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Entry 2020/03/31
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ホラー映画おすすめ歴代ランキング(洋画1970年代)ベスト5選!エクソシストからゾンビまでモダンな作品の夜明け!【増田健ホラーセレクション4】

  • Writer :
  • 増田健

おすすめの1970年代の洋画ホラー映画5選!

ホラー映画に興味を持った方、古い作品だと何を見ようか迷っていませんか? そんなアナタのために、各年代のホラー映画から5作品を厳選。今回は1970年代の作品から、おすすめを紹介いたします。

ベトナム戦争が続き、学生運動の波が社会を変えた1960年代。映画業界も保守的な風潮から
脱却、新たなスタイルのホラー映画も登場します。(詳しくは前コラム3の「1960年代編」)

そしてより大きな変化が映画業界を襲います。それはテレビの普及でした。国によって差はあるものの、映画観客数は急激に減少していきます。社会の変化に追いつけず、観客のニーズはつかめず、収益は悪化の一途をたどり、大手映画会社は自信喪失といった状況に陥ります。

ハリウッドもその渦中にありました。しかしそんな状況が、新たな才能に大きなチャンスを与えます。アメリカン・ニューシネマと呼ばれる、新世代の作り手による映画が登場し、観客からの支持を集めました。

やがてその流れから、スコセッシ・コッポラ・ルーカス・スピルバークといった、その後の映画業界のあり方まで変える、偉大なクリエーターが登場します。新たな才能が活躍できる環境は、ホラー映画の世界にも訪れていました。

そしてこの時代にホラーの世界そのものが、大きな変化を迎えます。現代社会の闇や不条理がもたらす、新たな恐怖を描いた小説が登場し、世界を席巻します。そのジャンルは”モダンホラー”と呼ばれ、その旗手である作家、スティーブン・キングが登場したのです……。

【連載コラム】『増田健ホラーセレクション』一覧はこちら

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第5位『エクソシスト』(1973)

映画『エクソシスト』の作品情報

【原題】
The Exorcist

【製作】
1973年(アメリカ映画)

【監督】
ウィリアム・フリードキン

【キャスト】
エレン・バースティン、リンダ・ブレア、ジェイソン・ミラー、マックス・フォン・シドー

【作品概要】
モダンホラーの時代が来たとはいえ、古くからの恐怖が否定された訳ではありません。伝統的な恐怖には新たな顔が与えられ、世界の人々を震撼させる映画が誕生しました。

原作はウィリアム・ピーター・ブラッティが、悪魔祓いを行う司祭を取材して書き上げた同名の小説。この本の登場まで”エクソシスト”という言葉は、多くの人々から忘れ去られていましたが、出版されるやアメリカ国内だけで、1300万部を販売するベストセラーとなります。

この作品が映画化されると全世界で大ヒット、人々に悪魔の存在を改めて思い出させるムーブメントが生まれ、オカルトブームを巻き起こしました。

本作の監督に起用されたのは、当時『フレンチ・コネクション』で注目を集めていたウィリアム・フリードキン。リアルな恐怖演出は今も高く評価され、後に25周年を記念してカットしたシーンを追加した、ディレクターズ・カット版も製作されています。

全世界で大ヒットとブームを巻き起こしたこの作品は、アカデミー賞で作品賞を含む10部門にノミネート(2部門受賞)、ゴールデングローブ賞7部門ノミネート(4部門受賞)を遂げ、ホラー映画の興行的・社会的価値を高める役割も果たしました。

【映画『エクソシスト』のあらすじ】

イラク北部の遺跡で、悪魔パズズの像を発見したメリン神父(マックス・フォン・シドー)。彼はやがてこの悪魔との対決の日が訪れると予感します。

その頃娘リーガン(リンダ・ブレア)と暮らしていた女優クリス(エレン・バースティン)は、娘の異変に気付きます。言動が何かに憑りつかれたかのように変化し、医師による最先端の診察すら、その原因を突き止めることが出来ませんでした。

