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Entry 2019/11/27
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香港映画『空山霊雨』あらすじネタバレと感想。キン・フー監督が1979年に制作した時代劇とは|すべての映画はアクションから始まる7

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第7回

日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。

第7回は、“香港の黒澤明”と称されたキン・フー監督が1979年に発表した『空山霊雨』

2018年にデジタル修復版として新たに蘇ったアクション時代劇を、ネタバレ込でレビューします。

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映画『空山霊雨』の作品情報


(C)1979 Lo & Hu Co-Production Ltd. / © 2018 Taiwan Film Institute. All rights reserved.

【製作】
1979年(香港映画)

【原題】
空山霊雨(英題:Raining In the Mountain)

【監督・美術】
キン・フー

【キャスト】
シュー・フォン、ソン・ユエ、ティエン・ファン、シー・チュン、チョン・プイ

【作品概要】
中華圏では初めてのカンヌ国際映画祭で受賞を果たした、香港映画界の巨匠キン・フーが1979年に発表した時代劇。

明朝時代の中国の仏教寺院を舞台に、三蔵法師の経典をめぐる争奪戦が繰り広げられます。

主な出演者に、本作と同時撮影された『山中傳奇』(2018)にも出演するシュー・フォン、ティエン・ファン、シー・チュンなど。

これまで本作は日本劇場未公開でしたが、2018年にデジタル修復を施したレストア版が製作されたのに際し、2019年11月23日~12月1日開催の「第20回東京フィルメックス」の特別招待作品として、初の一般上映が実現しました。

映画『空山霊雨』のあらすじとネタバレ

明朝時代の中国。

江東の大富豪であるウォンとその妾、そして従者の金鎖の3人は、人里離れた三宝寺に向かっていました。

寺の有力な支援者であるウォンは、僧正に招かれていたのです。

3人を迎え入れた僧正の三番弟子の彗思は、僧正が病で自らの余命がわずかであることから、亡くなる前に後継者を選ぶためにウォンにその立会人になってほしいと、招いた理由を明かします。

実はウォンは、境内にあるという三蔵法師の書いた経典「大乗起信論」を密かに狙っており、妾に女盗賊の白狐を、従者に彼女の仲間の金鎖をそれぞれ偽らせて、盗もうと企んでいたのでした。

白狐と金鎖は早速、宝物蔵に忍び込んで経典を盗もうとするも、あちこちに僧侶たちがいるため上手くいきません。

そんな2人にウォンは焦らぬよう諭し、僧侶の二番弟子の彗文を紹介します。

宝物蔵の管理をする彗文は寺の次期後継者の座を狙っており、経典を盗もうとするウォンの手伝いをする見返りに、後継者として彼から推薦してもらう約束を交わしていました。

境内には、同じく僧正の相談役としてワン将軍と一人の部下が招かれていました。

白狐と金鎖を遠巻きに見たワンの部下は、すぐさま2人の正体を見抜き、ワンと僧侶の一番弟子の彗通に注意するよう促します。

ワンもまた、値打ち物とされる経典欲しさに、やはり寺の後継者を狙う彗通と結託していたのです。

そんな折、もう一人の相談役として、仏法に精通するウーワイ法師が、大勢の侍女を従えて寺に到着。

僧正はウーワイに、数日中に寺に来る罪人のチウミンを出家させてから後継者選びに入ると告げます。

数日後、僧正とウーワイの前に連れてこられたチウミンは、チャンという名の警吏にだまされ、兄弟そろって窃盗の冤罪を着せられたこと、それにより兄は死刑となるも、今はチャンを恨んではいないと告白。

一方、白狐と金鎖は再び宝物蔵に忍び込もうとするも、ワンの部下の妨害に遭います。

そこで、寺の雑用をしていたチウミンと遭遇した部下は彼を罵倒、理不尽に暴力を振るうのでした。

宝物蔵に残していった白狐たちの道具を見つけたチウミンは、僧正に報告。

僧正はチウミンに、ワンの部下こそがチャンであると明かした上で、チウミンを剃髪し子弟として宝物蔵の管理を命じるのでした。

そんな中、チャンはチウミンの存在を邪魔に思い、彼が経典を盗もうとしたと濡れ衣を着せます。

彗思はワンとチャンの顔を立てて、チウミンに磔の罰を与えることに。

夜中、磔にされていたチウミンを救ったのは、白狐でした。

訝しげに思うチウミンでしたが、その様子を笑みを浮かべて見ている僧正の姿が…。

あくる日、僧正は彗通、彗文、彗思の3人の後継者候補に、課題として寺の裏の池からきれいな水を汲むよう命じます。

水を汲んできた3人に、僧正はどのようにしてきれいな水を汲んで来たかと尋ねます。

彗通は「門弟の協力を得て汲んできた」、彗文は「水を清めるために細かな砂を使って濾過した」、そして彗思は「思うままに、ただ汲んできた」とそれぞれ返答。

しかし数日後、僧正が選んだのはチウミンでした。

名を彗明(ホイミン)と改めるよう命じられ、大袈裟を授かったチウミンに周囲は戸惑うばかりでしたが、僧正は明朝に南山の涅槃の門に入ることを告げます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『空山霊雨』のネタバレ・結末の記載がございます。本作をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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後継者となった彗明に、チャンはこれまでの無礼を詫びますが、納得のいかない彗通ら若い僧侶は、食事のまずさを訴えて騒ぎを起こします。

