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Entry 2022/11/25
Update

『ノエルの日記』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ラブストーリー映画でジャスティン・ハートリー×バレット・ドスが探す“母の輪郭”|Netflix映画おすすめ122

  • Writer :
  • 岩野陽花

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第122回

疎遠だった母を亡くしクリスマスに帰省した小説家と、「生みの母」を探し続ける女性の出会いと心の交流を描き出したNetflix映画『ノエルの日記』

監督を『花嫁のパパ』(1991)『アルフィー』(2004)などで知られる大ベテランのチャールズ・シャイアが務めています。

それぞれの母の輪郭を追う旅の果てにたどり着いた、愛おしい絆と未来とは?

本記事ではネタバレあらすじとともに、映画『ノエルの日記』を紹介いたします。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『ノエルの日記』の作品情報


Netflix映画『ノエルの日記』

【配信】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
The Noel Diary

【原作】
リチャード・ポール・エヴァンス

【監督】
チャールズ・シャイア

【脚本】
チャールズ・シャイア、レベッカ・コナー、デビッド・ゴールデン

【キャスト】
ジャスティン・ハートリー、バレット・ドス、エッセンス・アトキンス、ボニー・べデリア、ジェームズ・レマー、アーロン・コスタ・ガニス、ジェフ・コーベット、アンドレア・スーチ、ルシア・スピーナ

【作品概要】
疎遠だった母を亡くしクリスマスに帰省した小説家と、「生みの母」を探し続ける女性の出会いと心の交流を描き出したロマンスドラマ。

監督は『花嫁のパパ』(1991)『アルフィー』(2004)などで知られる大ベテランのチャールズ・シャイア。ジェイク役をドラマ『ヤング・スーパーマン』(2001〜2011)のジャスティン・ハートリー、レイチェル役を『STATION 19』(2018〜)のバレット・ドスが演じる。

映画『ノエルの日記』のあらすじとネタバレ


Netflix映画『ノエルの日記』

クリスマスが近づく12月。愛犬エヴァともに暮らすベストセラー作家ジェイク(ジェイコブ)・ターナーの元に、一本の電話が入ります。

電話の主は弁護士のマット。ジェイクの母ロイスの遺産管理人であるという彼を通じて、ジェイクは長い間疎遠だった母の死を初めて知ります。

遺産相続の手続き、そして独居生活であった母が遺した家の掃除・整理をするため、クリスマスに帰省するジェイク。それは18歳で家を出てパリへと渡った彼にとって、ほぼ20年ぶりの帰省でした。

年月を経てあちこちが痛んでいる家に入ろうとした時、街灯の下に立ち、家の様子を窺っている女性をジェイクは見かけます。

母が引きこもり状態であったこともあり、家の中はゴミだらけ。実家の隣人である老婦人エリーとの再会を喜びながらも、家の中の掃除を少しずつ始めます。

掃除を進めていく内に母ロイスの私物がしまわれた箱、そして誰かの日記を見つける中、以前見かけた女性が家を訪ねてきます。

女性の名前はレイチェル・キャンベル。「生みの母を探している」という彼女は、生みの母が昔ターナー家に住み、子守として働いていたことを明かし、生みの母探しに協力してもらえないかと頼みます。

レイチェルの生みの母が働いていたのは、ジェイクが4歳だった頃。記憶がほとんどないゆえに最初は断ろうとしましたが、隣人のエリーなら事情を知っているのではと思ったジェイクはその場を去ろうとするレイチェルを引き止めます。

デートアプリで出会えた恋人とエリーが出かけている間、彼女の帰りを車中で待とうとするレイチェルをレストランへと誘うジェイク。そこはかつて、子どもの頃に母ロイスとよく通っていた店でした。

世間話をする中、語学が堪能であるレイチェルは現在、国連での通訳の仕事に応募していること。しかし一方で税理士アランと婚約しており、仕事・婚約の両面で悩んでいることをジェイクは知ります。

「養子になって以来、喪失感を埋めようとしてきた」「常に安心と確実性を求めてきた」……自身のしたい仕事を望みながらも、それでもアランとの婚約が必要と感じる原因に触れながらも、生みの母と見つけることで「大きな不安」を解決できるのではと語るレイチェル。