娘の異変はさらに悪化し、超常現象まで引き起こします。万策尽きたクリスは、カラス神父(ジェイソン・ミラー)に悪魔祓いを依頼します。

精神科医でもあり、様々な経験から信仰を失いかけていたカラス神父は、クリスの依頼に否定的な態度をとります。しかしリーガンと接する内に、彼女の中に悪魔がいると確信したカラス神父。

悪魔祓いを決意したカラス神父はその専門家、メリン神父の協力を得て、リーガンに憑りついた恐るべき悪魔と対決します……。

実はウィリアム・フリードキン監督こそ悪魔だった!?

世界に社会現象を巻き起こした『エクソシスト』。この後、悪魔にとり憑かれたと訴える人が増加します。映画『未知との遭遇』公開後、アメリカで「巨大な目の宇宙人に誘拐された」と訴える人が増えたように、映画による共有体験が、人々の心理や行動に影響を与えた事例とされています。

かくも世界に影響を与えた『エクソシスト』。今も悪魔祓いというテーマは映画など、様々な分野のポップカルチャーに登場しています。

本作の迫真の恐怖を生みだしたのは、リアルを追求したウィリアム・フリードキン監督の、現在なら間違いなくコンプライアンス的にアウトな、過激な演出にありました。

子役のリンダ・ブレアをハーネスで縛り上げ、エレン・バースティンをワイヤーで引き倒し、そして生まれた苦痛に歪む顔は本物。俳優の演技中に突然銃を放って、緊張と恐怖感を与えた監督。ジェイソン・ミラーは撮影中、本当に気が狂いそうになったと振り返っています。

セットに大型の業務用冷却装置を持ち込み、常時0度と言われる環境で役者に演技させ、出演してくれた本物の司祭の顔を平手打ちと、あらゆる手段で恐怖に震える顔を求めたフリードキン監督。『エクソシスト』の全編に漂う異様な緊張感は、画面からひしひしと伝わってきます。

第4位『キャリー』(1976)

映画『キャリー』の作品情報

【原題】
Carrie

【製作】
1976年(アメリカ映画)

【監督】
ブライアン・デ・パルマ

【キャスト】
シシー・スペイセク、パイパー・ローリー、エイミー・アービング、ウィリアム・カット、ナンシー・アレン、ジョン・トラボルタ

【作品概要】
スティーブン・キングが最初に成功を収めたホラー小説であり、彼の小説を最初に映画化した作品でもあります。監督は『ファントム・オブ・パラダイス』や『愛のメモリー』で注目を集めていた、ブライアン・デ・パルマです。

超能力というSF的要素を取り扱いながら、学校でのいじめや性の恐れ、宗教的狂信や閉鎖的環境という、誰もの身近に存在する恐怖を扱った、モダンホラーの時代を切り開いた作品です。

アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得し、シシー・スペイセクとパイパー・ローリーは本作の演技で、アカデミー賞にノミネートされました。

【映画『キャリー』のあらすじ】

地味な容姿と内気な性格を持つ女子高生、キャリー(シシー・スペイセク)。狂信的なキリスト教信者の母マーガレット(パイパー・ローリー)は、性を嫌悪するあまり娘に月経について教えず、学校のシャワー室で初潮を経験したキャリーは、パニックを起こしからかわれます。

キャリーをいじめた生徒たちは、学校から処罰されます。学友のスー(エイミー・アービング)は首位から孤立したキャリーを、せめてプロムに参加させようと友人のトミー(ウィリアム・カット)に、彼女を誘うように取り計らいます。

しかし処罰を受けた生徒のクリス(ナンシー・アレン)、ビリー(ジョン・トラボルタ)らはキャリーを逆恨みし、彼女への復讐を計画していました。

母の反対を押し切り、プロムへ参加の望むキャリー。彼女は様々なストレスや肉体の変化がもたらしたものか、超能力を身につけていましたが、狂信的な母はそれを悪魔の所業と決めつけます。

