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ホラー映画歴代おすすめランキング(洋画1960年代)ベスト5選!名作中の名作サイコから始まった!【増田健ホラーセレクション3】

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  • 20231113

おすすめの1960年代の洋画ホラー映画5選!

ホラー映画に興味を持った方も古い作品だと、今見るにはちょっとキツいかもしれない、と敬遠してはいませんか?そんなアナタのために、各年代のホラー映画から5作品を厳選。今回1960年代の作品からおすすめ作品を紹介いたします。

世界で様々な映画が登場する中、1950年代のハリウッドのメジャースタジオは赤狩り、そしてヘイズコードの影響で、保守的な映画作りを余儀なくされていました。(詳しくは前コラム2の「1950年代編」)

60年代に入って保守的な風潮も薄れ、小さな映画会社の製作するB級映画が台頭。その現場には赤狩りで追われた映画人も活躍し、そんな状況が映画作りの姿を変えていきます。

そしてホラー映画史だけでなく、映画史にも重要な作品として名を残す、アルフレッド・ヒッチコック監督の作品が1960年に登場すると、状況は大きく変わっていくのです。

【連載コラム】『増田健ホラーセレクション』一覧はこちら

60年代おすすめホラー映画:第5位『サイコ』

映画『サイコ』の作品情報

【原題】
Psycho

【製作】
1960年(アメリカ映画)

【監督】
アルフレッド・ヒッチコック

【キャスト】
アンソニー・パーキンス、ヴェラ・マイルズ、ジョン・ギャビン、マーティン・バルサム、ジャネット・リー

【作品概要】
映画史にその名を刻む、アルフレッド・ヒッチコックの代表作の1つ。ロバート・ブロックが、エド・ゲインの起こした実際の猟奇事件に基に執筆した、小説『サイコ』が原作です。

冒頭のカメラワークにシャワールームの殺害シーン、様々なメッセージを秘めた映像や編集など、後の研究家に隅々まで分析された映画で、その完成度の高さは今も輝きを失いません。

一方で当時のメジャースタジオの作品としては考えられない、大胆なエロ・グロ・ショックシーンの登場、B級映画界で“ギミックの帝王”と呼ばれた、ウィリアム・キャッスルを真似たかのような煽る宣伝と、大胆に大衆受けを狙い成功した映画でもあります。

サスペンス映画の歴史を語る時に欠かせないこの名作は、今も作品の持つ衝撃性を楽しむことができるホラー映画です。

【映画『サイコ』のあらすじ】

不動産会社に勤めているマリオン(ジャネット・リー)は、経済的な理由で婚約者のサム(ジョン・ギャビン)と結婚出来ずにいました。勤務先でマリオンは出来心から、会社の金4万ドルを持って隣町へ車で逃げてしまいます。

その逃避行でマリオンは、母と暮らす青年ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)が経営する、ベイツ・モーテルに宿泊しますが、彼女はそこで消息を絶ってしまいます。

サムとマリオンの妹ライラ(ヴェラ・マイルズ)、そして会社に雇われた私立探偵のアーボガスト(マーティン・バルサム)は、マリオンの行方を捜しベイツ・モーテルにたどり着きますが…。

ホラー映画の新時代を切り開いたヒッチコック

誰もが知るホラー映画の金字塔ですが、製作当時アルフレッド・ヒッチコックは、自身の映画の評価が徐々に下がっている現状に悩んでいました。

そのヒッチコックの目にとまったのが小説『サイコ』。その映画化権を手に入れると、ヘイズコードを盾に注文を付けてくる映倫と争うなど、様々なエピソードを経て映画は完成します。

この経緯は後にノンフィクション「ヒッチコック&メイキング・オブ・サイコ」に著され、それを映画化した2013年日本公開の映画『ヒッチコック』でも知る事ができます。『サイコ』と共に『ヒッチコック』もご覧になってはいかがでしょうか。

さて、ハリウッドのメジャースタジオ、そしてヒッチコックが衝撃的な内容のサイコホラーを作った事実は、同時代の人々に大きな衝撃を与えます。従来の格調高いスタイルのヒッチコック映画を愛する人からは、激しい拒絶反応もありました。