翌朝。ようやく帰ってきたエリーに、レイチェルの生みの母について尋ねる二人。

エリーはやはり知っており、確かに17・18歳ほどの妊娠した女性が当時ターナー家で働いていたこと、お腹の中の赤ん坊を生む前にターナー家を去ったこと、その名前は「クリスティーナ」「ジョイ」のような「クリスマスっぽい名前」であったことを語り聞かせます。

しかし「ジェイクのお父さんなら覚えている」とエリーが言った途端、「僕には無理」と嫌がるジェイク。彼は父スコットが母と自身を家に残して失踪して以来、35年近く口を聞いていなかったのです。

母ロイスの葬式に訪れた父本人から聞いたエリー曰く「バーモント州の山の中の小さな町コーンウォールブリッジでひとり暮らしている」というスコット。35年来の再会を強いられる不安に苛まれながらも、それでもレイチェルの母探しに協力すべく、彼女と愛犬エヴァとともに父の家へ向かいます。

その道中で立ち寄ったガソリンスタンドで、ジェイクが発見した日記を偶然読んだレイチェル。日記に綴られた言葉や年月日、そして「ノエル(フランス語で「クリスマス」の意)」という名前から、それが生みの母ノエルがターナー家で働いていた頃に書き残した日記であると悟ります。

敬虔なキリスト教徒であるがゆえに「婚外子の出産」を嫌悪した両親に、家を追い出されてしまったノエル。信頼する人々全員に見捨てられた中で、「住み込みの子守」として親切に雇ってくれたのがスコット・ロイス夫婦であり、ノエルは当時7歳だった長男ベンジャミン、そして当時4歳の次男ジェイクの子守をするようになったのです。

ベンジャミンの現在についてレイチェルから尋ねられ、ジェイクは答えます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ノエルの日記』のネタバレ・結末の記載がございます。『ノエルの日記』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

クリスマスの日、家の庭に立つニレの木にお気に入りのクリスマス飾りを付けようと、普段から登り慣れていた木に登ろうとしたベンジャミン。

しかし、足を滑らせやすいニレの木が吹雪により一層滑りやすくなっていたことから、ベンジャミンは転落し命を落としてしまった。その事故をきっかけに、ターナー家はやがて壊れてしまった……涙ぐみながら告白するジェイクの手を、レイチェルは優しく握ります。

コーンフォールビレッジに向かう中、雪の影響で足止めを食らったため、メイプルフォールビレッジという町で一泊することに。町はクリスマスの祝祭で賑わっており、お祭りを楽しむ二人と一匹。

翌朝。再びコーンフォールビレッジを目指し出発した車内で、レイチェルは生みの母ノエルの日記を読み進めていきます。

両親に「別れ難くなるから、お腹の中の赤ん坊に名前を付けるな」と言われていたものの、赤ん坊が女の子だと知り「アンジェリカ(「天使」を意味するラテン語に由来)」という名で祝福するノエル。

「それなら、なぜ捨てたの?」「どうして細かいことを書き残しておいていっったの?」「全て忘れたかっただけかも」「私が存在しなかったかのように」……動揺を隠せないレイチェルに、ジェイクはキスしようとします。

婚約者がいるからと拒むレイチェルに、それでもキスをしようとするジェイク。しかし、エヴァが偶然見つけた野ウサギを追いかけ出すというハプニングで、二人のキスはうやむやになりました。

無事父スコットが暮らす家へ到着した二人と一匹。車内にレイチェルとエヴァを残し、ジェイクはひとり父の家の扉を叩きますが、人と会うのを避けている様子の父が扉を開けることはありませんでした。

父が姿を現すのを車内で待ち続け、一晩が過ぎた翌朝。

斧で木を切る音で目覚めたジェイクが音の聞こえる先を向かうと、そこにはジェイクが来るとエリーと事前に聞かされ、35年ぶりの再会となるジェイクのために、クリスマスツリーの準備をしていた父スコットの姿がありました。

「和解のためではなく、友だちを助けるために来た」と言うジェイクに、それでも謝罪の言葉を告げるスコット。母ロイスと自分を残して姿を消した父への怒りが抑えきれず、ジェイクは外へ飛び出し帰ろうとしますが、レイチェルの「今逃げたら、父さんと同じ」「家族の中で初めての逃げない大人になるの」という言葉に止められます。

