Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2023/04/08
Update

【ネタバレ】ある殺人者の告白|あらすじ感想と結末の評価解説。サイコスリラーの母親殺しの切ない真実をエリオット・レスターが描く|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー108

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第108回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第108回は、エリオット・レスター監督が演出を務めた、映画『ある殺人者の告白』です。

ある日、退役軍人のピーター・スノーデンは口論の末、同居していた母親を殺してしまいました。ですがピーターは逃げることも警察に通報することもなく、まるで何事もなかったかのように日々を過ごし続けます。

その日々の中で、ピーターは密かに遺体を別の場所に移したり、実母を殺害した自身の心情を告白する動画を撮影したりするという物語とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

デヴィッド・オイェロウォ主演で贈る、2015年製作のアメリカのサイコスリラードラマ映画『ある殺人者の告白』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『ある殺人者の告白』の作品情報


(C)2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

【公開】
2015年(アメリカ映画)

【脚本】
フレデリック・メンシュ

【監督】
エリオット・レスター

【キャスト】
デヴィッド・オイェロウォ、ヘザー・ストーム、バーロウ・ジェイコブス

【作品概要】
『ブリッツ』(2011)や『アフターマス』(2017)などを手掛けたエリオット・レスターが監督を務めた、2014年製作のアメリカのサイコスリラードラマ作品です。

グローリー 明日への行進』(2014)でマーティン・ルーサー・キング・Jr.牧師役を演じ、ゴールデングローブ賞の主演男優賞にノミネートされたデヴィッド・オイェロウォが主演を務めています。

映画『ある殺人者の告白』のあらすじとネタバレ


(C)2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

退役軍人のピーター・スノーデンは、ある日口論の末に同居する母親リリアンを殺しました。

リリアンは敬虔なクリスチャンで、断固とした態度でピーターのやることなすことに口煩く言っていました。

その反面、リリアンはピーターがスーパーマーケットのレジのバイトで稼いできたお金で買って貰った服を着て買い物に出かけたり、金遣いが荒かったりなど好き放題やっていました。

ピーターはそれを不満に思いつつ、ずっと我慢していました。でも唯一の望みである、アメリカ陸軍時代の友人エドワードを夕食に招くことを反対されて、ついにピーターの堪忍袋の緒が切れてしまったのです。

ピーターは母親を殺したことを恥じてもいませんし、悔やんですらいませんでした。いやむしろ、自分の人生はこの瞬間を迎えるためにあったと感じたのです。

翌日から、ピーターは今まで母親に制約されてできなかったことをやりました。自分で作った極上のディナーを赤ワインを飲みながら楽しんだり、休日には下着姿で昼間から飲んだくれたり、家の中で煙草を吸ったり。

ですがどこか、ピーターは虚しさを感じていました。そしてピーターは、エドワードを夕食に招くために彼に勇気を出して電話をします。

しかし何度かけても、エドワードの妻グロリアが電話に出るか、留守電になるかのどちらかで、エドワードは一向に電話に応じてくれません。

ピーターは、母親を殺した日から始めている自撮り動画でそのことを愚痴としてこぼしました。

「昔から俺の邪魔ばかりする。俺からの留守電は消すし手紙は破く」、「18年前、結婚する前にエドワードはよく彼女の悪口を言っていた」とか。

「俺は当時“大げさだ”と言ったが、今ならその気持ちが分かる」、「男同士の友情を大切にしてはいけないなんて法律はないのに」とか………。

それと同時に、ピーターは期待に胸を膨らませていました。自分が直接誘えば、エドワードは必ず来てくれる、夕食のメニューは何にしようかなと。

しかしどんなに留守電にメッセージを残しても、エドワードからの折り返しの電話はきませんでした。

ピーターに電話をかけてくるのは、妹のヴィッキーだけです。しかし彼女から病気のせいで働けなくなった過去を蒸し返され、キレたピーターは数分足らずで電話を切りました。

次第に孤独感に耐えきれなくなったピーターは、母親が通販で買った卓上三面鏡に写る自分に話しかけます。

月曜日の夜。ピーターは卓上三面鏡の前で、母親宛てに送られてきた手紙を読み上げます。差出人は、アラバマ州モービルに住むリリアンの長年の親友シャーリーン・カロザース夫人です。

