連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第68回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第68回は、『シャッター』(2008)のご紹介です。
本作は人気オムニバスドラマシリーズ「世にも奇妙な物語」で最多の監督数を持つ落合正幸がハリウッドで活躍する俳優やスタッフを起用し製作したハリウッド映画であり、和と洋のホラー映画に対する認識の違いをお互いの強みを損ねることなく融合させた作品でした。
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映画『シャッター』の作品情報
【原題】
Shutter
【日本公開】
2008年(アメリカ映画)
【監督】
落合正幸
【キャスト】
レイチェル・テイラー、ジョシュア・ジャクソン、奥菜恵、デヴィッド・デンマン、ジョン・ヘンズリー、マヤ・ヘイゼン、ジェームズ・カイソン・リー、宮崎美子、山本圭
【作品概要】
ドラマ『沙粧妙子・最後の事件』や『パラサイト・イヴ』(1997)などの作品を手掛けた落合正幸が、タイ映画『心霊写真』(2006)をハリウッドでリメイクした作品。
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)への再加入が決まり再注目を受けるドラマシリーズ「ジェシカ・ジョーンズ」で主人公の親友トリシュを演じたレイチェル・テイラーが主演を務めました。
映画『シャッター』のあらすじとネタバレ
新婚の写真家ベンとその妻ジェーンは仕事の都合と新婚旅行を兼ねて日本を訪れます。
夜、ベンが寝ている間、山道を運転するジェーンは道に突然現れた女性を撥ねてしまった上に車を木にぶつけ気を失ってしまいます。
目を覚ましたジェーンはベンに人を撥ねてしまったと話しますが人の姿は無く、ベンが呼んだ警察が捜索を行っても血痕ひとつ見つかりませんでした。
富士山の見えるコテージに泊まり、ベンの説得もありジェーンは女性のことや事故についてを深く考えることをやめます。
仕事のため「TGK(東京グローバル広告)」の本社を訪れたジェーンはベンの親友であり仕事仲間であるブルーノと会います。
ブルーノは日本でベンに撮影を依頼するにあたり、スタジオと住居スペースが併設されたビルを用意しており、部屋の広さにジェーンは感動を覚えました。
翌日、コテージで撮った写真に白い線が走っていることに2人は驚きますが、カメラか印刷のミスと深くは考えませんでした。
ベンが仕事の写真を撮っている間、ジェーンはひとり東京の街をうろつき写真を撮りスタジオへと戻ると、ベンの日本でのアシスタントとなるセイコがジェーンの撮った写真に白い線が写っていることに気づきます。
セイコはその写真のことを「心霊写真」と言い、彼女の元カレであるリツオがその手のことに詳しいとジェーンに紹介します。
リツオは心霊写真の本を刊行しており、ほとんどの写真は加工ではあるものの一部の写真は何かを伝えたい「霊」が写真に写り込んだものだとジェーンに説明。
ベンは仕事の写真にも白い線が写り込み、ブルーノの仲介で事なきを得たものの仕事にも大きな支障が出始めていることに焦りを募らせますが、ベンは心霊写真を信じず、「心霊写真」だと強調するジェーンを日本ノイローゼと決めつけてしまいます。
しかし、ベンは首筋が重苦しく感じたり実際にスタジオ内でジェーンが撥ねたとする容姿にそっくりな日本人女性の幻覚を見始めたことでジェーンの発言を信じ、2人はリツオの紹介で占い師の村瀬と会うことにします。
霊魂について語る村瀬はベンの撮った白い線が残る写真を見ると「どうして助けなかった」と憤怒しそれ以上を語ることはなく、ベンは村瀬をインチキと決めつけ彼のもとを去ってしまいます。
映画『シャッター』の感想と評価
日本との相性抜群の心霊写真ホラー
タイ映画『心霊写真』のハリウッドリメイクとなる本作ですが、物語の舞台はほとんどが日本となります。
「心霊写真」や「霊魂」と言った要素は一時日本では大ブームとなったことから日本人には特に馴染み深い要素であると言え、「日本」と言う舞台と「心霊写真」の組み合わさった本作の親和性は想像通り非常に高いものでした。
日本のホラー映画では霊や呪いがその存在をじわじわと対象者に感じさせ、最終的に病気に見せかけて呪い殺すと言う展開が多く観られます。
一方で、ハリウッドを含めた海外の霊や呪いを題材とした作品では、物や人そのものを動かし、対象者に直接的な攻撃を行うことも珍しくありません。
本作『シャッター』に登場する霊はそんな和と洋の霊の特質を併せ持っており、じわじわと存在を認識させながら直接的にも襲い掛かる、より恐ろしいものとなっており、日本人ホラー映画監督がハリウッドで製作したからこそ作り出せる類を見ない独特なホラー映画でした。
すべての現象がひとつに繋がる秀逸なラスト
本作の持つ最大の魅力はすべての霊的現象がひとつの真実を紡ぎ出す物語にあります。
ジェーンが車で撥ねてしまった女性の正体、写真に写り込む白い線の謎、占い師の村瀬が残した「どうして助けなかった」と言う言葉の真の意味、そしてふたりを呪う霊の目的。
一見、「車の事故」で繋がるように思えたそれぞれの線が実は全く違う要素で繋がる巧みな脚本は、人によってモヤモヤを生んだりスッキリとしたりと異なる鑑賞後感を持たせてくれます。
「呪いの謎」の解明を主軸とするホラーとミステリーを組み合わせた作品が好きな方にピッタリと言える秀逸な物語構成を持つ作品でした。
まとめ
日本への渡航が恐ろしい非日常への入り口となってしまう様子を描いた映画『シャッター』。
カメラの技術が発展し時代と共に減る一方となった「心霊写真」ですが、不気味なものが写った際の恐怖はいまだ健在と言えます。
東京の都会と喧騒、その一方でひとたび屋内に入ると否応なしに感じる孤独ゆえの不安。
「世にも奇妙な物語」でさまざまな名作を生み出した落合監督らしい「恐怖」の描き方を見せたオススメの作品です。
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