父スコットから、ベンジャミンが亡くなったクリスマスの記憶を聞かされるジェイク。

ベンジャミンがニレの木にクリスマス飾りをつけたいと言い出した時、ニレの木の滑りやすさも、吹雪の影響も理解していた父スコット。しかし頑固なベンジャミンは一度言い出すと止めらないとも分かっていたため、飾りに行くことを許してしまったのです。

「枝の折れる音が忘れられない」……ニレの木を切っても、一度亀裂が生じてしまった夫婦の関係は修復できず「自分か妻、どちらかが家を出ていくしかない」と感じたものの、孤独になってしまう妻ロイスのことを気遣い、あえてジェイクを連れずに家を去ったスコット。「ジェイクがいれば、精神を病んでしまったロイスも元に戻れる」と信じた決断でした。

父の語る真実を聞き届けたジェイクは、彼とともにツリーを飾りつけます。家を去ったスコットは数年間ジェイクへ手紙を送り続けていたものの、ロイスの手によってそれがジェイク本人に届くことはなかったこと。父がジェイクの執筆した小説を読んでくれていたこと。そして、かつての家族の思い出を語るうちに、わだかまりが解けてゆく父子。

その姿を窓の外から見ていた、レイチェルとエヴァも一安心します。

レイチェルとエヴァも家に招き入れ、料理をふるまうスコット。そしてレイチェルに対して、ノエルはベンジャミン亡き後、家族をつないでいてくれた「神の恵み」のような存在であったと語った上で、数年前に届いた彼女からの手紙を見せます。

手紙を通じて、ノエルがコネチカット州リッジフィールドにて「チャールズ・ヘイデン」という男性と結婚し暮らしていると知ることができたレイチェル。ノエルに電話すべきか、会いに行くべきかで迷う彼女に、ジェイクは明日の朝決めようと答えます。

帰路の道中で泊まったホテルで、「今日が私の誕生日」と明かしたレイチェルの誕生日を祝うジェイク。二人の心は通じ合っていました。

翌朝。ホテルのベッドでジェイクは目覚めましたが、そこにレイチェルの姿はありませんでした。すでにホテルを去っていた彼女は、彼に置き手紙を残していました。

婚約者アランを裏切ることはできないし、ベストセラー作家のジェイクとは住む世界が違う。自分は人生に確実性を求める人間であり、ジェイクとの日々はとても楽しかったけれど、そこに未来はない。だからこそ、手遅れになる前に離れるべき……。

「人生の転機となる旅に付き合ってくれた、あなたを忘れない」と語るレイチェルは、ノエルとの再会についても、「母に愛されていると日記で理解できただけでも十分」と手紙で綴っていました。

その後ジェイクはある病院を訪ね、そこで看護師として働くノエルと再会します。

家族と幼い自分を支えていてくれていたノエルに、感謝を伝えるジェイク。

そして、レイチェルが素晴らしい人間へと成長したこと、彼女が日記を読み「生みの母ノエルとの絆」を確かに感じとったことを告げます。「最高の贈り物」となった日記を受けとりながら、ノエルは「会いたくなったら、ぜひ連絡して」とレイチェルへの伝言を彼に託しました。

夜。自宅で育ての両親からペンダントを贈られる中、レイチェルは何度もかかってくるジェイクからの電話に出ます。「私を探さないで」と突き放すレイチェルが窓の外を見ると、そこには携帯電話を手にしたジェイクの姿がありました。
 
「何を恐れているんだ」「僕を信じてほしい」……言葉をぶつけるジェイク。アランの車が家に到着する中、「『愛してない』と言ってくれたら帰る」と言うジェイクに、レイチェルは一言「愛してない」と告げました。

ジェイクは母ロイスが暮らしていた実家へ寄ります。すっかりきれいになった室内で改めて母の私物が入っていた箱を見ると、そこには母がジェイクに見せまいとしていたものの、捨てられずに保管していた父の手紙がありました。

やがて実家を訪ねてきたエリーが、ある贈り物を持ってきました。それはかつてのターナー家を描いた風景画であり、絵の中では切り倒される前の例のニレの木も健在でした。

絵と母の私物たちを持って、実家を後にしようとするジェイク。彼の目に入ったのは、初めてその姿を見た時と同じように、街灯の下に立つレイチェルでした。

雪が降る中、二人の微笑みとともに物語は締めくくられます。

映画『ノエルの日記』の感想と評価


Netflix映画『ノエルの日記』

母ノエルの日記が捨てられなかった理由

レイチェルの生みの母ノエルをめぐって、彼女の実娘レイチェル、子守として働いていた彼女に愛をもって接してもらえたジェイクが出会い、心を通わせてゆくNetflix映画『ノエルの日記』。

