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Entry 2022/03/20
Update

映画『その瞳に映るのは』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。イギリス空軍がデンマークで実行したカルタゴ作戦の“誤爆による悲劇”|Netflix映画おすすめ91

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第91回

今回ご紹介するNetflix映画『その瞳に映るのは』は、1945年3月21日にイギリスの特殊任務である“カルタゴ作戦”で犠牲になった、デンマークのカトリック系インターナショナルスクールを襲った悲劇の実話を描いています。

監督は「呪いの箱」にまつわる実話を題材に描いたホラー『ポゼッション』(2013)で、注目を集めたオーレ・ボールネダルが務めます。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

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映画『その瞳に映るのは』の作品情報

(C)2022 Netflix

【公開】
2022年(デンマーク映画)

【原題】
Skyggen i mit oje

【監督・脚本】
オーレ・ボールネダル

【キャスト】
バートラム・ビスゴ・エネボルドセン、エスター・バーチ、エラ・ヨセフィーネ・ルンド・ニルソン、マレーナ・ルシア・ロダール、ファニー・リアンダー・ボールネダル、アレックス・ホイ、アルバン・レンドルフ、ジェームズ・ターピー、キャスパー・ケアー・イェンセン、ダニカ・クルチッチ、マッツ・リーソム、マレーネ・ベルトフト・オルセン、クリスチャン・イブラー、リッケ・ルイーズ・アンデルソン

【作品概要】
デンマークのテレビドラマ「ギルティー」で主役を務め、本作で注目された子役のバートラム・ビスゴ・エネボルドセンが、ショッキングな経験によりPTSDを発症する少年ヘンリーを演じます。

デンマーク人レジスタンスを取り締まる、ゲシュタポの予備警察(HIPO)のフレデリックを演じるのは、デンマークの若手俳優リッケ・ルイーズ・アンデルソン。

シスターテレサ役のファニー・リアンダーはオーレ・ボールネダル監督の娘で、デンマークで女優として活躍中です。

映画『その瞳に映るのは』のあらすじとネタバレ

(C)2022 Netflix

1945年2月。デンマークのユトランド半島は、第二次世界大戦下であることを忘れさせるほどに、平穏な時間が流れていました。

結婚式に向かう3人の村娘がタクシーに乗り込みはしゃぎます。車内は幸せに包まれ平和そのものでした。田舎道を朝取りの卵を自転車で運ぶ少年・・・。

うるさいエンジン音と悪路のガタゴト音に、上空からの異音はかき消され、運転手が気づいた時には、イギリス空軍の奇襲により機銃掃射されます。

3人の娘が着た白いドレスは血に染まり、運転手も死亡してしまいました。

卵を運ぶ少年は上空からの異音に気がつき、空を見上げると低空で飛行する戦闘機が飛び去って行きます。

少年は緩やかな坂道の先にただならぬ不安を感じながら進みます。やがて開けた草原に出ると、彼の目の前には炎上する自動車が停車しています。

恐る恐る近づいた少年が車内を覗き込むと、中で4人の遺体が焼かれていく様を目撃してしまい、自転車を乗り捨て逃げました。

村はずれの家にスヴェンという男がフレデリックを訪ね、かくまって欲しいと哀願します。しかし、フレデリックは立場的に助けられないと拒み、“シェルハウス”で会おうと言います。

