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Entry 2021/05/30
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映画『愛について語るときにイケダの語ること』感想評価レビュー。障害のある池田英彦が末期ガンを患い“愛の在り方”を見つめ直す|映画という星空を知るひとよ67

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第67回

身長112 センチの青年が胃ガンになり、最期を迎えるまでの2年間を撮影した異色ドキュメンタリー映画『愛について語るときにイケダの語ること』。

障害を持ちながら自分のありのままの姿を撮り続けた池田英彦の、初主演・初監督作です。

『愛について語るときにイケダの語ること』は、2021年6月25日(金)よりアップリンク吉祥寺にて、7月10日(土)より大阪・シアターセブンにてロードショー。

主人公であり、監督・撮影もこなす池田英彦は、四肢軟骨無形成症(通称コビト症)という障害を持ち、胃ガンによって余命もわずかと宣告されます。

死を意識した池田は、自分の行動を撮影し始めました。完成した本作に残る池田の恋愛観とはどのようなものなのでしょう。

異色ドキュメンタリー『愛について語るときにイケダの語ること』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『愛について語るときにイケダの語ること』の作品情報


(C)2021 愛について語る時にイケダが語ること

【公開】
2021年(日本映画)

【企画・監督】
池田英彦

【撮影】
池田英彦、真野勝成

【プロデューサ・脚本】
真野勝成

【共同プロデューサー・構成・編集】
佐々木誠

【出演】
池田英彦、毛利悟巳

【作品情報】
『愛について語るときにイケダの語ること』は、2015年に他界した池田英彦が、企画、監督、出演をした作品。

四肢軟骨無形成症(通称コビト症)という障害を持つ池田英彦は40歳になる直前に、胃ガンのステージ4と診断されます。死を意識した池田は、自分と女性のセックスをカメラに収め始めました。

ドラマ『相棒』や映画『デスノートLight up the New world』(2016)の脚本家・真野勝成が撮影に協力し、『プレイルーム「熱海の路地の子」』(2018)『ナイトクルージング』(2019)などの佐々木誠が編集を手掛けました。

本作は、池田英彦の死をもってクランクアップされた遺作です。

映画『愛について語るときにイケダの語ること』のあらすじ


(C)2021 愛について語る時にイケダが語ること

2013 年、10月。四肢軟骨無形成症(通称コビト症)の池田英彦(当時40 歳)はスキルス性胃ガン・ステージ4と診断されました。「手術に行ってきます」とカメラに向かって池田は言います。

その後、闘病生活の開始とともに死を予感してもいた池田は「やり残したことがないように悔いのないように生きる」ことを決めました。池田が何よりやりたいこと、それはセックスだったのです。

2014 年1月。池田英彦は自分のセックスを映像として記録に残し始めました。そして池田は20年来の友人である脚本家・真野勝成との会話の中で、自分自身を「映画」にすることを思いつきます。

バディの真野を引き連れ、カメラを片手に池田は夜の街に繰り出していきました。その一方で真野によるインタビューでは複雑な恋愛観をも語っています。

そして「理想のデート」を実現するために俳優・毛利悟巳に出演を依頼し、デートシーンを撮影。撮影を進めていく中で池田は虚実の境界線を彷徨い始めます……。

映画『愛について語るときにイケダの語ること』の感想と評価


(C)2021 愛について語る時にイケダが語ること

監督であり主役を務めた池田英彦は、四肢軟骨無形成症(通称コビト症)という障害を持っています。

池田は、身長112㎝と小さな体形ですが、車の運転も出来、料理も買い物も普通にこなし、服装にもこだわるお洒落さん。

その笑顔は、明るい好青年で、ほっとするような安らぎを与えてくれます。

ハンデを抱えながらもポジティブに生きている彼に追い打ちをかけたのが、胃ガンによる死の宣告でした。

死を間近に感じ、彼は出来る範囲でやりたかったことをやろうと決心。

ガン手術の痕や闘病生活の様子と共に、自分と女性とのセックスを撮影し始めました。

セックスだけの映像ならただのピンク映画ですが、池田は自分の負っているハンデと死の宣告をかみしめています。

(C)2021 愛について語る時にイケダが語ること

自分の生きた証として作り出した本作だから、性行為の記録だけで終わるものではありません。

バディを組む友人の真野やお相手を務める俳優の毛利悟巳と共に語る恋愛論が、その核心をついていました。

「自分で大丈夫?」と聞いて、女の子からさばさばした返事をもらった初体験の思い出。

‟好きという感情”と‟愛するっていう気持”は同じなのだろうかと、毛利悟巳と語ったひととき。

40年の人生に集約された池田英彦の恋愛観が、本人の口から生々しく語られます。

それはなぜこの映画を作ろうと思ったのかという疑問に通じるものであり、池田英彦という一人の人間を知る重要なヒントとなっているのです。

本作は、死を間近にした青年が裸の心で愛することの意味を見つめる異色のドキュメンタリー作品でした。

まとめ


(C)2021 愛について語る時にイケダが語ること

余命宣告されたら自分はどう生きるのか。誰もが迷うであろう究極の問題を、障害を抱える一人の青年が自分なりに解決し、映像化した作品『愛について語るときにイケダの語ること』。

本作は、すでに故人となっている池田英彦が、一番やりたかったという、女性とのセックスを映し出します。

嘘偽りを並べてうわべだけを取り繕っても、食欲や性欲など人間の持つ本能的な欲求は、無くなるものではありません。

どんなに優れたスポーツマンでも、お金持ちでも、女性を虜にするイケメンや男性を惑わす美女だったとしても、一皮むけば、食欲や性欲を持っている同じ人間なのです。

このように考えると、池田英彦の作ろうとした映画で表現したかったものの姿が分かってきます。上映約1時間の作品の中には、生きていく上で大切な何かが隠されていると言えます。

障害者でありガンを患っていた池田英彦が語った「愛のカタチ」と彼の生きた軌跡である本作『愛について語るときにイケダの語ること』は、2021年6月25日(金)よりアップリンク吉祥寺にて、7月10日(土)より大阪・シアターセブンにてロードショーです。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

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