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Entry 2020/10/03
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映画『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』感想と内容考察。家族を残して戦地に赴きカメラを覗く男の真意を追う|2020SKIPシティ映画祭4

  • Writer :
  • 桂伸也

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020エントリー・ボリス・B・ベアトラム監督作品『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』がオンラインにて映画祭上映

埼玉県・川口市にある映像拠点の一つ、SKIPシティにて行われるデジタルシネマの祭典が、2020年も開幕。今年はオンラインによる開催で、第17回を迎えました。

そこで上映された作品の一つが、デンマークのボリス・B・ベアトラム監督が手掛けたドキュメンタリー映画『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』

世界的に著名な戦場カメラマン、ヤン・グラルップが戦場と家庭それぞれに向き合う姿を描いたドキュメンタリーで、戦場での撮影現場という貴重な場面と何の変哲もない一家での生活が交錯する非常に興味深い作品です。

【連載コラム】『2020SKIPシティ映画祭』記事一覧はこちら

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映画『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』の作品情報


(c)Good Company Pictures /(c)2020 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

【上映】
2020年(デンマーク、フィンランド合作映画)

【英題】
Photographer of War

【監督】
ボリス・B・ベアトラム

【キャスト】
ヤン・グラルップ

【作品概要】
ドキュメンタリーの中心となるヤン・グラルップは、世界を代表するフォトジャーナリスト。ライフワークとなる戦場写真撮影のみならず、世界的な災害被災地での写真においても精力的な作品作りを行っており、報道写真展、ユニセフ写真展、ライカ・オスカー・バルナックアワードなど数多くの写真展に出展し賞を受賞しています。

本作を手掛けたボリス・B・ベアトラム監督はこれまでにも数多くの短編、TVドキュメンタリーを制作しており、2008年に『Diplomacy』、2013年に『The War Campaign』を製作。本作はこれに続いて「国際紛争の解決」をテーマにしたドキュメンタリー3部作の最後の作品として作られました。

また、本作の6人にものぼる撮影監督の一人マルセル・ザイスキンドは、『バタフライ・キス』(1995)『CODE64』などのマイケル・ウィンターボトム監督の作品を多く手掛けており、『イン・ディス・ワールド』(2002)、『9 Songs』(2004)、アンジェリーナ・ジョリー主演『マイティ・ハート/愛と絆』(2007)などで撮影を担当しています。

ボリス・B・ベアトラム監督のプロフィール


(c)2020 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

1971年生まれ、デンマーク出身。映像作家、監督、プロデューサーで、Good Company Picturesの共同経営者。2005年にデンマーク国立映画学校でドキュメンタリーを学びました。また社会心理学とコミュニケーション学の大学院の学位を取得しています。

その後制作した国際的なドキュメンタリーが25を超える国々に販売されている一方で、デンマークの国営TV局、DR1とTV2のさまざまなドキュメンタリーも手掛けています。

これまで監督した短編映画は、モスクワ、カムデン、チェリャビンスクなどの映画祭で数多くの賞を受賞、2011年と2015年にはアートカウンシルからの支援も受けました。

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映画『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』のあらすじ


(c)Good Company Pictures /(c)2020 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

戦場カメラマンのヤン・グラルップは、イラクのモスルで「イスラム国」制圧を進めるイラク軍と行動を共にし、世界中の人々にその現状を伝えるため写真を撮り続けています。

一方、コペンハーゲンの自宅に戻った彼は、4人の子育てに奮闘するシングル・ファーザー。かつて愛する妻との間に子供を授かった彼でしたが、仕事と家庭との軋轢に悩み離婚。

しかし現在、その元妻が重い病にかかり子供たちを引き取ることに。こうして戦場カメラマンと父という2足の草鞋をはく生活を行うこととなったヤン。

常に命の危険と隣り合わせの彼に、「普通」の家庭を築くことはできるのか?

