、ルールを定め計画的にやるべき、とキャロルはアドバイスしました。

ルール、つまり戒律に従うなら、まだ神父を続けられると納得したダグ。これは2人だけの秘密、スチュアート神父にも内緒で行う善行だと力説します。

彼の決断に喜んだキャロルは、私は神様のことは知らないと話します。その言葉に、俺も恐竜のことは知らない、と真顔でキメ台詞を語るダグ。

自分は両親を殺され、その犯人を今日殺したと告白したダグは、正直な気持ちを聞かれ良い気分だと打ち明けます。

殺した相手がフランキーと知ると、キャロルは礼を告げ彼の体を抱きしめます。そしてダグ神父は、今後は悪党退治をすると彼女に告げました。

最悪の奴を始末しよう、と言うキャロルとハイタッチを交わすダグ。この日から彼の真面目な神父として務めを果たし、変身し悪党を退治する”恐竜神父”としての二重生活が始まります。

キャロルとは親しくなり、自分を鍛え始めたダグの日常は充実していました。しかし彼の前に巨大な敵が現れます。それは忍者でした。

見るからに中国人な姿の首領・チェンに従うデタラメな忍者たちは、街の裏社会を支配していたのです。

しかし彼らが集める金は滞っていました。腹心の部下、ホワイト忍者のサムから”竜の戦士”が現れ、邪魔されていると聞かされるマスター・チェン。

明日のコカイン取引は首尾よく運ぶ、”竜の戦士”など恐れるに足らぬと言い高笑いする首領に、サムも作り笑いで付き合います。

ある日スチュアート老神父は、キャロルと親し気に振る舞うダグの姿を目撃します。最近様子が変わったダグに、神父は何かあったのかと尋ねました。

貞節の誓いは守っていると答えたダグは、ついに真実を話しました。そんな話などありえない、君の中に何かがいるなら悪魔祓いをしようと説得するスチュアート神父。

ダグは聖書を引き合いに正義の執行を正当化し、力を与えられた自分がこの世を正すと力説します。しかし神父には彼が、危険な妄想を抱いているようにしか見えません。

殺人は認められぬと告げたスチュアートは、教区に報告しダグとキャロルを救うと言いました。老神父に理解されずダグは悩みます。果たして彼は、”恐竜神父”の務めを貫くことができるのでしょうか。

以下、『必殺!恐竜神父』ネタバレ・結末の記載がございます。『必殺!恐竜神父』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)With Wild Eye Releasing

悩める”恐竜神父”ことダグは、両親が健在だった頃を思い出します。父になぜ神父になるのか聞かれた時、ダグは最善を尽くし、人を救いたいと答えていました。

その時に父から告げられた、道に迷い神の声も聞こえぬ時は、自分の心に従えとの言葉を思い出したダグ。

しかし彼の身を案じるスチュアート神父は、ダグを救おうとエクソシストの元に彼を連れて行きます。現れたのは見るからに怪しげな男でした。

ダグがエクソシストに話す間、神父はかつて裏山にしか見えないベトナムで戦った時、親友を失いなぜか戦場に現れた婚約者が地雷を踏み亡くなった過去を思い浮かべます。

スチュアート神父の立ち合いで儀式が始まりました。それはダグの中の恐竜を解き放ち、彼は神父を傷付け外に飛び出します。さっきの神父の回想は死亡フラグでしょうか。

ダグを見つけた3人の忍者は、相手が”竜の戦士”だと悟ります。皆で挑もうとする中、なぜか1人の忍者は死を悟り、韓国・光州に残した恋人を思い出します。これも多分死亡フラグでしょう。

キャロルが部屋に戻ると、そこには死闘を終え人に姿に戻ったダグがいました。悪魔祓いの儀式で神父を傷付けたと打ち明け、善良な人を傷付ける不安を訴えるダグ。

彼にあなたは怪物ではない、と告げるキャロル。2人はキスを交わし結ばれました。

翌朝、同じベットで眠る2人をチャイニーズ忍者たちが襲撃します。下着姿で格闘し忍者を倒すダグとキャロル。なぜキャロルも強いとの疑問はさておき、勝利した2人はキスをしました。

今さらながら、どうして忍者に襲われたと不思議に思うダグに、ご丁寧にも我々のボスはお前が仕える人物だ、と教える倒されたデタラメ忍者。

昨晩の儀式で片目を失ったスチュアート神父は、チャイニーズ忍者首領・チェンの元にいました。状況が理解できぬ神父に、ここはテンプル忍者団の学園だと説明する首領。

さらにデタラメ度を増した忍者団の目的は、神を教えを広めることです。通常より4倍も強力なコカインをバラ撒き、依存者を増やし供給を断つと、中毒患者たちは教会に救いを求め集まります。

こうして集まった人々に布教し、狂信者を獲得するのが目的です。企てを非人道的だと非難する神父を、チェンは異端者と呼んで矢で刺します。必ずダグがお前を倒す、と言い残して倒れたスチュアート神父。

