Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

映画『ガール・イン・ザ・ミラー』感想と評価レビュー。鏡の少女の正体とは何か解説|SF恐怖映画という名の観覧車62

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile062

新宿シネマカリテにて2019年7月13日より4週間に渡り開催された「カリコレ2019/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2019」。

新旧作合わせ古今東西の様々な映画が公開されたこのイベントで上映された作品は、独特のセンスが光るものが多く、とても刺激的でした。

今回は「カリコレ2019」の当コラム的おさらい第1弾として、「カリコレ2019」で上映されたカナダ製の壮絶な復讐ホラー映画『ガール・イン・ザ・ミラー』(2019)の魅力をご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『ガール・イン・ザ・ミラー』の作品情報


(C)2017 ACE IN THE HOLE PRODUCTIONS, L.P.

【日本公開】
2019年(カナダ映画)

【原題】
Look Away

【監督】
アサフ・バーンスタイン

【キャスト】
インディア・アイズリー、ミラ・ソルビノ、ジェイソン・アイザックス、ハリソン・ギルバートソン、ペネロープ・ミッチェル、ジョン・C・マクドナルド

映画『ガール・イン・ザ・ミラー』のあらすじ


(C)2017 ACE IN THE HOLE PRODUCTIONS, L.P.

他者を寄せ付けようとしない陰気な性格が災いし、両親から腫れ物扱いされる少女マリア(インディア・アイズリー)。

学校でも一部の生徒からいじめを受けるマリアの心が限界に達した時、鏡に映る自身の姿をした女性がマリアに語りかけ始めます。

彼女の言葉に心を動かされたマリアは、自分自身を変えようと努力しますが思うようにはいかず…。

スポンサーリンク

正反対の性格を持った鏡による復讐劇

母からは過剰なほどの愛を貰い、厳格な父からはまるで装飾品のように清く美しくあることを押し付けられ育ったマリアは、幼馴染の親友こそいるものの日常生活は上手くいっているとは言えません。

一方で鏡に映ったもう一人の彼女は、マリアとは違い感情を押し殺すことなく振る舞い、マリアとは正反対の性格であることを伺わせます。

さらに、鏡の少女はマリアとは違い超えてはならない行為を平然と行い、マリアを追い詰めていた人間たちを手にかけ始めます。

鏡の少女が何をするか分からない静かな「恐怖」は理性を捨てた人間そのものの脅威を感じさせ、心霊ホラーと言うよりはサイコホラーに近い印象を覚える作品でした。

考察の余地を残す鏡の少女の正体


(C)2017 ACE IN THE HOLE PRODUCTIONS, L.P.

マリアの妄想とも現実とも取れる鏡の少女の正体。

「鏡」が「正反対の性格」を示唆していることは明らかであり、彼女の抑圧された心が噴き出たようにも考えることが出来ます。

しかし、作中ではその正体に迫る「答え」が丁寧に描写されていながらも、明言されてはいません。

鏡の少女は決して全能の存在ではなく、「あること」をしてしまった際に酷く動揺する姿を見せます。

そのことが本作をありがちなホラー映画に留まらせず、作品そのものの魅力を大幅に引き出しています。

理知的な解釈も、心理的な解釈も出来る彼女の正体を鑑賞後にじっくりと検証してみるのも面白さの1つと言えます。

怪演が光る俳優陣

派手なスプラッタや悲鳴が響き渡るような大きなパニックの無い静かな「ホラー」であるからこそ俳優の演技が光る本作。

中でも怪演とも言えるような印象的な演技をしていた主演のインディア・アイズリーと、父親役のジェイソン・アイザックスについてご紹介したいと思います。

インディア・アイズリー


(C)2017 ACE IN THE HOLE PRODUCTIONS, L.P.