カロザース夫人の手紙には、彼女に孫ができたことと、リリアンが手紙を通じて相談していたであろうピーターのことについて書かれていました。

「あなたも大変ね、ピーターの望みは敬虔なクリスチャンには受け入れられない。若さゆえに自分を見失っているのよ」

「あなたは情に流されず、断固とした態度をとらなくてはダメ」、「マタイの福音書にある主の言葉を思い出して、“私より息子や娘を愛する者は、私にふさわしくない”」と………。

カロザース夫人の言葉に腹を立てたピーターは、リリアンに成りすまして返信の手紙を書きました。

ですがリリアンのように手書きだとバレてしまうため、ピーターは「飲んでる薬を変えたせいで手が震えて字が書けない」と嘘の設定を作り、タイプで文字を打ちました。

その手紙には、ピーターがどんなに良い息子であるか、リリアンによくしてくれるか、エドワードを家に招いてと3人で素晴らしい夕食の時間を過ごしたことなどが記されていました。

その後、ピーターは新しく買ったスマホとBluetoothヘッドセットを使って、エドワードに電話をかけました。するとついに、エドワードが電話に出てくれたのです。

ようやくエドワードを夕食に招くことができると歓喜したピーターは、電話をかける前に祈った神に感謝を告げます。

この日に撮影した自撮り動画で、ピーターはエドワードが金曜に来ることになったことを報告。それと彼に食べさせる夕食の準備と、まるで霊廟のような家を何とかしなければならないと語っていました。

そしてピーターは、腐敗臭が漂うようになった母親の死体をキルト生地の布でくるみ、車のトランクに乗せてどこかへ埋めに行きました。

火曜日。ピーターはどこか晴れやかな気持ちで朝を迎え、ヴィッキーにスマホから電話をかけて、家中を模様替えすると話します。

しかし30年前にピーターの父親が家を出て行って以来、手つかずだった家の模様替えは彼が思っていた以上に難航しました。

この日の自撮り動画で、ピーターはカーペットを替えるのは断念し、せめて母親の部屋とキッチンの壁を塗り直すこと、どんなに遅くとも木曜までにすべて終わらせると語っていました。

ですがエドワードに振舞う夕食のメインディッシュは決まったものの、未だそれ以外何を作るか決まっていません。

ピーターは少しでもエドワードに喜んでもらおうと、彼が子供の頃から飼いたいと憧れていた熱帯魚を2匹飼いました。

水曜日。ピーターはエスプレッソマシンを探して家中を駆け回ります。そのエスプレッソマシンを使って、ピーターは食後にエドワードにエスプレッソコーヒーを振舞うつもりでした。

しかし家中どこを探しても見つからず、ピーターは自撮り動画で「立派なマシンがあったはずなのに、母さんが腹いせに隠しやがったんだ」と母への怒りの気持ちをぶつけます。

そこでピーターは、家にあったクレジットカードを使って、エスプレッソマシンを通販で購入。しかし、ピーターが家の模様替えのために色々買ったせいか、カードの限度額を超えてしまって使えませんでした。

その日の夜。ピーターは屋根裏部屋に隠されたエスプレッソマシンを発見。それで機嫌が良くなったピーターは、自撮り動画でエドワードとの出会いを語っていきます。

今から18年前、ピーターは新兵の訓練前、軍への勧誘官の車に相乗りしたことがきっかけでエドワードと知り合い、意気投合しました。

ピーターにとって軍隊生活は、あらゆる嫌がらせをされてとてもつらいものであり、ある時我慢の限界を迎えて除隊しました。

同じく除隊していたであろうエドワードは再入隊し、2人は離ればなれに。ですが2年前のバレンタインデーの日、ピーターは母親が借りた本を返しに行った図書館で、子供を連れていたエドワードと偶然再会したのです。

