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Entry 2024/12/06
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『私にふさわしいホテル』あらすじ感想と評価レビュー。のんが演じる主役が夢を叶えるため文壇下剋上を引き起こす|映画という星空を知るひとよ238

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第238回

作家の新人賞を受賞しながら不遇な道を歩む中島加代子を主人公に、華やかな文壇の裏側を詳細に描いた柚木麻子の小説『私にふさわしいホテル』が映画化に。

映画『私にふさわしいホテル』は2024年12月27日(金)に全国ロードショー!

本作をとりまとめたのは、『ファーストラヴ』(2021)や『夏目アラタの結婚』(2024)などの堤幸彦監督。バイタリティあふれる主人公の加代子をのん、のんの先輩の編集者・遠藤を田中圭が演じています。

のんが演じる新人女性作家は宿敵・文壇の大御所東十条宗典に対して、あの手この手の復讐に出ます。さてその結果はどうなるのでしょうか。

映画公開に先駆けて、映画『私にふさわしいホテル』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『私にふさわしいホテル』の作品情報


(C)2012柚木麻子/新潮社 (C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

【日本公開】
2024年(日本映画)

【原作】
柚木麻子『私にふさわしいホテル』(新潮文庫刊)

【監督】
堤幸彦

【脚本】
川尻恵太 

【音楽】
野崎良太(Jazztronik)

【主題歌】
奇妙礼太郎「夢暴ダンス」(ビクターエンタテインメント)

【特別協力】
山の上ホテル

【キャスト】
のん、田中圭、滝藤賢一、田中みな実、服部樹咲、髙石あかり、橋本愛、橘ケンチ(EXILE)、光石研、若村麻由美

【作品情報】
原作は、柚木裕子の同名小説『私にふさわしいホテル』。文壇を舞台に不遇な新人作家の逆襲を描きだします。

ファーストラヴ』(2021)や『夏目アラタの結婚』(2024)などの堤幸彦監督が取りまとめました。

のんを主演に迎え、編集者・遠藤を田中圭、大物作家・東十条を滝藤賢一が演じました。田中みな実、服部樹咲、髙石あかり、橋本愛らも共演。

映画『私にふさわしいホテル』のあらすじ


(C)2012柚木麻子/新潮社 (C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

新人賞を受賞したものの、大御所作家・東十条宗典の酷評により、華々しいデビューを飾ることなく、小説を発表する場も得られなかった不遇な新人作家・加代子。

この恨み、晴らさでおくべきか――。

そう決意しながら憧れの「山の上ホテル」に宿泊する加代子の部屋の上階に泊まっていたのは、なんと東十条でした!

大学時代の先輩で編集者の遠藤の手引きによって東十条の執筆を邪魔し、締切日に文芸誌の原稿を見事落とさせます。

だがここからが、加代子の更なる不遇と試練の始まりでした……。

加代子VS東十条の因縁の対決は、誰にも予想できない方向へと突き進んでいきます!

映画『私にふさわしいホテル』の感想と評価


(C)2012柚木麻子/新潮社 (C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

新人女性作家の復讐劇

文壇デビューを果たした加代子。ですが、大御所作家・東十条宗典の酷評を受け、その後の作家人生は不遇のものとなりました。以来、加代子には出版社の編集者である遠藤先輩を頼り、細々と原稿を書き続ける毎日が訪れます。

ある日、加代子が憧れの「山の上ホテル」に宿泊しているとき、上の階の部屋に東十条が原稿執筆で缶詰になっていると知ります。

機が熟した! このチャンス逃してなるものかと、加代子は元演劇部の演技力を駆使して、東十条にワナを仕掛けました。

これが加代子の大御所作家東十条への反発、あるいは文壇の権力への逆襲の始まりでした。次から次へと巻き起こる、東十条と加代子の因縁バトルに笑いが止まりません。

こんな、したたかで怖い女子のイメージを持つ勝気でエネルギッシュな加代子を、のんが持ち前のキャラで、魅力的なチャーミングな女性として演じ切っています。

新進作家として注意をひくようなかわいい服装で現れる加代子のファッションにも注目です。

舞台は文壇と「山の上ホテル」


(C)2012柚木麻子/新潮社 (C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

「山の上ホテル」は神田にある閑静なホテルとして実在し、川端康成、池波正太郎、松本清張など多くの文豪の常宿として知られています。

「直木賞や芥川賞の受賞後、一作目を『山の上ホテル』で執筆するとヒットする」というジンクスが生まれたことで、このホテルに作家が集まるようになったそうです。

本作の見どころの一つは、2024年2月に休館を迎えた「山の上ホテル」の部屋が披露されることです。

序盤で加代子が東十条の部屋にメイドに化けて侵入し、「文豪コール」と称した「逍遥、四迷に鴎外、露伴……」と日本が誇る文豪たちの名前を唱えるコールで、シャンパンを振り続け、東十条が執筆中の大事な原稿に偶然を装ってシャンパンをかけるシーンがあります。

このコールは監督のオリジナルだそうですが、リズムもアイデアも面白く、このシーンが全ての復讐劇の始まりになるインパクトのあるシーンとなりました。

東十条という大きな敵を、駆け出しの新人作家がどこまで追い詰めることができるのでしょう。のんが演じる加代子は、原作のイメージよりも可愛らしくなっているので、より一層応援したくなります。

まとめ


(C)2012柚木麻子/新潮社 (C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

『私にふさわしいホテル』は、新人賞を受賞したものの、華々しいデビューを飾ることなく、小説を発表する場も得られなかった文学史上最も不遇な新人作家・加代子が、文壇への返り咲きを狙う文壇下剋上エンタテインメント。

勝気でしたたかな加代子は、「文学賞の出来レース」「権力者からの妨害」、それに「ゴミのような扱いをされる売れない作家という身分」を跳ねのけて、自分の夢を叶えようとします。

文豪の聖地「山の上ホテル」を愛するのもそのため。自力で文壇の下剋上を起こそうとする加代子に拍手喝采

映画『私にふさわしいホテル』は、2024年12月27日(金)に全国ロードショー! 

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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