Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2019/07/25
Update

映画『連合艦隊』あらすじと感想評価。戦艦大和の悲劇を二つの家族の悲劇を通じて描く|邦画特撮大全54

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第54章

2019年7月26日より公開される『アルキメデスの大戦』。戦艦大和の建造を巡る人間ドラマで、山崎貴監督のVFXによって戦艦大和が描かれます。


(C)2019「アルキメデスの大戦」製作委員会

今回の邦画特撮大全は、かつて実写特撮によって戦艦大和を描いた『連合艦隊』(1981)を取り上げます。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『連合艦隊』の作品情報


©︎東宝

【公開】
1981年8月8日(日本映画)

【監督】
松林宗恵

【脚本】
須崎勝彌

【特技監督】
中野昭慶

【音楽】
服部克久

【主題歌】
谷村新司

【キャスト】
小林桂樹、永島敏行、金田賢一、古手川祐子、中井貴一、丹波義隆、三橋達也、高橋幸治、財津一郎、長門裕之、中谷一郎、藤岡琢也、佐藤慶、神山繁、小沢栄太郎、金子信雄、佐藤允、安部徹、田崎潤、藤田進、織本順吉、平田昭彦、なべおさみ、松尾嘉代、奈良岡朋子、丹波哲郎、鶴田浩二、森繁久彌

映画『連合艦隊』の作品概要

総製作費10億円にも及ぶオールスター超大作『連合艦隊』。本作の前年には、東映による日露戦争を題材にした超大作『二百三高地』(1980)が公開して大ヒットしていました。

特撮を用いた戦争映画を多数製作していた東宝は、かつての8.15シリーズ(『日本のいちばん長い日』『激動の昭和史 軍閥』などの戦争大作シリーズ)の復活を企図した大作として本作を製作しました。また、日本で初めてドルビー・ステレオを導入した映画でもあります。

監督は、自身も学徒出陣の経験のある松林宗恵監督。『人間魚雷回天』(1955)をはじめ『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(1960)『太平洋の翼』(1963)といった戦争映画の他、“社長シリーズ”などの喜劇映画も手掛けています。

本作のトップクレジットである連合艦隊司令長官・山本五十六役には小林桂樹。さらに伊藤整一役の鶴田浩二をはじめ、三橋達也、藤田進、佐藤允、丹波哲郎、森繁久彌といったスター・名優たちが顔を並べています。

物語の主軸となる本郷英一・真二の兄弟には永島敏行と金田賢一、小田切武市と正人の父子には財津一郎と中井貴一がキャスティングされています。中井貴一は本作がデビュー作となりました。

本作は1981年に公開された日本映画の中で動員数・配給収入ともに1位を記録しました。

2つの家族を軸にした連合艦隊の盛衰

参考映像:『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(1960)予告編

本作はハワイ・真珠湾奇襲やミッドウェイ海戦をダイジェスト的に描き、レイテ沖海戦と大和特攻作戦に時間を割いています。そのためトップクレジットである山本五十六長官は映画の折り返し地点あたりで、ソロモン諸島ブーゲンビル島上空で戦死してしまいます。

本作は日本軍側の視点のみで進み軍人も多数登場しますが、彼らがヒロイックに描かれているということはありません。むしろ彼ら軍人による作戦上のミスを強調して描いています。開巻早々「日本は〈悲劇の時代〉を迎えた」という字幕が現れ、開戦のきっかけとなった日独伊三国同盟そのものを誤った判断である宣言しています。

あくまで、上記のような軍部の判断の誤りに翻弄され死に至った若者たちや、遺された家族といった市井の人々を丹念に描いているのです。軍上層部のドラマはあくまで背景となり、物語の主軸は本郷兄弟と小田切親子という2つの家族に置かれています。

海軍少尉となり艦爆搭乗員となった本郷英一は、父と同じく学問の道を進んだはずの真二とレイテ沖海戦の最前線である空母瑞鶴にて再会。この戦場で英一は戦死しますが、彼はコックピットと自身の顔を血に染めながら死に至ります。

