もう、ひとりじゃない。──映画『竜とそばかすの姫』は2021年7月16日(金)より全国ロードショー公開!
『時をかける少女』『おおかみこどもの雨と雪』『未来のミライ』の細田守監督によるオリジナル長編アニメーション映画『竜とそばかすの姫』が、2021年7月16日(金)より全国ロードショーを迎えます。
かつて『サマーウォーズ』で描いたインターネット世界を舞台に、ある一人の少女の成長を描いた“細田監督の集大成”ともいえる作品です。
本記事では、主人公のすず/ベル役を務めた中村佳穂について解説。役柄や経歴はもちろん、細田監督に主演へ抜擢されたその理由、そしてその演技力について探っていきます。
CONTENTS
映画『竜とそばかすの姫』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作・脚本・監督】
細田守
【企画】
スタジオ地図
【メインテーマ】
millennium parade × Belle「U」
【キャスト】
中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世、森川智之、宮野真守、島本須美、役所広司、石黒賢、ermhoi、HANA、津田健次郎、小山茉美
【作品概要】
母親の死という心の傷を抱えた主人公が、“もう一つの現実”と化したインターネット上の広大な仮想世界を通じて、悩み葛藤しながらも懸命に未来へ歩いていこうとする姿を描いた長編オリジナルアニメーション映画。『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『未来のミライ』などを手がけてきた細田守監督の“集大成”ともいえる作品。
主人公すず/ベル役をミュージシャンとして活動する中村佳穂が務め、劇中歌の歌唱や一部作詞なども担当。また「King Gnu」の常田大希が率いる気鋭の音楽集団「millennium parade」が本作のメインテーマ「U」を制作した。
映画『竜とそばかすの姫』のあらすじ
自然豊かな、高知県のとある村。17歳の女子高生すず(中村佳穂)は幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。
母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。
ある日、すずは仮想世界《U(ユー)》と出会う。《U》では《As(アズ)》と呼ばれる自分の分身によって全く別の人生を送ることができ、今や全世界で50億人以上が集う空間と化していた。
現実世界では歌えないはずだったすずは、自身の《As》として生み出したアバター「ベル」としては自然に歌うことができた。やがてベルは仮想世界内で瞬く間に話題となり、絶世の歌姫として世界的スターへとなっていった。
数億の《As》が集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、仮想世界で恐れられている謎の存在「竜」だった……。
映画『竜とそばかすの姫』すず/ベル役の中村佳穂を解説!
#7「Making of 竜とそばかすの姫:細田守×女性キャスト」
ミュージシャン中村佳穂が抜擢された理由
高知の自然豊かな村で生まれ育ち、母と一緒に歌うことが大好きだったものの、母の死をきっかけに歌うことができなくなってしまった少女すず。そして仮想世界《U》におけるすずの分身=《As》であり、「絶世の歌姫」として《U》で最も注目される存在となったベル。
映画『竜とそばかすの姫』の主人公であるすず/ベルを演じたのは、中村佳穂。20歳から本格的に音楽活動をスタートし、「音楽そのもののような存在」とも表現されるその歌によって多くのファンを持つミュージシャンです。
本作のメインテーマ「U」を制作した音楽集団「millennium parade」を率いる音楽家・常田大希からも「日本音楽界の宝」と評されている彼女は、オーディションを通じてすず/ベル役に抜擢されました。
その理由について細田監督は、「歌」が何よりも重要なモチーフとして描かれている『竜とそばかすの姫』において、すず/ベル役を演じるのは歌に説得力がある人物、なおかつ演技のできる人物でなければならず、その中で中村佳穂の凄さを知ったと本作のメイキング動画にて語っています。また細田監督は「歌っている人は、どこか演じているというところもある」とライブで歌うミュージシャンの「パフォーマー」としての側面と声優という「アクター」の共通する部分にも触れ、だからこそ演技もできるのではと感じたそうです。
すず/ベルを演じ分けるために
本作が初の本格的な演技経験となった中村佳穂。アフレコでは「自分の“悲しい”とすずの“悲しい”は違う」というシンプルな、しかし演技の根幹に関わる演技の難しさに悩みながらも、日が経つにつれて「すずはこういう人なんだ」と細田監督監督の意図やすずの人物像が少しずつ見えていったとメイキング動画内で語っています。
またすず/ベルを演じ分けるにあたって、その時々の服装によって心情の変化が表れていたことから、アフレコ現場でもベルを演じる際にはヒールの高いパンプスを履き、すずを演じる際にはなるべく低い靴を履いてセリフをしゃべり歌うなど、自身の服装を通じて「演じ分け」のコンディションを整えていたとのこと。
それらの演技の工夫は、中村佳穂自身が「歌」は決して「声」あるいは「音」では成り立っていないということをよく知っているがゆえのものといえます。
中村佳穂という「音楽そのもののような存在」
中村佳穂「アイミル」Lyrics Video
『竜とそばかすの姫』に登場するインターネット上での仮想世界《U》において、ベルは世界中に注目される絶世の歌姫であり、《U》を通じて現実世界をも照らす女神のような存在として予告編でも描かれています。
ベルの「歌声」が《U》という世界全体に響き渡ってゆく様は、彼女の歌声がもはや個々人だけでなく、世界そのものにとっての音楽となっているように伝わってきます。
対して中村佳穂は、「音楽そのもののような存在」とさえ表現されるミュージシャン。そのさまざまな想いが真っ直ぐに伝わってくるエモーショナルな歌声は、日々を生きる人々の心を励まし、その支えとなる……人々の世界を優しく照らす音楽として高く評価されています。
その歌声を通じてリンクしてゆく、中村佳穂と彼女が『竜とそばかすの姫』で演じるベルの姿。その一点だけでも、細田監督が本作の主人公役に抜擢したのは、必然だったということが理解できます。
まとめ
細田守監督の“集大成”ともいえる映画『竜とそばかすの姫』。
その主人公すず/ベル役を務める中村佳穂は、彼女自身のミュージシャンとしての在り方、そしてライブにて多くの観客を魅了するミュージシャンだからこそできる演技によって、本作にて描かれる現実世界/仮想世界という二つの世界を鮮やかに彩ってゆきます。
そして歌姫ベルとしての姿だけでなく、心の葛藤により歌うことそのものに悩むすずの姿もまた、音楽活動の中で「歌うとは何か?」という絶えることのない自問自答を続けてゆく、一人の人間としての中村佳穂の姿とリンクすることも忘れてはいけないでしょう。
果たして中村佳穂の演技によって、すず/ベルはどのような人間として描かれ、どのような物語とその結末を歩んでゆくのか。それは映画の公開によって明らかになるでしょう。