スヴェンはフレデリックから借りていたという金を返し、不安げに去っていきます。家の中へ戻ったフレデリックは朝食を食べます。

そんな彼を見ながら父は妻に「こいつはお前が産んだ子ではない。恥を知れ」と、母国を裏切り“HIPO(予備警察)”に入ったフレデリックを罵ります。

一方、コペンハーゲン市街では母親に連れられ買い物にきたエヴァが、母から乳母車の赤ん坊を見ているよう言われ店の外で待ちます。

しかし、人が行き交う通りで異変が起きます。シェルハウスに向かうスヴェンですが、2人の男が呼び止め名前を確認すると「多くを知りすぎた」と射殺されます。

エヴァはその一部始終を目撃し、呆然としてしまいます。慌てて店から出てきた母はエヴァの目を隠し、その場を去っていきます。

燃えさかる自動車の中で、焼かれていく人を目撃してしまった少年ヘンリーは、そのショックから失語症となり、広々とした場所や空を恐れるようになっていました。

ヘンリーの母は息子を医師に診せるため病院へいきますが、医師は原因を探るため彼が体験したことを聞こうとしますが、必死に話そうとしても言葉を発せられません。

すると医師は突然声を荒げて「しっかりしろ!男になれ!」と恫喝します。医師は多少の恐怖が時には最善の治療法だと母にいいます。

しかし、ヘンリーはその声に怯えてしまい、必死に声を出しますが言葉にならず、涙がこぼれだしてしまい、医師は匙を投げてしまいました。

ヘンリーの母は妹が暮らしているコペンハーゲンなら、“広い空”を見ることもないだろうと、そこに預けて様子を見ると決めました。

一方、イギリス空軍では2人のパイロットのところに、特殊作戦執行部(SOE)の少佐が訪ねて来て、ユトランド諸島でドイツ車両を攻撃したか聞きます。

2人はそのことを認めますが、彼らが攻撃したのは一般のタクシーで、運転手と3人の女性が犠牲になったと伝え、誤射には十分気をつけるよう注意します。

コペンハーゲンのシェルハウスでは、スパイ行為をしているレジスタンスが、上半身裸にされ鞭で打たれ、SOEと自由評議会の指揮系統について尋問されます。

見張り役としてフレデリックも同席しています。激しい尋問が続くとレジスタンスは、何かつぶやきます。フレデリックも耳を傾けると、司令官を「お前はもう終わりだ、裏切り者!」と罵り掴みかかります。

その頃、シェルハウス近くの寄宿学校では若いシスターが、“自由のデンマーク”という見出しのユダヤ人迫害の記事を見ながら、自分の背中を鞭で打っていました。

シスターテレサは院長から自傷行為の理由を聞かれ、「神を探すため」と答えます。ユダヤ人迫害などの不条理に対して、なぜ神は見放すのか納得できないからです。

テレサは自らに罪を与えることで、罰を与える神が出現すると信じて疑いませんでした。しかし、院長はユダヤ人はキリストを否定したからと答えます。

テレサは子供たちまでがその犠牲になることに、心を痛めていました。院長は神への信仰を失くした者には、慰めも何も残らないとテレサに告げます。

以下、『その瞳に映るのは』ネタバレ・結末の記載がございます。『その瞳に映るのは』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2022 Netflix

