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Entry 2022/12/25
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韓国映画『よりそう花ゝ』あらすじ感想と評価考察。アン・ソンギのいぶし銀の演技力と“紙の花”の意味|コリアンムービーおすすめ指南32

  • Writer :
  • 西川ちょり

韓国映画『よりそう花ゝ』は2023年1月13日(金)よりシネマート新宿他にて全国公開!

『風吹く良き日』(1980)、『シルミド SILMIDO』(2003)、『折れた矢』(2011)などの作品で知られる韓国の国民的俳優アン・ソンギが、古くからの礼節を重んじる葬儀屋に扮した映画『よりそう花ゝ』。

監督は、本作が長編2作目となったコ・フン。そして、葬儀屋の家の隣に子連れで引っ越してきた女性を、11年ぶりの映画出演となったユジンが演じています。

本作は第53回ヒューストン国際映画祭でプラチナ賞(最優秀外国映画賞)と韓国初の男優主演賞受賞の快挙を成し遂げ、第24回釜山国際映画祭・パノラマ部門に招待されるなど、国内外で高い評価を受けています。

【連載コラム】『コリアンムービーおすすめ指南』記事一覧はこちら

映画『よりそう花ゝ』の作品情報


(C)2019 ROD PICTURES. All Rights Reserved.

【日本公開】
2023年(韓国映画)

【原題】
종이꽃(英題:Paper Flower)

【監督・脚本】
コ・フン

【キャスト】
アン・ソンギ、ユジン、キム・ヘソン、チャン・ジェヒ

【作品概要】
ベテラン俳優のアン・ソンギが葬儀屋の男を演じ、さまざまな人との交流を通して再び希望を見出すヒューマンドラマ。

11年ぶりにスクリーンにカムバックしたユジンをはじめ、息子役のキム・ヘソンも久々のスクリーン登場を果たしました。

映画『よりそう花ゝ』のあらすじ


(C)2019 ROD PICTURES. All Rights Reserved.

葬儀屋のソンギルは、事故で下半身不随となった息子・ジヒョクと2人で暮らしています。

ジヒョクは旅行が好きで旅行作家になるのが夢でしたが、父の意向で医学部に進み、医師として独り立ちしようとしていた矢先、事故に遭いました。

彼は自暴自棄になって死にたがり、介護士たちは皆、とても務まらないと辞めていきます。

また大手の葬儀会社が幅をきかす昨今、ソンギルの仕事は減り、家賃を払うのもままなりません。大家の厚意でなんとか住まわせてもらっている状態です。ソンギルは仕方なく大手の葬儀屋と契約しますが、大手のやり方は金次第のドライなものでした。

ある日、アパートの隣室に朗らかな女性・ウンソクとその娘のノウルが引っ越してきます。ウンソクは仕事を探していましたが、なかなか見つからずにいました。

やがてジヒョクの介護者を探していると知ると、彼女は半ば強引に介護士として働くことに。ジヒョクは他の介護士と同様、ウンソクのことも激しく拒絶しますが、明るい彼女のペースに次第に巻き込まれていきます。

その頃、近所のククス店を経営するチャンが心臓発作で亡くなりました。身寄りもない彼の遺体の取り扱いに葬儀屋は顔をしかめますが、チャンに世話になっていた元ホームレスの人々が「きちんと彼をお見送りしたい」と申し出ました。

しかし、彼らにはお金がなく……。

映画『よりそう花ゝ』感想と評価


(C)2019 ROD PICTURES. All Rights Reserved.

名優アン・ソンギのいぶし銀の演技を堪能

アン・ソンギは子役として活躍した後、1980年にイ・ジャンホ監督作『風吹くよき日』に出演し、大鐘賞最優秀新人賞を受賞。

以後『鯨とり コレサニャン』(1984)、『ディープ・ブルー・ナイト』(1985)など“韓国ニューウェーブ”と呼ばれる作品でその名を知らしめ、今日まで多くの作品に出演し、数多くの賞を受賞してきた韓国の国民的俳優です。

そんな彼が本作で演じるのは、一人で切り盛りしている古くからの葬儀屋。しかし、彼のような伝統的な葬儀屋は、大手の葬儀屋の台頭により消えかかっています。

タイトルにある「花」は、英題が「Paper Flower」とあるように、紙で作った葬儀用の花を表しています。アン・ソンギはその花を劇中にて鮮やかに作り上げますが、彼は本作の撮影に向けて、紙の花の材料を家に持ち帰って絶えず“花作り”の練習をしたといいます。

その他の場面においても、熟練した葬儀屋の所作をいぶし銀の演技と共に鮮やかに披露して見せるアン・ソンギ。ヒューストン国際映画祭は彼の演技を「繊細で共感できる品格ある演技」と称え、主演男優賞を贈りました。

「紙の花」が表現する“尊厳の平等性”


(C)2019 ROD PICTURES. All Rights Reserved.

小さな葬儀屋は大手に仕事を奪われ、仲の良い友人でさえも大手の便利なプランに飛びつく始末。アン・ソンギ扮するソンギルは事故で下半身不随となった息子を抱えていることもあり、大手の葬儀会社と契約を交わしますが、そこで彼は自身が守り続けてきたものと、大手の会社から求められるものの違いに戸惑うことになります。

「全ては金次第」と割り切る大手の社員の態度は幾分誇張されて描かれていますが、それでもお金次第で豪華な葬儀か、質素な葬儀かが決まるのは紛れもない事実です。

「人は誰もが死ぬし、死んだら皆同じだ」という風に言われることもありますが、亡くなってもなお、そこに経済的な格差は存在するのです。

劇中で登場する「紙の花」は、「お金がなくて花も供えられない者でも、花を飾ることができるように」という昔の人々の知恵の賜物。それは、人間の尊厳の平等性を表現するものなのです。

本作はそうした大きなテーマを抱え、なにかと便利さや効率の良さが優先され、経済至上主義になっている社会に対しても一石を投じています。

まとめ


(C)2019 ROD PICTURES. All Rights Reserved.

ソンギルの息子ジヒョク(キム・ヘソン)は人生に絶望し、死にたがっています。そんな彼の介護士となるのが、隣に引っ越してきたばかりのウンソク(ユジン)という女性です。

ウンソクはとびっきり明るくエネルギーに溢れ、これまでの介護士とはまったく違う接し方にジヒョクは戸惑いますが、そのウンソクの顔には大きな傷跡があり、過去につらいことがあったことが伺えます。それでも、彼女が明るく振る舞うのはなぜなのでしょうか

本作は葬儀屋の仕事を通じてに「人間の死」を見つめた作品ですが、一方で、「生きること」についても深い言及がなされているのです。

また、ウンソクの一人娘を演じる子役のチャン・ジェヒは、映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』などの出演で知られていますが、本作でも愉快で愛らしい演技を見せてくれます。彼女とアン・ソンギ2人の場面は、どれも忘れがたい感情を私たちにもたらします。

韓国映画『よりそう花ゝ』は2023年1月13日(金9より他にてシネマート新宿他にて全国順次公開

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