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映画『別れる前にしておくべき10のこと』ネタバレあらすじと感想評価。クリスティーナ・リッチの大人ラブストーリー|未体験ゾーンの映画たち2020見破録52

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第52回

「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第52回で紹介するのは、シングルマザーの恋模様を描いた『別れる前にしておくべき10のこと』

都会に生きるシングルマザーと、独身生活を楽しむ男が出会います。どうせ別れる大人の関係だからと、恋人たちが別れる前に行うであろう10の行動をリストアップして、それを達成したらキッパリ別れようと意気投合します。

しかしこの2人、リストをクリアしていくたびに、関係は近づいていきます。大人同士の割り切った関係のはずだったこの関係、果たしてどんな結末を迎えるのやら…。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

映画『別れる前にしておくべき10のこと』の作品情報


(C)2019 GEMMEG LLC. ALL RIGHTS RESERVED

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
10 Things We Should Do Before We Break Up

【監督・脚本・製作】
ガルト・ニーダーホッファー

【キャスト】
クリスティーナ・リッチ、ハミッシュ・リンクレイター、カティア・ウィンター、リンジー・ブロード、スコット・アツィット、ジョン・エイブラハムズ

【作品概要】

都会を舞台にシングルマザーと、どこか大人になり切れない男の関係を描いた恋愛映画。映画製作者、小説家として活躍し、自作の小説を『選ばれる女にナル3つの方法』(2010)として監督したガルト・ニーダーホッファーが、自ら脚本を書き監督した作品です。

主演は『アダムス・ファミリー』(1991)などで人気子役として活躍後、『バッファロー66』(1998)や『モンスター』(2003)、「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品の『コントロール 洗脳殺人』(2018)に主演したクリスティーナ・リッチ。

ミランダ・ジュライ監督・主演の『ザ・フューチャー』(2011)に主演し、ドラマ「クレイジーワン ぶっ飛び広告代理店」(2013~)、「レギオン」(2017~)に出演のハミッシュ・リンクレイターが彼女の相手役を務めた作品です。

映画『別れる前にしておくべき10のこと』のあらすじとネタバレ


(C)2019 GEMMEG LLC. ALL RIGHTS RESERVED

目覚めると出会ったばかりの男、ベン(ハミッシュ・リンクレイター)と同じベットで寝ていたアビゲイル(クリスティーナ・リッチ)。

2人は言葉も交わさず、並んで歯を磨きます。どうしてこうなったのかを知るには、1日前を振り返るしかありません。

その日の朝、子供の通う学校に走ってウクレレを届けたアビゲイル。彼女はニューヨークの自宅で切り絵の製作を仕事としている、シングルマザーでした。

2人の子供ウォレスとルーク姉弟とは、パソコンの画面ごしに会話します。今日は子供たちは、別れた夫ティム(ジョン・エイブラハムズ)と過ごしています。

子供たちを迎えに行くと約束すると、通話を終了させたアビゲイル。

その夜、アビゲイルは友人から飲み来ないかと誘われます。子供たちが父親の元にいるのは好都合、羽根を伸ばそうと誘われて、彼女はバーに向かいました。

カンターに座り、独り飲んでいた彼女に声をかけてきたのがベンでした。隣に座り、自分はサーフインが趣味だと喋りだすベンに、彼女は密かにスマホのメールで友人に助けを求めます。

しかし友人は現れず、互いに名乗って身の上を語る内に、テーブル席に移って親交を深め、いつしか意気投合していった2人。

ベンが最高に相性の良いカップルでも、外部からの圧力でギクシャクして別れるものだと、独自の恋愛観を語ると、アビゲイルもその言葉に納得します。

恋愛が破局しても、最終的には良き友人として付き合い続けられるように、10の行動をリストアップして、破局するまでに実行しよういうベンの提案に納得したアビゲイル。

2人は酔った勢いもあって、早速話し合いながらリストを作り始めました。

1、タクシーに一緒に乗って橋を渡る時、キスをする。2、ベットで一緒に新聞の日曜版を読む。3、サーフィンを学ぶ。4、人気のない浜辺を一緒に歩く。

5、大声で怒鳴り合う。6、抱き合って泣く。7、そして10秒間続ける熱いキスを行う。8、結婚して子供を持つ。…子供はいらないというベンに、それは呑めない条件だと告げたアビゲイル。

