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Entry 2020/06/24
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サメ映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』感想評価と考察。続編の内容は絶望感のヤバイ演出が光る|SF恐怖映画という名の観覧車108

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile108

じめじめと湿度の高い梅雨が始まり、梅雨明けに夏が迫る時期になりました。

夏を舞台とした映画らしく「キラキラと明るく自然の豊かさを感じる雰囲気」と、夏だからこそ「ヒヤっと涼しくなれる恐怖感」を同時に摂取できる作品が2020年7月23日の「海の日」に日本に上陸。

今回はサメ映画の大注目の最新作『海底47m 古代マヤの死の迷宮』(2020)の魅力をたっぷりとご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』の作品情報


(C)THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD

【公開】
2020年(アメリカ・イギリス合作映画)

【原題】
47 Meters Down: Uncaged

【監督】
ヨハネス・ロバーツ

【キャスト】
ソフィー・ネリッセ、コリーヌ・フォックス、ブリアンヌ・チュー、システィーン・スタローン、ジョン・コーベット、ニア・ロング

【作品概要】
海に沈んだ檻の中で人喰いサメの恐怖と対峙する姉妹の姿を描いた海洋パニックスリラー「海底47m」シリーズ第2弾。

監督は前作同様のヨハネス・ロバーツ。主人公の姉妹を演じるのは『やさしい本泥棒』のソフィー・ネリッセと、オスカー俳優ジェイミー・フォックスの娘コリーヌ・フォックス。そのほか、シルベスター・スタローンの娘のシスティーン・スタローンも出演。

映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』のあらすじ


(C)THE FYZZ FACILITY FILM 11 LTD

母の死と父の再婚により孤独を抱えるミア(ソフィー・ネリッセ)は、義姉のサーシャ(コリーヌ・フォックス)とも折り合いの悪い日々が続いていました。

ある日、父の勧めでサーシャと2人でサメを見学するツアーに出掛けたミアは、サーシャの友人アレクサ(ブリアンヌ・チュー)とニコール(システィーン・スタローン)と共にツアーを抜け出しマヤの遺跡が眠るとされる秘密の湖へと行きますが…。

前作未鑑賞でも楽しめる精神的続編

本作は2017年に公開された『海底47m』(2017)のヨハネス・ロバーツ監督によって製作された続編ではありますが、登場人物も場所も前作とは繋がりのないいわゆる「精神的続編」となっています。

そのため、本作は単体で楽しむことの出来る作品であり、「前作を観ていないから100%を楽しめないかもしれない」という心配は一切必要ないと断言しておきます。

前作では「海」の中の「檻」というワンシチュエーションな状況下が描かれていましたが、本作では原題で「Uncaged」と名付けられたように「檻」が舞台ではなく、より危険度の高い海底内の「遺跡」が舞台となっています。

心理的な切迫感が物語の中心であった前作に対し物理的に切迫感を描いた本作は、新たな「恐怖の対象」を作り出すことでより絶望感を増すことに成功していました。

恐怖の対象はサメだけではない

しっかりとした整備がされていない地下洞窟は少しの衝撃で崩落する危険性があります。

実体験を基にした映画『サンクタム』(2011)のように、崩落した地下洞窟では閉塞感によるパニックや再度の崩落への恐怖、そして酸素の残量などすべてが「恐怖の対象」となります。

前作では生還への出口は海上である頭上47メートルにはっきりと存在していましたが、本作ではその出口すらどこにあるか分かりません。

そんな絶望的な状況に加えもちろんサメも登場し、地下洞窟で育ったことで視力を失った代わりにその他の感知能力が進化したマヤの遺跡に巣食う凶暴なサメが主人公ミアたちを襲います。

前作の精神的続編であれど全く趣の違う閉塞感と切迫感に襲われる90分は、この夏にぴったりの作品といえます。

ワンシチュエーションサメスリラーの傑作『海底47m』

参考画像:『海底47m』(2017)


(C)47 DOWN LTD 2016, ALL RIGHTS RESERVED

2017年に公開され全米で大ヒットとなった前作『海底47m』。

2016年の『ロスト・バケーション』(2016)と共にワンシチュエーションサメスリラーの傑作とも名高い前作は独特な「絶望感」を纏った作品でした。

海底に沈んだサメの入れない「檻」に閉じ込められた2人の女性。

「檻」の中に居れば安全ではあるが残り少ない酸素を消費し、「檻」から出て海上を目指すとサメと気圧が容赦なく襲い掛かる。

じわじわと酸素不足で死んでいくか、潜水病もしくはサメに襲われ一息に死んでしまうかの二者択一。

精神的続編である『海底47m 古代マヤの死の迷宮』では同じ二者択一でも「進むか」「死ぬか」であり、前作と絶望感の方向性が違う作品としてサメ映画を発展を支える秀作シリーズの1つです。

大注目の出演俳優たち

『海底47m 古代マヤの死の迷宮』には今大注目の俳優が多数出演しています。

本作で主演を務めたソフィー・ネリッセは『やさしい本泥棒』(2013)でサテライト賞新人賞を受賞し、Netflixオリジナル映画『クロース:孤独のボディーガード』(2019)でもメインキャストを演じ着実にキャリアを重ねています。

さらに本作には「ランボー」や「ロッキー」シリーズでお馴染みの俳優シルヴェスター・スタローンの娘、システィーン・スタローンが出演。

主人公の義姉サーシャの友人ニコールを演じた彼女は、普段はグループのムードメイカーとしてグループを引っ張るニコールがパニックの際にどんな行動に出るのかを緊張感たっぷりに好演。

システィーン・スタローンのデビュー作としても映える作品です。

まとめ

サメ映画としても夏映画としても秀逸な本作は、夏の自然とマヤ遺跡の神秘的な雰囲気、そして広大な海も美しく映り非常にみどころの多い作品となっています。

サメと遺跡との激しい逃亡劇の末迎えることになる驚愕のラストは、手に汗握り熱い気持ちになること間違い無し。

そんな本作『海底47m 古代マヤの死の迷宮』は2020年7月23日の「海の日」に全国でロードショー。

美しい自然とサメの恐怖が画面を覆う本作をぜひ劇場で鑑賞してみてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile109では、『月に囚われた男』(2010)や『ミッション: 8ミニッツ』(2011)で高い評価を受けるダンカン・ジョーンズが手掛けたNETFLIX独占配信映画『MUTE』(2017)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

7月1日(水)の掲載をお楽しみに!

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