しかし、あのヒッチコックがここまでやった、という事実は大きな反響を呼びます。とはいえメジャースタジオはまだ、大胆なホラー映画を作る事には慎重でした。しかしB級映画を作る人々は本作に刺激を受け、より過激な描写の作品を作り始めます…。

60年代おすすめホラー映画:第4位『回転』

映画『回転』の作品情報

【原題】
The Innocents

【製作】
1961年(イギリス映画)

【監督】
ジャック・クレイトン

【キャスト】
デボラ・カー、パメラ・フランクリン、マーティン・スティーブンス、メグス・ジェンキンズ

【作品概要】
『サイコ』の翌年イギリスで幽霊映画の形を借りた、異なる形の異常心理を描いた作品が登場します。それが映画『回転』です。

原作はヘンリー・ジェイムズの小説『ねじの回転』。幽霊を恐れる主人公の女性が、世話をする子供を守ろうとするあまり、彼女自身が幽霊より恐ろしい存在になるというお話です。それを映画化する際に、どう処理したのでしょうか。

監督は後に『華麗なるギャツビー』を撮るジャック・クレイトン。主人公を『地上より永遠に』や『王様と私』で名高いデボラ・カー、後に『ヘルハウス』に出演するパメラ・フランクリンが、子役として出演しています。

【映画『回転』のあらすじ】

ブライハウスと呼ばれる屋敷に招かれたミス・ギデンズ(デボラ・カー)。彼女はそこに住む幼い兄妹、マイルス(マーティン・スティーブンス)とフローラ(パメラ・フランクリン)の家庭教師として雇われました。

ブライスハウスで2人の子供と、メイドのグロース夫人(メグス・ジェンキンズ)と生活を始めたミス・ギデンズ。しかし彼女はその屋敷で、怪しい男女の影を目撃します。

グロース夫人からライスハウスにはかつて執事が殺され、その後彼を愛していた家庭教師の女が自殺したと知らされるミス・ギデンズ。彼女は目撃した怪しい影の正体は、悲劇に終わる愛に溺れた2人の幽霊だと確信します。

そして彼女の目には、幼い兄妹の関係は親し過ぎると映ります。やがて彼女は、2人の幽霊が兄妹の体を借りて、前世で叶えられぬ愛を語っているのだと気付きます…。

女性の歪んだ性的欲望を描いたサイコホラー

ホラー映画について書くと、エロだグロだ暴力だ、と品の無いことばかり書き反省しています。しかし性と死と暴力は、恐怖と不可分に結び付いているのも事実、多くのホラー映画が(そして様々な現実の犯罪も)男性の性的欲望・衝動を基に生まれているのが現実です。

一見古風な幽霊物の映画に思える映画『回転』。様々な解釈ができる作りになっており、幽霊は存在したとも、全てはミス・ギデンズの恐怖が生んだ妄想ともとれます。

イギリスの訳ありな名家に、家庭教師=ガヴァネスとしてやって来たミス・ギデンズ。自殺して幽霊となった女もまた、ガヴァネスでした。

ガヴァネスは、教養ある中流家庭の女性が務める職業です。同時に様々な理由で晩婚化が進んだヴィクトリア朝時代のイギリスで、婚期を逃し社会的に自立も出来ず、そこそこ裕福な実家に居場所を失った女性の、ステレオタイプ的存在でした。何やら日本の現状に重ねられますね…。

この背景を知ると『回転』は、ミス・ギデンズは無邪気な兄妹の行動を、自分の歪んだ性的妄想と重ね合わせて見ていただけ、と解釈できます。すると今まで見てた幽霊映画とは、意味の異なる怖さが現れてくるのです…。

暴力的かつ男性的な視点から描かれることの多いホラー映画。しかし『サイコ』と同時代に、女性側の秘められた欲望に焦点を当てた、サイコホラーの傑作も誕生していたのです。

60年代おすすめホラー映画:第3位『地球最後の男』

映画『地球最後の男』の作品情報

【原題】
The Last Man on Earth

【製作】
1964年(イタリア・アメリカ合作映画)