そしてキャリーは、運命のプロムの日を迎えます…。

若者の不安をえぐり出す

いじめという問題、アメリカ的には学園カーストと言うべきでしょうか。学校という閉鎖社会は、そこで過ごさざるを得ない若者に、時に切実かつ残酷な恐怖をもたらす存在です。

まだ自立できない若者にとって、家庭や地域社会の呪縛も深刻な脅威になりえます。さらに自意識過剰で、性に目覚めだす年代……。多感な年頃の若者の周りに潜む、身近な恐怖の対象をあぶり出した、将にモダンホラーの時代の到来を告げる作品でした。

弱者であるキャリーを主人公にして、いじめていた側が復讐される姿はカタルシスである一方、自分はいじめに加担した側の人間であったかも、という人の心の中に眠るやましさを刺激します。身近に潜む闇こそが、恐怖の源であると示した傑作です。

この映画はブライアン・デ・パルマによって、視覚的にも強烈な印象を残す作品となりました。そして映画の登場人物と同年代の若者に、リアルな恐怖を感じさせて支持され、彼らがモダンホラーに親しむきっかけになった作品です。

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第3位『のぞき魔!バッド・ロナルド 十代の異常な欲望』(1974)

映画『のぞき魔!バッド・ロナルド 十代の異常な欲望』の作品情報

【原題】
Bad Ronald

【製作】
1974年(アメリカ映画)

【監督】
バズ・キューリック

【キャスト】
スコット・ジャコビー、ピッパ・スコット、キム・ハンター、ジョン・ラーチ、ダブニー・コールマン、リサ・アイルバッハー、ジョン・フィードラー、シンディ・フィッシャー

【作品概要】
テレビ普及と共に低迷した映画業界は、その状況に活路も求めていました。テレビ草創期、B級映画の製作会社がテレビドラマ制作に乗り出します。当時フィルム撮影していたドラマに、映画製作のノウハウは必須でした。1950年代には大手映画スタジオもドラマ制作を開始します。

70年代にハリウッドでの映画製作が減る中、テレビの特別枠で単発の映画を作って放送し、好評な作品はその後、劇場公開や海外に販売する動きが始まります。こうして多数のTVM=”テレビ映画”が製作されることになりました。

その代表格は、アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞し、日本では劇場公開された、スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作『激突!』です。

現在は埋もれかけた存在の、しかし70年代を代表する存在の”テレビ映画”から1本紹介させて頂きます。それは『キャリー』と裏表のように、地味な容姿と内気な性格を持つ男子高校生の物語です。

過激な描写がある訳ではありませんが、その日常がかえって見た者にリアルさを感じさせ、思いがけずテレビでこの作品を見た者に、トラウマのような印象を与え記憶に残りました。

なお、ちょっとアレな邦題はテレビ放送時のタイトルで、時代の雰囲気が伝わってきます。

【映画『のぞき魔!バッド・ロナルド 十代の異常な欲望』のあらすじ】

絵を描くことが好きでファンタジーを愛する、地味で内向的な高校生ロナルド(スコット・ジャコビー)。彼はやや過保護な母親(キム・ハンター)と2人で暮らしていました。

ある日思い切って、クラスメートのローリーに声をかけたところ、彼女や友人たち、そしてローリーの妹キャロルにまで馬鹿にされます。怒りのあまりキャロルを突き倒したロナルドですが、打ち所が悪く彼女は死んでしまいます。

ロナルドは母に告白しますが、逮捕を恐れた彼女は息子の失踪を装い、彼を家の壁の中に隠して住まわせます。閉ざされた密室でファンタジーの世界に没頭し、その絵を壁に描くロナルド。

母は息子を世話し続けますが、ある日体調を崩し入院、帰らぬ人となります。やむなくロナルドは隠し部屋に住み続け、時折そこを抜け出して食料をあさり、空想にふける生活を続けます。