ヘンリーは母に連れられコペンハーゲンの叔母の家に来ました。叔母の家には歳の近い従妹のリーモアがいます。

寝起きのリーモアはヘンリーに話せなくなった理由を「車の中で死んでいる人を見たから?」と、直球で聞いてしまいヘンリーは畏縮してしまいます。

母に楽しい話をするよう注意され、リーモアは自分のテディベアは友好的だと紹介します。ヘンリーの母はここなら広い空もないし、安全で楽しいと言い聞かせます。

母がリーモアにヘンリーのことを頼むと彼女は頷きます。ヘンリーの母が家を出ていくと、リーモアはヘンリーの肩を抱きながら頭を撫でます。

英国のSOEは空軍にコペンハーゲンの中心部にある“ゲシュタポ指令部(シェルハウス)”を破壊し、ドイツ人を殺害する作戦を発表しました。

3連隊に分けた戦闘機部隊を目標まで低空飛行で向かわせ、シェルハウスを破壊するのですが、建物の屋根裏にはデンマーク人のレジスタンスが捕虜として収容されています。

つまりゲシュタポのドイツ人は、デンマーク人を人間の盾として収容しています。ところが司令官は仲間の犠牲を払っても遂行する、重要な作戦だと告げました。

作戦は人の出が多くなる正午前に、戦闘機連隊が時間差でシェルハウスに、時限爆弾を発射し、3回に分けて攻撃をして撃破する「カルタゴ作戦」です。

ヘンリーはリーモアと一緒に学校に通うようになります。リーモアは洗濯物を干すロープを持って出かけます。

通学途中でエヴァと合流すると、リーモアはエヴァも人が死ぬところを見たけど、話せるとヘンリーに教えます。

3人は途中でパン屋に寄ってパンを1個買います。リーモアはそのパン屋のパンには毒が入っていると話しますが、解毒剤もあると言います。

学校の目前には大きな通りがあり少しひらけています。リーモアはそこが一番の難所だと、持ってきた洗濯ロープをヘンリーの背中に回し、ひっぱりエヴァは後ろから押します。

ヘンリーの足はすくみますが、リーモアのアイデアとエヴァの協力で、無事に大通りを渡り切って、学校に入ることができました。

リーモアは学校の礼拝堂に行きパンを3つに分けると、聖水に浸して食べれば毒がぬけるから大丈夫だと言い、3人は聖水に浸したパンを食べます。

その日はクラスで遠足があり、生徒たちは校外へ出かけます。引率にはシスターテレサもついていきます。

しかし、公園にさしかかると予備警察が不審な男を捕り抑え、暴行を加えているところにでくわします。

扇動するシスターは見ないよう、早歩きで通り過ぎようとしますが、テレサは立ち止まりその様子を眺めてしまいます。すると1人の警官が彼女に近づきます。

その警官はフレデリックでした。彼がテレサに声をかけると、テレサは黙って彼の手をとります。傷だらけの拳の手は小刻みにふるえ、テレサは「悪魔ね」とフレデリックに言います。

それから彼の耳元で「神をみつけないと、地獄に落ちるわよ」と忠告します。フレデリックは呆然としますが、テレサは他のシスターに連れ戻されていきました。

捕まった男はレジスタントで先にいた同朋の隣りに収容されます。捕まった男は隣の捕虜に話しかけ、シェルハウスの屋根裏だと確認すると仲間の人数を聞きます。

30〜40人と答えますが、じきに別の収容所に移送されると言います。ところが連れて来られた男は「自分達は人間の盾」といい、英国軍の攻撃対象にされていると話します。

その晩、買い物をして帰る途中のテレサはHIPOの車両に追尾され、フレデリックに呼び止められ、籠の中を確認され何もないと解放されます。

テレサはフレデリックにHIPOの目的を聞きますが、彼には答えられず逆に公園でささやいた言葉は「手遅れだ」といい、戦争が終われば処刑される「悪魔」だと言います。

立ち去ろうとするフレデリックに、テレサは突然「キスをして」といいます。悪魔とキスをすれば、その罪で神が罰を与えに現れると思うからです。

しかし、何も起きずテレサは「神はいない」と、フレデリックの腰から抜いた銃を向けます。銃はすぐに返しますが、常軌を逸した行動にフレデリックは困惑し戻ります。

(C)2022 Netflix

翌日、学校では“チューリンゲンのエリーザベト”の奇蹟を教えます。エリーザベトが貧困に苦しむ人々に、パンを運んでいる時に領主が籠の中をみると瞬く間に薔薇の花に変ったという逸話です。

その時、テレサが神の存在について話します。鉛筆を投げて落ちる時間を例えに、神にとって時間とは1秒が100年にも値し、瞬きしている間に神が不在になることもあるだろうと言います。

テレサが学校の門を施錠していると、フレデリックが声をかけてきます。彼は「悪魔になりたくない」とテレサに救いを求めます。

2人は礼拝堂に行きキリスト像の前でひざまづきます。テレサは聖書を開きある一文を読むよう言いますが、フレデリックは文字が読めませんでした・・・。

テレサは後に続いて祈るように読み始めます・・・。するとフレデリックは悪魔とキスがしたいならここですればいいと、テレサに覆いかぶさります。

テレサはそれをはらいのけるとキリスト像を見ました。そして、キリストの胸に刻まれた傷跡に触れ、そこから血が流れたことを示して「神の言葉」だとフレデリックに言います。

フレデリックは学校を去る時テレサに詫びますが、テレサは彼にキスをし、2人は名前を名乗りあい別れます。キリストの奇蹟と思われた流血は、テレサの自作自演でもありました。

