連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile059
全世界待望の大人気シリーズ終結作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)の監督を務めるJ・J・エイブラムスが、過去に手掛けた作品として有名な『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008)。
全編をホームビデオからの視線で描いたPOV映画として爆発的な人気を得たこの作品は、8年後には全く毛並みを変えた続編『10 クローバーフィールド・レーン』(2016)が製作されるなど、ファンを幾度となく驚かせてきました。
そして2018年、NETFLIXが独占配信したシリーズ最新作『クローバーフィールド・パラドックス』(2018)が全世界同時配信。
今回はシリーズを語る上で、外すことの出来ない作品となった本作の魅力とネタバレあらすじをご紹介させていただきます。
【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら
CONTENTS
映画『クローバーフィールド・パラドックス』の作品情報
【日本公開】
2018年(NETFLIX独占配信)
【原題】
The Cloverfield Paradox
【監督】
ジュリアス・オナー
【キャスト】
ググ・バサ=ロー、ダニエル・ブリュール、エリザベス・デビッキ、デヴィッド・オイェロウォ、クリス・オダウド、チャン・ツィイー
【作品概要】
『美女と野獣』(2017)などへの出演経験を持つググ・バサ=ローが主演を演じたシリーズ第3弾。共演には『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)でヴィランを演じたダニエル・ブリュールや、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)に出演するチャン・ツィイーなど。
映画『クローバーフィールド・パラドックス』のあらすじとネタバレ
5年以内に地球の資源が枯渇する予測が公になり、アメリカやロシアなどの大国は残り少ないエネルギーを求め戦争を始めようとしています。
夫を地球に残し、無限のエネルギーを作り出せると言われる量子加速器「シェパード」の開発研究を各国の研究者が集う「クローバーフィールド」宇宙ステーションで続けるハミルトン。
およそ2年の月日が経っても実験は成功せず、燃料の問題から「シェパード」を稼働できる回数も残り3回と差し迫った状態にまで追い込まれます。
地上での戦争も激化し実験の早期成功を望む声も寄せられますが、一方である学者は量子加速器の衝撃が時空の膜を破壊する「パラドックス現象」が起こることを危惧していました。
ドイツ人のシュミットをリーダーに再び実験を始める「クローバーフィールド」の研究者たち。
今まで一度も上手く起動していない「シェパード」の起動に成功し喜ぶ研究者たちでしたが、すぐに機械がオーバーロードし、宇宙ステーション自体が一時機能を停止してしまいます。
全システムダウンの警報が鳴り響き、研究者たちはそれぞれ確認と対処に向かい、一時的に危機からは脱出しますが燃料や日用品の消耗は深刻な状態でした。
更に地球の全ての信号が消失し目の前にあったはずの地球が跡形もなくなくなっていることに気がつきます。
「シェパード」の暴走が地球を消滅させた可能性について怯える研究者たちでしたが、そのことよりもまず自分たちの命を繋ぐために宇宙ステーションの修理を急ぐべきと言う意見を聞き入れ修理を始めました。
修理の最中、「シェパード」の基盤とも言えるジャイロが消えていることに気がついたハミルトンでしたが、その時宇宙ステーションの配管の中からけたたましいほどの悲鳴が鳴り響き、ハミルトンを始めとした研究者たちは壁板を外し中をのぞきます。
そこにはパイプや配線が身体中に刺さった女性がおり、ハミルトンを目視すると女性は彼女の名前を呼び助けを求めました。
記憶にない女性だったため困惑するハミルトンでしたが、他の研究者たちが女性の周りを走る電線の電流を止めたことで助け出すことに成功します。
宇宙ステーションの修理や湖沼の原因究明を主軸にすべきとの声を無視しリーダーのシュミットと中国人研究者のタムは「シェパード」を再稼働させようと行動。
「シェパード」の暴走以降、身体に変調を覚えるヴォルコフは遂に精神までもが異常をきたし始め、3Dプリンタで作成した拳銃を持ちシュミットとタムが宇宙ステーションの破壊を目論むスパイだと断定し襲おうとします。
しかし、その直後にヴォルコフは嘔吐して倒れ、研究者のマンディが飼育していたはずのミミズを体内から吐き出し死亡しました。
目を覚ました謎の女性・ジェンセンは2年前からこの宇宙ステーションのクルーであるとハミルトンに話します。
彼女はタムを除き全員の事が分かると言いますが、一方でクルーのメンバーは誰一人彼女に見覚えがありません。
ハミルトンを抱き寄せるジェンセンは、ハミルトンの耳元で「シュミットを信用するな」と告げます。
その会話を聞いていたキールは、シュミットの端末にアクセスすると彼がドイツと密約し、エネルギー戦争が終わるまで「シェパード」を起動させないように仕向けていたことが分かります。
激怒したキールはシュミットを部屋に閉じ込めますが、シュミットは何が何やら分からない様子でした。
一方、地球では原因不明の大爆発が発生しており、ハミルトンの夫マイケルは情報を集めようとしますが、人々は大混乱に陥りまともな情報が入ってきませんでした。