積もる話も多く、ピーターたちは時々エドワードの職場近くでつるむようになりました。

ですがピーターは母親のせいで家に招くことができず、エドワードの家にも行けなかったため、外でこっそり会うしかありませんでした。

しかしピーターとエドワードは、些細な誤解がもとで疎遠となってしまいました。

ピーターは唯一無二の親友である彼ともう一度会い、仲良かったあの頃に戻りたいと思っていました。そのためならば、ピーターは何だってする覚悟があります。

木曜日。ピーターは家の壁を水色からグレーに塗り替えつつ、ヴィッキーと電話していました。

その際、母親と連絡が取れず、もしかして自分の伝言を聞いて気分を害したのではないかと不安がるヴィッキーに、ピーターは母親にモービル行きの航空券をサプライズでプレゼントするのはどうだと提案します。

もちろんそれは建前で、本音は家の模様替えのための費用に充てる金が欲しいからです。

それともう1つ、ピーターはヴィッキーやカロザース夫人、母親の教会仲間のビーズリー夫人に、母親は体調を崩して寝込んでいるとか、外出してるとか嘘をついて母親の所在を誤魔化していました。

以下、『ある殺人者の告白』ネタバレ・結末の記載がございます。『ある殺人者の告白』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

そして運命の金曜日を迎え、エドワードをもてなす準備は最終段階に入りました。

結局クローゼットにまで手が回らなかったけれど、何とか家の模様替えが終わったピーターは、掃除にテーブルセットに料理の準備と、忙しなく家中を駆けまわります。

しかし待てど暮らせど、エドワードはやってきません。しびれを切らしたピーターは、エドワードに電話をかけました。

しかし電話に出たのはまたしてもグロリアでした。グロリアを介して、エドワードが本当に自分を拒絶していることを知ったピーターは大激怒、「彼を出さないと恐ろしい目に遭わせてやる」とついに彼女を恐喝したのです。

ピーターの怒りはそれだけでは治まらず、エドワードのために用意したテーブルセットと、聖母マリア像をバットで破壊。

怒りの次は悲しみが一気に込み上げてきて、ピーターは洗面化粧台に置いてある薬を飲んで号泣します。

しばらく経った後、ピーターはイブと名付けた1匹の熱帯魚に向かって静かに語りかけました。

「これはむしろエドワードに、地上のどんな制約も超えるほどの限りの無い俺の愛で彼を包み込むことができると見せられるいい機会だ」、「現世では無理でも、来世ではきっと結ばれるはずだ」と意味深な言葉を呟いて、ピーターは意識を失いました。

土曜日。ヴィッキーからの電話で目を覚ましたピーターは、彼女に促されてつけたニュース番組で、「今朝黒人の高齢女性と思われる遺体が、郊外の森で発見されました」、「警察はこれを殺人事件とみて現在捜査中です」とニュースキャスターのヘザー・ストームが言っているのを聞きました。

その直後、今度はリリアンが通う教会のバロンズ牧師から電話がかかってきました。母親の所在を聞かれたピーターは、「母は少し体調を崩して、カロザース夫人のところへ出かけた」と嘘をついて誤魔化しました。

次はカロザース夫人から、「牧師からリリアンはうちにいると言われたのだけれども」と電話がかかってきます。

ピーターは「カロザース夫人のところだとは言っていない。モービルの友人と聞いて彼が早合点しただけ」と答えました。

そう誤魔化していられるのも時間の問題だと思ったのでしょう。ピーターはスーツケースに母親の服や化粧品などを詰めました。

そしてグロリアに電話で昨夜の暴言を謝罪し、ピーターは「もう二度とあんなことはしない。僕はこの町から引っ越すことにした」、「エドワードに僕が謝っていたと伝えておいてくれないか」と言って電話を切りました。

この日の自撮り動画で、ピーターは「他に方法はなかった。いくら全力であがいても結局は神意のままになるのだとやっと分かった」、「行き着く先はどこか分からないが、西部のどこかの庭のある小さな家で、週に一度カウボーイ姿で街へ出て郵便物と食料を手に入れる生活を送るだろう」と語りました。

そして「母さんに服従して、いい息子でいようとしすぎたんだ」と言ったところで、ついにエドワードから直接ピーターに電話がかかってきます。

ピーターは歓喜し、エドワードに「一緒にこの町を出よう。西へ西へひたすら車を走らせて、誰も俺たちを知らない、2人きりになれる場所へ」と誘いました。

しかしエドワードの答えはノー。直接彼から拒絶されてしまったのです。日曜日の朝、ピーターは車のトランクから自分のスーツケースを取り出し、その中にしまっていた服をクローゼットにしまいます。