しかし、テレサは一部始終を見ていた院長から、学校からの追放を言い渡されます。そして、そのころイギリス空軍では「カルタゴ作戦」決行の出撃準備が進んでいました。

翌朝、エヴァは朝食のお粥が食べられず、父から叱られていました。スープを食べない少年が5日目に死んだ話をして、食べるよう強要しますが、エヴァは無視して学校へ行きます。

イギリスの戦闘機は出撃しますが、低空飛行のため鳥がぶつかってきたり、前途多難な飛行となります。

フレデリックは父親にHIPOを辞めると告げますが、それは追われる身になることを意味し、両親に別れを言って逃亡します。

学校で演劇の練習が始まりますが、エヴァが腹痛を訴えトイレにいきます。ヘンリーは付き添うため後をおいかけました。

エヴァとヘンリーは礼拝堂でパンを食べます。エヴァはヘンリーに聖水には解毒作用があるから、頭を漬ければ良くなるかもしれないといい、ヘンリーは素直にやってみました。

そのころゲシュタポでは捕虜の尋問が続き、空軍はコペンハーゲン市内の侵入に成功しています。ところが1連隊目の一機が鉄塔に接触し、尾翼を失い操縦不能になってしまいます。

他の戦闘機はシェルハウスへの攻撃を始めますが、制御不能になった一機は学校に墜落してしまいます。

レーダーからの察知を避け通信を切った攻撃連隊は、この事故のことを知らずにいたため、次に続く連隊の一部が、黒煙のあがる学校を標的と勘違いしてしまいます。

演劇の練習をする生徒たちは、予期せぬイギリス軍の襲撃に逃げまどいます。テレサとリーモア、他の生徒は地下室へ避難しました。

ヘンリーとエヴァは埃まみれの顔で、中庭に逃げ出して呆然と上空を見上げます。

ヘンリーは中庭の開けた空に、ユトランドで見た戦闘機を再び目撃して校舎の中に逃げ込み、エヴァは学校から去っていきました。

標的を間違えた戦闘機は学校を誤爆し、その衝撃は地下室へ逃げた子供たちにも伝わり、とうとう天井が崩れ落ちます。

空襲が治まり消防が学校の消火と救助に来ます。子供達の保護者も集まってきました。保護者は近くの劇場に集められ、子供の安否確認を待ちます。

ヘンリーは消防団長に発見され、救助され病院に搬送される子供達の名前や年齢、特徴をメモにして保護者に伝える任務を頼まれます。

言葉を発することができず、再びショック状態に陥ったヘンリーですが、団長が訴える命がけの指令をヘンリーは受けました。

一方、崩れた瓦礫で身動きの取れないテレサは、一緒に逃げたリーモアとグレタの名前を叫びます。最初は返事をした二人ですが、やがてグレタの声がしなくなります。

リーモアを探す父親は崩れた建物の軒下から声を聞きます。そして、学校が襲撃されたことを知ったフレデリックも救助にかけつけました。

軒下の空洞から、金属音で助けを求める音を聞いたフレデリックは中に入って行きます。

テレサはリーモアを必死に呼び続けますが、リーモアは水があごの下まで迫ってきたと訴えます。テレサの必死の声がフレデリックに届き、排水ポンプが運び込まれ瓦礫は取り除かれます。

テレサとフレデリックの皮肉な再会です。テレサのリーモアを呼ぶ声が虚しく響き、返答はありません。テレサは絶望しリーモアが沈んでいる地下空洞へと、身を投げてしまいました。

一方、救助の報告を待つ劇場では、ヘンリーのメモが両親たちに希望と絶望を与えます。メモを読み上げる俳優は悲しみに打ちひしがれ、ヘンリーに代読を頼みました。

声の出ないヘンリーは親達のすがる思いの瞳と、「もう少し大きな声で」という言葉に心を揺さぶられ、大きな声で救助された子の特徴を叫び、失語症を克服しました。

エヴァの母親はヘンリーを見て彼女を知らないか聞きます。ヘンリーは「エヴァならいない。学校を去ったから」と言うと、エヴァの母はわずかな希望を持って走ります。

母が必死にアパートの階段を駆け上がり、部屋に入るとダイニングのテーブルで、食べ残した粥を貪り食べるエヴァを見て、安堵で泣き崩れ座り込みました。

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映画『その瞳に映るのは』の感想と評価

(C)2022 Netflix

デンマークがドイツに統治されていた時代

本作は第二次世界大戦中にナチスドイツに統治されていた、デンマークで実際に起きたイギリス空軍による特殊作戦、「カルタゴ作戦」の誤爆による悲劇を描いた映画です。

1945年3月21日の爆撃の時、学校には529名の人がいました。482人の子供、34人の修道女と13人の教師や関係者で、被害者は116名のうち子供が87名でした。