職場へ向かおうとするマイケルは、道中で謎の爆破により倒壊した家屋内に居た少女モリーを救出し、彼女と共に知人のシェルターへと逃げ込みます。
宇宙ステーションの修理を黙々と行うマンディは、突如壁に腕がめり込み抜けなくなってしまいます。
壁が変化している様子に驚きながらもキールとハミルトンに引き抜かれたマンディ。
右腕が壁に飲み込まれ一見するとちぎれているように見えましたが、痛みもなく傷口から血すらも出ませんでした。
閉じ込められていたシュミットの部屋が突如開き、そこで右腕が独りでに動いていることを目撃したシュミットは研究者全員を呼び出します。
自身の右腕であることに仰天するマンディでしたが、自身の意思で動いているわけではないことが分かると、シュミットは今起きている現象が他次元との相互干渉により起きてしまった「パラドックス現象」であることを言います。
何かを書く仕草を繰り返す右手にペンを持たせると、その手は「ヴォルコフの身体を開け」と書きました。
その言葉通り、ヴォルコフの遺体を切り開くと、無くなっていたジャイロがヴォルコフの体内から見つかります。
ジャイロが発見によって座標の特定が可能となり、太陽を回り込んだ位置に宇宙ステーションが移動していただけだと分かりました。
地球を目にした事で研究者たちに安堵と希望が満ちますが、地球から発せられるラジオやテレビの情報によると「クローバーフィールド」宇宙ステーションは既に大破し地球に落下しているとのことでした。
シュミットは「クローバーフィールド」ごと違う次元に来てしまったことに気がつき、再び「シェパード」を起動させ元の次元に戻るべきだと主張。
マンディや医師のモンクは日用品の不足などから今いる次元の地球に戻るべきなのではないかと言いますが、シュミットはタムと共に「シェパード」の起動を急ぎます。
「シェパード」のオーバーロードが換気ミスによるものだと考えるタムは気圧調整デッキへと向かいますが、換気口から突然水が入り込み、他の研究者に助けを求めたものの、水圧によって窓が壊れ死亡してしまいます。
タムの死亡によって、「シェパード」を動かすために必要なエンジニアがいなくなり絶望に暮れる研究者たち。
しかし、ハミルトンはジェンセンがこちらの次元ではタムの代わりのエンジニアであることを思い出します。
キールは彼女に地球に戻る脱出ポッドの利用を許可する条件として「シェパード」の起動の補佐を依頼。
依頼を引き受けたジェンセンからハミルトンはこちらの次元のハミルトンの来歴を聞きます。
かつて自分のミスで子どもを失い地球を飛び出てきたハミルトンですが、こちらの次元のハミルトンは子どもを失っておらず地球に残ったままと言うことでした。
もう一度子どもに会いたいという想いから、キールに全てが終わった後はこちらの世界に留まることをハミルトンは提案。
キールにはこちらの次元は、こちらの次元のハミルトンの居場所であり、お前の居場所ではないと諭されますがそれでも彼女の決意は揺るぎませんでした。
一方、酸素供給を一時的に止めることで「シェパード」起動のエネルギーを作ろうと考えるマンディは作業に取り掛かり、必要なエネルギーが生まれたことをクルーたちに伝えます。
しかし、その直後にマンディのいるメンテナンスデッキの磁力が暴走し酸素タンクが爆発、マンディは死亡します。
メンテナンスデッキの爆破によって宇宙ステーション全体に歪みが生じ、メンテナンスデッキのある区画を切り離さなければ宇宙ステーションがバラバラになってしまう危機的状況に陥ります。
キール、ハミルトン、モンクは切り離しを行うため該当区画へと向かいますが遠隔操作の時間が足りず、後のことをハミルトンに託したキールが手動で該当区画を切り離し、キールごと宇宙の彼方へと消えていきました。
映画『クローバーフィールド・パラドックス』の感想と評価
1作目では「未知の生物に対する恐怖」、2作目では「人間に対する恐怖」と様々な手法で「恐怖」を描いてきた「クローバーフィールド」シリーズ。
本作ではそんな「恐怖」に対象が何と「次元の歪み」であり、今までの映画には無い「恐怖」を体験することが出来ます。
相手が人間であれ未知の生物であれ、その行動はある程度の範囲で推測や対策が可能です。
しかし、「次元の歪み」は人間の小細工や想定を越える「世界の仕組み」そのものであり、「次元の歪み」を作り出した研究者たちは予想も対策もできないような方法で次々と死亡していきます。
理不尽な死が連鎖し、歪みの物語が想像もつかない方向に展開していく本作はシリーズの挑戦心を前面に出していると言える作品です。
まとめ
「クローバーフィールド」シリーズの第3弾となる本作は、怪物たちが登場するきっかけが描かれる前日譚。
1作目2作目ともに、混乱に巻き込まれる一般市民の視点から描かれているため物語には「謎」が多く存在しましたが、本作ではその最も根幹の部分が明らかになります。
それ故に、本作からの鑑賞でも充分楽しめる内容。
少しでも興味を持った方はぜひとも本作を鑑賞してみてください。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
いかがでしたか。
次回のprofile060では、フランスの鬼才パスカル・ロジェ監督が放つ映画『トールマン』(2012)をネタバレあらすじを交え紹介させていただきます。
7月31日(水)の掲載をお楽しみに!
【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら