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Entry 2021/07/20
Update

竜とそばかすの姫 ネタバレ考察|ジャスティンの正体はあの人?竜のオリジンやすずとの関係性から徹底解説

  • Writer :
  • 糸魚川悟

謎に包まれた偽りの正義の使者「ジャスティン」の正体とは?

細田守監督による映画『竜とそばかすの姫』(2021)ではインターネット上の仮想空間「U」を舞台に、世界中の人々に愛される歌姫「ベル」となった主人公すずと、世界中の人々に嫌われる謎多き「竜」を巡るドラマが繰り広げられます。

その作中では「U」内の治安を守ると自称する自警団組織「ジャスティス」が登場し、そのリーダーである「ジャスティン」は竜と激しく対立する事になりますが、作中ではジャスティンの「オリジン(Asの所持者:現実世界での正体)」ははっきりとは分からないまま物語は終わってしまいます。

そこで本記事では、作中の様々な情報からジャスティンのオリジンの正体、そして「ある登場人物」との関係性に迫っていきます。

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映画『竜とそばかすの姫』の作品情報


(C)2021 スタジオ地図

【公開】
2021年(日本映画)

【原作・脚本・監督】
細田守

【企画】
スタジオ地図

【メインテーマ】
millennium parade × Belle「U」

【キャスト】
中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世、森川智之、宮野真守、島本須美、役所広司、石黒賢、ermhoi、HANA、津田健次郎、小山茉美、佐藤健

【作品概要】
母親の死という心の傷を抱えた主人公が、“もう一つの現実”と化したインターネット上の広大な仮想世界を通じて、悩み葛藤しながらも懸命に未来へ歩いていこうとする姿を描いた長編オリジナルアニメーション映画。『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『未来のミライ』などを手がけてきた細田守監督の“集大成”ともいえる作品。

主人公すず/ベル役をミュージシャンとして活動する中村佳穂が務め、劇中歌の歌唱や一部作詞なども担当。また「King Gnu」の常田大希が率いる気鋭の音楽集団「millennium parade」が本作のメインテーマ「U」を制作した。

映画『竜とそばかすの姫』のあらすじ

自然豊かな、高知県のとある村。17歳の女子高生すず(中村佳穂)は幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。

母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。

ある日、すずは仮想世界《U(ユー)》と出会う。《U》では《As(アズ)》と呼ばれる自分の分身によって全く別の人生を送ることができ、今や全世界で50億人以上が集う空間と化していた。

現実世界では歌えないはずだったすずは、自身の《As》として生み出したアバター「ベル」としては自然に歌うことができた。やがてベルは仮想世界内で瞬く間に話題となり、絶世の歌姫として世界的スターへとなっていった。

数億の《As》が集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、仮想世界で恐れられている謎の存在「竜」だった……。

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ジャスティンの「オリジン」は?その正体を探る


(C)2021 スタジオ地図

物語の中盤で明らかになる「竜」のオリジンは、家族であるはずの父から激しい虐待を受ける兄弟の兄・恵でした。

作品内で描写されるさまざまな要素から考察すると、そんな恵の父こそが「U」世界内で活動する自警団のリーダー「ジャスティン」のオリジンではと考えることができます。

劇中で直接名指しが行われる訳ではなく、またジャスティン・恵の父の声優もそれぞれ異なるため、はっきりと断定することは出来ません。しかしその一方で作中には、恵の父がジャスティンのオリジンであるとの仮定を裏付ける証拠もいくつか存在しているのです。

恵の父の職業=「在宅可能な仕事」


(C)2021 スタジオ地図

恵の弟の「トモくん」は竜の数少ないファンの1人として、動画配信サイトでのライブ中継を日頃から行っていました。そして作中では、すず=ベルが竜の前でだけ歌った曲をトモくんがライブ配信中に口ずさんだことが、竜のオリジン=恵を突き止める糸口になりますが、その行動が父の怒りを買い、トモくんを庇う恵が暴力を振われるきっかけとなってしまいます。

恵の父はその最中で「隣の部屋で仕事中」と発言しており、彼の仕事が「在宅で出来る仕事」である事を伺わせていました。

一方で「U」内での犯罪を取り締まる組織「ジャスティス」は、ジャスティンが「運営陣から認められていない」と作中でも発言している通り、あくまで「自警団」であり「U」公式の組織でない事がはっきり描かれています。

しかしジャスティン自身は、そのカリスマ性から「U」内では有名人であり、名乗りの際に複数の企業名ロゴが背後に表示される様子からも分かるように、スポンサーの広告塔として自警団活動をしている側面もある、いわば「Uでの活動を『仕事』としている人物」でもあります。