それから金曜の夜に、癇癪を起こして壊したものや倒した家具の後片付けをしました。

そしてピーターは、エドワードに宛てた手紙をタイプします。ピーターのとった行動がエドワードとその家族に迷惑をかけてすまないという謝罪と、ピーターにとってかけがえのない絆と友情が実を結ぶことはなかったことへの後悔。

いつか新聞でピーターが犯した犯罪を知っても軽蔑しないでほしいという願いが綴られており、そして手紙の最後には「神の御前で再会する時までお別れだ」という言葉が記されていました。

その日の夜。ピーターは、これまで受取拒否で返ってきていたエドワード宛ての手紙を全て燃やしました。

ピーターは薬を過剰に摂取した上で、テールパイプにホースをテープで留めて一酸化炭素を充満させた車に乗り込み、自殺しようとします。

しかしその直後、ピーターは飲んだ薬を吐いてしまいます。ピーターは車のエンジンを切り、家に戻りました。

月曜日の朝。リビングでテレビを見ながら寛いでいたピーターのもとに、ビーズリー夫人の息子ロバート・ビーズリーが訪ねてきます。

ロバートは母に頼まれて、リリアンの様子を見に来たのです。ですが当然、ピーターはドア越しに彼を追い払います。

するとロバートは、強引に家に入ろうとするのです。ピーターが慌ててそれを阻止すると、彼は「お前の魂に憐れみを」と捨て台詞を吐いて去っていきました。

その後、ピーターはいつも食卓に置いていた化粧鏡をそっと閉じ、母親の部屋の棚に置きました。そしてスキンヘッドにしたピーターは、自撮り動画で静かに自分の身の上話を語っていきました。

ピーターが6歳の時、彼の兄ボビーが1981年に交通事故で死んだこと。ボビーの葬式に出て彼の死を認めるのが怖くて、ピーターはわざと自分の靴を隠してしまったこと。

そのせいでリリアンが癇癪を起こしたこと。母親にとって特別な子であったボビーのように自分を認めて欲しくて、きついことを言う母親だけど親孝行したくて、アメリカ陸軍に入隊したこと。

そこで出会ったエドワードを見て、「母さんが気に入りそうだ」、「仲良くなれる」と本気で思ったこと。でも自分は、2人とも失ってしまったことを………。

その日の夜。ピーターは電話をかけてきたヴィッキーに、母親を殺したことを告白。「警察に通報した方がいいと思うならそうすればいい」と言いました。

電話を切る前に、ピーターは「母さんはお前のことを心から愛していた。この数週間、俺はその逆のことばかり言った」と嘘をついていたことを謝罪し、いつまでもずっとヴィッキーを愛していると言って別れを告げます。

その後、ピーターは綺麗な服に着替え、弾が入っていない銃で武装しました。ヴィッキーの通報を受けた警官隊が突入する前に、最後の自撮り動画を撮影しました。

「この銃には弾を込めていないから誰もケガしない。1人を除いて」、「警官隊が突入してきて、武装する犯罪者に向かって銃を向ける。もう覚悟はできてる」と言ったうえで、ピーターは最後まで動画を見てくれた視聴者に感謝を述べました。

