連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第15回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第15回は、シルヴェスター・スタローン主演の人気シリーズ第2弾『ロッキー2』。
本作でスタローンは監督も兼任し、主人公ロッキー・バルボアのその後を描きます。
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CONTENTS
映画『ロッキー2』の作品情報
【日本公開】
1979年(アメリカ映画)
【原題】
Rocky II
【監督・脚本】
シルヴェスター・スタローン
【製作】
アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ
【撮影】
ビル・バトラー
【編集】
ダンフォード・B・グリーン
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア、バージェス・メレディス、バート・ヤング、カール・ウェザーズ、ジョー・スピネル
【作品概要】
ボクサーのロッキー・バルボアを主人公にした、アカデミー賞受賞作『ロッキー』(1976)の続編。勇猛果敢にタイトルマッチに挑むも、敗れたロッキーのその後が描かれます。
ロッキーを演じるシルヴェスター・スタローンは、前作同様に脚本も担当し、さらに監督も務めました。妻エイドリアン役のタリア・シャイアを筆頭とする前作からの主要キャストも、引き続き出演しています。
映画『ロッキー2』のあらすじとネタバレ
参考映像:『ロッキー2』の1シーン
アポロ・クリードとロッキー・バルボアのボクシング世界ヘビー級タイトルマッチは、勝利こそチャンピオンのアポロが判定で得るも、世間では無名の挑戦者ロッキーへの賛辞が圧倒的となりました。
それを不服としたアポロからリターンマッチを要求されるも、ボクシングから引退するとしてそれを拒否したロッキーは、恋人のエイドリアンと結婚し新居を構えます。
エイドリアンの妊娠が判明したこともあり、生活のために男性化粧品のCM撮影に臨んだロッキーでしたが、商品の説明セリフをまともに読むことが出来ずに失敗。
CM出演料がナシとなったため、仕方なく義兄ポーリーの紹介で精肉工場で働くも、不況による人員削減のためにすぐ解雇されてしまいます。
やがて、自分に出来るのはボクシングしかないと思うようになるロッキー。ですが、タイトルマッチで痛めた眼の状態を危惧するトレーナーのミッキーから、リング復帰には協力できないと拒まれてしまいます。
エイドリアンも、夫を2度とリングに上がらせたくないとして、以前勤めていたペットショップに、身重の体でありながら働き始めます。
一方、チャンプの座を防衛したはずのアポロは、世間からのバッシングに耐え切れず、どうしてもロッキーとのリターンマッチを実現させようと、メディアで彼を挑発する策に。
その行為にミッキーは激怒し、一転してロッキーのトレーナーを引き受けます。
ミッキーは、ファイトスタイルを左利きではなく右利きに変えるよう指導した上で、フットワークを良くする目的から、鶏を捕まえるトレーニングを考案。
しかしロッキーは、エイドリアンの心情を察してか、練習に身が入りません。
それを知ったポーリーから、「ロッキーがボクシングに集中できないのはお前が応援しないせいだ」となじられたエイドリアンはショックを受けて倒れ、入院してしまうのでした。
産気づいたこともあり、エイドリアンはそのままの状態で出産するも、昏睡状態に。ロッキーの必死の看病により、エイドリアンは回復。
生まれてきた息子に「ジュニア」と命名したロッキーは、彼女にこれ以上の負担をかけたくないという思いから、ボクシングを辞めると告げます。
そんなロッキーに、エイドリアンは「勝つのよ、勝って」と答えるのでした。
映画『ロッキー2』の感想と評価
参考映像:『ロッキー2』の1シーン
人気スターとなったスタローンの“その後”
前作『ロッキー』で、彗星のごとくスターとなったシルヴェスター・スタローンは、当然ながら多くの新作オファーを受けます。
彼はその中から、運送トラック協会で成り上がろうとする青年を演じた『フィスト』(1978)と、レスリング賭博の世界で生きる3兄弟を描いた『パラダイス・アレイ』(1978)を次回作に選びます。
2作品ともスタローンが脚本を兼任し、中でも『パラダイス・アレイ』は『ロッキー』の前から温めていた企画ということもあり、この作品で念願の監督デビューも果たせば、なんと歌まで披露します。
しかしいずれの作品も、興行的には失敗に終わります。
この時スタローンは、「あれほど『ロッキー』で注目を浴びたのに、世間が一気に離れていった」と感じ、その怖さを本作『ロッキー2』の脚本に活かしたと語っています。
参考映像:『パラダイス・アレイ』(1978)
一夜でアメリカンドリームを掴んだロッキーでしたが、次第に“一発屋”的な扱いを受けて、すぐに忘れ去られるという厳しい現実。
その厳しさに屈するかのように、一時はボクシングから離れようとする彼を支えるのが、恋人から妻になったエイドリアンです。
前作でロッキーがタイトルマッチ前夜に神父と会話する場面がありましたが、本作でも昏睡状態のエイドリアンの回復を願って、ロッキーが礼拝堂に祈りを捧げるシーンがあります。
そんなロッキーを、天使のように包み込むエイドリアン。彼女の病室の番号が、天使を示す「669」であることも、決して偶然ではないでしょう。
このあたりの描写も、敬虔なクリスチャンであるスタローン自身が反映されているのは、いうまでもありません。
子どもを産み、天使から聖母となったエイドリアンの後押しで、ロッキーは厳しい現実に立ち向かうのです。
戦略や駆け引きを加えた白熱の闘い
参考映像:『ロッキー2』のロッキーvsアポロ戦
劇中、トレーナーのミッキーが、ファイトスタイルを左利きから右利きにチェンジするよう、ロッキーに指南します。
これには、ウィークポイントである目へのダメージを軽減させるのと、ロッキーが左利きであることを知るアポロを混乱させる狙いがあったのです。
右利きのファイトスタイルを主導にしつつ、時おり左に変えて攻めるというミッキーの作戦は功を奏し、ロッキーは試合中盤から的確にアポロのボディを打っていきます。
一方のアポロは、打ち合わずに逃げればポイント数で勝てると指示するセコンドを無視し、チャンプとして正々堂々とロッキーとの打ち合いに挑みます。
こうした戦略や駆け引きを伴う演出を盛り込んだあたりも、前作からの進歩がみられます。
ちなみに本作には、プロボクシング4階級を制覇した“石の拳”ロベルト・デュランがロッキーのスパーリングパートナー役でカメオ出演しており、もしかしたらシーンの演出に、彼のアドバイスがあった可能性もあります。
印象的なシーンが満載の『ロッキー2』
参考映像:『ロッキー2』の1シーン
アポロの遺児アドニスが主人公のスピンオフ作品『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)の監督ライアン・クーグラーは、本作『ロッキー2』を最初に観てシリーズのファンになったと公言しています。
興行的には全シリーズ中でも低い成績となった本作ですが、エイドリアンが「勝つのよ」と告げるシーンや、ロッキーが800人ものエキストラの少年少女たちと一緒にロッキーステップを駆け上がるシーンなど、印象的な場面も多い一本です。
次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。