連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第105回
鮮烈なホラー描写で鑑賞者を恐怖に陥れた台湾映画『呪詛』(2022)や、グロテスク描写に舵を切りゴア映画ファンの度肝を抜いた『哭悲 THE SADNESS』(2022)。
斬新で良い意味で行き過ぎたアジア映画に世界からの注目が集まる中、「Netflix」にアクション映画ファンの心揺さぶる作品が韓国からやってきました。
今回はバイオレンスアクション映画界の新たな定番的映画になるとさえ言える韓国映画『カーター』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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映画『カーター』の作品情報
【公開】
2022年(韓国映画)
【原題】
카터
【監督】
チョン・ビョンギル
【キャスト】
チュウォン、イ・ソンジェ、チョン・ソリ、キム・ボミン
【作品概要】
『殺人の告白』(2013)を手がけたチョン・ビョンギルが監督を務めたNetflix独占配信作品。
日本でもリメイクされた韓国ドラマ『グッド・ドクター』で主演を務めたチュウォンが記憶喪失の主人公カーターを演じました。
映画『カーター』のあらすじとネタバレ
人の凶暴性を増幅させる「DMZウイルス」が北朝鮮から世界各地に伝播。
CIAのエージェントたちは、世界で唯一治療を成功させたチョン博士を誘拐したと言う脅迫ビデオを送った男を追いモーテルへと駆けつけました。
目を覚ました男はエージェントたちに囲まれながらも自身の記憶が全くなく、突如かかってきた電話の相手から自身の名前がカーターであることを聞きます。
カーターの後頭部には十字の手術痕があり、耳には通信機が埋め込まれており、その通信機から聞こえる謎の女性の声から逃げ道を指示されます。
カーターは高い戦闘能力で自身を狙うエージェントやマフィアを撃退しその場を切り抜け、女の用意した車に乗り込みました。
車に乗っていた韓国の国家情報院のチェと会うと、通信相手の女性は自身が朝鮮労働党のハンであると名乗り、血液がDMZウイルスの治療薬となり得るチョン博士の娘のハナをCIAの秘密組織「A9」から守り北朝鮮へ送ると言う任務をカーターに命じます。
カーターが元CIAのエージェントであり感染した娘のユニを救うため、記憶を消して任務への従事を希望したとハンは言い、カーターの頭部には発信器が付けられ任務からの逃亡は認められないと脅迫されました。
倒したA9のエージェントから奪った携帯からA9のアジトを特定したチェはカーターをアジトに送り届けます。
アジトにはハナが監禁されており、ハナはカーターの携帯でチョン博士と連絡を取るとカーターを信用。
A9に追われながらも2人はアジトを抜け出し北朝鮮へと向かう飛行機が用意されている空港へと向かいます。
チョン博士は既に北朝鮮についており、今回の件が北朝鮮と韓国の関係崩壊を狙ったアメリカ政府の陰謀であると報道され、韓国内ではデモが発生していました。
するとカーターに何者かから「ハンたちが内緒にしている真実を教える」と書かれたメッセージが届き、カーターはハンの命令に逆らいメッセージの送り主に従いバスに乗り込みます。
カーターを待ち構えていた女性はカーターの本名はマイケルであると言い、ハンたちは事実を隠していると忠告。
しかし、バスの停車と共に女性は何者かに撃たれた上にハナがCIAに攫われ、カーターは大量のエージェントたちと戦いながらハナを追います。
ハナを奪い返し、ハンの指示通り国家情報院のキムが乗る北朝鮮への移送のための飛行機にカーターとハナは乗り込むことに成功しました。
映画『カーター』の感想と評価
物語をワンカット風に描いた殺戮ロードムービー
どのように撮影したのかが想像がつかないほどの独特なアクション演出が話題となった韓国映画『悪女』(2018)。
そんな『悪女』を手がけたチョン・ビョンギルが新たに製作した『カーター』は、またしても監督の独自性に溢れた作品になっていました。
本作では主人公カーターを狙うエージェントが彼を包囲するシーンから物語が始まり、その後はカーターが気を失うシーンを除き物語が途切れることなく進むワンカット風の演出が行われています。
『1917 命をかけた伝令』(2020)のようなロードムービーでありながら、常にカーターが襲い来る敵を殺害し続ける殺戮の旅路が繰り広げられる本作。
ワンカット風の撮影方法をしつつもアクションシーンにおける特異なカメラ回しは健在であり、止まることのない興奮を味わえる作品でした。
血に塗れた新時代のバイオレンスアクション
ワンカット風のロードムービー的な本作ですが、特徴はその部分だけでなくアクションシーンそのものにもあります。
本作は刃物を中心にした戦闘が多いにも関わらず身体に追う傷の描写に手加減がなく、戦いの中で敵は首を切られ、時に部位を切断され死亡していきます。
特に銭湯での戦いはほぼ裸体の状態で刃物での乱闘が行われるため、血を血で洗うような血みどろのバイオレンスアクションが繰り広げられていました。
さながら過激なバイオレンス表現と繰り返されるアクションが話題となったインドネシア映画『ザ・レイド』(2012)のようであり、ワンカット風の演出と併せて過激な戦闘の数々が頭を切り替える暇すらなく次々と展開していきます。
バイオレンスアクションが好きな人は間違いなく本作にハマること間違いなしの、新たな定番的作品となる作品でした。
まとめ
常に主人公にカメラを当て続けるロードムービー的演出と、血みどろかつ高クオリティなバイオレンスアクションが融合した映画『カーター』。
進化し続けるアクション映画に更なる進化の道筋を見せた本作は、『ザ・レイド』や『ハードコア』(2017)などの時代を変えたバイオレンスアクション映画の面白味をしっかりと引き継いでいました。
続編を匂わせる終わり方をした韓国映画『カーター』は続編の構想や世界からの評価など、今後の展開が気になる大注目の作品です。
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