本作では彼のその二つの顔を追っていきます。

映画『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』の感想と評価

「戦場カメラマン」の“人間であること”をポイントとした物語

今回『SKIPシティ国際Dシネマ映画祭』の国際コンペティション部門では、戦場カメラマンを主題とした作品として、本作とオーストラリアのベン・ローレンス監督が手掛けた『南スーダンの闇と光』という2作品がノミネートされたことも話題となりました。

本作は一人の戦場カメラマンの日常を追ったものですが、最初の30分は戦場のシーンなど全く現れない、ごく普通の親子の日常生活を追った映像が続きます。

日常といっても、かつて別れた妻が育てていた子供たちを引き取り、家庭生活をスタートする姿ということで、彼は子供たちの間に多少の距離感を見せますが、それをさまざまに縮めていこうとするのは、これまで一人で戦場カメラマンとして生きてきた人間とは、心の中にかなり強い葛藤もあることでしょう。

ヤンを取り巻くケースはある意味特殊でもありますが、このケースだからこそ見えるポイントとして、普段の生活を保ちながらも「戦場カメラマン」として生きていくことの難しさや、だからこそ得られるものをうまく作品のメッセージとして描き上げています。

そしてそのメッセージを「戦場カメラマン」という立場に限定せず広く考えると、困難なことに向き合っていくことの大切さや、困難がありながらも自分の信念に向き合っていくことの意味など、さまざまな人にも該当する面を見つけていくことができるでしょう。

また家族同士で笑いあっていたり、写真を写したり、一方で衝突して憮然とした表情を見せたりという一家の表情はとても自然です。撮影者は彼らからすると見えていないのではないか、と思えるほどの高い技術も感じられます。

ボリス・B・ベアトラム監督メッセージ

「ヤンがしている事は何かを、観客の皆様が理解できたらと願います。

彼の選択したことや優先したことに同感する必要はありませんが、この映画を観た方々に少しでも分かっていただきたいのは、ヤン・グラルップを駆り立てているのは何か、ヤン・グラルップとは何者なのか、何よりも、彼は戦争の恐ろしさを伝えるために、そして苦しみの中にある人々の希望や魂を撮り続けるために、自身の犠牲を払っているということです。」

凄惨な戦争の現場を、インパクト抜群にとらえた貴重な映像

また、映像の中に現れる戦場での彼の“仕事ぶり”は、とても貴重なものです。

ヤンの視点を観察すると、戦火で銃声が鳴り響く中、待ちの状態になった際にゆったりしている表情、一方でまさに戦闘の中、死体を飛び越えながら撮影できる場所を探す緊張した表情など、世に「戦場カメラマン」と紹介されている仕事の一端が、大きなインパクトとともに映し出されています。

空港での移動から戦場まで、そして戦火の中という大変な現場と、家族とのふれあいの場面というそれぞれ対象的な側面は作品に大きなコントラストを生み出し、作品の印象を強烈なものとしています。

作中ではヤンに対するインタビューの場面はほとんどありませんが、文字通り見ればわかるシンプルな構成のドキュメンタリーとなっており、それ故のさまざまな考え、議論に発展させる創造性、インパクトの高い作品です。

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まとめ


(c)Good Company Pictures /(c)2019 SKIP CITY NTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee.All right reserved.

例えば近年、バラエティーの現場ではすっかりおなじみとなった戦場カメラマン・渡部陽一がいます。

バラエティーではすっかりおなじみの人物でもあり、そのユニークなキャラクターとは対照的に彼自身が話す戦場カメラマンの現実的な一面は非常にショッキングで、この職業の難しさ、意義を示しているようでもあります。

しかし一方で、そういった面だけがフィーチャーされがちとなり、「戦場カメラマンとは、特殊な人間がなるもの」というイメージを抱きがちな懸念があります。

確かにこの仕事を志すのであれば、相当の覚悟と信念が必要であるかもしれません。しかしその思いの根本は、誰もが胸の内にある「知りたい」という気持ちでしょう。

戦場など普通の人は行けるものではない、しかし真実を知りたいという思いは誰もが持つものです。

そう考えると、「戦場カメラマン」という職業でも、普通の人の感覚は持ち合わせていて当然であり、かつさまざまに人間的な悩みも持ち合わせています。

そして、そういった思いが作品に現れる可能性もあるでしょう。本作ではヤン自身の作品も映し出されますが、その作品だけでは知りえない、「写した人に依存する」要素を加えた作品の本質が映し出されているといえるでしょう。

今回の映画祭で、同部門で同じくノミネートされた戦場カメラマンが主役の映画『南スーダンの闇と光』とは、ドキュメンタリーとフィクションという違い、国の違いなどさまざまに異なる点がありながらも、意外にスポットを当てている部分には、一部共通しているものもあると思われ、興味深いところでもあります。

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