【監督】
ウバルド・ラゴーナ、シドニー・サルコウ

【キャスト】
ヴィンセント・プライス、エマ・ダニエリ、フランカ・ベットーヤ、クリスティ・コートランド

【作品概要】
感染者は吸血鬼の様になってしまう、謎の奇病が蔓延した終末世界を描いた作品。そして後のホラー映画に多大な影響を与えたカルト映画です。

原作はリチャード・マシスンの小説「アイ・アム・レジェンド」。この小説は後にチャールトン・ヘストン主演の『地球最後の男オメガマン』、ウィル・スミス主演の『アイ・アム・レジェンド』としても映画化されています。

『地球最後の男』の脚本に参加していたリチャード・マシスンですが、内容に不満で別の名義でクレジットされています。

マシスンが不満だったこの映画、しかし後の映画化作品と異なり“アイ・アム・レジェンド”の持つ意味を、小説が描いた意味通りに使用した、結果として最も原作に忠実な作品でした。映画化された3本の映画を見比べるのも、また一興です。

【映画『地球最後の男』のあらすじ】

感染者が吸血鬼のようになる奇病が大流行した世界。今や感染していない人間は、ロバート・モーガン博士(ヴィンセント・プライス)ただ一人でした。

夜になると屋敷の前に吸血鬼が集まり、博士に対して出て来いと叫びたてます。朝を迎えると吸血鬼は立ち去って眠りにつくので、太陽の下では博士は自由に動き回り、彼らを退治して回ります。しかし日が沈むと、博士は街に溢れ出た吸血鬼から屋敷に逃れるしかありません。

この病気が流行した時、博士は研究者として対策に当たっていました。しかしワクチンは開発出来ず犠牲者があふれ、死者の遺体を焼く煙が方々で立ち上る、終末的な世界が広がります。やがて奇病の死者が甦って吸血鬼になったという、信じがたい報告までもたらされます。

政府と軍にできる事は、感染者を強制的に隔離することだけでした。家族を失う事を恐れ人々は逃げ出し、社会は崩壊していきます。感染した博士の娘(クリスティ・コートランド)も強制的に隔離され、その遺体は無造作に焼き捨てられていました。

やがて博士の妻(エマ・ダニエリ)も病で死にますが、彼女が焼き捨てられる事に耐えず、博士は遺体を密かに埋葬します。しかしその夜現れたのは、吸血鬼と化した妻の姿でした。

それでも今も1人、この奇病を治療する方法を研究する博士。孤独な彼の前に1匹の犬が、そして生存者の女ルース(フランカ・ベットーヤ)が姿を現します…。

これぞ映画に登場するゾンビと終末世界の原型

『地球最後の男』に登場する甦った死者、言葉を発し吸血鬼という設定が与えられていますが、集団でノロノロ動くその姿は、後の映画に登場するゾンビの原型と言われています。

そして奇病が蔓延し崩壊した文明社会。そのイメージを忠実に映像化した作品でもありました。低予算・モノクロ画面の本作は、かえって画面にリアル感を与え、孤独な主人公の姿は今見ても胸に突き刺さります。

主演は前回までのコラム紹介してきた俳優と、異なる背景を持つ怪奇スター、ヴィンセント・プライス。彼は従来のホラー映画のイメージ通りの、古風な姿で画面に登場します。最後に彼の前に、大挙して現れる感染者たち。彼らは当時流行の、モッズファッションで現れます。

こうして視覚的に表現された、残酷な世代交代を描いたラストにこそ、“アイ・アム・レジェンド”とう言葉の、原作で与えられた正しい意味が込めれているのです。

60年代おすすめホラー映画:第2位『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』

映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の作品情報

【原題】
Night of the Living Dead

【製作】
1968年(アメリカ映画)

【監督】
ジョージ・A・ロメロ

【キャスト】
デュアン・ジョーンズ、ジュディス・オディア、カール・ハードマン、マリリン・イーストマン、キース・ウェイン

【作品概要】
現在我々がイメージする“ゾンビ”が初めて登場した、ホラー映画の記念碑的作品。

監督はその功績から“マスター・オブ・ホラー”と呼ばれ、全世界のホラー映画・ゾンビ映画愛好家の尊敬を集めたジョージ・A・ロメロ。

“カルト映画”“ミッドナイト・ムービー”と呼ばれる、メインストリームに属さないが大成功を収めた映画の代名詞として、語り継がれる作品です。当時の観客を捉えた衝撃は色あせません。