子供は気味が悪いというベンに、彼女はそんな事はないと言います。そして残る行動が、9、ごめんなさいと言う。10、さようならと告げること。こうしてリストは完成しました。

もう帰らねばならない、と告げるアビゲイルに、何も関係を進めず別れるのは嫌だ、そうならぬように作ったリストだと訴えるベン。

2人はバーを出てタクシーに乗り、橋を渡る車内でリスト1番目の行為である、キスを交わします。
そのままアパートで一夜を過ごした2人は、こうして気まずい朝を迎えたのでした。

切り絵の仕事をしていたアビゲイルに、ベンがメールを送って来ます。今度土曜日に共に夕食をとりリストの2番目に上げた、一緒に新聞の日曜版を読もうと提案してきます。

子供がいるから出来ない、と返事を送るアビゲイル。それを受け取ったベンの傍らには、若い女の姿がありました。

1ヶ月後。学校に子供たちを迎えに行き、アビゲイルは共に帰宅します。しかし体の異変に気付いて検査したところ、自分の妊娠に気付かされるアビゲイル。

彼女はベンに連絡して再会します。大した話ではないと切り出しながらも、アビゲイルは彼に妊娠した事実を告げます。既に自分には、2人の子がいる身だと彼に説明しました。

その言葉を聞いてショックを受け、パニック発作を起こしたと言い出したベン。産むか中絶するかを自分に決断させるのかと告げ、道に座り込んでしまいます。

逆に彼女から慰められても、40歳で父親になりたくないと言い出したベン。怒ってアビゲイルが立ち去ろうとすると、あの日は酔っていた、君のことは愛していないと言い出すベン。

しかしベンは、自分は変なことを言ってしまったと謝ります。無様な言動を詫び、あれこれ説明しているうちに、2人はその夜も一緒に寝てしまします。

翌朝、改めてお互いを知り合おうと提案するベン。彼の態度に煮え切らないものを感じながらも、アビゲイルは金曜にまた会うことを約束しました。

その夜ベビーシッターを買って出た、友人のケイト(リンジー・ブロード)に子供を預けると、自転車でデートに出かけたアビゲイルとベン。

海辺で互いをよく知ろうと語り合う2人。ベンは家族と疎遠となり、今まで1人暮らしを貫いてきたと打ち明けます。自分から見ればアビゲイルは、家族を大切にする良き人物だと語ります。

閉鎖され、水を抜かれたプールに忍び込んだ2人。その底に仰向けに寝て、君とこうしてここに浮かんでいたいと告げるベン。その気持ちはアビゲイルも同じでした。

2人はアビゲイルのアパートに戻り、眠った子供たちに気付かれぬよう寝室に入ります。子供たちが目覚める前にベンを帰すつもりでしたが、2人はすっかり寝過ごしてしまいます。

この状態では子供に会わせられないと、アビゲイルは彼に気付かれぬよう、密かに帰ってくれと願います。いかんせん無理な話で、下の息子ルークにしっかり目撃されました。

気まずい雰囲気のまま、子供たちに紹介されることになったベン。彼は何とか共通の話題を見つけようと苦心しますが、そっけない態度を見せた娘のウォレス。

子供たちとぎこちない対面を終えると、ベンは1人で帰って行きました。

アビゲイルの友人ケイトは、中絶を考えない彼女に理由を問いただします。信用できない男の子を産むのは重荷を背負うだけと、何かの主義や教義に従って出産するのでは、と疑っていました。