やがて家は売りに出され、夫婦と3人姉妹の一家が移り住みました。新たな一家に寄生し、姉妹の生活をのぞき見て暮らすロナルド。しかし閉ざされた環境に棲み続けた彼は、空想と現実の区別がつかなくなっていました……。

青春の痛みと共に描いた『パラサイト 半地下の家族』

パソコンもネットも無い時代に、学園で底辺に暮らしていたオタク系男子のロナルド。後にスクールカーストやオタク文化は、様々なジャンルの青春・学園映画で取り上げられます。その先駆けというべき本作は、ロナルドの境遇と自分を重ねる男子に、大きなショックを与えました。

『パラサイト 半地下の家族』を思わせる、人目を忍ぶ寄生生活。ロナルドは最初から異常な人間ではありません。不幸にして始まった孤独な密室生活が、徐々に彼の精神を蝕んでいったのです。

『キャリー』は攻撃的な母が娘を追い込んで行ったのに対し、『バッド・ロナルド』は過保護過ぎる母が、結果として息子を破滅させます。これも思春期男女のあり方の違いでしょうか。

SF作家でもあるジャック・ヴァンスの小説が原作です。小説ではより過激な行動をするロナルドですが、”テレビ映画”という性格上、大人しい内容に変更されます。それが平凡なオタク男子が、一つ歯車が狂った結果……というリアルな怖さを視聴者にもたらしました。

ところでロナルドが出入りする隠し扉の場所が、食品を並べる棚というのも『パラサイト 半地下の家族』と共通です(構造は異なりますが)。

そして、『のぞき魔!バッド・ロナルド 十代の異常な欲望』は、日本ではテレビ東京を中心に放送されました。

『パラサイト 半地下の家族』の日本公開にテレビ東京も関わっていますから、ここは『バッド・ロナルド』を再放送・再評価するのも、ありじゃないでしょうか?

第2位『ゾンビ』(1978)

映画『ゾンビ』の作品情報

【原題】
Dawn of the Dead

【製作】
1978年(アメリカ・イタリア合作映画)

【監督】
ジョージ・A・ロメロ

【キャスト】
デビッド・エムゲ、ケン・フォリー、スコット・H・ライニガー、ゲイラン・ロス、トム・サビーニ

【作品概要】
前コラム3、「1960年代編」で紹介した、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編であり、より発展させた作品です。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が成功を収めたものの、その後のヒット作に恵まれなかったジョージ・A・ロメロ。共に映画を作った仲間との別れもあり、一時はホラー映画以外の作品に活路を見出そうとしました。

しかし彼の才能を高く評価した、イタリアのホラー映画の監督ダリオ・アルジェントが、ヨーロッパ公開版の編集と権利を有する条件で、新たな映画への共同出資を申し出ます。

こうして誕生したのが『ゾンビ』。このタイトル(邦題だけでなく世界公開に使用)によって、今や定番のモンスター”ゾンビ”の名称とそのスタイルが全世界に定着します。同時に”ゾンビ”の名と共にジョージ・A・ロメロの名も、世界のホラーファンの間に知れ渡りました。

製作の経緯もあって、様々なバージョンが存在する『ゾンビ』。これがかえって作品に様々な魅力を与え、今も多くのファンを引き付けています。

【映画『ゾンビ』のあらすじ】

突如死者が甦り、人々を襲い喰らうようになった世界。フィラデルフィアのテレビ局職員フラン(ゲイラン・ロス)は、恋人のヘリコプターのパイロット、スティーブン(デビッド・エムゲ)と共に、安全な場所への脱出を決意します。

スティーブンの友人のSWAT隊員、ロジャー(スコット・H・ライニガー)は同僚のピーター(ケン・フォリー)と共に、犯人に立てこもるアパートに突入します。そこは蘇った死者ゾンビが溢れ、地獄絵図が展開される場所でした。

