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Entry 2024/05/15
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『かくしごと』あらすじ感想と評価解説。キャスト杏と関根光才監督が描き出す“偽りの親子の絆”|山田あゆみのあしたも映画日和14回

  • Writer :
  • 山田あゆみ

連載コラム「山田あゆみのあしたも映画日和」第14回

今回ご紹介するのは、『生きてるだけで、愛』(2018)の関根光才監督が手がけた長編映画2作目『かくしごと』。

嘘からはじまった親子の絆を描く、重厚なヒューマンサスペンスです。

千紗子を演じる杏のたとえ偽りでも子を思う切実な思いと、認知症の父親の介護に苦悩する姿が、胸に迫る一作となっています。

映画『かくしごと』は2024年6月7日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、テアトル新宿ほかで全国順次公開!

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映画『かくしごと』の作品概要


(C)2024「かくしごと」製作委員会

【日本公開】
2024年(日本映画)

【原作】
北國浩二『噓』

【監督・脚本】
関根光才

【主題歌】
羊文学「Tears」

【キャスト】
杏、中須翔真、佐津川愛美、酒向 芳、木竜麻生、和田聰宏、丸山智己、河井青葉、安藤政信、 奥田瑛二

【作品情報】
生きてるだけで、愛。』(2018)で鮮烈な長編監督デビューを飾った関根光才の、待望の長編第2作目。「ミステリー作家が描く感動小説」として評価も高い北國浩二の『噓』を原作に描く、子を守る母親の強烈な愛と嘘の物語です。

主人公・千紗子役は『キングダム 運命の炎』(2023)『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』(2023)に続き、『窓ぎわのトットちゃん』(2023)ではトットちゃんのママの声を演じるなど話題作に出演し、俳優、モデル、そして母親としての顔も持つ杏。

父・孝蔵役には名優・奥田瑛二。虐待を受けている少年「拓未」を演じるのは中須翔真。また佐津川愛美、酒向 芳、安藤政信と実力派俳優が脇を固めています。そして主題歌は、テレビアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」のエンディングテーマで話題になったオルタナティブロックバンド・羊文学の「tears」。

映画『かくしごと』のあらすじ


(C)2024「かくしごと」製作委員会

絵本作家の千紗子(杏)は、長年絶縁状態にあった父・孝蔵(奥田瑛二)が認知症を発症したため、渋々田舎に戻る。

厳しかった父に葛藤を抱えつつも介護する千紗子と、娘のことさえ忘れてしまった孝蔵。千紗子は他人との同居のような生活に辟易する日々を送っていた。

ある日、久しぶりに再会した旧友の久江(佐津川愛美)との帰り道、久江が少年(中須翔真)を車ではねてしまう。幸い大きなケガはなかったものの、少年は記憶を失っていた。

少年の身体に虐待の痕を見つけた千紗子は、彼を守るため「自分の子ども」として育てることを決意。自分が母親だと嘘をつき、少年を「拓未」と呼んで、一緒に暮らし始める。

ひとつの“嘘”によってはじまった千紗子と少年、そして認知症が進行する父の3人の生活。最初こそぎこちなかった3人だが、田舎の豊かな自然の中で次第に心を通わせ、新しい家族のかたちを育んでいく。

しかし、そこに少年の父親(安藤政信)が現れる……。

映画『かくしごと』感想と評価


(C)2024「かくしごと」製作委員会

親子という特別な関係を、「真実と偽り」「善と悪」で割り切れないものとして切実に描いた、繊細なヒューマンドラマでした。

物語は、嘘から始まります。事故により記憶を失くした少年を保護した千紗子は、「あなたは私の子どもなの」と嘘をつき、本当の息子のように愛情を注ぎます。

一方で認知症を発症した父・孝蔵とは、以前からある確執のせいで険悪な関係でした。久しぶりに顔を合わせたものの、自分のことを娘と気づいていない父親に対して、千紗子は名乗りません。

他人には母のふりをし、実の父には他人のふりをする。歪な関係の3人ですが、次第に本当のぬくもりある「家族」そのもののように変わっていきます。

千紗子が孝蔵を「お父さん」と呼ぶようになるまでの経緯には、認知症の悲しい現実が詰まっており、介護経験がある人のみならず多くの人がきっと胸が詰まるはずです。

本作を観ていると、善悪の概念が曖昧になっていきます。少年のことを自分の子だと偽り、本当の親から遠ざけたことは犯罪行為ですが、虐待を受けていた少年を守ろうとしたことは正義のはずだからです。

自分ならばどうするか……そう考えずにはいられませんでした。

介護問題や、児童虐待など深刻な社会問題を扱い、人同士のつながりの尊さを真偽や善悪で図れるのか。そんな奥深いテーマをもった作品となっており、観終わった後に意見を交わしたくなるはずです。

まとめ


(C)2024「かくしごと」製作委員会

主人公・千紗子を演じた杏は、「今の自分だからこそ演じることができる」と本作への思いを語っており、その熱のこもった演技は必見です。

彼女が抱える忘れられない過去の記憶、自分のことを忘れゆく父親を介護する苦悩。そして、揺るがない母性を、繊細さと熱量をもって体現しており、圧倒されます。

また認知症に苦しむ孝蔵を演じた奥田瑛二の、危なげさと哀愁がただよう表情や、佇まいそのものが物語る演技も必見です。

さまざまな事情を抱える人がいる今、救われるべき子どもたちの命が守られ、生き方の選択をできる世の中であってほしいと改めて切実に感じ入る作品でした。

映画『かくしごと』は2024年6月7日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、テアトル新宿ほかで全国順次公開!

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山田あゆみのプロフィール

1988年長崎県出身。2011年関西大学政策創造学部卒業。2018年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを計14回開催中。『カランコエの花』『フランシス・ハ』などを上映。

好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を観る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中(@AyumiSand)。



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