彗明は、彗通たちに「農作業をすればいい。方法は私が教える」と説き伏せた一方で、ウォンに援助の提供を申し出ます。

ウォンから、経典を担保にすればいいと言われた彗明ですが、返事を保留にし、1万元の手形をお願いすることに。

その夜、ウォンは2万の手形を用立て、そのうち半分を彗文に渡す代わりに、宝物蔵の鍵を受け取ります。

鍵を手に宝物蔵に赴いた白狐と金鎖は、そこでチャンと彗通による彗明の暗殺計画を耳に。

写経をしていた彗明に、白狐は命が狙われていることを警告。

彗通は刃物を手に彗明を襲うもかわされ、逆に足を負傷しますが、彗明はそれを不問とし、ケガを治療した後に宝物蔵の警備に当たるよう命じます。

彗明の寛大な処置に、彗通はただ頭を垂れるのみでした。

日が明けて、南山で涅槃門に入ろうとする僧正を僧侶全員が見送ります。

境内に誰もいないことを見計らい、白狐と金鎖は宝物蔵に侵入して経典を盗みますが、跡を付けてきたチャンとの争奪戦が繰り広げられます。

ウォンも加わった戦いの最中に、チャンは金鎖を刺殺するも、白狐によって喉を切り裂かれ絶命。

ワンたちに追われる2人は渡し舟に乗って逃走し、ウォンは口封じのために船頭を殺そうとしますが、その正体が僧正だったことに驚愕します。

それでも逃げ続ける2人でしたが、ウーワイの侍女軍団により白狐が囚われの身に。

自首を勧める彗文を振り切ったウォンはさらに逃亡を図るも、足を踏み外して崖から転落死してしまいます。

事態は収束しますが、「全ての禍いの元だ」として経典を燃やしてしまう彗明。

火の付いた経典を見て気落ちするワンに、彗明は「経典の価値は誰が書いたかではなく、その文義にある」と写経を手渡します。

そして出家の道を選んだ白狐に、彗明と彗思が剃髪をするのでした。

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“香港のクロサワ”ことキン・フー監督

参考映像:キン・フー監督作『龍門客棧』『俠女』『山中傳奇』のシーン

1932年に北京で生まれたキン・フー(胡金銓)は、香港で美術係として映画界入りして以降、俳優業もこなしつつ助監督を経て、1965年の『大地児女』で監督デビューします。

続いて、武侠劇(剣術アクション)の先駆けとなった1966年の『大酔侠』が大ヒットし、さらにアクション映画でお馴染みのワイヤーアクションをいち早く取り入れた第3作『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967)も好評を博します。

1971年の『侠女』がカンヌ映画祭の高等技術委員会グランプリを獲得したことで、香港・台湾映画を国際的な地位にまで高めます。

あのブルース・リーからも一緒に映画製作を熱望されていたというキン・フーは、1997年に亡くなるまでに、15本(うち1本は途中降板)の作品を遺しました。

悪人たちがお宝と権力を求めて争うケイパードラマ

本作は、『山中傳奇』と同時進行で韓国で撮影されており、時代設定や出演者が重複した、姉妹作品となっています。

ただ、『山中傳奇』が人間と亡霊が対峙する超常ドラマであるのに対し、本作はお宝(マクガフィン)の争奪と寺の継承者争いを主軸としたケイパードラマです。

アクション映画に特化した当コラムではありますが、実は本作には、目玉となるアクションシーンが終盤にしかありません。

あらすじの大半が、悪巧みを企てる者たちの会話劇に終始しており、そのセリフ量も、「言葉なしで分かる映画を目指した」とキン・フー自身が語るように少なめ。

かといって動きがないのか言えばそうではなく、登場人物たちは目的遂行のために、寺院の境内を歩いては走り、飛んだり跳ねたりとせわしないです。

そうした演出は、京劇の立ち回りをベースにするキン・フーならではです。

ちなみに、中国が舞台の映画をなぜ韓国や台湾で撮影するのかというと、両国には歴史があり景勝が良い寺院が数多く存在するのと、香港で舞台セットを組むよりも製作費を安く抑えられるから。

本作のメイン舞台である三宝寺も、世界遺産の仏國寺で撮影されており、この寺院はジャッキー・チェンの『拳精』(1979)では少林寺として使用されています。

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強引ながらも揺るがない映像センス

参考映像:『山中傳奇』の4K修復前後の比較映像

あらすじに関しては、同時進行で撮影された3時間12分の『山中傳奇』の方にキン・フーが力を入れ過ぎた感があり、至る点で説明不足や雑さが見られます。

アクション演出も、「音」を武器にするという独特のセンスが際立つ『山中傳奇』と比べると、物足りなさは否めないところ。

それでも、強引かつ揺るぎないキン・フーの映像は、他の監督には出せない説得力があります。

それでいて、寺院が舞台ゆえに俗物たちが仏門にひれ伏すというラストに、キン・フーの持つ道徳性も感じます。

本作『空山霊雨』と『山中傳奇』をセットで観ることで、盤石のキン・フーワールドが堪能できることでしょう。

次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。

【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら


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