現状に見切りをつけたロジャーは、ピーターと共にスティーブンらに合流、4人はヘリで街を脱出します。しかしどこもゾンビと自警団が争う、混乱した終末的状況に陥っていました。

そんな中ショッピングモールを見つけ、そこに立てこもることにした4人。まるで生きていた時の習慣のように、ゾンビが集まってきますが、モールの封鎖に成功したおかげで、物資にあふれる安住の地を獲得したかに思えました。

しかしゾンビに噛まれたロジャーの容態が、徐々に悪化してゆきます。そしてショッピングモールの存在を知った暴走族の一団が、略奪目当ての襲撃を企てます。

彼らは封鎖を破った暴走族と、それに続きなだれ込んできたゾンビの大群に対して、壮絶な戦いを繰り広げます。物語はいかなる結末を迎えるのか…。

地獄が満員になったとき、死者が地上を歩き出す(『ゾンビ』のセリフより)

今やお馴染みのモンスター、ゾンビを世界に広めた記念碑的作品として、これからも記憶されるホラー映画です。

この映画にも、社会風刺のメッセージを込めたロメロ監督。ゾンビは不条理な存在として、誕生の理由は明確にされません。そこで日本劇場初公開版では、「未知の惑星が爆発し、降り注いだ宇宙線が原因」という謎過ぎる、けれど味のある独自の説明が追加されました。

ロメロ監督の意向が反映したバージョンは、社会風刺と終末世界の不条理・虚無感が強調されています。しかし日本劇場初公開版は、当時世界各国で一番広く上映された、ダリオ・アルジェント監修版を元にしています。

ロックバンド・ゴブリンのサウンドを、BGMに使用したこのバージョンは、アクションをより強調した構成で、世界のファンを熱狂させました。後のアクション主体のホラー映画、アクション系ホラーゲームは、ダリオ・アルジェント監修版『ゾンビ』が原点だといえます。

このアクションシーンを支える、派手な人体破壊を特殊メイクで生みだしたのが、暴走族の一員として出演するトム・サビーニ。彼とロメロが生んだ残酷描写の数々も、後のホラー映画に大きな影響を与えます。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の公開後、既にその亜流というべき映画が誕生していました。そして『ゾンビ』が大ヒットを記録すると、世界中でゾンビ映画が爆発的に作られて、ホラーの世界を席巻することになります。

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第1位『悪魔のいけにえ』(1974)

映画『悪魔のいけにえ』の作品情報

【原題】
The Texas Chain Saw Massacre

【製作】
1974年(アメリカ映画)

【監督】
トビー・フーパー

【キャスト】
マリリン・バーンズ、アレン・ダンジガー、ポール・A・パーテイン、ウィリアム・ヴェイル、テリー・マクミン、エドウィン・ニール、ジム・シードー、ガンナー・ハンセン、ジョン・ドゥーガン

【作品概要】
圧倒的な暴力と狂気にさらされた犠牲者を描く、バイオレンス・ホラーの金字塔的作品。後の多くのホラー作品のクリエイターが、本作の影響から大きな影響を受けたと語る作品です。

テキサスで生まれ映画館を経営する父の影響で、幼い頃から映画を見て育ち、9歳で8㎜カメラで映画を撮影したというトビー・フーパー。大学で撮影技術と音楽を学んでプロとなった後、仲間とともに低予算で完成させたのが『悪魔のいけにえ』でした。

犯人側の心理的な描写を廃し、暴力と狂気に満ちた行動を突き放して描きます。それは荒い画面と相まり、ドキュメント調の臨場感を与えました。ショック与える巧みな編集や、BGMは無くノイズの様に響く音や、悲鳴と爆音をいった効果音が、見る者の不安と恐怖をかき立てます。

【映画『悪魔のいけにえ』のあらすじ】

車でテキサス州に帰郷した、サリー(マリリン・バーンズ)たち若者男女5人組。彼らが怪しげなヒッチハイカー(エドウィン・ニール)を乗せたことから、運命が狂い始めます。