自分は中絶合法派だと告げたアビゲイルは、ベンが子供と会ってくれると言い、彼を信頼する姿勢を見せますが、その彼女を疑いの表情で見つめるケイト。

家に戻りタンスの引き出しを開けたアビゲイル。彼女はその中に赤ん坊の靴下を見つけると、大切に取り扱いました。

アビゲイルのアパートをベンが訪れました。彼を迎え入れたのは息子のルークでした。

公園で遊ぶウォレスとルークを、ベンはアビゲイルとベンチに座り見守ります。子供を世話し育てる大変さを知らされ、戸惑いの表情を見せるベン。

しかし彼は子供を相手にして、共に遊ぶようになります。ウォレスとルークとも打ち解け、4人は仲良く公園からアパートに戻りました。

皆で食事している時に、ベンは子供たちにダイビングの面白さを語り、サーフィンをしようと言い出します。アビゲイルの許しを貰い、テーブルの上でルークにサーフィンを教え始めたベン。

子供たちも母の恋人、ベンの存在を受け入れ始めたようでした。

以下、『別れる前にしておくべき10のこと』のネタバレ・結末の記載がございます。『別れる前にしておくべき10のこと』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


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1ヶ月後。アビゲイルとベンは、ケイトと彼女のパートナーとタブルデードを行いました。結婚について訊ねられると、親としての責任よりアビゲイルへの愛情を口にするベン。