【映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のあらすじ】

兄と共に墓参りにやって来たバーバラ(ジュディス・オディア)は、蘇った死者に襲われ兄は絶命し、彼女は近くの民家に逃げ込みます。

そこには若いカップルのトム(キース・ウェイン)とジュディ、娘が死者に噛まれ負傷したクーパー夫妻(カール・ハードマン&マリリン・イーストマン)が既に立てこもっていました。

さらに黒人青年のベン(デュアン・ジョーンズ)が逃げ込んできます。一同は放送でアメリカ東部全体で大量殺人が発生し、その殺人者は生存者の肉を喰うという、恐ろしい状況が繰り広げられていると知ります。

その無数の殺人者の正体こそ、蘇った死者でした。彼らは脱出するか、ここに立てこもるかで対立しますが、彼らを生ける屍の群れが襲ってきます。

民家に逃げ込んだ人々は恐怖の一夜を無事過ごし、生き残ることができたのでしょうか…。

ジョージ・A・ロメロ監督の出世作

生ける屍(劇中では“ゾンビ”の言葉は使用していません)が生者を襲い、その血肉を喰らう。死者は親子も兄弟も関係なく迫ってくる。そして画面には凄惨な死が描かれる。

ヘイズコードが守ろうとした古き良きアメリカの姿は、日々報道されるベトナム戦争の現状の前に、欺瞞に満ちた姿を露呈していました。さらに家族に対する価値観も変容、公民権運動が根深い人種差別の存在を露わにし、当時のアメリカ社会は大きく傷付いていました。

そんな時代背景に対し、メッセージ性を持って作られた『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は、賛否両論を巻き起こす大きな反響を引き起こします。

それ以上に衝撃を与え人々を集めたのが、人肉を喰らう死者たちの姿でした。そのインパクトは今も健在、モノクロだけに暗い室内で見たら、怖さ100倍ですよ…。

60年代おすすめホラー映画:第1位『シェラ・デ・コブレの幽霊』

映画『シェラ・デ・コブレの幽霊』の作品情報

【原題】
The Ghost of Sierra de Cobre

【製作】
1964年(アメリカ映画)

【監督】
ジョセフ・ステファノ

【キャスト】
マーティン・ランドー、ダイアン・ベイカー、ジュディス・アンダーソン、レナード・ストーン

【作品概要】
“確かにあの恐ろしい映画をテレビで見た記憶があるけど、本当に存在したの?”“怖すぎて試写で倒れる人続出、上映禁止になった!”など、数々の都市伝説めいた噂を呼んだ幻の作品。今だ“最恐のホラー映画”と評する人も存在する、知る人ぞ知る映画です。

『サイコ』の脚本、そしてSFテレビシリーズ『アウター・リミッツ』に参加しているジョセフ・ステファノが、製作・監督・脚本を務めました。

この作品は元々テレビ放送用に54分のパイロット版が作られ、その後カットしたシーンを追加した81分版が作られました(この2つのバージョンが存在します)。しかし様々な事情から本国で公開されなかったこの作品は、資金回収のため海外のテレビで放送される事になります。

日本では1967年「日曜洋画劇場」で放送、その後地方テレビ局で数回放送され、見た者に強烈な印象を残しました。その後お蔵入りした本国アメリカでも、テレビで放送された日本ほか海外でも、『シェラ・デ・コブレの幽霊』の噂は独り歩きを始めます。

2009年、テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」で取り上げられ、本作は意外な形で脚光を浴びます。映画評論家の添野知生がこの作品のフィルムを所持している事が判明し、その後いくつかの上映会と、2010年のカナザワ映画祭にて上映されました。

今も様々な伝説に包まれた幻のホラー映画、いっそ“見たら死ぬ”とか、“見たらそれが死ぬまで憑いてくる”とか、無責任な都市伝説を広めて、大いに話題にして欲しいものです。

【映画『シェラ・デ・コブレの幽霊』のあらすじ】

建築家であると共に趣味で心霊現象を解決する、心霊探偵ネルソン・オライオン(マーティン・ランドー)。彼の元に盲目の資産家マンドール(レナード・ストーン)から、依頼が舞い込みます。

