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Entry 2021/04/07
Update

鬼滅の刃無限列車編 名言/名シーン2|煉獄さんが炭治郎らに伝えた最後の“灯火”の言葉【鬼滅の刃全集中の考察12】

  • Writer :
  • 薬師寺源次郎

連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第12回

大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。

今回も『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』のDVD・Blu-ray発売決定を記念し、「無限列車編」の名言・名シーンを改めて紹介・解説していきます。

その1記事でも紹介した“下弦の壱”魘夢との“心”の戦いを終え、「無限列車編」もいよいよクライマックスを迎えます。

“上弦の参”猗窩座との激闘の末、最期を迎える煉獄の屈指の名シーンをはじめ、「無限列車編」の数々の名言を振り返っていきます。

【連載コラム】『鬼滅の刃全集中の考察』記事一覧はこちら

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「老いることも死ぬことも 人間という儚い生物の美しさだ」

「人間だからだ」「老いるからだ」「死ぬからだ」……有限の命ゆえの人間の“脆弱さ”を指摘する猗窩座に対して煉獄が口にした言葉であり、鬼からしてみれば人間の致命的な弱点でしかない“老い”と“死”を情熱的に捉えた、煉獄らしい熱いセリフです。

またこのセリフが登場した場面をはじめ、敵対する猗窩座との問答は鬼殺隊の煉獄にとって本来不要なはず。それでもかつては“人間”であった猗窩座の言葉を決して無下にせず、律儀に返答する様子からは、煉獄の中にある心意気を感じさせます。

また映画版では戦いの最中、誘惑の言葉で語りかける猗窩座の意図とその動向を探りながらも、静かに“真実”の言葉を口にする煉獄を、その声色で見事に表現する日野聡の演技にも注目です。

「強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」

先の「老いることも死ぬことも〜」に続けて発した煉獄のセリフです。

他者を圧倒する暴力としての“強さ”を追い求める猗窩座が、手負いで戦うことができない炭治郎を「弱者」と評したことに対し、煉獄はこの言葉を猗窩座に投げかけます。

これまでの名言からも分かる通り、“人の想い”を重んじる煉獄にとっての“強さ”は心の在り様に根差しています。そして、このセリフの直後に煉獄が炭治郎を「弱くない」と評したことから、彼は炭治郎の他者を想い、自らの犠牲を顧みず剣を振るう姿に“強さ”を見出していたのです。

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「俺は俺の責務を全うする ここにいる者は誰も死なせない」

猗窩座は激闘の中で手傷を負い、劣勢に立たされる煉獄に対し勝機がないことを告げますが、煉獄は自身を奮い立たせるようにこの言葉を放ちます。

重傷を負いながらも決して怯むことなく叫ぶこの言葉は、さながら煉獄の魂の咆哮のように感じられます。映画版でも、日野聡の渾身の叫びは多くの観客の心を感動させました。

のちに猗窩座との戦いには決着が訪れる中で、煉獄の全身全霊の叫びは煉獄の生き様を、その心の“炎”の姿を観る者に熱く焼き付け、『鬼滅の刃』の全ての物語においても屈指の名場面となっています。

「なぜ自分が人より強く生まれたのかわかりますか」

煉獄の回想の中で、亡き母・瑠火が幼い煉獄にかつて問いかけた言葉です。

病により死期が近い瑠火は自身の問いに答えられなかった煉獄に対し、それは「弱き人を助けるため」であり、「強く生まれた者の責務」でもあると厳しく諭します。この時の瑠火の言葉は煉獄の心に深く刻まれ、そのまっすぐな生き様に強い影響を与えました。

そしてその直後に描かれる、幼い煉獄をそっと抱きしめながらも言葉を続ける瑠火の姿には、幼き日に母を亡くすという運命を背負うことになる我が子に、だからこそ厳しく接しようとする母の優しさを感じさせられます。

映画版にて瑠火を演じた豊口めぐみの、抑揚を抑えた声色の中に厳しさと優しさを内包させた演技も必見です。

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「煉獄さんのために 動けーっ!!」

激闘の末、接近した猗窩座に自らの胸を貫かれながらもその動きを封じ、まさに命を懸けて猗窩座を倒そうとする煉獄に対し、彼を援護しようとする炭治郎が叫ぶ言葉です。

この言葉を叫んだのは、猗窩座と煉獄の戦いに圧倒され、身動きができない伊之助を鼓舞するためでした。しかし同時に、煉獄の死を予感し思うように動けない自分自身を鼓舞するためでもあり、炭治郎の必死さが伝わってくる場面です。

炭治郎を演じた花江夏樹の、悲壮感に押しつぶされそうになりながらも必死で叫ぶ演技がより切迫感を醸し出しています。

「お前の負けだ!! 煉獄さんの勝ちだ!!」

煉獄の拘束を振りほどき、鬼の弱点である太陽の光から逃げようとする猗窩座の後を追いながら、炭治郎はこの言葉をぶつけます。

勝敗は決し、煉獄の死は免れず、猗窩座を倒すこともできなかった……敗北が確定しながらも、それでもなお、煉獄の命を賭した戦いの中でみせた気高さのため叫び続ける炭治郎の姿に、切なさを禁じ得ない場面です。