デンマークは中立的立場をとっていましたが、十分な兵力とドイツの侵攻に抵抗するための地形に恵まれなかったため、抵抗を感じながらも国に有利な条件を出し、降伏するしかありませんでした。

1943年8月にドイツによる事実上の占領下に陥り、1944年にはゲシュタポ司令部(シェルハウス)が配置されます。

デンマーク人によるHIPO(予備警察)が組織されたことは、ドイツに加担した意味となりデンマーク人にとっては裏切り行為になります。

ドイツ軍に抵抗する、デンマーク人のレジスタンスは彼らに取り締まられ、国民同士の衝突が生まれていきました。

そもそも中立の姿勢をとっていたデンマークをドイツが占領したのは、イギリスとフランスからデンマークを守るという、ドイツ側の勝手な大義が発端でした。

子供達の目に映ったものとは・・・?

兵士以外の戦争の犠牲者は女性や子供などの弱者です。戦争の手が入っていないユトランド半島で、まさかの誤射によって少年が心の病になります。

この誤射事件は実際に起きており、映画が劇場公開する際には加害者であるパイロットの親族が、抗議したため誤射を伝えるシーンはカットされ公開しました。

そもそも「カルタゴ作戦」はシェルハウスだけを標的にした作戦で、子供や民間人が犠牲になる想定にはなっていませんでした。

しかし、戦争には想定外のことが起き、起きるはずがないと思われた参事を生みます。

作中で明暗を分けた子供がいました。デルタとリーモア、エヴァとヘンリーです。

デルタとリーモアは“チューリンゲンのエリーザベト”の逸話を詳しく知っていました。つまり、神の奇蹟を純粋に信じる子供たちです。

エヴァとヘンリーは人が殺されてしまう現場を見て、大人に恫喝されるという共通の恐怖を味わっていました。

エヴァのお腹が痛いというのは虚言でしょう。神の奇蹟などないのだと薄々気がつき、パンも聖水に浸さずそのまま食べていました。

運命を分けた子供をテレサの話しで例えるなら、リーモアとデルタは神が2人を見ていなかった瞬間に亡くなり、エヴァとヘンリーは見守られていたため助かったといえます。

しかし、エヴァは父親が戒めた好き嫌いがあれば“死んでしまう”という言葉を信じ、ヘンリーは医師から言われた「男になれ」という言葉が、消防団長の指令によって開眼させました。

子供達は大人が戒めの話よりもおとぎ話が好きで、純粋に信じるものです。ところが人間の不条理を目撃したヘンリーとエヴァは、ショッキングな体験を機に偏食や病を克服でき、生き延びるための経験値を積みます。

幼い2人の死はテレサにとって、神の存在がないことを決定づけるもので、2人を犠牲にして生き残ってしまったと感じたでしょう。その苦しみから逃げるように自ら命を絶ちました。

まとめ

(C)2022 Netflix

Netflix映画『その瞳に映るのは』は、2022年の国際情勢に鑑みることができます。正直、“事実は映画よりも奇なり”です。毎日見るニュース映像はヘンリーと共感しショックです。

そして、寝食に不自由のない今に感謝できる気持ちは、エヴァと共感できます。日本人はおとぎ話のような奇跡の中にいるといえます。

有事がない時に観ていたら、違った感想になったと思いますが、今は過去に起きていた過ちを再び犯す危機にあると、観ることのできる作品です。

何を信じてどう行動するのかシリアスな気持ちで、戦争が生む不条理を考えるきっかけとなる、非常にタイムリーな作品でした。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら





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