連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第75回
2021年12月2日(木)にNetflixで配信され、マイケル・メイヤーが監督を務めた、2021年製作のアメリカのLGBTQを題材にしたラブコメディ映画『シングル・オール・ザ・ウェイ』。
「早くパートナーを見つけて幸せになって欲しい」
そう願う家族を安心させるため、主人公は恋人のフリを頼んだ親友とクリスマスに帰省するも、2人の計画と思いは思わぬ方向へ向かってしまう姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
恋のキューピッド役を買って出た家族と、仲良しの親友と一緒にクリスマスを過ごす主人公に、恋のハプニングが続出していく、映画『シングル・オール・ザ・ウェイ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『シングル・オール・ザ・ウェイ』の作品情報
【配信】
2021年(アメリカ映画)
【脚本】
チャド・ホッジ
【監督】
マイケル・メイヤー
【キャスト】
マイケル・ユーリー、ファイリーモン・チェンバース、キャシー・ナジミー、ルーク・マクファーレン、ジェニファー・クーリッジ、バリー・ボストウィック、ジェニファー・ロバートソン、マディソン・ブリッジス、アレクサンドラ・ビートン
【作品概要】
『マイ・フレンド・フリッカ』(2006)や『かもめ』(2018)などを手掛けた、舞台演出家マイケル・メイヤーが監督を務めた、LGBTQを題材にしたラブコメディ作品です。
人気海外ドラマ『アグリー・ベティ』(2006~2010)のマーク・セントジェームス役で知られる、俳優マイケル・ユーリーが主演を務めています。
映画『シングル・オール・ザ・ウェイ』のあらすじとネタバレ
アメリカ・ロサンゼルスに暮らすソーシャルメディアストラテジスト(ソーシェルメディアにおいて、対象となる企業や個人の価値、プレゼンスをあげる職分のこと)のピーター・ハリソンは、外科医である彼氏ティムを、故郷ニューハンプシャー州ブリッジウォーターにいる家族に紹介することを楽しみにしていました。
ピーターの親友でありルームメイトのニックは、フリーランスの便利屋として働いていました。
「家のイルミネーションを頼みたい」と依頼してきた女性の家で作業していた際、ニックはそこへ帰ってきた女性の夫がティムであることを知ってしまいます。
ニックから、ティムが既婚者であり、自分が不倫相手であることを知ったピーターは激怒し、彼と破局。
12月16日。ティムを含めて7回失恋を経験したピーターは自暴自棄となり、「もう恋愛なんてしない。実家にいる家族のそばで暮らして、(夢である)植物店を開く」と宣言します。
ところが、家族には「恋人を紹介する」と電話で言ってしまったため、ピーターは後に引けなくなってしまったのでしょう。
ただ男運が悪く人と上手く付き合えないメンヘラだと、家族に誤解され大騒ぎされるのを防ぐべく、ピーターはクリスマスは1人で過ごす予定だと言うニックに、「恋人のフリをして、一緒にクリスマスに帰省してくれないか」と頼み込みます。
ニックは悩んだ末、緊急時用にと貯め込んでおいた、『エメットを救え』という絵本で大成功した時の印税から明日乗る飛行機の航空券代を捻出し、彼と一緒に帰省することにしました。
12月17日。絵本のモデルとなったニックの愛犬エメットは、カリフォルニアにあるペットホテルに預け、ニックはピーターと一緒に空港へ。
ブリッジウォーターに到着し、ピーターの家へ帰省したピーターとニックを出迎えたのは、トナカイの角を着けたピーターの母親キャロルでした。
2人が帰省してくれて大喜びのキャロルは、ピーターたちが偽の恋人関係を発表する前に何かを察したのでしょう。
ピーターへの早めのクリスマスプレゼントとして、キャロルは地元のフィットネスジムに入ったばかりのインストラクター・ジェームズとのブラインドデートを手配しました。
ブライドデートを嫌がるピーターでしたが、「早くパートナーを見つけて幸せになって欲しい」と願うキャロルとニックに説得され、渋々ジェームズとブラインドデートしてみることにしました。
そう話すピーターたちの元へ、続々とピーターの親族が集まってきました。ピーターの父親ハロルドとピーターの姉妹リサとアシュリー、そしてリサたちのそれぞれの家族と、ピーターの叔母サンディです。
ピーターの家族は、ピーターが明日、ジェームズとブラインドデートすることに大賛成。一方、ハロルドと、リサの娘ソフィアとダニエラは、ピーターとニックをくっつけようと画策します。
12月18日。ピーターはお節介なニックに叩き起こされ、渋々ジェームズが働くフィットネスジムへ向かいました。
ピーターの予想を上回るセクシーでハンサムなジェームズに、ピーターは思わず見惚れてしまいます。