確かに愛情は存在するものの、まだ自覚の足りない様子のベンに、アビゲイルとケイトは微妙な表情を浮かべます。

ある夜、アビゲイルとベンは、彼女の子供ウォレスとルークと4人で、同じベットで寝ていました。ベンのスマホへの着信で、アビゲイルは目覚めてしまいます。

それはベンの元カノからのメールで、ベンが部屋に置いていった荷物をどうするかを尋ねる内容でした。

すっかりお腹が大きくなったアビゲイルですが、今一つベンが信用できなくなったのでしょうか。彼女は自分の家族とベンの間に、枕を置き距離をとってから眠りにつきます。

次の日子供たちを学校に送るアビゲイルに、疲れ気味に見える彼女に対し、ちゃんと眠れているかと心配して声をかける娘のウォレス。

アパートの玄関で彼女に声をかけてくる女が現れます。それはベンの元彼女のテレン(カティア・ウィンター)でした。テレンはベンの上着を持って現れたのです。

彼女から見るとアビゲイルは、妊娠を口実に恋人を奪ったシングルマザーだと思われているようです。荷物を渡すと彼女は去って行きました。

アビゲイルは渡された上着と、部屋にあったベンの荷物をカバンに詰め込みます。そして戻ってきたベンに彼女が現れたと告げます。

テレンは元カノであって、君と会ってからは浮気していないと説明するベン。しかし決意を変えず、別れを告げると彼を家から追い出したアビゲイル。

その夜遅く、元夫ティムの家を訪ね、今日は父親と共にいる子供たちと、ハグさせてくれとアビゲイルは訴えます。彼女はそれが大切な事なのだと訴えます。

しかしティムは、それは誰にとって大切なことなのか、とたしなめます。そう指摘された彼女は元夫に抱きつき、涙を流しました。

改めて母と子の生活が始まりましたが、ある日アパートの扉をノックする者が現れます。それは意を決して現れたベンでした。彼はここで君と暮らしたいと訴えます。

大人になることを学び、自分の人生には君たちが必要だと気付いたと、ベンは強く訴えます。その言葉を受け入れ、抱き合った2人。

アビゲイルとベンはベットに向かいますが、ここはかつて取り決めた7番目の行為、10秒間のキスをしようと提案するベン。2人は熱いキスを交わしました。

こうしてまた4人の生活が始まります。ベンはウォレスとルークにウェットスーツを買い与え、ビニールプールを使いサーフィンを教えます。

4人はベットの上にくつろぎ、プロジェクターで映し出した映画を見て楽しみます。家族と過ごす時間、この生活こそ求めていたものだ、とアビゲイルにささやくベン。

こうして4人で暮らす日々が続き、アビゲイルとベンは当たり前のように、ベットで新聞の日曜版を読む暮らしを送ります。

ある日アビゲイルは友人のケイトと会いました。妊娠15週目の彼女に、ケイトは今ならまだ堕ろせるので、早まった決断をしないよう説得しました。

その友人の発言にショックを受けるアビゲイル。しかしケイトは彼女の将来を心配し、もしかしてDVを受け彼に支配されているのでは、とまで訊ねてきます。

自分の恋を祝福してくれない友人の態度に、アビゲイルはショックを受けます。それでも現実を見て欲しいと、強い口調で彼女に訴えるケイト。

友人の言葉を受け入れず、アビゲイルは妬いているのだと指摘します。子供のためにも慎重に振る舞うべきと、意見を変えないケイトは、彼女を残し立ち去ります。

アビゲイルはベンと子供たちと共に、父ルイス(スコット・アツィット)の家を訪れます。父は同居している家族と共に、彼らを温かく受け入れました。

ルイスは2人のなれそめを訊ねますが、付き合い始めてから数ヶ月と聞き、あまりいい顔をしませんでした。それでも会話を続けるうちに、ベンを認めてくれた様子です。

アパートに戻り、2人がベットでくつろいでいた時に、ベンが結婚しようと申し込みます。その言葉を受け止め、抱きあってた上でイエスと答えたアビゲイル。

2人は産婦人科に行き、成長している胎児を映像で見て心音を聞かされました。アビゲイルは幸せそうでしたが、ベンは自分の子が育つ姿を見て表情が硬くなります。

夜2人はベットで共に寝ますが、寄りそってきたアビゲイルに対し、ベンは疲れていると言って応じようとしません。

ようやくベンは、自分が父親になる責任を痛感したのかもしれません。それから彼は浮かない顔で日々を過ごしました。

その日は長女のウォレスの、ダンスの発表会の日でした。ベンもそれを見に行くと約束します。そして子供たちをいつものように、学校に送り届けたアビゲイル。

ところがベンは、仕事に向かった先で、元カノのテレンと再会します。彼を待っていたテレンとは、場所を移して語り合うことにしました。

彼女から幸せかと聞かれ、今の複雑な気持ちを上手く説明できないベン。テレンに迫られると彼の心は揺らぎます。

結局アビゲイルとルークが見守る、ウォレスの発表会にベンは現れませんでした。

その夜、家族の食事中にベンはアパートに帰っています。発表会に現れなかった理由を、納得いくように説明することが出来ないベン。

ベンはウォレスに謝り、アビゲイルは皆に今日は何があったかを尋ねます。その話題にも触れたくない様子のベンは、騒ぎ出したウォレスとルークに声を荒げます。

母の言うことを聞けと子供に告げるベンを、アビゲイルは不審の目で見つめます。その後ベンは1人、鏡に向き合うと考え込んでいました。

子供たちを寝かしつけた後、アビゲイルはベンの子供への態度を責めますが、彼はしつけが成っていないと言い、取り合う姿勢を見せません。

子育ての面倒に関わりたくない姿勢のベンを、彼女は声を荒げて責めます。言い争う声は、部屋の外にいるルークにも聞こえていました。

アビゲイルは子供たちの部屋に行き、ルークと共に寝ます。そこにウォレスも寄り添い、母子3人でベットに横になります。

パパが恋しいと言うルーク。その母子の姿を、カバンを下げ黙って見つめているベン。

ベンはアパートから出て行きました。残されたアビゲイルは、ベンと過ごした日々を思い浮かべます。そして以前のような、母子3人の日々が戻ってきました。

学校の発表会の日、破水したアビゲイルは友人のケイトに子供たちを託すと、病院へと向かいます。彼女の出産にはベンが立ち会います。

その後、アビゲイルは新たに生まれた赤ん坊と、ウォレスとルークを連れ海辺にピクニックに行きます。仲良く過ごしているこの家族は、母子4人だけでした…。

映画『別れる前にしておくべき10のこと』の感想と評価

参考映像:『選ばれる女にナル3つの方法』(1981)

