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クライムズ・オブ・ザ・フューチャー|あらすじ感想と評価解説。クローネンバーグが20年を費やし“人類の進化についての黙想”をした問題作|映画という星空を知るひとよ164

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第164回

独特のボディ・ホラー作品を生み出すデヴィッド・クローネンバーグ監督が手がけた『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』

ヴィゴ・モーテンセンが自身の体内から臓器を生み出すアーティストを、レア・セドゥがパートナーのカプリースをそれぞれ演じ、2人を監視する政府機関のティムリン役でクリステン・スチュワートが共演しています。

本作は、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、退出者が続出したという賛否両論の問題作です。製作に20年以上を費やしたそのテーマは「人類の進化についての黙想」

果たして、鬼才監督が創造する人類の進化とはどんなものでしょうか?映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は2023年8月18日(金)より全国公開です。

映画公開に先駆けて、『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の見どころをご紹介いたします。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の作品情報


(C)2022 SPF(CRIMES)PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.(C)Serendipity Point Films 2021

【日本公開】
2023年(カナダ、ギリシャ合作映画)

【原題】
Crimes of the Future

【脚本・監督】
デヴィッド・クローネンバーグ

【撮影】
ダグラス・コシュ

【美術】
キャロル・スピア

【編集】
クリストファー・ドナルドソン

【キャスト】
ヴィゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワート、スコット・スピードマン、ドン・マッケラー、ベルゲット・ブンゲ

【作品概要】
ザ・フライ』(1986)『クラッシュ』(1996)『ビデオドローム』(1983)などを手がけた鬼才デビッド・クローネンバーグが「人類の進化についての黙想」をテーマに描いた異色ドラマ。

グリーンブック』(2018)のヴィゴ・モーテンセン、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)のレア・セドゥら豪華キャストが集結し、2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されました。

映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』のあらすじ


(C)2022 SPF(CRIMES)PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.(C)Serendipity Point Films 2021

そう遠くない未来でのこと。人工的な環境に適応するよう進化し続けた人類は、生物学的構造の変容を遂げ、痛みの感覚も消えていました。

‟加速進化症候群”のアーティスト、ソール。体内で新たな臓器が生み出される彼は、パートナーのカプリースとともに臓器にタトゥーを施し摘出するショーを披露し、チケットが完売するほど人気を呼んでいました。

しかし政府は、人類の誤った進化と暴走を監視するため“臓器登録所”を設立。特にソールには強い関心を持ち、ソールとカプリースを監視するために政府機関のティムリンを派遣します。

そんなソールのもとに、生前プラスチックを食べていたという少年の遺体が持ち込まれました。

映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の感想と評価


(C)2022 SPF(CRIMES)PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.(C)Serendipity Point Films 2021

ザ・フライ』(1986)『クラッシュ』(1996)『ビデオドローム』(1983)など、あっと驚くような作品を生み出したデヴィッド・クローネンバーグ監督が、20年の歳月をかけて構想を練って作りあげた『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』

近未来における人類の進化はどのようなものなのでしょう。誰もが気になる未来の人類の姿を、監督は独創的に描き出しました

まず冒頭に出てくる、愛らしい普通の少年がプラスチックを食べるシーンに驚かされます。この世界での主食がプラスチックなわけはなく、少年が特異体質だったのでしょうが、今後の物語の展開が現在の普通の社会ではないと予想されます。

そして、次には‟加速進化症候群”により、体内で新たな臓器が生み出されるというアーティストのソールが登場。

彼が新たに生み出した臓器に、カプリースがタトゥーを入れていきます。新たな臓器を取り出す方法も、手際のよい手術と言え、一種のパフォーマンスになっています。

切れのいいメスで人体のお腹を切り開くと、中につまっている臓器が映し出されて大アップ。グロテスクな場面なのですが、笑顔で‟ショー”というイベントにしてしまうソールとカプリースのせいか、驚きながらも興味津々で見入ってしまうことでしょう。

臓器はもともとは、人の体内で生命維持のために働いているものです。タトゥーを芸術品のように飾られた臓器など必要なのでしょうか。またそれを生み出す力を持った人間がいるとは、本当に驚くべきことです。

どこか異常に感じる近未来の人類の姿と、残忍なのに見事な手際の良さを見せつけられる手術の場面に、出品された映画祭が騒然となったのもわかります。

いつも、何かしら問題提起をしてきたデヴィッド・クローネンバーグ監督の作品ですから、本作においても、人類のこの進化が正しいのか、間違っているのかと、問われている気がします

まとめ


(C)2022 SPF(CRIMES)PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.(C)Serendipity Point Films 2021

デヴィッド・クローネンバーグ監督が製作に20年以上を費やしたという作品『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』をご紹介しました。

「人類の進化」を「内蔵を生み出す体質の男」として、監督らしいホラーな表現で作り上げました

人類のこんな進化は良いのか、悪いのか……内臓の神秘的な美しさと、それに触れてはいけない倫理観が込められた作品を、ぜひご自分の目でお確かめください。

映画『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』は2023年8月18日(金)より全国公開!

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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