韓国映画『ジョゼと虎と魚たち』は2021年10月29日(金)よりキノシネマ他にて全国順次公開!
田辺聖子の同名短編小説を犬童一心監督が妻夫木聡と池脇千鶴を主演に迎えて実写映画化した『ジョゼと虎と魚たち』(2003)は、公開より20年近く経った今でも色褪せることなく多くの人の心に刻まれる作品です。その名作がこのたび、韓国映画界の手によってリメイクされました。
主人公のジョゼを演じたのは、ラブコメの女王として評価される一方、社会派映画『虐待の証明』(2018)で体当たりの演技を見せたハン・ジミン。
青年ヨンソクにはドラマ『スタートアップ:夢の扉』(2020)、映画『安市城 グレート・バトル』(2018)のナム・ジュヒョクが扮し、足の不自由な女性と心優しい大学生の恋愛をキム・ジョングァン監督が瑞々しいタッチで描いています。
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映画『ジョゼと虎と魚たち』の作品情報
【公開】
2021年公開(韓国映画)
【原題】
조제/英題「Josee」
【監督】
キム・ジョングァン
【キャスト】
ハン・ジミン、ナム・ジュヒョク、パク・イエジン、ジョボクレ、
【作品概要】
犬童一心監督が田辺聖子の同名短編小説を実写映画化した『ジョゼと虎と魚たち』を韓国映画界がリメイク。
『最悪な一日』(2016)などの作品で知られるキム・ジョングァン監督が、ハン・ジミン、ナム・ジュヒョクというフレッシュな人気俳優を主演に迎え、日本実写版のエッセンスを巧みに取り入れながら、独自の世界を作り上げました。
映画『ジョゼと虎と魚たち』のあらすじ
卒業を控えた大学生のヨンソクは、ある日、車椅子の女性が道端に倒れているのに遭遇し駆け寄ります。
車椅子は壊れており、近くの商店から大八車を借りて彼女を家まで送り届けたヨンソクは、お礼に夕飯を振る舞われます。
足が不自由な彼女は廃品回収で生計をたてる祖母と二人で暮していました。ジョゼと名乗る彼女は祖母が拾ってきた本で知識を得、頭の中で様々な国を旅していました。そんな自分だけの世界観をもつ物静かなジョゼに、ヨンソクは次第に惹かれていきます。
ヨンソクは度々ジョゼのもとを訪れ、そのたびに夕飯をごちそうになりました。ある日、ジョゼの幼馴染という男性から、ジョゼには親がなく、養護施設から逃げ出し、おばあさんに拾われてから自分の世界に閉じこもっている事を知らされます。
ヨンソクは、ジョゼへの想いを徐々に募らせていき、大学の女友だちのツテを頼って、市の補助金でジョゼの家の改装にこぎつけます。しかし、ヨンソクと女友だちの親密そうな雰囲気を察したジョゼは彼を拒絶します。彼女はこれまで経験したことのない感情に戸惑っていました・・・。
映画『ジョゼと虎と魚たち』感想と評価
韓国の”今“を纏う主人公像
オリジナルの妻夫木聡が演じた青年役には人気俳優のナム・ジュヒョクがキャスティングされました。
妻夫木が演じた恒夫が、”いささか軽薄な面もあるが気のいい青年”という、ある種、日本の当時の時代性を象徴する典型的な若者として登場してきたのに比べ、ナム・ジュヒョク演じるヨンソクは、やや物静かな青年に見えます。
真面目で誠実そうですが、大学の女性教官と愛人関係にあったり、彼を慕っている後輩の女子学生とも簡単に一夜を共にしたりという一面も見られます。
感情を表に出さないので、どのような性格をしているのか、何を考えているのか、掴みどころがない印象を受けますが、物語が進むに連れ、今の韓国の若者が感じている息苦しさが姿を見せ、主人公の内面を映し始めます。
ヨンソクは地方大学に通い、就職活動中ですが、大学を出ていても地方大学という点で、既にハンデを背負っていること、悪意ある人の邪魔立てなど、つらい状況に置かれています。
そうした境遇に成す術もなく流されるように生きている若者の象徴としてヨンソクは登場してきます。ナム・ジュヒョクは、ほぼ感情を顕にしない抑えた演技で表現し、翻弄されている若者像を作り出すことに成功しています。
オリジナルが日本のその時代性を的確にとらえていたように、本作も韓国の現在を、鮮やかに映しとっています。
主人公たちの恋を徹底的に美しく描く
一方、「ジョゼ」を演じるのは『虐待の証明』で、傷つきながらも芯の強さを持つ主人公を演じたハン・ジミンです。彼女が演じるジョゼは、池脇千鶴のジョゼほど朗らかではなく、非常に物静かで、か細い声でゆっくりと話すのが特徴です。
脚にハンデがある上に、不幸な境遇に育ち、心にも大きな傷を負っているという設定で、そんな彼女が、ヨンソクと出会うことでどのように変化していくのかが、映画の大きなみどころの一つです。
福祉などの社会問題も意識させながら、二人が惹かれ合っていくさまが、淡々と、静謐ともいえる雰囲気で語られていきます。キム・ジョングァン監督は2人の恋を非常に美しく、徹底して清らかに描いています。
日本の実写版を知る人には、大変結末が気になるところですが、キム・ジョングァン監督は思い切った構成をとり、2020年に製作された日本のアニメ版とも違った新生『ジョゼと虎と魚たち』を作り上げました。
まとめ
犬童一心が監督した『ジョゼと虎と魚たち』は韓国でも高い評価を得て、熱烈に愛されてきた作品です。その作品をリメイクすることはキム・ジョングァン監督にとって非常に大きなプレッシャーでした。
しかし原作小説と映画が持つ「人間の視線、深い人間愛」を独自の視点で表現したいという思いが募り、リスクを覚悟の上でこのオファーを受けるにいたったといいます。
キム・ジョングァン監督は原作映画のエッセンスを尊重し、引き継ぐとともに、新たな『ジョゼと虎と魚たち』を作り上げました。
ナイーブで、物静かで、優しく、傷つきやすい2人の恋がどのように変遷していくのか、是非映画館で目撃してください。