Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2022/11/16
Update

MEN 同じ顔の男たち|あらすじ感想と評価解説。A24とアレックス・ガーランド監督がラストに仕掛ける“不可触の悪夢”|映画という星空を知るひとよ127

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第127回

映画『MEN 同じ顔の男たち』は、夫を亡くした傷心の女性が癒しのために滞在した美しい風景の田舎で恐ろしい体験をするSFスリラー。

ミッドサマー』(2019)『ヘレディタリー/継承』(2018)を製作したアメリカの配給会社「A24」とSFスリラー『エクス・マキナ』(2015)のアレックス・ガーランド監督が、究極のタッグを組んだ作品です。

散歩途中の廃トンネルで見かけた人影が、緑の森から女性の方へ向かってきました。影におびえて逃げ出した彼女に、恐ろしい悪夢のような出来事が次々と襲い掛かります。

映画『MEN 同じ顔の男たち』は、2022年12月9日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

映画公開に先駆けて、映画『MEN 同じ顔の男たち』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『MEN 同じ顔の男たち』の作品情報


(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2022年(イギリス映画)

【原題】
MEN

【脚本・監督】
アレックス・ガーランド

【音楽】
ジェフ・バーロウ、ベン・ソールズベリー

【出演】
ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、ゲイル・ランキン、サラ・トゥーミィ

【概要】
『MEN 同じ顔の男たち』は、クオリティの高い映画製作に定評のあるアメリカの配給会社「A24」とSFスリラー『エクス・マキナ』のアレックス・ガーランド監督のタッグによって製作されました。

夫の死を目撃した過去のトラウマと目の前に現れる同じ顔の男たちの恐怖に対峙する主人公を見事に体現したのは、『ワイルド・ローズ』(2022)『ロスト・ドーター』(2021)に出演した、2022年度注目女優のジェシー・バックリー。

またダニエル・クレイグ版「007」シリーズで知られるロリー・キニアが、一人で何役もの「同じ顔の男たち」を怪演しています。

映画『MEN 同じ顔の男たち』のあらすじ


(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

夫ジェームズ(パーパ・エッシードゥ)と離婚の話をしていたハーパー(ジェシー・バックリー)。激怒した夫は窓から外へ飛び出し、その死を目の前で目撃してしまいます。

彼女は心の傷を癒すため、イギリスの田舎町を訪れます。そして、中年男のジェフリー(ロリー・キニア)が管理人を務める、豪華なカントリーハウスに滞在することに……。

滞在を始めた翌日、ハーパーは森へ散歩に出かけました。緑一色の森の中には廃トンネルがあり、ハーパーの歌声が何重にもこだまします。

気持ちよく散歩していたハーパーですが、廃トンネルの向こう側に不審な人影を見つけ、薄気味悪くなってハウスへ戻りました。

やがて、町へ出かけたハーパー。ところが、お面を被った少年、牧師、そして警察官など、次々と出会う男たちが「管理人のジェフリーと全く同じ顔」と気づきます。

町に住む同じ顔の男たち。廃トンネルからついてくる謎の人影。木から大量に落ちるりんご。そして、幾度となくフラッシュバックする夫の死。

不穏な出来事はまるでこだまするかのように連鎖し続け、“得体の知れない恐怖”は徐々にその正体を現し始めます……。

映画『MEN 同じ顔の男たち』の感想と評価


(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

美しい歌声が恐怖の世界へ導く

SFスリラー映画『MEN 同じ顔の男たち』は、前半緑豊かな美しい風景の中でファンタジックな展開をし、ジェシー・バックリーの歌声が響き渡ります。

「癒し系」の映画と思っていると、突如として怪しい人影が出現して物語は一転。楽しそうなジェシーの表情は消え失せ、得体のしれないモノに追われる恐怖に震える主人公に徹します。

経験したことのないような恐怖体験を体現するジェシー。見事な歌唱力で歌う彼女の歌声が途絶えた時から、観客も奇妙な世界へ引きずり込まれました

廃トンネルの出口と入口の世界は、「天国と地獄」なのかもしれません。

夜のハウスに侵入を試みる全裸の不審者、教会で出会ったお面を被った少年、ジェシーの心の傷をさらに抉るようなアドバイスをする牧師、街で次々と出会う男たちは、不審者を逮捕したポリスマンでさえ、皆不気味なオーラをまとっています。