一方、船大工の小田切武市は息子・正人に夢を託し、彼の海軍兵学校入学を喜びます。しかし正人は特攻隊員の道を選び、武市も戦艦大和特攻作戦に召集されてしまいます。そしてレイテ沖海戦で生き残った本郷真二も同じく大和に召集されます。

大和に搭乗した若者は次々と戦死し、その死を憂いた武市も最終的には戦死。彼ら戦死者の無数の遺体が血に染まった水に浮く描写には、戦争賛美どころか戦争の愚かさと残酷さ、そして虚しさしかありません。

スポンサーリンク

なんと20分の1スケールの戦艦大和・『連合艦隊』の特撮

参考映像:『太平洋の翼』(1963)予告編

また、本作に登場した戦艦大和の撮影用モデルは、石川島播磨工業(現:ICHI)に製作を依頼。9000万円という巨費で製作されました。縮尺20分の1スケールで、全長13・5メートルにも及びます。

このモデルには小型漁船用の水冷ディーゼルエンジンが備わっており、撮影所内のプールではなく実際に海上で撮影する構想でした。しかし小型船舶法の問題から断念せざるを得ませんでした。中野昭慶特技監督は、海上を走る戦艦大和の俯瞰ショットを撮りたかったそうです。

『連合艦隊』というタイトルですが、中野監督は戦艦大和を主役と捉えて特撮場面を演出したと言います。特にラストの大和撃沈の様子は死に花と言わんばかりに、巨大な爆炎と黒煙を立ち昇らせています。

まとめ

公開当時は戦争映画の大作が連続して作られたこともあり、右傾化を危惧した映画人も多かったようです。しかし実際に『連合艦隊』を見ると、むしろ本作は戦争の残酷さや虚しさを徹底して描いています。

実写特撮による戦艦大和の迫力ある爆発も見所ですが、死にゆく若者たちの虚しさと重なって、あの大きな火柱と爆炎が最後の一瞬の輝きのように映ります。

次回の邦画特撮大全は…


劇場版「ジオウ・リュウソウジャー」製作委員会 (C)2019 テレビ朝日・東映AG・東映

次回の邦画特撮大全は2019年7月26日(金)公開の映画『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』を特集します。お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

『ウィークエンド・アウェイ』ネタバレあらすじ考察と結末感想の解説。サスペンス映画おすすめは異国の地で謎が謎を呼ぶスピーディな展開へ⁈|Netflix映画おすすめ89

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第89回 クロアチア旅行中に親友が姿を消したことによって巻き起こるサスペンス映画『ウィークエンド・アウェイ』。 本作は、Netflixで20 …

連載コラム

映画『スレイヤー 7日目の煉獄』ネタバレあらすじ結末と感想評価。原題の意味と凶器“斧”が登場する理由|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー62

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第62回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞す …

連載コラム

映画『君の名は。』から新海誠の「セカイ」を輪郭を読む|新海誠から考える令和の想像力1

連載コラム「新海誠から考える令和の想像力」第2回 序章では「セカイ系」の定義(特徴)をひとまず「ひとり語りが激しい=自意識」という点と「きみとぼくの関係が世界の危機に直結する」という点に求めました。 …

連載コラム

映画『マーズ』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。火星を舞台にSFサバイバルで描いた“現代の寓話”【未体験ゾーンの映画たち2022見破録23】

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第23回 映画ファン待望の毎年恒例の祭典、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が2022年も開催されました。 傑作・珍作に怪作、極限 …

連載コラム

映画『水の影』あらすじと感想レビュー。実話事件に触発された性犯罪の問題にある深層に切り込む|フィルメックス2019の映画たち4

第20回東京フィルメックス「コンペティション」出品『水の影』 2019年にて記念すべき20回目を迎える東京フィルメックス。令和初となる本映画祭が開催されました。 そのコンペティションに出品された作品の …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学