マンドールの妻ヴィヴィア(ダイアン・ベイカー)は、夜な夜な不気味なすすり泣きだけの電話が、夫の元にかかってくると説明します。

マンドールの母は1年前に亡くなっており、埋葬される事を極度に恐れた母は、地下納骨堂に安置した棺の蓋は閉じず、傍に息子の部屋につながる電話を引くように遺言していました。マンドールは自分に電話をかけた主は、母親の亡霊だと信じていました。

ネルソンとヴィヴィアは調査のため納骨堂入ったが、そこで恐ろしい姿で悲鳴を上げる亡霊に遭遇し、ヴィヴィアは気を失ってしまいます。

そのままネルソン宅に運ばれ、意識を取り戻したヴィヴィアは壁に飾られた絵に気付きます。それシェラ・デ・コブレ村にある教会を描いたものでした。ヴィヴィアはその村の出身であり、ネルソンはかつてその村で起きた、幽霊の仕業とされる殺人事件を調査していました。

ヴィヴィアと共にマンドールの屋敷に向かったネルソンを、主人と家政婦のポーリナ(ジュディス・アンダーソン)が迎えます。屋敷で超常現象に遭遇する心霊探偵ネルソンとマンドール夫妻。果たして幽霊の正体は、そして過去にシェラ・デ・コブレで何があったのか…。

今見ても怖い幽霊の姿と意外なJホラーへの影響

“最恐のホラー映画”と紹介しましたが、今見ると古く地味な印象があります。ネガポジ反転を利用した幽霊の映像は、『アウター・リミッツ』を見た方なら…想像できるかもしれません。

それでもマーティン・ランドーら出演者の演技と、モノクロで丁寧にとられた映像はいかにも怪談映画の雰囲気。そして恐ろしい形相で悲鳴を上げ迫る幽霊の姿は、今見てもインパクト大です。

例えるなら映画『リング』を見ていない人でも、映画の内容や貞子はご存知でしょう。そんな方に『リング』を見せても、多くの方が貞子の登場シーンにゾっとするでしょう。『シェラ・デ・コブレの幽霊』に登場する亡霊は、それと同程度に怖い存在だと思って下さい。

例えに『リング』を出しましたが、『女優霊』や『リング』の脚本家、近年は『霊的ボリシェヴィキ』の監督したJホラーの第一人者、高橋洋は子供の頃TVで本作の予告を見て、強烈な印象を受けたと語っています。それが『女優霊』や『リング』に反映されているのです。

『女優霊』のDVDには、“『女優霊』の原点・幻のフィルム『シェラデコブレの幽霊』を探して”という特典が付いており、高橋洋と添野知生、映画監督の黒沢清が本作の持つ魔力を語っています。この映画が無ければ、後のJホラーブームは起きなかったかもしれません。

長らく幻であったこの“最恐のホラー映画”も、2019年海外でブルーレイが発売されました。その恐怖をぜひ体験して下さい。これから先も幻の映画として、いわく付きの都市伝説を広め続けて欲しかった気もしますが…。

まとめ

【60年代の洋画ホラー映画5選】を選んだものの、実は全てがモノクロ映画と気付き我ながら驚きました。モノクロ映像でも、否、だからこそ現代まで通用する恐怖があります。古典的ホラー映画ならではの魅力が確かに存在するのです。

50年代末に登場したハマー・プロのホラー作品は欧州各国の映画に影響を与え、60年代にイギリスでは『血を吸うカメラ』、フランスでは『顔のない眼』という印象深い作品が誕生します。

イタリアではホラー映画の巨匠、マリオ・バーヴァ監督が活躍します。アメリカではB級映画の帝王、ロジャー・コーマンがハマー・プロ作品を意識し、エドガー・アラン・ポーの小説を、ヴィンセント・プライスら怪奇俳優を起用して映画化しています。

そして“流血のゴットファーザー”こと、ハーシェル・ゴードン・ルイスが、元祖スプラッター映画を作り始めた時代。ホラー映画について語るべき事は、まだまだ無数にあります。

過激な表現が映画に現れ、若きクリエイターがゾンビ映画で大成功を果たし、世界の映画業界はテレビの普及で徐々に力を失いつつある状況で、60年代は幕を閉じます。

さあ、70年代にはいかなるホラー映画が登場するのでしょうか。

【連載コラム】『増田健ホラーセレクション』一覧はこちら


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