ジェームズの勤務終わりに、近くの喫茶店に場所を移したピーターたち。ピーターはまず、何故この街に住んでいるのか尋ねました。
この前イーグルヒアでスキーインストラクターになり、タダでスキーができるほか、インストラクターとして人に教える喜びを知ったジェームズ。
彼は当時本業のジムの仕事と掛け持ちをしており、ボストンと行ったり来たりする生活を送っていましたが、その仕事にも飽きてブリッジウォーターに引っ越すことを決意。
ブリッジウォーターに引っ越して早々、今のフィットネスジムのインストラクターとして働くことになり、自由にスキーができる生活にとても満足していました。
初めてのブラインドデートを楽しんだピーターたち。ジェームズと別れた後、ピーターはワインを買いに行った店で、同じくワインを買いに来ていたニックと遭遇。
ジェームズとのブラインドデートの感想を聞いたニックは、ピーターが彼のことを気に入ったのだと悟り、「偽彼氏として複雑な思いだ」と彼に告げます。
帰宅後、ピーターはデート後半で買ったクリスマスツリーを、ニックとリサの夫トニーと一緒にリビングに置いて飾りつけをしました。
実はキャロル以外、「クリスマスツリーはツリーの香りがして、グリーンでなきゃ落ち着かない」と考えており、彼女が既に飾りつけした白いクリスマスツリーは、内心不満だらけだったからです。
当然、キャロルは違うクリスマスツリーが飾られていることについて不満げでしたが、ピーターのブラインドデートの結果を聞いて、怒りが吹っ飛びました。
しかもジェームズも、ピーターのことを気に入ったみたいで、「明日一緒にスキーしに行かないか」とデートに誘ってくれたのです。内心喜ぶピーターと、2人の恋を応援するキャロルたちは大喜び。
一方、ニックと、ピーターとニックがくっつけばいいと思っているハロルドたちは、どこか複雑そうな表情を浮かべていました。
ハロルドは、キャロルが飾った方のクリスマスツリーをガレージに運ぶ際、ニックに手伝いを頼み、彼にこう言いました。
「私は、(ピーターは)君と一緒になればいいと思っていた」「ピーターが私たち家族に紹介したのは、ニックしかいない。父親目線で見ればわかる、ピーターは君といる時が一番幸せそうだ」
こっそり2人の後をつけていたソフィアたちも、ドアから顔をのぞかせて、「じいじに賛成。2人は一緒になるべき」と言いました。
12月19日。ピーターは、ジェームズとのスキーデートを満喫。スキー場でこっそりキスするほど、2人の仲は進展していきますが、ピーターはせっかく帰省したのに、大事な家族と一緒に過ごせないことに少し寂しさを感じていました。
映画『シングル・オール・ザ・ウェイ』の感想と評価
10日間の帰省期間中、ピーターたちは偽の恋人関係を演じるのかと思いきや、最初に会ったキャロルに見抜かれてしまったことで、その必要は無くなります。
ピーターと、キャロルの紹介で出会ったジェームズとの恋模様は、観ているこちらまでドキドキしてくるほど初々しく、また微笑ましいです。
このままピーターはジェームズと結ばれ、今度こそ幸せなクリスマスを過ごせるのかと思いきや、昔からニックとくっつけばいいのにと願っていた家族が、恋のキューピッドを買って出たことで事態は急展開を迎えます。
ロサンゼルスで出会ってから9年、大事な親友として友情を育んできたピーターたちが、家族のおかげで互いへの恋心を自覚しました。
結ばれるにあたって、ロサンゼルスとニューハンプシャーで離れ離れになってしまうことや、友情を失ってしまうことへの恐怖心を抱くピーターの姿は切ないです。
その切なさを拭い去るほどのハッピーエンドと、ピーターとニックが互いに意識し合い、愛の告白をする場面は、胸のときめきと感動による涙がとまりません。
嘘が真実となり、ピーターたちが恋人になったことと、ニューハンプシャーへ引っ越してくることを発表する。2人を応援し続けてきた家族にとって、これほど嬉しいクリスマスプレゼントはないでしょう。
まとめ
親友に恋人のフリを頼み、クリスマスに故郷へ帰省した主人公が、恋のキューピット役を買って出た家族のおかげで、内に秘めた恋心を自覚していくラブコメディ作品でした。
本作の見どころは、ピーターとニックの親友以上の特別な関係性と、2人の恋模様。そんな2人をくっつけようと画策する家族の姿です。
LGBTQの人にとって、家族や大切な誰かに自分の性や恋を認めてもらうことはとても困難なもの。本作をきっかけに、ピーターの家族みたいにLGBTQの人のことを理解し受け入れ、幸せを願ってくれる人たちが増えたら、ピーターたちみたいに世界中がハッピーエンドを迎えられることでしょう。
ピーターたちと同じLGBTQの人はもちろん、LGBTQではない人にとっても2人の純愛に胸をときめかせ、ジェームズの失恋に涙する物語となっています。
観た人の心が温まる、笑いあり涙ありドキドキありの新感覚ラブコメディ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。