忍者からアジトの場所を聞き出したダグは、革ジャンを着るとキャロルと共に、最終決戦の地へと向かいます。そこはやっぱり裏山っぽい、芝生に覆われた開けた場所で、ピクニックに最適だと思われます。

2人を囲んだ忍者軍団。首領の一番の部下で、「兄弟」と漢字で書いたハチマキをしたデタラメなホワイト忍者の正体は、自分の弟サムだと気付くダグ。

唐突ですがダグには弟、サムがいました。両親に兄のように認められず、愛されなかったサムは兄と異なり悪に染まったのです。

お前を倒すのに先祖の剣は必要ないと言い襲い掛かる弟に、なぜかヌンチャクで立ち向かうダグ。コートを脱いだキャロルも露出度の高いレオタード姿で、デタラメ忍者に挑みました。

サムの捨てた剣を掴み、先祖の剣なら俺も使えると告げて、ダグは弟を刺しました。お前らの先祖は一体何者だ、という疑問が浮かびますが、ともかくサムは倒れその返り血を浴び絶叫するダグ。

ヘナチョコなアクションのようで、結構強いキャロルに仲間を倒された忍者は、巨漢の忍者・ゴリアテを呼びました。

凄腕のゴリアテに斬られ倒れたキャロル。駆け寄ったダグに、自分の善良な心を信じるよう言い残すと、彼女は意識を失いました。その間2人を見守り、同情し涙を流す心優しきデタラメ忍者たち。

怒りに燃えたダグは”竜の戦士”として覚醒、恐竜姿になりました。明るい場所で見ると意外に可愛らしく、中の人の形がくっきり判るデザインですが、ともかく恐るべき恐竜です。

忍者の腕を喰いちぎる恐竜。視界の悪い恐竜に配慮しながら、素手で格闘を挑むデタラメ忍者たち。恐竜は次々と忍者を倒します。

しかしチャイニーズ忍者であるテンプル忍者団首領・チェンが放った矢が足に刺さると、ダグは元の姿に戻りました。

かつて恐竜人に支配された歴史を持つ中国(?)は、それを倒す抗毒素を開発し恐竜人を滅ぼしていました。チェンはそれを持っていたのです。

お前が最後の生き残りだ、とチェンはダグに告げ傷付いた足をいたぶります。苦痛に耐えかね悲鳴を上げるダグ。

言い残す事はあるか”恐竜神父”、と告げた首領に、「必殺!恐竜拳」と叫ぶダグ。恐竜化した腕でチェンの首を掴み、そのまま引きちぎりました。

憎き敵の首を挙げたダグに、「暴力を無くすことだけが、世界平和を達成する唯一の道」と説くガンジーの言葉が重なります。ダグは我に返りキャロルの事を思い出します。

病院に運ばれ治療されたキャロルは、驚異的な回復力を見せました。もう元気ですから、安心して下さいとテロップも流れます。

こうして忍者たちから街を守ったダグとキャロル。しかし神の教えを邪悪な手段で広めようとするデタラメなテンプル忍者団は、世界各地で暗躍しています。

キャロルに教会は辞めた、これからは世界中を飛び回ると告げるダグ。彼はキャロルとキスを交わします。

“必殺!恐竜神父”の戦いはこれからだ!ブレンダン・スティアー監督の次回作にご期待下さい…という雰囲気を漂わせつつ、映画は終わります。

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映画『必殺!恐竜神父』の感想と評価


(C)With Wild Eye Releasing

素晴らしいトンデモ映画です。B~Z級映画ファンなら、この世には「くだらないけど、面白い映画」と「くだらないから、当然面白くない映画」が存在するのはご存じでしょう。

『必殺!恐竜神父』は間違いなく前者。ツッコミながら見るのが最適の悪ノリ映画ですから、それが判るようあらすじネタバレで紹介しました。しかし本作の珍妙さを楽しむには、映画をご覧頂くしかないと断言します。

トンデモ映画の中には、作り手の「ふざけた映画だから、ふざけた態度で製作・出演してもいいだろ!」といった姿勢が見える作品もあります。それもまた楽しいですが、時に作り手の内輪受けの態度やハプニングに頼る笑いに、興ざめすることも多々あります。

しかし本作は実に丁寧に作られた作品です。俳優陣が真面目に演じるからギャグが際立つ、製作陣が丁寧な映画として作っているから、チープな部分には素直に笑えました。

70~80年代初めの映画の影響が強い本作には、車の中のシーンには背景に映像を映し出すスクリーン・プロセスを使用し、ブライアン・デ・パルマ監督が好んで使う画面分割(スプリットスクリーン)も登場します。

当時の映画の雰囲気を再現する映像の完成度に、ブレンダン・スティアー監督の映画への愛情と共に、技術力の高さを感じました。

中国から戦時下のベトナムなど、多くのシーンを裏山で撮影したかに見えるチープさは、製作費3万5千ドルという環境が生んだものに間違いありません。

しかし50~60年代のロジャー・コーマンの映画など、多くのB級映画が毎度撮影スタジオの裏山の、同じ場所で撮影されていました。

80年代にはニンジャ映画などのB級作品が、アメリカ国内を外国に見立て撮影した事実を知る者なら、このお約束を再現したお遊びだと理解できるでしょう。

露骨な形で登場する映画の嘘を観客に楽しませ、計算された笑いを散りばめ、最後まで真面目に作られたコメディ映画として楽しんで下さい。

トンデモ映画の舞台裏はアットホーム!