この映画をありがちな、ハッピーエンドで終わる恋愛映画だと思った方は、大いにショックを受けたのではないでしょうか。中々シビアな、ある意味現実的なラストです。

ガルト・ニーダーホッファー監督の前作、『選ばれる女にナル3つの方法』も、自分の友人と元カレの結婚式に出席することになった、そんな女性を主人公にした物語でした。

本作もまた恋愛を経験し、経験したからこそ不器用に振る舞う、大人の恋模様を描くニーダーホッファー監督が、得意とする映画だとお判りいただけたでしょう。

小説家監督のセンスが光る


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映画製作者としては『コンテンダー』(2015)『それでも、やっぱりパパが好き!』(2014)『ハルリケーン・クラブ(DVDタイトルはハリケーン・ストリート)』(1997)、アンクレジットながら『キッズ・オールライト』(2010)にも関わっているガルト・ニーダーホッファー監督。

同時に彼女は小説家としても活躍しています。最初の作品「A Taxonomy of Barnacles」は、風変りな父と同居する、10歳から29歳までの6人姉妹を描いた作品で、彼女の育った家庭の環境が反映された物語でした。

その次に書いた小説が「The Romantics」。この作品が先に紹介した『選ばれる女にナル3つの方法』として、自身の手で映画化されています。

そして脚本家としても活躍する彼女は、クリスティーナ・リッチ主演の映画『私は「うつ依存症」の女』(2001)の脚本を執筆し、製作にも加わっています。

そんなニーダーホッファー監督が、再度クリスティーナ・リッチと組んで、オリジナル脚本を執筆して完成させた作品が『別れる前にしておくべき10のこと』です。

多様な人間模様を受け入れる


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ニーダーホッファー監督の手掛けた映画や小説を紐解くと、一筋縄には進まない人々の営みを、赤裸々に描いた作品ばかりであると気付かされます。

恋愛コメディと思ってこの映画を見た方は、残念な選択をしてしまったシングルマザーと、どこかの国のTVドラマ「結婚できない男」「まだ結婚できない男」よりタチの悪い、ダメな男の物語と知って驚くことが確実です。

しかしこの映画は、そんな大人の恋愛をコミカルに描いた訳でも、また悲劇的に描いた訳でもありません。その時々の感情や愛は本物だったのに、結果としてこうなってしまった人物の姿を淡々と、優しい目を持って描いています。

また主人公の周囲の人物、子供たちに元夫、父親や友人を含め皆優しい人物であることも、この映画を嫌な印象を与えるものにしていません。甘い恋物語ではないですが、温かい視線を持つ作品だと実感できるでしょう。

ところでせっかく別れる前にすべき、10のリストを作ったのに、ミッションクリアに拘る作りになっていません。結果としてクリア、1つは微妙な形でした訳ですが。

本作の上映時間は74分、もう少し時間をかけてリスト消化に取り組んだ方が、判りやすい映画になったかもしれません。ミッションクリア系の映画(そんなジャンルが存在するか知りませんが)としては、不満の残る出来とも言えます。

でも、「(旦那以外の)他の男と付き合ってみる」=『死ぬまでにしたい10のこと』(2003)、「スカイダイビンングをする」=『最高の人生の見つけ方』(2007)みたいに、ウケ狙いに走るミッションが設定されるのも考えもの。本作のスタイルも、また良しとしましょう。

まとめ


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大人の恋愛模様をシビアに、しかし温かく描いた作品が『別れる前にしておくべき10のこと』です。都会的なこの物語は、『最高の人生の見つけ方』のように邦画でリメイクしても、良質な作品になること間違いありません。

子役として活躍したクリスティーナ・リッチも、1980年の生まれです。彼女が演じるに相応しい役であり、故に監督が彼女を起用したと理解できる、将に大人のための映画です。

難儀な恋や大人になりきれない人物を、優しく描き出すガルト・ニーダーホッファー監督。彼女によって本作のダメ男もゲス野郎ではなく、「悩める大きな子供」として描かれます。

それが女性監督ならではの優しい視点ではなく、「やっぱり男って、どうしようもない一面があるよね」と達観したような、醒めた描写だと感じるのは私が男だからでしょうか。

ぜひ女性の方が、この映画をどのように感じたか感想を聞きたいものです。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


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次回の第53回は東南アジアの凶悪モンスターと、アイドルが対決するホラー映画『ストレンジ・シスターズ』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら



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