彼らが全員、ハウスの管理人と同じ顔というのもまた怖い。同じ顔を持つ人物は、ロリー・キニア一人が熱演。一人ひとりの役柄の特徴をよく捉えて演じ分けていました。

気鋭の配給会社「A24」が製作


(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画『MEN 同じ顔の男たち』は、日本でも急速に名を知られるようになったアメリカの配給・製作会社「A24」(エー・トゥエンティフォー)が製作しています。

そのやり方は、まず各地の映画祭などで「これぞ」と感じた若手監督をピックアップ。映画の配給を行ったのち、新作をバックアップしてさらに育て上げていくというもの。

クオリティに関しては、基本的にそれぞれの創造性を信じ、全権を持たせています。このサイクルが見事に成功し、良質兼異質な作品が次々と誕生しました。本作もその一つではないでしょうか。

美しい音楽と風景で彩られた『MEN 同じ顔の男たち』ですが、ラストへと続く20分はトラウマになるほどの恐怖の悪夢が用意されています。

SFスリラーの名手アレックス・ガーランドと「A24」のタッグだからこそ出来た、完成度の高い恐怖が味わえる作品と言えます。

まとめ


(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

SFスリラー映画『MEN 同じ顔の男たち』をご紹介しました。

予告動画の廃トンネルのシーンは、禁断の地の入り口に踏み入れようとしているかのような、得体の知れない恐怖の幕開けを予感させるカットとなっています。

ここではまだまだ恐怖の序章。次第に募る‟本当の怖さ”は後半ラストへ続く20分に凝縮していると言えます。

初めて見るような場面、そして二度と見たくないであろうグロテスクな映像に釘付けになることでしょう。

映画『MEN 同じ顔の男たち』は2022年12月9日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。






Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/demachi2026/cinemarche.net/public_html/wp-content/themes/stinger8-child/single.php on line 150

関連記事

連載コラム

【ネタバレ】映画MEN|あらすじ感想考察と結末ラスト解説。同じ顔の男たちと“失楽園”引用が意味する“固定観念”という怪物|サスペンスの神様の鼓動57

サスペンスの神様の鼓動57 心の傷を癒す目的で、田舎町に2週間滞在することにした女性ハーパー。彼女が遭遇する、同じ顔の男たちの恐怖を描いたサスペンススリラーが映画『MEN 同じ顔の男たち』です。 『ザ …

連載コラム

映画『ラスト・フル・メジャー 』感想解説と評価レビュー。米国空軍兵ピッツェンバーガーの実話を映像化したドラマで勲章授与の意味を探る|映画という星空を知るひとよ49

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第49回 ベトナム戦争で自らの命を犠牲にして仲間を救った米国空軍兵士、ウィリアム・H・ピッツェンバーガー。 ピッツェンバーガーの実話に感銘を受けたトッド・ロビン …

連載コラム

マイケルパウエル監督が映画規制に挑む!猟奇殺人ホラー『血を吸うカメラ』が忌み嫌われた時代背景を解説|奇想天外映画祭アンダーグラウンドコレクション2020【第3回】

奇想天外映画祭アンダーグラウンドコレクション2020【第3回】 2020年8月、映画史に残る怪作・珍作・迷作・凡作・奇作を集めて実施された「奇想天外映画祭 アンダーグラウンドコレクション 2020」で …

連載コラム

映画『ラスト・パニッシャー』あらすじネタバレと感想。キャストのニコラスケイジが全力熱演俳優としての真骨頂を見せた|未体験ゾーンの映画たち2020見破録23

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第23回 世界各国の様々な映画を集めた劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」は、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて実施、一 …

連載コラム

映画『特捜部Q知りすぎたマルコ』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。人気北欧ミステリーシリーズ最新作がキャスト一新で登場!【未体験ゾーンの映画たち2022見破録20】

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第20回 映画ファン待望の毎年恒例の祭典、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が今年も開催されました。 傑作・珍作に怪作、本格ミステ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学