そしてピーターは、玄関のドアを蹴破って突入してきた警官隊に向かって銃口を向け、静かに動画撮影を終えたのでした。

映画『ある殺人者の告白』の感想と評価


(C)2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

口論の末に実母を殺害した退役軍人のピーターですが、その日以降から撮影される彼の自撮り動画を見ると、殺意を持つほどの怒りを抱いたのも無理ないなと感じます。

何故なら殺されたピーターの母親リリアンは、毒親(毒と比喩されるほど子どもの人生を支配し、子供に害悪を及ぼす親)だったからです。

ピーターは軍を除隊後、スーパーマーケットのレジ係として働いた給料を生活費に入れていましたし、母親に服を買ってあげるなどきちんと親孝行していました。

ですがリリアンは、そんなピーターにいつも小言を言い、金をケチっているわりには浪費家でした。

何より、「エドワードを家に招いて夕食を振舞いたい」というピーターの一番の望みを、リリアンは断固反対したのです。

ピーターにとって、エドワードは唯一無二の親友。しかも数年疎遠だったものですから、彼のエドワードに会いたい気持ちはとても強かったはずです。

これは、ピーターの堪忍袋の緒が切れても仕方ありません。物語の序盤で、ピーターはリリアンを殺したことに後悔はないと言っています。

ですが自由の人生を謳歌できると喜ぶ一方で、ピーターは次第に虚無感に襲われていきました。

カロザース夫人の手紙を読む場面で、母親が友人のアドバイスにしたがって断固とした態度をとっていたことを知った時のピーターの複雑そうな表情。彼に感情移入してみると本当、胸が苦しくなります。

まさに「親の心、子知らず」という言葉がピッタリなほど、悲しきピーター親子のすれ違いです。

また、ピーターはエドワードに対して異常な執着心と愛情を抱いています。

ピーターとエドワードが疎遠になったきっかけである「些細な誤解」とは何なのか、作中で彼は明言していません。

ですがエドワードがピーターと話すことも、会うことも、手紙を受け取ることすら拒否するほどの「些細な誤解」だったのだと考察できます。

自分がとった行動で、大事な友と母親を失ってしまったピーター。日を増すごとに彼の精神が壊れていく様はとても辛く悲しいです。

まとめ


(C)2021 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.

実母を殺害してしまい、唯一無二の親友にも拒絶されてしまった退役軍人が少しずつ精神を崩壊させていく様を描いたアメリカのサイコスリラードラマ作品でした。

作中ではピーターの母親や妹、母親の友人にその息子、そしてエドワードら登場人物と彼が会話をする姿が描かれていますが、エドワードたちが登場することは一切ありません

ニュースキャスター役のヘザー・ストームと、ロバート役のバーロウ・ジェイコブスは、声だけの出演でした。

つまり物語のほとんどが、ピーター役のデヴィッド・オイェロウォのひとり芝居によるものなのです。

母親を殺してから数週間にわたって揺れ動くピーターの心情と、エドワードへの友情を超えた愛情を抱くあまりの危うい一面を見事に表現した、デヴィッド・オイェロウォの素晴らしい演技力に感嘆させられます。

エンドロール前、幼いピーターが公園で母親やヴィッキーと戯れる姿を撮影した動画が流れました。

そして本作は、2003年にアメリカで実際に起きた母親殺しの事件を題材にしたドラマとなっています。

デヴィッド・オイェロウォのほぼひとり芝居で贈る、母親を殺したことを隠し続けた退役軍人の精神が壊れていく様を描いた、切なすぎるサイコスリラードラマ映画が観たい人にとてもオススメな作品です。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

鬼滅の刃名言/名シーン|最終章無限城編:ネタバレ有で猗窩座/狛治の過去と最後×善逸・獪岳戦を振り返り【鬼滅の刃全集中の考察22】

連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第22回 大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。 今回前回記事に引き続き、「無 …

連載コラム

NETFLIX映画『ルシッドドリーム』ネタバレ感想と考察。明晰夢を使いSFとミステリーを融合させた秀作|SF恐怖映画という名の観覧車99

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile099 寝ている間に見る「夢」は自己の欲求を表現しているとも、または脳が自動的に記憶の整理を行っているとも言われていました。 基本的に自身が見て …

連載コラム

映画『レッド・ブレイク』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ワイルド・スピードシリーズのタイリース・ギブソン主演による“元海兵隊員”のアクション活劇!【未体験ゾーンの映画たち2022見破録12】

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第12回 映画ファン待望の毎年恒例の祭典、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が今年も開催されました。 傑作・珍作に怪作、ド派手なア …

連載コラム

映画『ロッキー4』あらすじネタバレと感想レビュー。ドラゴと対戦した亡きアポロのために敵地でのリングに挑む|すべての映画はアクションから始まる13

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第13回 日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はア …

連載コラム

【ネタバレ】セクション8:リベンジ・ミッション|あらすじ結末と感想評価。復讐リベンジ!チンピラたちに“家族を殺させた事件の黒幕とは⁈|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー115

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第115回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学