仮想空間「U」におけるアバターとなる「As」を操作するデバイスは、作中では持ち運びが可能なほどに小型化されていますが、もちろんパソコンを利用し家庭内でも接続が出来ます。

つまり「U」内での自警団活動は「在宅可能な仕事」であり、この点もジャスティン=恵の父と言う説の裏付けの1つとなっています。

「正義」と「倫理」を疑わない不遜な性格


(C)2021 スタジオ地図

ジャスティンは「U」内の秩序を乱れを激しく嫌悪しており、自身が「悪」と認定した相手にはあらゆる手段を用いて容赦なく追い詰めます

時には自身の持つ特殊な武器で対象のAsを「アンヴェイル(Asの姿をオリジンの姿=現実世界の本人の姿に戻す処置)」し、素性を明らかにした上で一般人を扇動し「ネットリンチ」を行わせることで社会的に抹殺するという「晒し」行為に近い手段も厭わないなど、匿名性ゆえの解放感を持つインターネットの特性を狡猾に利用する「頭の良さ」も見えるキャラクターでもあります。

しかし、ジャスティンの自身の倫理観の正しさを確信し、その方針にそぐわない人間に対する横暴さは、母を失った自身の子供達をルールで縛り、破った相手を容赦なく制裁する恵の父と「あくまでも自身が『正義』である」と考えている点において類似しています。

さらに作中では、主人公のすず=ベルが竜の居場所を知っていると考えたジャスティンは彼女を捕縛し暴行した挙句、彼女に「現実じゃあ…」という侮辱の言葉と共に「アンヴェイル」での脅迫に及びます。

企業の広告塔でもあるジャスティンは大衆の前では「正義の人間」を演じていますが、裏では自身の目的や思想のためには手段を選ばない「悪」の顔を持っています。

一方で恵の父も、「妻を失い、男手ひとつで2人の息子を育てる熱心な父親」とニュースで取り上げられる裏で苛烈な虐待を行っており、ジャスティンと恵の父のみが「大衆の面前では偽りの『正義』の仮面を着けられる人物」として作中で描かれていたのです。

恵の父はなぜすずに気圧されたのか?


(C)2021 スタジオ地図

映画の終盤、すずは弘香や瑠果、忍など友人たちの協力によって虐待を受ける恵とトモくんの住所の割り出しに成功し、彼らのもとへと急行します。

兄弟の家の近くで2人を保護したすずは、その様子を見てさらに怒りが最高潮に達した恵の父に引き離されそうになりますが、すずに見つめられた恵の父はなぜか怖気づいてしまい、逃げるようにその場を去っていきます

物語の流れから見れば、恵の父によって顔を引っかかれ、頰から血が流れてもなお一歩も引くことのないすずの気迫に怯えたと考えるのが妥当ですが、恵の父がジャスティンであると仮定した場合、恵の父がすずに気圧された理由にも別の解釈が見えてきます。

すずは「U」内では圧倒的な人気を誇る歌姫「ベル」でしたが、現実では自分に自身を持つことのできない少女でした。しかしすずは竜=恵からの「本当」の信用を得るべくジャスティンに自身を「アンヴェイル」させ、素顔を世界中のファンの晒した上で絶唱、再度その人気を勝ち取ります。

ジャスティンにとってインターネットの世界で匿名性を捨てるのは「終わり」であり、その常識を打ち破り自身のスポンサーすらもを撤退させたすずは、もはや恐怖の存在だったといえます。そして「アンヴェイル」によってすずの素顔を知っている以上、もしジャスティンの「オリジン」である人間の目の前にすずが現れたとしたら、それ以上の恐怖はないでしょう。

それらをふまえると、ジャスティンの「オリジン」の可能性がある恵の父がすずに怯えるのはキャラクターの感情としても納得できるものであり、ジャスティンと恵の父を結びつける決定的な描写であるとも言えます。

まとめ


(C)2021 スタジオ地図

「現実世界」と「仮想空間」の2つの世界を舞台とした物語だからこそ生まれる、誰と誰が同一人物なのかと言う謎。

その謎は現代社会における「インターネット」にも存在する、時に利用者を守り時に利用者を悪の道にも導いてしまう「匿名性」と言う性質から生まれています。

正義の使者であるはずの「ジャスティン」は、果たして子供たちに虐待を行う「非情な父」なのか。それは定かではありませんが、ジャスティンを恵の父と考え本作を再鑑賞すると、「竜とジャスティンの攻防」は仮想空間の世界での「父と息子の攻防」へと様相を変化し、物語の持つ重みはさらに深まっていきます。

映画『竜とそばかすの姫』はあえてさまざまな部分に疑問を残すことで作品全体を考察する機会を与えてくれる、考察が好きな人にもオススメできる作品でした。






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