奇行を行うヒッチハイカーを追い出した一行は、老人(ジム・シードー)が経営するガソリンスタンドに立ち寄ります。周囲の廃墟を見て回っていると、突然人の皮膚で作ったマスクをつけた大男、レザーフェィス(ガンナー・ハンセン)が現れます。

人間離れした怪力を持つレザーフェィスに捕えられ、犠牲となってゆく若者たち。生き残ったサリーはガソリンスタンドの老人に助けを求めますが、その彼に捕えられます。

彼女が目覚めた時、縛られてテーブルについていました。目の前には若者たちを襲撃した男たちと、その家族がいます。それは旅行く人を襲って殺害し、その肉を食する恐るべき家族、「ソーヤー一家」の面々でした。

何とか脱出したサリーを、チェンソーを手にした巨漢・レザーフェィスが追ってきます……。

全世界を震撼させた、映画的に完成された暴力映画

冒頭から奇怪なものが映し出され、不快な音が響き渡る作品。逃れようのない暴力に、人喰い一家という背徳的な設定。殺伐とした風景の中にある、荒れ果て狂気に満ちた彼らの棲み家…。米国内や世界各国で上映禁止になり、一部シーンがカットされたのも納得です。

それでも怖い物を見たい人々を引きつけました。公開時本作は、セックスとバイオレンスを売りに観客を集める、エクスプロイテーション映画として、ポルノ映画同様の扱いで公開されましたが、それでも興行的に大成功を収めます。

しかし冷静に作品を振り返ると、狂気と暴力を描きながらも、露悪趣味的な残虐シーン、ゴアやスプラッターと呼ぶ人体破壊シーンは、巧みに画面に登場していません。

実は『悪魔のいけにえ』のショックシーンは、前コラム3の「1960年代編」で紹介した『サイコ』同様、巧みな編集と音響で映画的に演出されたものです。他にもサリーの目のクローズアップ、狂気に満ちた笑い…。ショッキングシーンが並びながらも、計算された上で画面に登場します。

本作の魅力はトビー・フーパーの狙った意図と、狙わなかった偶然…低予算ゆえの過酷な撮影環境に、使用せざるを得なかった16㎜カメラが生む荒れた画面、その融合が成し得たものです。

『サイコ』が輝きを失わないのと同様に、『悪魔のいけにえ』は今後も、新たな世代のファンを獲得し語り継がれていくでしょう。

まとめ

【70年代の洋画ホラー映画5選】を選ばせて頂きました。当時のアメリカの状況を解説しながら選んだ結果、以上の5本となりました。

この5本で、世界にホラー映画があふれた、この時代を語れたとは思えません。「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」シリーズの礎となる、興行的にも大成功したスラッシャー映画、ジョン・カーペンターの出世作『ハロウィン』を入れるべきか、最後まで悩みました。

この時代のオカルトブームを追求するなら『オーメン』、悪魔から幽霊に視点を移せば『ヘルハウス』に『悪魔の棲む家』など、興味深いホラー映画は無数にあります。

テレビが映画を圧迫した時代ですが、その影響が比較的遅かったイタリアでは、B級娯楽映画が続々製作されます。その環境で活躍したのがダリオ・アルジェントで、彼が『サスペリア』を監督したのもこの時代でした。

映画業界が低迷する中、ホラー映画は若きクリエイターの登竜門であり、同時に世界で金を稼げるジャンルとの認識が広まったこの時代。インディーズから大手プロダクションまで、世界各国でホラー映画が作られ始めます。

また儲かる映画の追求は、ホラーだけでなく低予算のアクション・バイオレンス映画を産み出し、さらにはポルノ映画が台頭する、より刺激的かつ過激な映画が求められる風潮も生みました。

その流れは80年代、世界にビデオが普及する時代を迎えると、ますます加速していきます。

【連載コラム】『増田健ホラーセレクション』一覧はこちら



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