本作の物語のキーアイテムとなるのが、映画タイトルにもある通り、かつてノエルが書き残した日記。しかしながら、至極単純な疑問として気になるのは、ジェイクの母ロイスがなぜノエルの日記を大切に保管していたのかという点です。

作中での描写を見ても、1年以内に出産のためにターナー家を去ったと思われるノエル。そこまで短い期間での関係性であったノエルが残していった日記を、亡くなるまで保管し続けていたロイスの心中は、果たしてどのようなものだったのでしょうか

ジェイクが母ロイスの死を電話で知らされた場面から物語が本格的に進み始めるため、長男ベンジャミンを亡くした後に心を病んでしまったことなども含め、映画にてロイスの心情が直接描写された場面はありません。

そこで重要なヒントとなるのが、映画終盤にてジェイクが実家内で見つけた、父スコットが送り続けていた手紙たちです。

父スコットの手紙が捨てられなかった理由

ターナー家の長男ベンジャミンの事故死により夫婦の関係が破綻し、「妻ロイスを孤独にしてはいけない」ともう一人の息子ジェイクを残した上で、家を立ち去ったスコット。のちに彼は数年間にわたって、離れ離れとなったジェイクへ手紙を送り続けます。

しかし、それがジェイクの元に届くことはありませんでした。母ロイスが手紙をジェイクに渡さず、その全てを隠して保管していたためです。

ここでも、「なぜロイスは元夫スコットの手紙を破り捨てずに、わざわざそれを亡くなるまで保管し続けていたのか?」という、ノエルの日記と同様の疑問が浮かび上がります。

これはあくまでも想像でしかありませんが、ロイスは「スコットが息子ジェイクを連れて行かずひとりで家を去ったのは、自分を孤独にさせまいとする、夫婦関係が破綻してもなお妻を気遣った彼なりの優しさだった」と察していたのではないでしょうか。そしてそれでも、「スコットのことを許さない」という形で彼に触れることから逃げ続けていたのではないでしょうか。

夫の想いから逃げ、自分自身からも逃げ続けてしまった中で、もう一人の息子ジェイクとともに暮らすことすらも逃げてしまった。その結果が、ジェイクとの長年の仲違いだったのかもしれません。

逃げ続けた果てに、誰もいなくなったターナー家に引きこもり、その生涯を終えたジェイクの母ロイス。それでも彼女がスコットの手紙とノエルの日記を保管し続けたのは、「かつてターナー家に何が起こったのか?」の証拠品であるそれらを持ち続けることが、深く傷ついてしまった彼女の精一杯の「逃げなかった」の証だったからとも考えられます。

ただ何よりも、手紙・日記を通じて「子に愛を直接伝えられない親」の孤独を目にした彼女が感じとったものこそが、それらを捨てられなかった一番の理由なのかもしれません。

まとめ/『素晴らしき哉、人生!』が描く夫婦の未来


Netflix映画『ノエルの日記』

ちなみに『ノエルの日記』作中、スコットが暮らす家に向かう途中で一泊した町にて、ジェイクとレイチェル、そして犬のエヴァが野外上映で鑑賞していた映画は、監督フランク・キャプラの名作『素晴らしき哉、人生!』(1946)

『ノエルの日記』と同じくクリスマスを描いた映画であり、アメリカではクリスマスの日にテレビ放映される映画の「定番」として知られている作品でもあります。

多くの波乱に満ちた半生を送ってきた男ジョージがついに絶望へ陥るも、の手助けと妻メアリー、天使クラレンスをはじめ、自身が善意によって接してきた多くの者たちのおかげで自身の幸福に気づく姿を描いた『素晴らしき哉、人生!』。

人生、何が起こるかわからない」「だが、それが“素晴らしき人生”なのだ!」と伝えるかのようなその物語は、『ノエルの日記』作中でレイチェルが囚われ続けていた「安心」と「確実性」がある人生とは異なる人生を描いています。

何がジェイクとレイチェルにとっては何が「素晴らしき人生」であり、そんな人生を目指して二人が選びとる「未来」なのか。その問いを意識させるための演出として、映画『素晴らしき哉、人生!』を観る二人……と一匹の姿を映し出したのでしょう。

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