死にゆく煉獄を目の当たりにし、堰を切ってあふれ出る思いから次々に叫ぶことになる炭治郎ですが、叫ぶほどに虚しさと無力感は募り、最後には泣き崩れてしまいます。それまでどんな困難にも屈することがなかった炭治郎の衝撃的な場面でもあります。

「俺は君の妹を信じる 鬼殺隊の一員として認める」

死期が近づく煉獄が炭治郎に語って聞かせる言葉です。

柱合会議の際は、一貫して鬼である禰豆子を殺すべきだと言っていた煉獄ですが、列車と融合した魘夢が乗客を襲うのを必死で守ろうとする禰豆子の姿に感銘を受け、この言葉を炭治郎に語り聞かせます。

鬼を滅する鬼殺隊の隊士でありながら、鬼と化した禰豆子を連れ行動する炭治郎。その心情や禰豆子が人間を襲わないという事はともかく、大きな矛盾を抱えた特異な存在である事は否めず、一時は鬼殺隊から抹消されかけたこともあった為、炭治郎にとって煉獄のこの言葉は思いもよらなかった事だったといえます。

また、この言葉から煉獄が立場や能力ではなくその人物の行動、在り様で人を評価していることが垣間見える熱い名言となっています。

「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと心を燃やせ 歯を食いしばって前を向け」

先の「俺は君の妹を信じる〜」と同じく、死期が迫った煉獄が炭治郎に言って聞かせる言葉です。

堪え難い無力感・喪失感に襲われている炭治郎の心中を察した上で、彼の中にある“火”を絶やすまいとこの言葉を口にした煉獄。のちに炭治郎はこの言葉を糧にし、更なる激闘へと身を投じてゆきます。

煉獄らしい厳しくも暖かい激励の言葉であり、かつて彼の母・瑠火がそうしたように、死にゆく煉獄が次代を担う者たちへ“火”を残そうとした結果出た名言といえます。

「柱ならば 後輩の盾になるのは当然だ」

人の上に立つ者の「責務」を重んじる煉獄らしい言葉とも感じられますが、その一方では煉獄が、自身の死のせいで炭治郎がその歩みを止めてしまってはいけないと気遣ったことで出た言葉とも受け取れます。

また「柱ならば」と強調していること、後のセリフで煉獄は炭治郎たちに次代の“柱”になるよう伝えていることからも、炭治郎らに“柱”の生き様を最期に教えようとしたのかもしれません。

「立派にできましたよ」

死の間際に煉獄が見た、母・瑠火の幻影が語りかける言葉です。

幻影の瑠火に「責務」を果たすことができたかと問いかける煉獄に柔らかな笑みを湛え、この言葉を語りかける瑠火の姿が印象的です。

そして瑠火と同じく笑みを浮かべ事切れる煉獄の最期は、『鬼滅の刃』においても名場面の一つとして数えられています。

「信じると言われたならそれに応えること以外 考えんじゃねぇ」

煉獄の死に打ちひしがれ弱音を吐く炭治郎に対し、伊之助が怒鳴りつけた言葉です。

これまで戦う事や自分の強さしか考えていないような言動が多かった伊之助が、誰かを叱咤するという意外な場面です。

また彼は、涙を流しながらにこの言葉を発していることからも、コンプレックスとは無縁のように思えていた伊之助もまた、煉獄の死によって炭治郎同様に無力感や喪失感に襲われていたのでしょう。しかしその感情を認めることができないが故に、自分に言い聞かせるかのように思わずこの言葉が出たのかもしれません。

映画版での伊之助を演じる松岡禎丞による泣きじゃくり喚くような演技は、力強いセリフとは裏腹に虚しさが募っていく伊之助の心情が見事に表現されています。

まとめ/次回の『鬼滅の刃全集中の考察』は……


(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

「無限列車編」名言・名シーン集その2、いかがだったでしょうか。

「無限列車編」の主役と言っても差し支えないであろう煉獄の生き様、熱い名言の数々は『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』のメガヒットにつながったことは言うまでもありません。

その煉獄の死をもって幕を閉じる事となった「無限列車編」ですが、多くの人の心に煉獄の言葉は刻まれ、誰が道に迷った時、歩みを止めそうになった時にそっと背中を押してくれるのではないかと感じられてなりません。

次回記事では、「柱合会議・蝶屋敷編」の名言・名シーンをピックアップ。炭治郎の運命を大きく変える“柱”達との出会いから生まれる名シーンはもちろん、鬼達の首魁・鬼舞辻無惨のあの冷酷な名言も紹介していきます。

【連載コラム】『鬼滅の刃全集中の考察』記事一覧はこちら






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