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Entry 2019/03/17
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中国映画『過ぎた春』あらすじと感想レビュー。監督バイ・シュエ(白雪)のトーク登壇の報告も|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録12

  • Writer :
  • 西川ちょり

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第12回

毎年3月に開催される大阪アジアン映画祭も今年で第14回目となります。2019年3月08日(金)から3月17日(日)までの10日間に渡ってアジア全域から寄りすぐった多彩な作品51作が上映されます。


©︎ Cinemarche

今回はその中でコンペティション部門選出作品の中国映画『過ぎた春』 [過春天](2018)を取り上げます。

3月15日のABCホールでの上映では、監督のバイ・シュエ〈白雪〉とプロデューサー、ホー・ビン(賀斌)がゲストとして登壇。熱心なアフタートークが行われました。そのレポもお届けします。

【連載コラム】『大阪アジアン映画祭2019見聞録』記事一覧はこちら

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映画『過ぎた春』とは

北京電影学院の監督コース出身のバイ・シュエ〈白雪〉監督が、中国映画監督協会が協賛する若手映画監督支援プログラムに参加して制作した長編デビュー作です(英題は『The Crossing』)。

中国南東の深圳市に住み、毎日国境を超えて香港の高校に通う16歳の少女が、ひょんなことからスマートフォン密輸にかかわることとなり、深入りしていく姿が描かれます。

ジャ・ジャンクーが主宰する平遥国際映画祭で、最優秀作品賞を受賞しました。

バイ・シュエ〈白雪〉監督の北京電影学院時代の師であるテイエン・チュアンチュアン(田壮壮)がエグゼクティブプロデューサーを務めています。

映画『過ぎた春』のあらすじ

16歳のペイペイは、中国南東の深圳市に住み、毎日国境を超えて香港の高校に通っています。

香港人の父と中国人の母を持つペイペイですが、両親は離婚していて、父は香港の国境付近でトラック運転手をしています。

母は、家に友人を呼んでは麻雀に明け暮れる毎日を送っています。

学校で親友のジョーといる時だけが、ペイペイにとって心休まるひとときでした。

ふたりは、クリスマスに日本に旅行することを計画していました。雪景色を見て、温泉に入って、日本酒を飲もうとジョーは楽しそうに語り、早くホテルを予約しようと言い出します。

ですが、ペイペイはまだ航空券を買うお金も用意できておらず、もう少し待ってくれるよう頼みます。

同級生にスマホケースを売りつけたり、アルバイトしてお金を貯めますが、まだまだ目標額に足りません。

父にお金を貸してもらおうと父の職場を訪ねますが、父も経済的に余裕があるわけではなく、ペイペイは何も言いだすことができませんでした。

ある日、ペイペイとジョーは授業を途中で抜け出し、私服に着替えて、ジョーのボーイフレンド、ハオの友人たちの船上パーティーに参加しました。

その帰り、改札を通ってホームに向かっていたペイペイに、警察に追われたハオの友人が何かを渡してそのまま走っていきました。

観るとそれはスマートフォンの束でした。その夜、ペイペイのスマホにハオから電話がかかってきて、指定した場所にスマホを持っていくようにと言われます。

ペイペイが、その場所に赴き、車に乗った男にブツを渡すと、男は金をペイペイに渡して立ち去りました。

それはペイペイにとって思いがけない大金でした。

ペイペイはハオの紹介で、スマートフォンの密輸団のアジトに出入りするようになります。始めはひどく緊張しましたが、制服姿のペイペイを疑う者は誰もおらず、密輸はたやすいことのように思われました。

密輸団のボスである女はペイペイを持ち上げ、ペイペイは、人に必要とされ、信頼されているという、これまで感じたことのない満足感と、心地よさを感じ始めますが…。

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映画『過ぎた春』の感想と評価

青春映画に登場する女子高生は大概、ふてくされているものですが、本作のヒロインである16歳のペイペイも、冒頭からにこりともせずに電車に乗り込んで、憂えた表情を見せます。

彼女は中国の深圳から香港の学校に通っています。国境を超えて香港に降り立ち、街中を横断していく彼女の姿をカメラは引きの映像で捉えています。

何気ないオープニングの描写から、なにやらひりひりした痛みのようなものが漂っています

常にボーダー(国境)を行ったり来たりしていた少女が、一つのボーダー(境界)を超えて、犯罪の領域に脚を踏み入れていく過程が緊張感たっぷりに描かれていきます。

自分の居場所に違和感を抱き、麻雀に狂う母を軽蔑し、もう別の家庭を持っている父にはこれ以上近づけない、そんな孤独な少女にとって、密輸グループは随一の居場所となっていきます。

ここでは自分は認められており、役にたつ人物だと思い込む思春期の少女の繊細な心理とそこにつけこみ、おだてて、その気にさせる密輸グループの女ボス。

疑似家族という甘い幻想が青春映画とノワール映画を結びつけます。

友人のジョーのボーイフレンドであるハウとは、友達以上恋人未満の微妙な関係が続くのですが、腹やスカートの下にスマホをテープで巻き付けて隠すという行為が、一種の愛の交換となっています。

直に肌に触れないことで交換し合う愛の形は、張り詰めた緊張感を伴い、甘美なものではありませんが、確かな官能を呼び起こします。

それにしてもこの少女はなんと夜の街が似合うのでしょう。少女を通して都市そのものを描こうとするかのように、魅惑的な都市の景観が彼女を包み、また彼女が風景に溶け込むことで、風景は生き生きと目覚め始めます。

夜のドライブでは、香港の街の灯火が車の窓ガラスに反射して少女と合体し、飛鵝山から眺める香港の街は無機質に美しく煌めき続けます。

窓ガラスといえば、少女が父とレストランで食事をするシーンで、父が途中で席を立ち、外に出てタバコを吸う場面が思い出されます。

父の姿が店の窓ガラスに映り、中にいる少女と向かい合うように位置している画面の面白さ。親しい存在なのに、もう遠く隔たってしまった二人の関係をこれほどはっきりと描く術があるとは驚きです。

『過ぎた春』はそのように、映画の場面、一つ一つを記述し続けたくなるほど、魅力ある映像で溢れ、最後までヒリヒリと観るものの心を引きつけるのです。

まとめ

アフタートークでのバイ・シュエ監督(左)とプロデューサーのホー・ビン氏


©︎ Cinemarche

3月15日の上映でゲストとして登壇したバイ・シュエ監督は自身を、90年代に中国西北の都市から深圳に移り、都市の発展を見届けてきた目撃者だと語り、香港文化の影響を強く受けて育ったといいます。

この映画を作るに際し、香港のことを理解出来ていないのではないかと思い、本や博物館で歴史的な事柄を調べ、様々な業種に就く人々へのインタビューを行い、入念なリサーチのもと脚本を執筆しました。

ペイペイを演じたホアン・ヤオは中央戯劇学院を卒業したプロの女優です。

広東省の出身で、北京語と広東語の両方をしゃべる語学力があり、バイ・シュエ監督は彼女の頑固でシンプルな眼力に惹かれたといいます。

映画における”ボーダー“に関する質問には、都市部における様々な状況や中国における独特な状況を背景に、成長の過程で超えていくボーダーがあり、他の人々ともそういうことを共有していきたいと力強く語っていました。

プロデューサーのホー・ビン(賀斌)氏は、バイ・シュエ監督の夫で、当日はお誕生日にあたり、監督からケーキが送らました。

和やかな雰囲気の中、観客とともに記念撮影も行われ、大いに盛り上がったアフタートークでした。

【連載コラム】『大阪アジアン映画祭2019見聞録』記事一覧はこちら

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