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Entry 2019/06/26
Update

映画『神と共に 第二章:因と縁』感想評価と考察。続編は新展開を迎える壮大なスケール|SF恐怖映画という名の観覧車55

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile055

profile050でご紹介させていただいた死後の世界を題材とした映画『神と共に 第一章:罪と罰』(2019)。

死後の世界をド迫力の世界観で表現し、1人の男の人生と家族の物語を紡いだ第一章に続く第二章『神と共に 第二章:因と縁』(2019)が遂に今週末、日本に上陸。

今回は『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2017)などで、世界的にも認知され始めたマ・ドンソクの出演で話題となった本作の魅力を徹底的にご紹介していこうと思います。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『神と共に 第二章 因と縁』の作品情報


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

【日本公開】
2019年6月28日(韓国映画)

【原題】
Along with the Gods: The Last 49 Days

【監督】
キム・ヨンファ

【キャスト】
ハ・ジョンウ、チュ・ジフン、キム・ヒャンギ、マ・ドンソク、キム・ドンウク、イ・ジョンジェ、D.O.

映画『神と共に 第二章 因と縁』のあらすじ


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

無念の死を迎えたことで悪霊となり、犯人に復讐しようとしたスホン(キム・ドンウク)に転生のための裁判を受けさせようとする使者のカンニム(ハ・ジョンウ)。

自身の生まれ変わりすらも賭けるカンニムに、部下のヘウォンメク(チュ・ジフン)とドクチュン(キム・ヒャンギ)は困惑しますが、その裏には千年もの時を越えたある「想い」が関係していて…。

千年の時と共に語られる「因と縁」


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

「いんねん(因縁)をつける」などの言葉が最も一般的で、あまり良い印象のない「因縁(いんねん)」と言う言葉。

仏教的に言えばこの言葉は「点と線」のような意味を持つ言葉であり、私たちの人生の中で幾度となく起きる物事の「結果」に対する「原因」に当たります。

本作では前作の主人公の弟スホンの裁判を進めながらも、カンニムを始めとした3人の使者が「何故使者をしているのか」をメインに物語が展開されていきます。

49回の貴人の転生を勝ち取ることで貴人を導いた使者も転生することが出来る、と言う使者の国のルールにカンニムが込める想い。

そして、リーダーのカンニムの勝手な行為に鬱憤を募らせるヘウォンメクとドクチュンが自身の出自を思い出すに連れ、自身の進むべき方向に迷い始めるという展開は、壮大なスケールと時代設定であっても現代に生きる人間が大切にすべきことを思い出させてくれます。

物事の「結果」には、それ相応の「原因」がある。だが、その「結果」すらも「道の途中」である。

そのことを観客に再認識させてくれる、素晴らしい脚本が光る作品でした。

新たな局面を迎える第二章


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

第一章では「ファンタジー」と「ヒューマンドラマ」をベースに地獄での裁判を描くことで、変則的なリーガルサスペンスとも言える独特のジャンルを開拓していきました。

そして続く第二章では、その独特な要素や設定はそのままに、物語は新たな局面へと切り込んでいきます。

使者のカンニムは、かつて高麗の時代に大国を指揮していた将軍の1人息子でした。

しかし、弟のせいで悲惨な末路を辿ることになったと語るカンニムと、カンニムの命令で現世へと向かったヘウォンメクとドクチュンが成主神が聞かされる、高麗の時代に己が身に起きた悲劇。

衣装やセットが細部まで作り込まれて再現された「高麗時代」も度々描かれており、「時代劇」の側面も色濃い第二章。

「時代劇」と聞くと堅苦しく感じてしまったり、難しそうと思ってしまう方もいるかもしれませんが、本作では難しい言葉遣いや用語はほとんど登場せず、気楽に「時代劇」を楽しむことが出来ます。

新たなジャンルが加わり、更にスケールの広がる『神と共に』の世界観。

バラバラなジャンルかと思いきや、壮大な物語の全てが一つに繋がっていく感覚は他ではなかなか味わえない至極の体験と言えます。

二面性のある演技が魅力的な俳優陣


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

『新感染 ファイナル・エクスプレス』でマ・ドンソクに魅せられた人の中には、彼の類まれなる肉体から「アクション俳優」と自然と頭の中でカテゴライズしている方も多くいると思います。

しかし、本作ではマ・ドンソクのアクションは控え目に収まっており、彼本来の演技派な面が強く表れています。

元来人間界での事象には直接手出しをしないはずの神の一柱が、なぜ人間界に留まるのか。その経緯が、彼の巧みな演技によって描かれています。

また、第一章から続投するハ・ジョンウ、チュ・ジフン、キム・ヒャンギの3人の演技も特に魅力的で、3人の使者の正反対な生前の性格に確かな説得力を持たせていました。

まとめ


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

仏教の宗教観では、すべての「結果」に必ず「原因」が存在します。

私たちの身の回りにいる友人や職場の同僚、もしくは大切な人は「なるべくしてなった」大切な縁と言えます。

カンニム、ヘウォンメク、ドクチュンは何故、3人で使者となることになったのか。何故、悪霊となったスホンをカンニムは助けようとするのか。

壮大なスケールで描かれる彼らの因縁の物語。それが指し示す「結果」を、ぜひその目で確かめてみてください。

『神と共に 第二章 因と縁』は6月28日より全国の劇場でロードショーです。;

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile056では、今度こそタイムトラベルを繰り返し大切な人を救うNETFLIXプレゼンツ映画『シー・ユー・イエスタデイ』(2019)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

7月3日(水)の掲載をお楽しみに!

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