(C)With Wild Eye Releasing

本作のヒロインを演じたアリッサ・ケンピンスキーは、脚本を渡された時には驚いた、恐竜は無論、監督がこだわるグラインドハウス映画(70年代のB級娯楽映画)についても、何も知らなかったとインタビューに答えています。

ほぼ時系列通りに撮影される中で劇中の人物を完成させていく、実にワイルドな経験だったと振り返るアリッサ・ケンピンスキー。

最初に恐竜と遭遇するシーンは監督の家の裏庭で撮り、主人公ダグと交流を深める多くのクリップ映像は、大量に衣装を入れたカバンを持ち、公衆トイレで着替え次々撮影したと、その舞台裏を楽しく話しています。

重要な役であるスチュアート神父を演じたのは、監督の実の父親ダニエル・スティアー。なるほど父にはイイ役をやらせるのか、と思いきやデタラメ装備でベトナムに最前線に放り込み(お父さん、老けすぎです…)、トンデモない目に遭わすから大変です。

怪しげなエクソシスト師として登場したのは、ミュージシャンでストップモーション・アニメ作家のマルチクリエイター、アウレリオ・ヴォルテール。監督の才能に惚れたクリエイターも映画に参加しています。

『必殺!恐竜神父』の出演で、アーティストとは真面目に作品に向き合う態度と、真剣にならず楽しんで取り組む姿勢、この相反する姿勢が大切だと学んだ、とアリッサ・ケンピンスキーは振り返っていました。

B級映画と身近な娯楽作を愛する監督が作る痛快Z級映画

参考映像:『The VelociPastor Trailer (short film)』(2011)

本作はブレンダン・スティアー監督がまだ映画学校の学生の頃、『ジュラシックパーク』(1993)でも見たのでしょうか、友人にメールで”Velociraptor”(ヴェロキラプトル)と打って送ろうとした事に始まります。

ところが誤って”VelociPastor”(ヴェロキ+Pastor=牧師)と入力します。この語感が気に入った彼は、当時クエンティン・タランティーノ監督作『グラインドハウス』(2007)の影響を大いに受けていました。

そこで70年代グラインドハウス映画風の、フェイク予告の短編映画を製作しようと思い立ちます。その作品が『The VelociPastor Trailer』。ご覧頂くとタッチも音楽も効果音も70年代風で、しかも荒れたフィルム画面で描かれました。

荒れた画面を表現する方法は、フィルムをオーブンに入れて焼くことです。この動画をYouTubeにアップすると、たちまち大人気になります。

監督は本作に影響を与えた映画に、視覚効果スーパーバイザーのデニス・ミューレンのモンスター映画『Equinox』(1970)、『ガバリン』(1986)、70年代ブラックエクスプロイテーション映画のパロディ作『Black Dynamite』(2009)を挙げています。

自身をギレルモ・デル・トロ監督の大ファンと語る監督。主人公”恐竜神父”の本名は、デル・トロ監督作の常連モンスター俳優、ダグ・ジョーンズから頂戴したのでしょう。
  
一方で私は、常に目にしたものから刺激を受ける、製作直前に一気見したドラマ『リバーデイル』(2017~)にも大きな影響を受けただろう、とインタビューに笑って答えた監督。

とはいえ『必殺!恐竜神父』として映画化には苦労がありました。短編予告編映画を長編映画に肉付けするのは大変な作業だった、しかし予告編に無かった”忍者”を持ち込んだのは、良きアップグレードだと誰もが認めてくれるだろう、と話しています。

まとめ


(C)With Wild Eye Releasing

誰もが馬鹿げた映画だと予想する、その予想を大いに上回る真面目に楽しい映画『必殺!恐竜神父』。自分はB級映画・低予算映画が好きだと少しでも思う人なら、即見るべき作品だと断言しましょう。

楽しげな本作ですが、監督は長編映画化までに、クラウドファンディグでの資金集めに2度失敗。母親の知り合いの投資家からの資金提供を得て、ようやく本作を完成させました。

映画の生みの親は将に監督の母、一方監督の父は出演してエラい目に…。ともかくアットホームな環境で、裏庭・裏山で撮影された映画です。

それでなお本作は、間違いなく爆発的な魅力を持っています。アメリカではForbes誌が本作を『ザ・ルーム』(2003)や『シャークネード』(2013)に匹敵する「おバカ映画」と評し、Amazonプライムで人気急上昇作品1位を獲得した実績を持っています。

日本国内でも、配信サイト(ビデックス)で1位を獲得。この恐るべき口コミで人を魅了する力が、本作をSNSで話題爆発させました。

今そこにある、最高の最低映画『必殺!恐竜神父』を絶対に見逃してはいけません!…なお、劇中では「アーメンダブツ」と唱えてませんので、どうかご了承下さい。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら





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