秀逸なホラー映画として根強い人気を持つ『暗闇にベルが鳴る』(1975)のオリヴィア・ハッセーを母に持つインディア・アイズリー。

日本のアニメを実写化した『カイト/KITE』(2015)で主演を務め、大物俳優サミュエル・L・ジャクソンと共演を果たすなど、俳優として活躍する彼女の演技への姿勢は本作でも充分に発揮されており、陰気なマリアと自由な鏡の少女が同じ人間とは思えないほどの変貌ぶりを見せてくれます。

無垢な少女のような姿と艶やかな大人びた女性の姿を演じ分ける本作での彼女の演技は正に怪演であり、物語だけでなく映画としての根幹部分を担ったとさえ言えます。

ジェイソン・アイザックス


(C)2017 ACE IN THE HOLE PRODUCTIONS, L.P.

整形外科医であるマリアの父親を演じたジェイソン・アイザックス。

ハリウッド映画にも数多く出演し、人気映画「ハリー・ポッター」シリーズでは主人公のライバルであるドラコ・マルフォイの父ルシウス・マルフォイを演じ、幅広い年齢層での知名度を誇る彼は本作でも圧巻の演技。

整形外科医と言う職業柄なのか表面上のことや世間体のみを重視し、マリアの抱える悩みを一笑に付すことで惨劇の起因となる、派手さはないものの重要な役回りを堅実に演じていました。

スポンサーリンク

まとめ


(C)2017 ACE IN THE HOLE PRODUCTIONS, L.P.

陽気に見える人間が実は誰も見ていないところでは陰気な部分があると言うように、意外な二面性を持つ人は少なくありません。

まるで「鏡」のような性格の変貌はもしかしたら、マリアのように鏡の中のもう1人の自分と対話しているのかもしれません…。

「カリコレ2019」で公開された『ガール・イン・ザ・ミラー』は刺激的かつ繊細なカナダ製の復讐ホラーの秀作映画でした。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…


(C)WSG Film Romans Ltd 2016, All Rights Reserved

いかがでしたか。

次回のprofile063では、「カリコレ2019」おさらい第2弾としてオーランド・ブルームが主演した宗教的復讐映画『復讐の十字架』(2019)をご紹介させていただきます。

8月14日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら


関連記事

連載コラム

映画『私をくいとめて』感想評価と原作との違い。キャストにのんを起用して綿矢りさの小説を大九明子監督が描く|TIFF2020リポート4

『私をくいとめて』は、東京国際映画祭2020のTOKYOプレミア2020にてワールド・プレミア上映! 東京国際映画祭2020で大九明子監督の、のんを主演に迎えた最新作『私をくいとめて』が披露されました …

連載コラム

【ネタバレ】鬼滅の刃 鼓屋敷編|あらすじ感想と考察。アニメ無限列車編の初放送日前に響凱戦×善逸/伊之助との出会いを振り返り|鬼滅の刃全集中の考察25

連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第25回 大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。 (C)吾峠呼世晴/集英社・ア …

連載コラム

『ハリガン氏の電話』ネタバレ結末あらすじと感想評価の解説。”怖くて泣けるホラー”を原作スティーブンキングで埋葬された棺で描かれたものとは⁈|Netflix映画おすすめ114

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第114回 世界中にファンが存在するホラーの世界。映画・コミック・小説…多岐にわたる分野の作品が人々を魅了しています。 現在のホラー作品に絶 …

連載コラム

【ネタバレ感想】チューズ・オア・ダイ:恐怖のサバイバルゲーム|あらすじ結末と評価解説。ホラーミステリーとして“命の選択”を迫る恐怖ゲームを描く|Netflix映画おすすめ97

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第97回 人生は選択の連続であり、些細なことから自分の未来を左右する大きな決断まで、時にひとりで決めなくてはなりません。 そんな選択を無機質 …

連載コラム

実写『学校の怪談』ネタバレあらすじ感想と結末の解説評価。“ジュブナイル映画”として小学生のひと夏の成長を怪奇ファンタジックに描く|邦画特撮大全109

連載コラム「邦画特撮大全」第109章 今回の邦画特撮大全で紹介するのは『学校の怪談』(1995)です。 山崎貴監督の最新作『ゴーストブック おばけずかん』が2022年7月22日(金)に公開されることを …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学